あれから半年、気づけばドタバタでイチャイチャな日々を送りました。そうイチャイチャ……頬が緩みます。
ですが、半年。それはヴィータちゃんの襲撃、そこから始まる『闇の書事件』が近づいたことを意味します。
この日のために、私は自分で少しでもいい方に世界を変える計画をずっと立てていました。
この事件のメリットは私とフェイトちゃんのパワーアップ、そして戦うことで私たちはお互いの力を認め合うことができました。
デメリットははやてちゃんやヴォルケンリッターのみんなが犯罪者として扱われること、リインフォースさんの消滅などです。
これらのデメリットは一部はすでにどうにもなりませんがリインフォースさんはどうにかしたいところです。
一応、リインフォースさんの為に色々誤魔化しながらも、エイミィさん経由で成熟したAIが入るくらいの大容量を持つストレージデバイスを用意もしてあります。
表向きには私が自分でAIを組んでみたいからと誤魔化して。お陰でしばらくレイジングハートは不機嫌そうでした。ご、ごめんね?
計画としてはまず、私が前のようにヴィータちゃんに負けます。
たぶんお姉ちゃんたちが異変に気づいて駆けつけると思うけど、お姉ちゃんは飛べないし、時音さんもまだ魔法は特訓中です。シグナムさんが駆けつけたらたぶん私たちの負けです。
それから少し待てばレイジングハートとバルディッシュにカートリッジシステムが搭載されます。
その段階でヴォルケンリッターを捕縛。猫姉妹の方はさり気なくクロノくんに注意して、あとはお姉ちゃんも行ってくれれば大丈夫かも。秘密兵器も用意してあるの。
後はユーノくんが調べた事実をみんなに突きつける。それでゴールです。
もし逃げられても直接はやてちゃんのお宅に向かえばいいです。
なんでわかったのか詮索されるかもしれませんが、もう怪しまれてるし今更ですからね。未来を知っているのは私だけ。 できる限りのことはしておきたいです。
そして、覚悟していたようにヴィータちゃんの張った結界を感じるとともに私はあのビルの屋上でバリアジャケットを纏って待ち構えます。
さあ、早く来てヴィータちゃん!
そして、来ましたヴィータちゃんの鉄球。フェイトちゃんの時も感じた懐かしさを覚えます。
右のプロテクションで受け止め、見もせずに反対にもプロテクションを張ってヴィータちゃんの攻撃を受ける。
ちらっと見れば少し驚いているヴィータちゃんの顔。
でも今のプロテクションではきっとすぐに破られる。
判断は一瞬、プロテクションをバーストさせて距離を取りつつレイジングハートを構えます。
「どこの子? いきなりなにをするの?!」
『私』と同じ言葉をヴィータちゃんに投げかけます。
でも、ヴィータちゃんは鋭い目で私のことをを睨み、答えず舌打ち一つにそのまま襲いかかって来ました。
攻撃を避けて、
「ディバイン」
レイジングハートを腰だめに構えて、
「ブレード!!」
全力で突き出した。
極太の魔力刃がヴィータちゃんに向かうけど避けられる。でも、帽子に掠りました。
あっ、またやっちまったの。
落ちていく帽子、ヴィータちゃんの表情が憤怒に染められます。
ご、ごめんなさーい!
「アイゼン!」
『Ja!』
アイゼンがフォルムツヴァイに変形、来ます!
「ラケーテンハンマー!」
迫るピックをプロテクションで受けます。でも、すぐに破られる。
それをレイジングハートの刃で受けて、あっさり砕かれる。
予想はしてたけど、こんなにあっさり砕かれるとなんか悲しいです。
「きゃあぁぁぁぁぁ!」
吹き飛ばされた私はそのまま後ろのビルに激突しました。
か、覚悟はしてたけどやっぱり痛いの……
刃を砕かれた反動でレイジングハートにも少し罅が入るくらいのダメージを負っています。
「大丈夫? レイジングハート」
『All right』
若干くぐもった返事が返ってきました。
ごめんねレイジングハート。
とんとヴィータちゃんが開いた穴から入ってきます。
「動くな」
私は身構えます。
ヴィータちゃんが再びアイゼンを叩きつけてきます。プロテクションで防ぎ、砕かれ、レイジングハートで受けます。
でも、やっぱりレイジングハートの刃はあっさり砕けて……とっさに飛針を投げました。
ヴィータちゃんは頭を振って避けるけど体勢が崩れました。
その隙を生かして後ろに離れます。
「悪あがきを!」
ヴィータちゃんは吐き捨てて、私に迫り……雷光と銀色の光に阻まれました。
来ました!
「仲間か?!」
ヴィータちゃんに横槍を入れた三人、ユーノくんとフェイトちゃんに時音さんを睨みます。
「友達だ」
フェイトちゃんが、
「友達だよ」
時音さんが同時に返しました。
なのはちゃんを襲った相手を私は睨む。
まだ小さい、なのはちゃんと同じくらいの女の子。でも、油断はしないでデバイスを構える。
でも、その子は私を見て、目を見開きました。
「なんで、お前がいるんだ?」
「えっ?」
その子の言葉に私は一瞬固まってしまった。私? と自分を指差すと舌打ち一つしてから、女の子は後ろの穴から外に出ていってしまいました。
「待て!」
すぐにフェイトちゃんが飛び出し、一拍遅れて私も飛び出します。確かめなくちゃ!
そこから熾烈な空中戦が繰り広げられました。まだ空中戦に慣れない私だけど、なんとかついてかないと!
そして、アルフさんのバインドで女の子は動きを止められました。
捕縛した子にフェイトちゃんが近づくので、私もそばまで飛ぶ。そして、意を決して時音は問い掛けてみます。
「ねえ、さっきのどういう意味?」
「さっきって?」
女の子が目を向ける。
「なんでお前がいるって」
「……わりい。間違えた。似てるけどやっぱり違う。でも、一つこっちも聞きたいんだ。なんでそのデバイスを持っている?」
その子が見るのは私のデバイス『久遠』。
「これは母さんの」
「! 危ない!」
瞬間、フェイトちゃんに横から突き飛ばされ、そのフェイトちゃんは上空からの一撃に眼下のビルに叩きつけられる。
「フェイトちゃん!」
「フェイト! うわ!?」
続いてアルフさんも吹き飛ばされる。
とっさにデバイスを構えながら新たな敵に切っ先を向けます。
その新たな相手、片手に剣を持つ紫の髪をポニーテールに纏めた長身の女性と銀の髪の褐色の肌の男。
彼女は女の子を庇うように立ちながら私に目を向けて、
「ソフィア殿?」
驚いたように目を見開く。
「人違い。私は時音だよ」
問い返したい衝動を抑えながら、私はそれだけを返しました。
「シグナムさん」
フェイトちゃんをぶっ飛ばした相手、シグナムさん。シグナムさんは時音さんに視線を向けてからヴィータちゃんに回収した帽子を渡しました。
遅れてザフィーラさんが駆けつけます。
そして再び三人の前に立ちふさがるフェイトちゃん。ここからは乱戦です。
シグナムさんをフェイトちゃんが抑え、ヴィータちゃんをユーノくんと時音さん、ザフィーラさんがアルフさんと分かれての戦いが始まりました。
くっ、前よりダメージはないから、行けるかな?
「レイジングハート大丈夫?」
『大丈夫です』
レイジングハートもダメージは少ない。よし!
「スターライトブレード、行けるよね」
『任せてください』
私は構えを取ります。
スターライトブレード、その名の通りスターライトブレイカーのブレードバージョン。
スターライトブレイカーの威力を余さずブレードとすることで破壊力を上げ、結界も断ち切る力があります。
『ユーノくん! 私が結界を壊すから、その間に転送を!』
『無茶だよなのはちゃん! 怪我してるんでしょ!?』
すかさず時音さんの叫びが割って入りました。
『大丈夫です! スターライトブレードで三枚に卸してみせます!』
そう宣言して魔力を集めます。
収束に時間がかかるけど、集まった魔力が刀身に巻きついてディバインブレードより長大で力強い刃が生まれました。よし!
「行くよ、スターライト!」
剣を振り上げて、直感に従い横に逃げました。
さっきまでいた場所に、にょきっと現れるシャマルさんの手。ふ、来るとわかってたら避けるくらいはできるの。
シャマルさんの手が引っ込みます。もう少し狙った場所に出るよう修行しなさいなの!
さあ、今度こそ……
「スターライト……ブレード!」
『スターライトブレード』
剣を振り下ろします。真っ赤な魔力刃があっさりと結界を両断します。よし!
私はガッツポーズを決めました。
「時音さん!」
そこにフェイトちゃんの声が響きました。見れば落ちていく時音さん。
な、なんで……?
時音さんはなんとか空中でアルフさんに受け止められて事なきを得ました。
「時音さん、どうしたの?」
時音さんはあははと笑います。
「わかんない……あの紅い子の相手をしてたらいきなり胸から腕が生えて……」
その言葉に理解しました。シャマルさんは私に避けられてすぐに標的を時音さんに変えたんです。
まだ空中戦に慣れてない時音さんにはシャマルさんの魔手から逃げられずに……
「大丈夫ですか?」
遠慮がちにユーノくんが問い掛ける。
「うん、なんか力が入らないけどね、大丈夫だよ」
時音さんがそう言って起きあがろうとしますが、崩れかけたので慌てて支えます。
「ごめんね」
時音さんが力ない笑みで謝りますがこっちもです。せめて注意程度はするべきだったの。
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少し遅くなりましたが、A,s編開始です。
とりあえず、A,s編では時音活躍な予定。
頑張りますので、読んでくれた方はこれからも応援していただければ嬉しいです。
8/29 22:16に間違えてsageを間違えて押しました。題以外変わっていません。もうしわけございません。