2011年1月24日12時45分
水銀規制条約の政府間交渉委員会の開会式では水俣病の被害を伝える映像が映し出された=24日、千葉市の幕張メッセ、平井写す
水銀規制のための新国際条約を議論する政府間交渉委員会が24日、千葉市の幕張メッセで始まった。開会式で近藤昭一環境副大臣は、水銀が原因物質となった水俣病問題にふれて「水俣病の教訓と日本の水銀対策を世界で広く共有したい」と述べ、新条約を「水俣条約」と名づけるよう呼びかけた。
同日午前の全体会合では、条約調印のために2013年に行う会議を日本で開くと正式に決めた。日本政府は熊本県水俣市での調印式開催を検討する。
新条約では、水銀の工業利用の抑制や輸出入の規制が検討されている。近藤副大臣は「貿易を制限し、可能な場合は廃絶する枠組みとするよう検討を進めるべきだ」と述べ、NGOから批判を受けている水銀の輸出について規制に前向きな姿勢を示した。
条約は調印までに5回の交渉委員会が開かれる予定で、2回目の今回は約130カ国の担当者が会議に参加する。会期は28日まで。
水銀は多量に体に取り込むと神経症状を引き起こす有害物質。化学工業や蛍光灯などの製造に使われ、石炭などを燃やすと大気に放出される。
途上国では、金鉱山で水銀を手作業で扱う違法労働による健康被害が社会問題になっている。また、途上国が工業化して工場や火力発電所からの排出が増え、大気の水銀濃度が上がることで、微量でも長くさらされ続けることによる健康被害が出る可能性も指摘されている。
今回の交渉委員会では大気への排出規制や金鉱山での水銀利用への対策が集中的に話し合われる見込みだ。
開会式では、水俣病の語り部で認定患者の金子スミ子さん(79)が自らの体験を語った。(平井良和)