東京電力は26日、福島第1原子力発電所1号機への海水注入が東日本大震災翌日の3月12日に一時中断したとされた問題で、実際には注入は中断していなかったと発表した。東電本店は停止を指示していたが、同原発の吉田昌郎所長の判断で海水注入を継続したという。
東電原子力・立地対策本部の担当者が24~25日に吉田所長に聞き取り調査して明らかになった。吉田所長は事故の進展を防ぐためには原子炉の注水継続が何より重要と考え、所長判断で海水注入を続けたと説明したという。
東電によると、原子炉に入れる真水が途絶えたため、3月12日午後7時4分に海水注入を開始。ただ首相官邸にいた東電の武黒一郎フェローが「官邸では海水注入について首相の了解が得られていない」と本店と同原発へ報告し、午後7時25分に本店の幹部と吉田所長らがテレビ会議で注水中断を決めた。ただ実際には中断せず、注水を続けていた。
これまでの政府と東電の説明では、班目春樹・原子力安全委員長が官邸で「再臨界の可能性はゼロではない」と助言したため、3月12日午後7時25分に海水注入を停止。午後8時20分に再開し、55分間にわたり海水の注入が止まったとしていた。ただ、東電は吉田所長には直接確認していなかった。
武藤栄副社長は26日の記者会見で「(吉田所長の)原子炉を冷やすという判断は技術的には妥当だったが、報告が遅れたのは残念だった」と述べた。吉田所長の処分も「検討している」と表明した。
東電は1号機の炉心溶融の状況に変更はなく、今後の工程にも影響しないとしている。ただ注水継続が原子炉冷却に与えた影響については再度検証する。
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