班目氏の「可能性はゼロではない」―米当局者は「極めて非現実的」ときっぱり


内閣府原子力安全委員会の班目(まだらめ)春樹委員長の「可能性はゼロではない」発言が物議を醸している。

AP

班目委員長は24日の衆院東日本大震災復興特別委員会で、福島第1原発1号機への海水注入に関連して、震災翌日の3月12日の菅直人首相らとの協議で「再臨界の可能性はゼロではない」と発言したことについて、「事実上ゼロという意味だ」と説明した。

政府と東電の総合対策室がまとめた発表文は当初、班目氏が首相らに「再臨界の可能性がある」と発言したとしていたが、班目氏が首相官邸に赴き修正を求めたため、「可能性はゼロではない」と訂正された。日経新聞によると、班目氏は首相らに問われ、「だいたいそういう時、口癖として『可能性はゼロではない』と言うんです」と言ったとされる。

しかし、福山哲郎官房副長官は23日の記者会見で、震災直後の状況で関係者は班目氏の発言を「専門家の意見として大変重く受け止めた」と話す。

読売新聞によると、国民新党の亀井代表も23日夜、菅首相に電話し、班目委員長の更迭を求めた。班目氏が「可能性はゼロではない」との見解を示したことについて、「でたらめ委員長が修羅場であんなことを言っている。日本の危機を迎えたその場において、原子力安全委員会の責任者が、そういうことしか首相にアドバイスできない」と厳しく批判したという。

原発事故関連で「可能性・がい然性」について米国の原子力規制当局者はどう言っているか、調べてみた。本紙の「米ペンシルベニア州原発、全電源失えば炉心損壊の可能性=NRC分析」に米原子力規制委員会(NRC)当局者の議会証言があった。

それによると、NRCの原子炉・危機対応プログラム担当局のバージリオ局次長は4月6日、福島第1原発事故に関する下院エネルギー・商業委員会の公聴会で証言。ペンシルベニア州の原発ですべての電源が失われれば、炉心損壊に近づくことが想定されるが、そのような事態は”very unrealistic event” (極めて非現実的)と指摘した。その上で”We ignore all probabilities” of the events actually taking place…(そういった事態が起きるがい然性(確率)をすべて否定する)とさらに踏み込んで発言している。

班目氏にとって「可能性はゼロではない」は学者の間では「ほぼゼロ」ということになるらしいが、震災直後の状況では曖昧で不用意な発言と言われても仕方がないだろう。何でもかんでも米国を崇める必要はないが、この米原子力当局幹部のコメントは明瞭であるため、米国側に軍配を上げざるを得ない。

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コメント (5 / 44)

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    • 原子力安全委員長は、事故においては具体的行動を進言しなければなりません。「注水において再臨界の可能性があるので、その際にはボロンを合わせて注水してください。」と言えば良かった。
      学者的に論評し、事後に言葉を弁明する。事故そのものの成り行きと今後の行動に関する表明はない。
      リーダーの意識がありません。残念ながら、不適切な人が担当していますね。

    • この記事に関してはじめてコメントを読んだけれど、WSJ日本版の翻訳の悪さに言及されている方がたくさんいることに、安心しました。

      この記事に限らず、本サイトは、記事の本来の意味を大きく損ねる、あるいは曲解を与える翻訳があまりにも多すぎます。なまじ普通の日本語として受け止められるところがたちが悪いです。

      当サイトご担当のマネージャー氏が、より質の高い翻訳者を採用されることを願います。

    • 意見を求められたて率直に自分の言葉でしゃべったところ,話した相手が
      『可能性はゼロではない』=『実質的にはゼロ』ってことを知らない人とは
      知らなかったうえに,正確に理解したとカンチガイさせたからクビってわけか.
      悪い前例を作ったな.> 菅総理
      これで,誰も手短に助言できなくなったぞ.
      菅総理はどういう理解をしているのか聞かれるのは嫌なはずだし.

      ここまでコミュニケーション能力が欠如した人間がトップにいるとは...
      それでも菅総理が来年も総理大臣でいられる可能性はゼロではないだろう?

    • 学者として可能性がゼロでないというのは全く正しい。しかしこの時は学会での発言ではない。重大事故の修羅場である。安全委員長として、政府に適切な助言をするのが義務。重要なのは水を注入すべきかどうかであって臨界があるかどうかではない。学会での発言をして素人の関係者を惑わしたとしたら責任重大。デタラメ委員長と言われても仕方ない。しかしさらに問題なのが、勉強不足のジャーナリストたち。不正確な報道で余計混乱を起こしている。炉心損壊だろうと再臨界であろうと当時電源が全くない状態では確認しようがなかったはず。可能性を言っていないで、事故を最小限に食い止めるために何をすべきだったかを議論してもらいたい。

    • 理系・自然科学の世界で「0」ということ「0でない」ということは天と地ほど違うはずです。ただ科学は実験とデーター・経験の学問ですから、「0」ですとは誰もいえないと思います。アメリカの研究者の発言はこの言い回しが、ネイティブはどのようにな時に使い、どんな意味を含むのかがわかりません。0といっているのではないような気がします。日本語の「前向きに検討する」は日本では否定的、欧米では肯定的なのと同じに。いづれにしては責任は政府にあります。











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