東電“甘すぎる”データ分析のツケ…原発すべて耐震見直しか

2011.05.26

 福島第1原発3号機で緊急時に原子炉を冷却するシステムの配管が「津波」ではなく、「地震」で破損した可能性があることが東京電力の解析結果で明らかになった。炉心冷却系の配管は、最も高レベルの耐震性が求められる重要機器のひとつだが、実際に地震で重要配管が傷んだとすれば、全国にある原発の耐震設計の見直しに影響を与えかねない重大事態だ。

 経済産業省原子力安全・保安院によると、3月11日の地震による同原発2、3、5号機の揺れは、事前に想定した最大の揺れの強さ(基準地震動)を最大3割超えた。

 東電は、解析結果について「計測機器の故障も考えられる」としているが、同原発1号機では、地震発生当夜に原子炉建屋内で極めて高い放射線が計測され、揺れによる機器や配管の破損が疑われた。

 こうした経緯から、大阪大の宮崎慶次名誉教授(原子力工学)は「(配管の)損傷は地震によるものと推測できる。老朽化していた可能性もあるが、他原発の安全確保のためにも、本当に地震による損傷なのかを徹底的に検証する必要がある」と話す。

 政府は「今回の事故の最大原因は津波」との前提に立っているが、前提が崩れれば、全原発での地震対策や、国の原発耐震指針の見直しも避けられない。中部電力浜岡原発(静岡県)に続いて運転中止となるケースが出ることも考えられる。

 国の原発耐震指針では、基準となる地震の揺れを原発ごとに想定、重要機器が損傷しないよう求め、東日本大震災でも福島第1原発に関して経産省や東電は「安全性に十分な余裕があるので、想定を上回っても問題ない」と強調してきた。

 だが、京都大原子炉実験所の小出裕章助教(原子核工学)は「東電は計器の信頼性の問題を挙げるが、これまでも都合の悪いデータはそういった説明をしており、信用できない。実際に揺れによって損傷していれば、日本中の原発が当然問題となる。耐震指針の見直しが必要で、影響は計り知れない」としている。

 

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