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東日本大震災:仮設住宅、資材不足 早期整備に懸念も

仮設住宅の建設工場を視察し、資材の供給体制について説明を受ける池口副国交相(左)=茨城県つくばみらい市で2011年3月29日、寺田剛撮影
仮設住宅の建設工場を視察し、資材の供給体制について説明を受ける池口副国交相(左)=茨城県つくばみらい市で2011年3月29日、寺田剛撮影

 東日本大震災の被災地で建設が急務となっている仮設住宅が、資材不足で整備が遅れる懸念が強まっている。合板(ベニヤ板)や断熱材など、製造工場が被災し、供給が不安視される建材があるためだ。「2カ月以内に3万戸」の供給を目指していた国土交通省は5日、被災地の要請を受けてさらに、8月までに3万戸の追加供給の準備を進めるよう住宅業界団体に要請するが、資材不足が深刻化すれば、被災者の早期入居が難しくなる可能性もある。【寺田剛、高橋昌紀】

 ◇合板メーカー6拠点被災 東北、生産5割

 「現場が休日出勤しても、資材がなければ作れない」。住宅メーカー大手・パナホームの、つくば工場(茨城県つくばみらい市)の中川恵之工場長は先月29日、視察に訪れた池口修次副国交相にそう訴えた。同社では4日から仮設住宅専用ラインを稼働し、本社工場(滋賀県東近江市)と合わせて、4月中に1000戸分を作る予定だが、確保のめどがついた合板は350戸分だけ。池口副国交相は視察後「事態が深刻であることが分かった」と話した。

 住宅建築に不可欠な合板だが、農林水産省によると09年の国内生産量228万7000立方メートルのうち、東北地方が110万4000立方メートルと、ほぼ半分を占めていた。

 林野庁によると、合板メーカーでは最大手のセイホク(本社・東京都文京区)の宮城県石巻市内の工場や、大船渡プライウッド(本社・岩手県大船渡市)の同市内の工場など6拠点が被災して操業を停止したが、同6拠点の供給量は国内全体の約3割を占めていた。大手合板メーカー担当者は「工場の精密機器がすべて津波にやられ、再開のめどは全くたたない」と嘆く。

 林野庁によると、6万棟の仮設住宅に必要な合板は約2万4000立方メートル。一方、合板メーカーの業界団体である日本合板工業組合連合会によると、被災地以外のメーカーの最大生産能力は、単純に足すと月16万立方メートルあるという。

 しかし、被災者が早期に必要とする仮設住宅建築に必要な材質やサイズなどを満たす製品を、短期間に十分そろえるのは難しい。大和ハウスでは、被災した東北工場(宮城県大崎市)の生産ラインが回復しつつあり、先月19日から仮設住宅の建設に取りかかったが、「まだストックで対応している。合板などを全国で探している状態」という。

 被災した建築資材メーカーは合板だけではない。旭化成では系列建材会社の工場(茨城県境町)が、主力の断熱材の生産をストップしている。同社は在庫などで対応しているが、完全復旧は4月下旬の見込みという。帝国データバンクによると、岩手、宮城、福島の3県には計639社の中小建材メーカーがあるが、「詳しい被害状況は、業界として把握し切れていない」(大手建材メーカー幹部)のが現状だ。

 ◇全国に協力要請

 国交省によると、着工が決まった仮設住宅の戸数は1日現在、岩手・宮城・福島・千葉の4県で5160戸。各県から必要との要請を受けた約4万2000戸の1割強で、戸数は今後も増える見通し。大畠章宏国交相は1日、建材確保に支障が出ないように、緊急輸入を含めた対策を指示した。

 ただし、住宅の内装資材には、健康に悪影響が出る可能性がある化学物質を排除した部材を使うなどの制限もあり、「輸入では対応できない部分も大きい」(メーカー幹部)という。

 同省では「過剰在庫の解消などで供給を増やせる品目もある」として、全国の建材メーカーなどに品不足解消への協力を呼びかけている。

毎日新聞 2011年4月3日 20時56分(最終更新 4月4日 9時00分)

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