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[15623] 七ツ夜と魔法(MELTY BLOOD×魔法少女リリカルなのは)
Name: モンテスQ◆b121c041 ID:60401914
Date: 2010/01/17 17:26
[七ツ夜と魔法(MELTY BLOOD×魔法少女リリカルなのは)]


題材:MELTY BLOOD______魔法少女リリカルなのは(とらハも含む)

時系列:MELTY BLOOD Actress Again 七夜√ED+複数キャラ要素



~はじめに~


 この作品は―――作品と呼べないようなものは、一応MBの七夜志貴を主人公としたリリカルなのはの世界における物語にしてあります。

はじめての投稿作品なので、というよりも、脳無し・七夜厨・リリカル馬鹿の作者なので、割愛ください。



~OP~

七夜志貴、遠野志貴の使われない行動原理にして、タタリの夜の悪夢。

そんな彼に劇の終幕、カーテンコール。

死の瞬間が迫っていた。

膝をつき、空を見上げる少年が一人。ボロボロの学ラン。

悪夢の時間の終わりを告げる朝日が今にもみえようとしている草原の中。




「未練は捨てた…義理も果たした……七夜の誇りも―――これで清算できた……」




紅赤朱、軋間紅摩には既にとどめを刺して、一面は血の海と化していた。

それは鬼と殺人鬼から溢れた血液であった。


服のあちらこちらには、破れた所から折れた骨が付き出ている。

多量の失血のせいで蒼く輝いていた浄眼もかすれ虚ろな状態である。






「ああ、本当に目的が無くなっちまった……志貴の後釜も考えたが、どうも俺には相に合いそうにないしな。まあ、翡翠の顔も最後に見れたし、閻魔の顔でも拝みに行くかな。」


そう思っていると、先ほどまでの夏の草原に白銀の世界を割り込ませようとする、とてもよわよわしい存在が近づいてきた。


「―――せない、な――やは、絶対に死なせない!」


「?ああ。なんだ、まだ息があったのか…ご主人様。」


 お互い生き汚いモノだな。と、言ってみるが、そろそろ声が出なくなってきた。

肺には穴が開き呼吸もできていない。

レンの純白のコートは血に染まり体中が真赤に染まっている。

紅赤朱と対峙する前に見つかり、仕方なしに屠ってしまった…はずだったが。

「いやはや、どうにも丸くなっちまったみたいだ。まさか止めを刺し切れていなっかったとは。それでこのざまだ。女子供に優しくしすぎたか。」

「お願い―――死なないでっ――――死なないで!っ七夜っ!!」

まともに動くこともできない体を無理矢理引きずり、懇願するように、

朝日が覗きかけ既に体が消えかけている七夜に、世界に叫びかける。

「お願い―――お、お願いします!!誰か、誰か七夜を助けて!!助けてよ!!」





それは少女の悲痛な願いの叫びだった。




もはや彼を助ける手段など無く、自身も数分で死ぬ運命にありながら。




それでも少女は叫び続けた。




「五月蠅いな、……猫なら叫ぶにしろ、もっと綺麗に鳴け。」

「誰!?」

「私か?そこで倒れている小僧に、私の『手足』を痛めつけられた魔術師だ。まあ、用件は依頼の品を届けに来たんだが…クライエントがまだ来ていないってところだ。」

ひとりの女性だった。茶色の髪を後ろでまとめ、眉間にしわを寄せながら煙草を吸っている。



「それで?いいかげん待ちきれんのだが?キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグ」

「いやはや、気付いておるのなら隠れとる必要も無いか、蒼崎の長女。」

「!!ゼルレッチって!?」

キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグ

第二魔法の使い手にして死徒二十七祖の第四位。

アルクエイド・ブリュンスタッドの後見人の宝石翁がなんでこんなところに?



「いいから早く妹の居場所を言え。その約束で私をここまで呼びつけたのだからな。」

「まぁ待て。先にこちらの要件を済ませてからだ」

「??」

混乱するレンを後目に宝石翁が最早風前の灯もない七夜に向かい口を開く。

「小僧、白き姫の連れている小僧がえらく心配しておったぞ。タタリとして現れたロアを屠り、オシリスの砂を倒し…話を聞けば、お前の行動で何人もの人が救われたそうじゃ。」

「白き姫が珍しくワシを呼びつけるから何かと思えば、その小僧が『七夜は義妹の都ちゃんを助け、シオンの話だとオシリスって奴を独りで倒し、街を救いました。その上、軋間っていう鬼まで、傷ついた体で倒そうとしています。お願いです!あいつを救ってください!』と詰め寄ってな。ブルーの教え子の片割れと聞いていたので暇つぶしに来たんじゃ。」

「爺、長話はいいが、そろそろ小僧が死ぬぞ?」

「お?それはいかん。またと無い実験材り―――モルモットが。」

「………(言い直してさらに表現が悪くなった気が…)」

「それで私の人形にタタリの魂を移し替えるというのだな?」

「そういうことじゃ。」


それを聞いてレンは七夜を見る(ああ、七夜が助かる!七夜が死なないで済む!)

しかし、七夜の魂を人形に移し替え無事に術を終わらせた蒼崎橙子は
「それで?後はこいつを異世界に飛ばせばいいという訳だな?」

「え゛?」七夜を―――何て言った?

「そうじゃな、肉体を確立してしまった以上、同一人物が世界に存在することはできん。世界がどちらかの小僧を消す前に。この小僧を異世界へ送るとしよう。」

「!?」「まって、そんなのい――――」





遅かった。レンが言葉を絞り終える前に、七夜は宝石翁が作り出す光の渦へと消えてしまった。

「っ、七夜は!?七夜は一体どこに飛ばされたの!?」

「案ずるな。奴にはもう一度新しい、まっとうな人生を送らせたいとブルーたっての頼みでもあったからの。餞別に想定できる限りの必要物をトランクに詰め一緒に送った。なに、うまくやるじゃろう。」


勝手なこことばかり言ってくれる、もしもこの体が自由に動けば後先など気にせず殺しにかかっている所だけど

「ほれ、貴様も早くワシと契約せんと消えてしまうぞ。様子を見に行くのはその傷を治してからだ。」


「え?」










~あとがき~

………色々とサーセン


続きたい

H.22 1/17
誤字を修正



[15623] 七ツ夜と魔法 第1話
Name: モンテスQ◆b121c041 ID:d2a5c85d
Date: 2010/01/23 10:03
[七ツ夜と魔法(MELTY BLOOD×魔法少女リリカルなのは)]



――――物語には時として"イレギュラーなキャスト"が含まれるものだ。

―――――それは導き出すことのできない一つの可能性(未来)。

――――さあ、虚言の夜を始めよう。



~第1話「フェイト/目撃 談」~



 七夜志貴は困惑していた。

この身はタタリで悪夢、一夜の幻。

それが何故、目が覚めたら"さんさんと照らす日の下"にいるのか?



「何だ?柄にもなく天国にでも迷い込んだか?」

もしそうなら閻魔も職務怠慢だ。遠野志貴とでも勘違いしたか…?


―――――


改めて周囲を見まわす。木々が生い茂ってはいるが、人の手が入っているのだろう荒れた感じはなく、地面も歩きやすい。


(…ここは…どこかの私有地林か?確か紅赤朱と殺り合ったのは草原で、その後にレンの銀世界がきて…)


思い出せない、というよりそこから先は意識がない。それだけの重症で死んだはずだ。

そのはずなのに、驚くことに傷が無い。それどころか着ている学制服も新品同様だ。


(身体にこれといった異常は無い…いや、無いのが異常か…。さて、残るは)


足元を見ると、どこか懐かしい感じのする鞄がそこにはあった。遠野志貴を助けた魔法使いと同じ鞄。

状況を考えた結果、先生が何かやったとみて間違いなさそうだ。

ヒント、というより答えを早々に見つけても面白くないから目を逸らしていたが。


―――――――


鞄の中には学生服、ワイシャツ、その他肌着、小物……そして一通の手紙があった。


『はぁい、志貴。色々と解らないことだろうけど、そこは異世界よ。ちょっと知り合いの魔法使い爺に送ってもらったのよ。あー、体のほうは姉貴の人形をタダで使わしてもらい、………そんな訳だから、もう一遍出直していい男の子になってきなさい。』


「……」

先生、説明がかったるくなったのは解るが、此処が異世界ということしか解らなかったぞ?

しかし、今の体が人形?体に違和感は無い。後は……(浄眼も問題なさそうだ。意識で切り替えもできる。)



そこで浄眼を発動した瞬間――――――――



―――――――――――空間が変色した。

「―――っ!?」(何だ!?視覚異常じゃない―――結界か?)


近くに魔術師でもいるのか。浄眼を発動しなければこの空間の変異にも気がつくことができなかったことから、自分を対象としていないと推測できる。


辺りを注意深く探っていると、100mほど先で何かが輝くのが見えた。

虎穴に入らずんば虎子を得ず。ここは多少の危険を考慮したうえでも、この世界の情報を集める必要がある。



そこで初めて意識を戦闘状態に切り替え、制服のポケットに手を入れた瞬間―――――違和感が

―――有るはずの物が無い

何が無い?―――――

―――――!紅赤朱と殺し合った後、確かに持っていたはずだ!

――――ナイフが…無い―――――

「…なんて無様」

何故、七ツ夜が無いのかは解らないが、無いなら無いで構わない。深入りしなければ体術だけでも最悪逃げ切れるだろう。

そう思い体を弾ませ、木々を足場とバネにして最短ルートを疾走する。





そしてたどり着いた先で見たものは―――――



―――――首輪に鈴を付けた、黒でも白でも不細工でも無く…巨大なねこ


「………」

(訳が解らない…結界はこのねこの仕業か?)


ねこと正面を向き合う形で表れてしまったが、どう対処したものか。

接近したことで不思議な力を感じ取れるが、残念なことに対魔衝動は湧きあがらないところをみて、魔獣などの類ではなさそうだ。

そして浄眼がはっきりと映し出す。ねこの中に得体の知れない欠片が視え、碧く輝き魔力を発しているようだ。


―――と、その瞬間、本能的に体が回避行動をとる。

ねこが俺に興味を持ったらしく、じゃれるように近づいてきた。


「まいったね、どうも。俺は玩具じゃないんだが―――っ!?今度は何だ!!?」


今度は一層強く本能が警鐘を鳴らしてきた。遠くからだ。

急いでねこから距離を置くようにバックステップでその場を離れると、空から黄色い光の弾が飛んできて、ねこに直撃した。



「―――やれやれ…この場合、無知は罪だと改めて思うな。」

金髪の、ひとりの少女が遠くに見えた。年齢から察するに有間都古より年下であろう。小学3年生くらいか?

年齢はともかく妙に気になるのは………服装だ。形容しがたいが、敢て表現しろというのであれば遠野志貴の情報を頼りに導いて―――

――――だめだあいつでも表現できないだろう、使えん。

どうにせよ、自分かねこかは解らないが、どちらかを標的に攻撃を加えたことに変わりはない。

なら構わない。殺るって言うのなら相手になってやろう。


知るがいい―――



――――その命、あまりに無謀






――――――――――――





 フェイト・テスタロッサは月村家の敷地ぎりぎりの場所にある電柱の上にいた。

「ジュエルシード、発見。対象生物の付近に1名と1匹…」

この世界に来て初めてのジュエルシード発見。このことはフェイトにとって、表情にこそ出さないが胸が躍る気分だった。

これでやっと母のためになれる。このロストロギアを集めきれば、きっと母は自分のことをまた優しく抱きしめてくれる、母が微笑んでくれる。

そんな思いでようやく見つけたのだが、そこには他の魔導士が敷いたであろう結界が展開されていた。

それは魔力を感知できない人間にとっては気付かないもの。


――――――邪魔をされるはけにはいかない。


そう思い、牽制のつもりでジュエルシードの対象であるねこに攻撃を放った。しかし、フェイトは攻撃を放った後に気が付いた。

ねこの死角に、魔力の気配が感じ取れなかったこともあるが、1人の男性がいることに……

「っえ!?」

驚きを隠すことはできない。この手の結界は通常、魔力を持った者ないしはその存在を認知するか、対象者として設定されなければ入ることができない。

空から見るに彼は全くの一般人だ。ということは後者なのだろうか?

バリアジャケットも来ていないのがその証左だ。

どちらにせよ魔法を使うことができないとすれば、さしたる障害にはならないはず。


そう思いフェイトは足場の電柱を蹴り、月村の敷地に向かい飛んだ。





―――――――――――





 高町なのはは動揺していた。

すずかやアリサに嘘を吐いたように出てきてしまい。目の前には巨大なねこ。

ユーノが結界を張り、いざジュエルシードの封印のために前に出ようと思ったら、ねこの前には見知らぬ男性。見た目は学ランを着ていることから姉の美由希と

同じくらいの年齢だろう。

その姿にどうしていいか判らず動揺していると、今度は空からの謎の攻撃。

「!!今の、魔法!?」

「誰だ!?」

ユーノが叫ぶとそこには1人の少女がデバイスを持って樹の枝に降り立ってきた。

金髪がとても映える黒いバリアジャケット。とても深い、どこか生気の欠けた、心を殺した瞳。そして感じるのはとても大きな魔力。

突然現れた黒い少女に驚くのもつかの間。少女がデバイスを構え魔法陣が展開された瞬間。




「――――蹴り穿つ!」


「「!!?」」



何かが黒い少女を蹴り飛ばした。蹴り飛ばした何かは目にも留まらない速さで木々へ飛び移って行く。

「あぶないっ!」


なのはは、とっさに木から落ちる黒い少女が地面にぶつかるのを防ぐため、足に魔力を込め飛び出す。


地面ぎりぎりのところで何とか抱きかかえると、その場で黒い少女の安否を確認する。


「だ、大丈夫ですか?」

返事は無いが、少し唸るように身を捩ると瞑っていた目を開く。


「!!」

「気が付いた!大丈夫で―――」
バシィッ!

「きゃっ!?」

黒い少女は目を開けた瞬間、一瞬だけ動揺しなのはの顔を確認するや否や、すぐに状態を起こすためになのはを突き飛ばし、再びねこに攻撃を加えるため

飛び出していく。

「待って!」


しかし黒い少女は止まらない。無理やりにでもねこに攻撃を加えていく。それを黙って見過ごすことはできないため、なのはは黒い少女とぶつかり合う。




それは、なのはにとって初めての戦闘。人と争うことを嫌い、それでもねこを守ろうと必死になる姿に、黒い少女は。






「ごめんね……」




と、小さくつぶやくと、強力な魔力の一撃を浴びせなのはを気絶させた。










―――――――――――





「いやはや、如何やら狙いはあのねこだったか。それなら横からの誘いは無粋って奴か…」

(まあ、相手にもせず躍りを断るのは、少々淑女としての器量が足りないとも思えるが。)


閃走・六兎を受けて、なお自分を無視するとは、よほどあの欠片が大事と見える。

「この世界は飛行魔術が発達しているのか?」

あの走るような飛行速度は驚嘆せざるをえない。ものの1分ほどで姿が見えなくなるとは驚きだ。

しかし、名前はまだ知らないが、金髪の少女の瞳は見ていて酷く不快になるものだった。




面白みがない、人形のように心が視えない、押し殺している。



その瞳が―――――――――どこか翡翠に似ているのが気に入らない。




翡翠…まだ幼く、明るく、外の世界を――――翡翠の眩しい位の世界を魅せてくれた思い出がぼんやりと浮かぶ。

―――今はいい、関係無い。



今、自分がいる木の下には気絶した、金髪の少女と同じくらいの年齢の少女とイタチ?と思わしき小動物がいる。

似たような光景を最近見た気が…

「はぁ、これは―――あれか?デジャヴっていうのか?」



どうやら虎穴ではなく、墓穴だったらしい。









~あとがき~

全世界の七夜、及びなのフェイ ファンの方々にお詫び申し上げます。

ナイフなしの七夜って何だよ!?(灯油のないストーブかよ)(タイトル変えろ)
セリフ少なっ!
戦闘シーンが皆無だと!?
なのフェイの扱いが酷い!


一応ストーリーの流れで暫く七ツ夜の登場を遅らせる予定です。(タイトルも関係させる予定です)
次回は月村家で一波乱おこす予定です。

今回は七夜視点プラス客観的な文章で作りました。次は型式変えるかも…



続きたい




[15623] 七ツ夜と魔法 第2話
Name: モンテスQ◆b121c041 ID:faebc3ed
Date: 2010/05/26 23:58
[七ツ夜と魔法(MELTY BLOOD×魔法少女リリカルなのは)]



蛮脳ハ改革シ衆生コレニ賛同スルコト一千年。学ビ食シ生カシ

殺シ称エル事サラニ一千。麗シキカナ、毒素ツイニ四肢ヲ浸シ

汝ラヲ畜生へ進化進化進化セシメン……!





~第2話「凶器の無い狂気が狂喜/侠気が兇器に驚喜」(訳:ナイフなしの七夜が恭也を見て大喜び/恭也は強者に驚く)~




「おやおや、こんなところにわいらしい眠り姫が。春?の日差しとはいえ風邪をひいてしまうぞ?」


(!?誰だ!!)

しまった!今は結界を解いてしまっている。

僕の隣には、なのはが気絶している。

見上げるとそこには紺色の、見慣れない制服を着た青年が立っていた。

年齢は見たところ、なのはのお姉さんの美由希さんと同じくらいだろうか。

黒い髪、鋭い目つき、釣り上った口元、そして何より恐ろしいまでの碧い眼。

その全てが怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い――――――――――――!!!!

「ああ、お前が何なのかは今は訊かないでおく。今はその子を運ばないといけないんじゃないのか?」

こいつ!フェレット状態の僕の正体に気が付いてる!?

いや、さっきの女の子がジュエルシードを封印する前、黒い影が彼女を突き飛ばしていた。アレの正体がこの人か!ということは僕が言葉を発していたのも見ていたということか。

何で彼女を攻撃したかは解らないけど、確かに今は早くなのはを運ばないと、アリサさんやすずかさんが心配する。

―――でも

「あなたが、危険な事をしないという保証がどこにもない!この場から離れてくれないと、なのはを運ぶこともできない!」

「へぇ。なのはっていうのか?なに、手荒なことはしないさ。ちょっと道を訊きたくてね。人里離れた生活には慣れているんだが、今自分がいるのはどこなのかってことくらい調べておかなくちゃ、どうにも不安でね。」

…?どういうことだろうか?迷子?いや違うだろう。その年齢でそれは無いと思う。

第一此処はすずかさんの屋敷の庭だ。関係者でも無いはず。

なら、あり得なさそうな話だけど、次元漂流者だろうか?青年の体からは魔力は殆ど感じられない。

安心できる雰囲気の人なら、なのはを運んでくれるように頼みたいところだけどそうもいかない。

なにせこの青年は不審すぎる。

「いいかげんにしてください!さっきの結界は普通じゃ感知できないものです。その中に入り込んだあなたを危険じゃ無いなんて言えない。」

「ああ、この身は確かに危険だ。いや、だったものだ。どうだろうか、おれは話のできる人に会いたい。お前はその子を早く運ばなくてはならない。なら、俺がその子を運ぶ代わりに人がいるところまで案内してくれないか?怪しいと思うなら、そうだな…」



青年がごそごそとズボンのポケットに手を突っ込むと、中をむき出しにして制服の上着も脱ぎだした。


「此処に上着を置いていく。ポケットの中は見たとおり何も入って無い。草むらの向こうにはには鞄も置きっぱなしだ。信用ならないなら先ほど結界の中で使った術でも使えばいい。」


青年はさらに口元をニヤつかせながらそう提案する。





僕は―――――





「……解った。案内するから、なのはを運んでくれ。だけど変な事をするようなら――――ただじゃおかない。」







「ああ、承知したよ。――――七夜、七夜志貴だ。」



「―――――ユーノ・スクライアだ」







――――――――――――――――







 気が付いたら私はすずかちゃんの部屋で寝かされていました。

「え…っと…」

何が何だかわかりません。たしかジュエルシードを封印しようとして、

それで金髪の黒い女の子に負けて――――――

「気絶しちゃったんだ……」

…でも何でここで寝ているんだろう?

ユーノ君が誰か呼んできてくれたのかな?


部屋を見まわしてみても誰もいないし、一体どうしたんだろう?

とりあえずベッドから降りて廊下に出ると――――――




すずかちゃんのお家の廊下がメチャクチャな状態になっていた。




壁紙はそこら中が破れ、電灯は砕け、床も壁も天井も――――――全てに刀傷が付いている。

刀傷から、今日忍さんに会いにきているお兄ちゃんが心配になる。

だって!だってこの特徴的な刀傷には見おぼえがある

何で?何で?何で?

この傷と同じものはよく見ている。見慣れている。


私の家にある道場がこの傷でいっぱいだもん!


何があったの!?お兄ちゃん!!?



   バシィッ!!


!!?


小振り向くと廊下の端で太刀を振るうお兄ちゃんと、その腕を右足の裏で蹴り抜くように受け止めるワイシャツ姿の男の人がいた。



「蹴り砕く!!」
「!!――――っウ」

「お兄ちゃん!!」

お兄ちゃんの足が男の人の蹴りに耐えきれず、足が床から離れ宙へ浮く。

同時に男の人の姿が視界から消え―――――――

「!?え?」


天井に着地している。




「くそっ!なんて動きだ!!」

「おいおい、いまさらこの程度で驚かないでくれよ。こっちは穏便な話し合いをしたいんだ、が!!」

「ふざけるな!!!何故なのはに近づいた?この屋敷の監視システムをどうやって掻い潜った?その身のこなし!貴様はいったい何者だ!!」

「いたって普通の高校生だ。最近の授業じゃこのくらい必須科目だぞ?」
男の人は口元を釣り上げながら嘯く。

「くそっ!」

天井から床に向かって跳ねる姿は、重力を無視したかのような動き

落下スピードを加えた、踵落としのような蹴りを繰り出してきたかと思えば、今度は壁を走り出す。

そのどれもが限界まで姿勢を低くした体制での高速移動




お兄ちゃんの体が一瞬残像を残すかのようにコマ送りになる

だめ!!神速は使っちゃダメ!お兄ちゃんの足の怪我は完治できていない。

「そこまでにしておけよ。ここから先は、後戻りのできない一方通行だ。」

すたっ、と男の人が私の目の前に背を向け降り立つ。

位置関係は私と男の人の視線の先にお兄ちゃんがいる。


「貴様っ!なのはから離れろ!!」

「無茶を言いやがる…オマエのその動きが失敗すれば、オレが何処にいようが確実に眠り姫を傷つけることになると思うが?」

「!?それは―――――っ!」


男の人が私のほうに向きなおる。そして――――

「痛いところはないかい?君がペットを捕まえようとして木から落ちるのを受け止め、気絶していたからこの屋敷まで運んだんだが?」
(安心しな、君の魔法はばらさないよ)



(!!?)




つまりそれは、”あの現場”に居た人だということを証明すると同時に、私を脅すのに十分な言葉

一見すれば優しい言葉だけどその眼は残酷なまでに蒼く笑っている。

ばれては拙いこと。魔法のこと。

ここは……逆らえないみたい。

「ほ、本当だよお兄ちゃん!このひと、木から落ちるなのはを助けてくれたの!優しい人だよ!」

精いっぱいの作り笑顔。自分が嫌になるくらいの嘘吐き。

家族を騙し、友だちを騙し、更に騙す。

なのはは悪い子になっちゃったみたい





――――――――――――




(さて、か弱い?乙女を脅すのは紳士としての気質が疑われるところだが、まあ次回作に期待してくれってところかな?)

平和的に事態を収め、時刻は午後6時50分。すっかり日も暮れて、今いる場所は月村家の応接室。

テーブルに着いているのは俺と、先ほどの剣士とその父親らしき大人、月村忍。

「さて、君には訊きたいことがいくつもある。」
剣士の父親がそう言葉を切り出す。が


「まずは自己紹介でもしてくれないか?こっちはもう名乗っているんだ。七夜志貴ってな。」

「……高町士郎だ。先ほど君に襲いかかったのは息子の恭也だ。」

「これでいいだろ?さっさと貴様の目的を吐け。」恭也が我慢しきれずに詰め寄る

「……目的、ねぇ。どうなんだろうな?俺には既に目的なんてものは無いんだが。」

俺の目的は既に果たされている。夢の中で志貴を殺し、タタリとして夏の夜を極彩に染め上げ、そして――――紅赤朱を殺したことで七夜の誇りも守り切れた。

たったこれだけだが、俺にはこれしかなかったが、これほどのことを成し遂げたんだ。8年以上もの空白を埋めるように伽藍の中に詰め込まれた記憶(偽り)

それが、たった一つの誇りを貫き切ったんだ。

今更やりたいことなど見つかるわけでもない。


「それは、この屋敷に入ることが目的だったのかい?」

「いいや、この屋敷に入ったのは偶然さ。でなきゃ誰が好き好んで吸血鬼の屋敷に入り込むんだ?」
「!!なぜそれを知っている!?」

その場にいた全員の空気が刃の様に凍りつく。まあ、ぱっと見ただけじゃふつうは人の姿をした人外なんて区別がつかない。しかし

「少々この手の輩と縁があってね。魔との混血や人外には反応してしまう体質なのさ。ああ、しかし偶然なのは本当だ。」

そう答えると高町士郎は少し考え込むようなしぐさを見せ―――

「龍   この言葉に覚えは?」

「…ロン?誰かの名前か?」

「知らないのならいい。忘れてくれ。」

何か事情があるようだが、俺には関係ない言葉に対して変に含みを持たせるのも変えって怪しまれる。ここは聞き流すか。

「じゃあ次の質問だ。お前のさっきの動き、あれは暗殺者の動きだ。いったいどこで覚えた。まさかこの期に及んで体育の授業で習得したとかいう戯言は無しだ。」

高町恭也と戦闘になったのは俺としても大きな誤算だったからな。

「俺の体術は小さい頃に親父や一族に教え込まれたものさ。もっとも今は俺以外滅んでしまったんだがね。」

「滅んだ?」月村忍が不可解だというような眼で訊いてくる。

「ああ、俺の一族は魔との混血を専門とした暗殺の一族でね。鬼の混血に滅ぼされちまったのさ。つい先日漸くそいつを退治できたんで一族の誇りも目的も全部終わったところだったんだ。
後は気ままに余生を送ろうと思ってね。行くあてもないもんだから、ふらふら旅をしていたところで――――――」

「この屋敷に迷い込んだという訳か…」
高町恭也も何か考え込むような表情をする。

並行世界のことは話さなかったが、この世界にも吸血鬼がいるんだ。こいつらにとっては、あながち出鱈目なおとぎ話でも無いだろう。


そこで高町士郎が確認のように切り出す。
「それで?君は忍君をみて反応するようだが、それはつまり『殺したい』と思っているのかい?」

「「「!!?」」」
全員、特に月村の関係者が体を強張らせる。

魔との混血や『人外』に反応する。その反応について。

「…確かに俺が魔に反応する感覚、いや衝動は『殺人衝動』だ。一族が長い年月をかけて近親交配を繰り返し、魔を殺すことを目的として鍛え続け、遺伝子レベルにまで刷り込まれた俺は殺人鬼さ。」

更に全員が驚いているようだ。

「人外のみを殺す殺人鬼か……時に、七夜君は行く当ては無いと言っていたが、旅を続ける気かい?」

「?ああ、丁度道に迷っていただけだからね。この町の地図か図書館、最悪人里までの道が判れば後は勝手に出て行くだけだ。」

「ならば、今言っていた君の素性が本当かどうか、はっきりするまで我が家で監視させてくれないか?」

「!?父さん!いいのか?家には年頃の美由希や戦えない母さんになのはだっているんだぞ?」

ごもっともな意見だ。こいつの父親は何を考えているんだ?

「この町にとどまることによって忍君等に危険が出るということも承知している。しかし今この場において忍君を傍に置いている彼は、殺人衝動が本当にあるかどうかは判らないが、殺そうと動いていない。
私たちを前にして出来ないでいるのかもしれないがそれも判らない。また、本当は忍君等を殺すためにこの屋敷に近づいたのかもしれない。何もかも不確定だ。
ならば我が家に置いて私と恭也で七夜君を監視すれば一先ずは忍君も調査する時間ができる。それに、何か思惑があったのかもしれないが」

そこで高町士郎は初めて表情を和らげ

「なのはを助けてくれたのは事実だからね。その恩は返さなきゃいけない。」

そんなことを言い出した。




――――――――――――




「フェイト!どうしたんだい、その痣!?」

「大丈夫だよ、ちょっとイレギュラーな事があって……上手く言えないんだけど…不意打ちみたいなのを受けただけだから。」

無事にこの世界の拠点にしている高層マンションにたどり着いた私に、出迎えてくれたのは大事な使い魔のアルフ。

時刻は19時15分 ちょっと過保護なアルフは帰りが遅いことに心配していたが、着替えの際に右肋の痣を見て更に心配させてしまった。

「どこのどいつだい!!フェイトにこんな真似した奴は!」
見つけ出してギッタンギッタンにしてやる!―――なんて言っている。

だけど、あの一瞬をどう表現したらいいのかな?

身長170センチ弱、黒髪で蒼い眼で学生服を着た魔力反応の無い男の人が、何故か結界内にいて、気が付いたら蹴飛ばされていた……

だめだ、やっぱり混乱したままだ。

幸い痣といっても相当手加減されたらしく、程度から見て放っておいても明日の夜には消えてしまうくらい軽いみたい。

念のために、戦闘時のプログラムに魔力のほかに対物理障壁を張るようにセットしておけば済む話だ。

それよりも気になるのは、あの女の子。

もう邪魔しないでくれると嬉しいけど、そうはいかないだろうな……






――――――――




「と、言う訳で今日から暫くウチで下宿することになった七夜志貴君だ。」
(くれぐれも、ウチの桃子と美由希、なのはには手を出すなよ?何かあれば即座に斬刑に処す。)

「七夜は昔両親を事故で無くし、以来天涯孤独で旅をしていたところ、偶然にもなのはを助けてくれたんだ。袖振り合うも多少の縁だ。いいだろう?」
(いいか?何か起こらなくても、不穏な行動は死につながると思え。極彩と散るまでもなく17分割してやる。)


「…………」



お父さん、お兄ちゃん……き、気のせいかな?…ものすごい殺気と副音声が聞こえるよ…

「ちょっとカッコイイかも……」

お姉ちゃんだめ!その人は実は怖い人かもしれないのに、ときめいてる場合じゃないよ。


「ご紹介に与かりました、七夜志貴です。本日より暫くの間、士郎さんの御厚意に与かり御厄介させて頂きます。」

「あら、礼儀正しくていい子じゃない。お父さんも悪い人ねぇ。美由希ちゃんのお婿さんをもう連れてきたの?」





         バキン!!





何か物凄く二人の心が壊れた音がした。




「いやいや、御冗談が上手い御婦人だ。このような魅力的なレディーに、私のような若輩者が釣り合うはずがありません。それと、

可愛らしい眠り姫がいる前で、これ以上の会話は刺激が強いかと。」
(後で話がある。しゃべるイタチを連れてきてくれないかい?)


! やっぱり見られてたんだ。お話…聞かせてくれるかな?












~あとがき~


H.22/3/2

社会福祉の実習に1ケ月ほど奮闘していた為、更新遅れました。

まずはお詫びから。
ぶっ飛んだ内容でごめんなさい。黒い七夜でごめんなさい。中途半端に切ってごめんなさい。各作品のファンにごめんなさい。
容赦ない感想を待ってます。でもちょっとは期待してます。


設定
恭也は原作の足が完治してない設定をそのまま持ってきました。OVAの最強は無いモノとしてください。


何故なのはとフェイトの七夜に対する第一印象を最悪&微妙にしたかは――――――当然だ!
好感度は初期値が低い所から始まるのが常識!そこから主人公(七夜)が奮闘して落として行くのだ(真面目にやれ

現在好感度
なのは  -10
フェイト -2


続きたい



[15623] 七ツ夜と魔法 第3話
Name: モンテスQ◆b121c041 ID:7de7d2be
Date: 2010/03/12 22:53
[七ツ夜と魔法(MELTY BLOOD×魔法少女リリカルなのは)]


舞台があり、名優があり、血肉がある、
足りないものは脚本だけだが―――
なに、私は生の感情が好みでね、筋書きの無い殺戮(ドラマ)
の方が楽しめる。




~第3話「初日の日常風景/ホームドラマ」



高町なのはは夕食後に1階の和室へ向かっていた。

手にはノートと2本の鉛筆を持ち、自分の部屋を出て足音をたてないように注意しながら廊下を移動する。

止まった先は七夜が居る部屋。

肩に乗っているユーノも緊張している為か念話で話しかけてこない。




そして



「ああ、誰かと思えば眠り姫じゃないか。こんな時間にどうかしたのかい?」


部屋の中の七夜はくつろいでいる様子で、座りながら荷物の整理をしていた。


「う、うん。実は昼間のお礼をまだ言ってなかったから、ちゃんと言わなきゃだめだと思って……それと、なのはです……」

「そうか……じゃぁ、なのはちゃんでいいのかな?部屋の前で立たせたままなのも悪いから、まずは中に入りな。」

はい、となのはは返事をすると、恐る恐る足を前に出し部屋に入ると障子をを閉めた。



簡易式のちゃぶ台と座布団を出すと、二人は何も言わぬまま座った。

そしてなのははノートを出すと、1本を七夜の前に差し出し、もう1本で文字を書きながら。


「今日は本当にありがとうございました!おかげでユーノ君…あ、このフェレットのことなんですが怪我もしませんでしたし、本当に助かりました。」



と口にした。しかしノートには



『あなたは一体何者なんですか?なんで結界の中に居たんですか?』




「ああ、わざわざ言いに来てくれるなんて、ほんとにいい子だね、なのはちゃんは。」

『俺もあの場は驚いたよ、俺は少々特殊な目を持っていてね。今は黒いが、蒼いときの目は視えざるモノを視ることができるんだ。それで結界に入ってしまったんだ。』





二人は筆談を始めた。




表向きの会話は今日のお礼や七夜の身の上、なのは自身の昼間の生活、高町家の話。

ノートの上では魔法の存在に気付かれたかもしれない、と不安になるなのはとユーノ。なのはとユーノに興味を示す七夜の会話。

念話が七夜に届かなかったのは既に確認している。

七夜の隣の部屋には恭也が居る。なのはは家族に魔法の話を聞かれる事は出来ない為、このような危険な綱渡りとなっているのが現在の状況だった。









「いやいや、謙遜しなくてもいい。なのはちゃんほど可愛い乙女なら、学校では引く手数多だろう?リードする男子が少ないというのは、まだ幼さゆえってやつだ。」

『つまりなのはちゃんは、そこのフェレットにもらった魔法の杖を使って、ジュエルシードを封印するために動いているってわけか。』


「もー、七夜さんは過大評価ですよぉ。」

『そうなります。七夜さんの目や体術の事も大体は解りました。』



「ところで、なのはちゃんはこんな時間に俺みたいな男の部屋に入ることに抵抗とかなかったのかい?」

『大体の事は解った。確かに家族には内密にしておくべきだな。それで?ここまで俺に話したってことは』



「そ、それは――――」

『ジュエルシード探しに協力していただけませんか?byユーノ』


『暇なときに、近くにいればな。後は――――』



    バンっ!!!!

「なのはに手を出したらただ「にゃはは、もう寝る時間だね。お兄ちゃん、七夜さんおやすみなさい」……」


なのはは少し恥じらう様なしぐさで部屋を後にする。

「聞き耳を立てる兄というのはあれか?思春期にも満たない妹の成長を文字通り陰ながら見守るのが趣味なのかい?」

ノートは既になのはが持って行ってしまった。この場に筆談を証拠付けるものは無く、なのはとの会話は取るに足らない雑談と見ざるを得ない。

「…忘れるなよ七夜。貴様が僅かでも怪しげな行動を取れば即座に御神の剣がその身を斬り裂くということを」

そういいながらも恭也は困惑している。何故なのははこの男に、必要以上に接近したのか?七夜と自分が忍の家で繰り広げた戦闘をわずかとは言え視ていて、危険な存在だと分かっているはずなのに。

疑念は残る。本当になのはは雑談をしていただけなのか?隣の部屋から聞こえた会話は真実だったのか?

どちらにせよ今は忍の調査結果を待つしかない。そう思いながら、部屋を出る際に視線だけ後ろに向けると、未だ座り込んで胡坐をかいて口元を釣り上げる七夜が


「了解。それじゃおやすみ」


寝る気など全くないようなギラギラした眼でそんな事を言っていた。



―――――――――






「どうせ一夜限りの幻だ」


優しい顔をした眼鏡の奥の瞳は狂気

神様ですら殺せる眼

蒼く爛々と輝く眼

視界は線と点のツギハギだらけ

握る七ツ夜は血に濡れ、学生服は血に濡れ

キ、キキ、キキキキキキキキキキ――――――――――




遠野志貴トオノシキ志貴シキシキシキシキシキシキシキシキシキキキキキキキキキキキキキ――――――――







―――――――――







翌日の朝




時刻は7時を回った程




高町美由希に重大な任務が与えられた。




朝ごはんの時間だから、七夜君を起こしてきてちょうだい♪




言うまでもなく義母である桃子からの指令である。

「ど、どうしよう………男の子の起こし方なんて分かんないよ………」

年が近い恭也は毎朝自分と同じく早朝に起きて鍛錬をしている為、年頃の男子がどのような寝姿なのかいまいち想像できないでいる。

(とにかく、まずは部屋に入ろう。このまま廊下に居ても七夜君は起こせないし。)


そう思い襖に手をかけ開いた先には―――――



布団の中で死んだように眠る七夜の――――――



「――――――きれい……」

思わず不謹慎な言葉が漏れてしまう。

近くで見ればもちろん生きていて、小さいながらも呼吸もしている。

しかし、その呼吸も一つひとつが気配を極限まで押し殺したように気配を感じさせず、昨日の大人びた表情と一変し幼い顔の寝姿に――――――


「す、ストライク…」

と、その声に反応したのか七夜が静かに眼を開ける。

「ふぁっ…」

「あ、お、おおオハヨウ七夜君!よくね「―――眠い………」……」


「まったく、死人をおいそれと起こすなよ。ん?そういえば、今は生きてるか…………」

如何やら寝起きは悪い方だったらしい。

若干眉間に皺を寄せ欠伸をしながらの第一声はかなり独特なものだった。

そして、動揺を隠せない美由希に対して。

「これは失礼。淑女の前の欠伸なんて、男として失格って奴だったかな?」

「そそ、そんなこと無いよ。うん、大丈夫。」(淑女…!!)

そういいながら美由紀は七夜の横に座る。何故だか彼のそばにもっと近づきたいと思っていた。

「それは助かった。ああ、起こしにきてくれたのかい?君のような手弱女な方の手を煩わせてしまい、すまなかったね。」

いつの間にか体を起こす七夜と美由希の顔の距離は拳ひとつ挟んだ程度まで近づいていた。

美由希は今まで、男性の接近をここまで許したことは無い。

吐息がかかる距離、あと数センチ近づけば唇が触れ合う隙間。

美由希の顔が一気に赤くなる。

「―あぅっ――――ぅ――――――――ぁっ、な、七夜―――く――――んっ―――――――」




「お姉ちゃん、遅い…………よ?」


「!!?!」




美由希は心臓がとまるほど驚くと同時に背後の冷気、いや殺気の篭ったような声に全身を硬直させた。

後ろの声の主、なのはは明らかに美由希を睨みつけている。

美由希は確信する。

振り向かずとも判る。

なのはは今、自分の事を"汚物を視るような眼"ですかしている。

何故か美由希は冷や汗が止まらない。剣術を収める身を以てしてもなお耐えがたい程のプレッシャー


「……七夜さんも……早く起きてください…」

「はぁ、そうするよ。着替えてからいくんで、先に行っててくれ。」

「………」

すたすたと廊下を後にするなのは

続く美由希は、顔を真っ赤にさせながら、神速を思わせるほどの脱兎のごとく七夜の部屋を飛び出していった。






そして朝食



高町桃子と七夜志貴を除き気まずい空気を醸し出す他4名

高町士郎はいつも通りの笑顔で居るが、端の席に座る七夜を注視し

高町恭也は昨夜のなのはの行動を考えながら七夜を睨みつけている。

高町美由希は今朝の七夜との接近に今まで感じたことのない感覚を覚え、まだ顔を真赤に染め上げたまま恥ずかしがっていたいところだが、直後になのはに見られたのがとても気まずく感じている。

高町なのは、昨夜ようやく七夜を完全とはいかないが、ジュエルシード探しを手伝う約束をしてくれたこともあり、信用しようと思った今朝、義姉である美由希と小学生では表現するのにとても困難な雰囲気を作っていたことに何故か不快感を感じ、ダークサイドを展開している。

例え筆談のカムフラージュでの会話とはいえ、自分を可愛いと言ってくれた七夜が、美由希と妖しい雰囲気を作っていた事に対しての少しばかりの嫉妬なのだが
幼さゆえか、なのははまだうまく感情を呑み込めないでいる。


そんなことは露知らず、桃子は新たな生活者の七夜に質問する。

「ところで七夜君は昨日から学生服を着ているけど、どこの学校に通っているのかしら?」

「いえ、以前通っていた高校は中退してしまったんで、今は学生ではありません。この姿のままでいるのは…旅をする上でさほど違和感はありませんし。何よりお金もあまり持っていませんでしたから。」

「まあっ、そうだったの…ということ は♪七夜君」

何を思いついたのか急に桃子の視線が熱くなり、両手をポンと合わせる

「?何でしょうか?」

「ウチでやっている喫茶店で働いてみない?」




「「―――――ぶッう!!!!?」」


コーヒーを吹き出す恭也と士郎

危険人物を我が家の家計の生命線に――――

思わず二人の、特にマスターである士郎の顔が一気に青ざめる。

美由希はとたんに目を輝かせ

「いい考えね母さん!…執事服とか似合うかも」

なのはは苦笑い。もとい、顔を引きつらせながら

「七夜さんは料理とかできるんですか?」

「いいや、料理ができる男なんてのは…あれだ。ペンギンが空を飛ぶようなモノだろ?何事もそつなくこなしてきた方だが、生きていく上で最低限の物くらいしか作れないな。」

「あら~、そうなの?」

桃子は少し残念な顔をするが

「ですが、ウェイターの真似事なら経験があります。その程度で宜しいのなら、喜んで働かせていただきます。」

「助かるわ~♪丁度平日のウェイターさんが欲しかったのよ♪」「恭ちゃん!今すぐ忍さんに連絡して!七夜君に執事服!」「ほっ、本気か!?」


「お姉ちゃんが…舞い上がってるの……」

道場での鍛錬を姿からは想像もできない美由希の変わりように、なのはは更に顔を引きつらせる



七夜志貴が高町家に加わって最初の朝

家の中はいつもより少しだけ賑やかだった。







~あとがき~

H.22.3/10

コミカルなシーンを書きたかったんです。ごめんなさい。

そして、エロい七夜を演出しようとしたら、2枚目っぽくなってしまったorz

美由希の性格がいまいちつかめないでいるんですが、アットホームな女子高生をイメージしたら

七夜に対する第一印象は"ちょっと目つきが鋭くてカッコいい男子"にした方がいいのかな~、と思いました。

前回の舌の根も渇かぬ内に美由希の高感度を高くした設定は

美由希√じゃリリカルな話が進まないからです。

つまり

美由希=魅力的だけど攻略できないキャラ(涙)


好感度

なのは  -6
フェイト  -2
美由希  +5


追記.同日誤字修正
3/12 不具合修正

続きたい




[15623] 七ツ夜と魔法 第4話
Name: モンテスQ◆b121c041 ID:46bf9762
Date: 2010/03/29 21:18
[七ツ夜と魔法(MELTY BLOOD×魔法少女リリカルなのは)]


魂魄ノ華 爛ト枯レ、杯ノ蜜ハ腐乱ト成熟ヲ謳イ例外ナク全テ
ニ配給、嗚呼、是即無価値ニ候…………!!!!




~第4話「Holiic/Of each」~




私立聖祥大付属小学校

通学バス

朝食後にスクールバッグを持ったなのはは、桃子に見送られ家を後にする。

最後尾の席にはいつも通りの親友

ブロンドがかかった金髪のアリサ・バニング

青みがかかった髪の月村すずか

いつもなら二人とも満面の笑みでなのはを出迎えるところなのだが、今日は少し様子が違った。


「で、一体昨日の男は何だった訳?今はなのはの家にいるんでしょ?」

アリサが訪ねてくるのは無理もない。いきなりなのはをお姫様だっこして歩いてくる不審な男が現れ、とりあえずすずかの部屋になのはを寝かせた途端

なのはの兄である恭也が真剣で男に襲いかかり、危険だということで、無理矢理家に帰されてしまったのだから。


すずかは若干顔を強張らせている。姉の忍から人外を殺す一族の人間と聞かされ、怖くて昨夜は寝ることができなかったくらいである。

そして彼は衝動を持っている。人外を殺そうとする殺人衝動。




(どうやって話せばいいのかな?)
なのはが昨日七夜から聞いた内容としては

小さい頃に両親を事故で亡くし、拾われた家で8年ほど暮らしたけど、生まれつき本来なら視えないもの(幽霊?)を視ることができる浄眼というモノを持っていた為

家では気味悪がられ続け、今年で18歳になるということもあったので全国を回る旅に出たというものだ。

兄である恭也と互角以上の戦いができた理由は、親が暗殺者で小さい頃に訓練を受けていたからとの説明だった。



確かになのはは納得できる理由だ。動き方や身のこなしが暗殺者のソレなら兄や父、月村一家が過剰に反応することもうなずける。

何せ月村は富豪の良家だ。

「昨日の男の人は七夜志貴さんって言うんだよ」

「ナナヤ?何か変った名字ね。」

「うん。なんでも、家庭の事情で今は全国を旅してまわっている途中らしいの。」

なのはは出来る限り七夜から聞き出した身の上と、なのはが出会った経緯を話し、七夜がちょっといじわるそうだけど優しい人だと説明した。




「…何だか複雑な事情を抱えてそうな人ね。おまけに性格が意地悪とか、私とウマが合わないわよ。」

「にゃはは…という訳で、七夜さんはそんなに怖い人じゃないと思うよ。昨日の夜にお話ししてみたけど、武術を習ってたことがあるみたいで、それに気が付いてお兄ちゃんが攻撃してきたみたいなの。」

「なるほど。確かにあんたのお兄さんは、すずかのお姉さんにぞっこんだもんね。過剰に反応するのは当然って言えばそうよね。」

一応アリサは納得したようだったが

「それで?何ですずかはまだ暗い顔をしてるのよ?」

すずかは俯いたまま、死にそうなほど顔を蒼くしている

「え、ぁ…ううん。大丈夫……だいじょうぶだから……」

その顔は今にも心臓が止まってしまうのではないかと錯覚してしまうほど沈んでいた。







――――――――






「いらっしゃいませ、瑞々しいお嬢様がた。ご注文はいかが致しましょうか?」

時刻は11時45分、喫茶店はそろそろ人でにぎわう時間。

執事服を着こんだ七夜志貴は持ち前の営業スマイルでウェイターをしていた。

高町家の喫茶店『翠屋』

いつもなら高町士郎はにこやかな表情でオリジナルのブレンドコーヒーを客に届けるところだが、今日は愛妻桃子に止められてしまっている。

理由は七夜を警戒してか自然と眉間に皺が寄ってしまっている為である。

個人経営の接客業、しかも喫茶店ともなれば従業員の表情や態度一つが売り上げを大きく左右する為、致し方が無いと言える。

おまけに今日は喫茶店では珍しい、執事服の見た目好青年が映えている。マスターである士郎はいつも通りのエプロン姿なので、客受けも自然と七夜に傾く。


「だけど本当に七夜君、接客が上手ね。これなら泊まり込みの従業員としてずっとウチに居てくれても構わないわ。」

桃子が士郎にとって更に表情を悪化させかねない事を言う。


そんな七夜はトレイを片手に持ちながら桃子に近づき

「いえいえ、こういった場でのお客様へのエスコートは基本ですよ。それが貴婦人の下でとなれば、手なんて抜けるはずがありません。」

そう言いながら、たまに来る男性客に対する態度が緩慢なのを指摘したい士郎だが、桃子が七夜に夢中になっていることから易々ということができないでいる。


そこで士郎はふと、今週末の温泉旅行について思い出した。七夜の騒動があり、すっかりと気持ちが醒めてしまっていたがどうしたものか。

恭也も忍君と一緒に行く為、翠屋はアルバイトのみの営業となる。


(だめだ、今七夜君から目を離すことは出来ない…いっそのこと連れていくか?…危険すぎる。月村家の湯けむり温泉殺人なんて洒落にならん…)

袋小路の考えに、せめて自分だけでも残るべきではないかと考えていると。


「そうそう、今週末私たち一家となのはのお友達とで温泉旅行に行くのよ、七夜君も良かったら一緒に来ません?」

(――――っ!!桃子、なんてことを)

「温泉ですか……とても魅力的なお誘いですが、私のような者が団欒の一時から旅行にまでお邪魔するのは申し訳ない。」

「気にしなくても大丈夫よ。もう七夜君も我が家の家族なんだから。それに美由希さんも七夜君がいればきっと喜ぶわよ。ね?あなた。」

あなた と言われて士郎は顔を青ざめながら目を白黒させる。

桃子の心が広いのも考えようだ。

恭也や美由希は桃子と血の繋がりは無い。それでも顔色一つ変えず二人を我が子として受け入れる姿勢は、まさに母性の鑑といえる。

しかしその母性が今、最も不確かで危険極まりない青年を受け入れようとしている。


それと、今ナントいった?

美由希が七夜君を?――――誤算だった。

恭也でも七夜君には勝つことができないと踏んで、不安を与えないように美由希には伏せていたが、如何せん年齢が近すぎた。

剣のことしか視ていなかった自分は年頃の娘の思考など全く考えもしなかった。


(危険だ、危険すぎる!)

そう思いとっさに出た言葉が

「美由希に手を出すようなことは許さんぞ。」



この言葉が墓穴となった


桃子の認識は

『美由希さんを俺に下さい。』『お前のような若造にはやれん!』のようなものと捉えてしまった。


それに気が付いた士郎は思い余って背中に仕込んである刀に手を伸ばすが。


「店内での抜刀は厳禁となっております。マスター?」

当然のことを七夜に指摘された。








――――――――――







それは例えるなら罅だらけの硝子



蜘蛛の子を散らすように視界を死界で埋めつくす



手に入れたのは直死の魔眼



殺したモノは"真祖の吸血鬼"(白き姫)



生きているのなら神様ですら殺してしまう魔王の眼



吾、全てを殺す者也。紅い月の契約の下、此の世の全てに貴き死を。風に此の身を、佇むは影絵の街、七ツの闇夜を。瞳に死界を。――――――さあ、殺し合おう。






――――――――






高町士郎と高町恭也は憤慨していた。



今日は楽しい、楽しみにしていた筈の温泉旅行だったはずだ。



車を運転する士郎は鼻歌交じりになり、助手席には高町桃子を乗せ、後部座席には、なのはやその友達が笑顔を絶やさなかったことだろう。

恭也は忍に運転を任せ月村家と楽しく過ごせたはずだろう。




そのはずだったのに



「眠い…」


引きつった笑顔に青筋を浮かべる士郎。隣で暇だと言わんばかりの七夜。その後ろに、手に持つ小太刀をいつ抜刀してもおかしくない恭也。状況を全く知らず舞い上がっている美由希。

人呼んで『暗殺車』と称してもいい物騒な戦闘集団がここにあった。

「ね、ねぇ七夜君。七夜君は温泉とか初めて?」

「ああ、初体験さ。生憎その手の娯楽とは無縁だったものでね。でも、一通りの作法は知識としてあるから心配はいらない。それと、何事にも初体験は思い出に残る、今日の旅行には感謝しているよ。美由希さん。」


七夜の発言でまたもや美由希は顔を赤らめテンションを上げる。


そんな美由希をルームミラーで視てしまった士郎は

「七夜君!眠いのなら寝ていて構わないよ!――――なに、着いたら起こすよ」
(貴様!!それ以上美由紀と話すな!!!―――――斬り殺されたいか!!)

合わせて恭也も

「ああ!それがいい。こんなにいい天気なんだ!七夜のおかげで翠屋も更に儲かっているし、気にするな!」
(話は聞いている…後ろから串刺しにされたくなければ大人しくしていろ。)



しかし副音声を理解していない美由希にとってみれば

「お父さん、恭ちゃん。ここのところ何だか七夜君に対して冷たいよ?なんかお店で揉め事でもあったの?」

ここ数日美由希から見た士郎と恭也の発言はKYなものが多い。主に七夜と話をしている時に限るが。


二人が秘密を言うに言い出せず、目を白黒させているのを後目に、然も気にせずいる七夜は。

(成程、移動車両の中の殺人か…面白いかもしれないな……)

机の下より難易度は高そうだ。

などど考えていた。






一方月村忍の運転する車両は、本来よりも人口密度が高くなっている中で

「いい、すずか。七夜君はケダモノのロリコンだから絶対近づいちゃ駄目だからね!」

忍はいくら可愛い妹を守るための方便とはいえ、七夜の名誉を著しく傷つける発言をしていた。

「あら~?七夜君はもしかして美由希さんよりもなのはのほうが好きなのかしら?」

「お母さん……意味がずれてるよ……」

「ろ、ロリコン!?そんな危険人物を連れてきちゃってるの!?それならすずかがこの前から暗い顔しているのも納得だわ!美少女の敵よ!!」

アリサは今の会話で七夜の人物像をかなり誤解することになるが、それは旅館に着いたときに改まることとなる。

そして

「はい、あれはロリコンです!!すずか様と忍さまを狙うぺ○フィリアです!!」

メイドのファリン・K・エーアリヒカイトは忍たちの会話の流れに乗ろうとよく解っているのか定かでない発言をした。

車内は一部を除き、一瞬ドン引き状態


流石に言い出しっぺの忍は苦笑いになり。

「え……と、…それは言いすぎなんじゃ――――」(もしもウチを狙ってきたんじゃない『只の暗殺少年』だったら、全面的に責められるの私じゃん!?)

それと、私はれっきとした成人でロリでもペ○でもない。ナイスバディなお姉さんな筈だ!と、心の中で叫んでいた。









―――――――――――






旅館について、駐車場での出来事


アリサ・バニングスは驚いていた。


「あ、あんたが七夜?話に聞いていたのと随分と雰囲気が違うわね。」

「?噂が何なのかは知らないが、そういった情報は得てして誤っているものが殆どさ。…例えるなら男は悪いイメージの噂がより強く、現実には当てはまらないことが多い。しかし女性は、見目麗しき絶世な噂は実際はそれ以上ってことがあるだろう?」

「まあ、男の場合はイジメとかにある典型よね。でも女性はそんなことあるのかしら?」

「いい質問だ。古来から女性の美貌に関するうわさは、視えないからこそ虜にする魔力があってね。しかも興味を持つ分、初見の印象も大抵は良いものだ。つまりアリサちゃんは、なのはちゃんが自慢するだけのことはある立派なレディーに視えるってことだよ。」


「――――――い、いいいいイキナリ私のことを口説こうっていったって、そうはいかないわよ!」

だけど、今の会話の流れで分かった。こいつは平気な顔をして特に気にもせずに女を"口説く"(殺す)男だ。

「ねえ、七夜君!荷物、部屋に置いたら裏手の森へ散歩に行かない?」

「構わないよ。」

そして、既に1名の末期患者が、よりにもよって美由希さんとは…

―――その時、何故か私の背後からものすごい負のオーラをまき散らすなのはが

「七夜さんっ!お散歩はなのはと行くって約束してたじゃん!」(ジュエルシードの探索にお姉ちゃんは連れて行けませんよぅ。)

!?そんな、なのはも手遅れだなんて――――たった数日でここまでの被害とは。

「えー。いいじゃんなのはぁ。」

「絶対だめぇ!!七夜さんは私の!!」『七夜さんは私(とジュエルシードの探索に行く)の!!』




どさり





後ろを振り返ると、なのはのお父さんが発狂したのか、物凄い奇声を挙げながら七夜に向かって刀を振り回している。

恭也さんは怒りのあまりに気絶して、ノエルさんと忍さんに抱きかかえられるような形になっている。


「何だかなのはの一家が壊れていってるわ…」


唯一の頼みの綱であろう、なのはのお母さんですら。

「あらあら。なのはったら、美由希さんに負けまいと猛烈アタックね♪」




「う……うう、ノエルさんーーーー!!なのはに七夜君盗られたーーーーーー」

「…………………」



「貴様ぁああああああああ!!」

「まてまて。そう事を荒らげてもいいことは無いですよ。可愛らしい乙女からの誘いに乗るのは男の甲斐性って奴です。」

ひょいひょい刀を避けながらなんか火に油を注いでいる気が…



「恭也っ、しっかりしなさい!」

「たたたたたたったったたたた大変ですぅ!??!くきゅ、救急車ーーーー」





「ああーーーーーもう、うるさーーーーーーーい!!!!」





~あとがき~

就職活動が忙しすぎる。

原作崩壊、ついカッとなってやってしまいました。アリサだけは最後の良心であってほしい。


次回予告:タタリ登場予定

何とか巧く繋げてA'sまで行きたいな…それまで高町家がどれだけ原作崩壊するか…OTL


好感度

なのは  ±0
フェイト  -2
美由希  +10



次回投稿時に『とらハ板』に移りたいと考えています。


続きたい





[15623] 裏小話その1
Name: モンテスQ◆b121c041 ID:46bf9762
Date: 2010/03/30 23:03

[七ツ夜と魔法(MELTY BLOOD×魔法少女リリカルなのは)]



さらばだ少年!
この体は少年の日が見た幻想とか妄想とか悪夢とか、そういう
もので出来ていたと思うがいいにゃー!




~裏小話その1「イロモノ猫の受難」~



「ちょっと!待ちなさいよ、この宝石爺(ジジイ)!!」


七夜と別れてから早数日。私は毎日色んな並行世界に飛ばされていた。

この世界はなんでも、石油資源が枯渇して太陽エネルギーの取り合いがドウたらこうたらで――――変なロボットがうじゃうじゃいる世界。


そして


「ぜぇ、ぜぇ、――――ほんっっっっとうに、今度こそ、この世界に七夜が居るんでしょうね!?」


現在私が居る場所は明らかに戦争のゲリラ地帯。

トラップ、地雷、散弾銃、爆撃、なんでもアリの泥沼地帯を必死になって駆け抜けている。

ズバリ、止まったら死ぬ。

なのに、この爺ときたら。

「…………どうじゃろか?」

何度目よ!!その言葉!?っていうか、一歩気を抜いたら即死っていうこの状況は、あのブサイクネコの悪戯よりもたちが悪いわ!!


「ふぅむ…さて、小僧を送った並行世界は一体どこじゃったか…」

「何で七夜を送った世界を覚えてないのよーーーーーーー!!―――――キャァ!?」

今度は戦闘機とロボットからの爆撃――――――死ぬ!流石にそれは死んじゃうから!!上空300mからの攻撃なんて、私の射程外だからーーーー!!

よ、夜になれば――――そう、夜になれば戦場の悪夢を集めに集めて、あんな奴らイチコロに―――――





ズボっ




今度は落とし穴

「もうイヤーーーーーーー!!!七夜ーーーーーー!!!」

「何を喚いとる。……ほれ、遊んどらんで、さっさと探さんかイロモノ。」

「私はイロモノじゃなーーーーーい!!」







~あとがき~

短いながらも裏話でした。

白レンが七夜の下にたどり着くまでの道のりは遠い。



続くのか?




[15623] 七ツ夜と魔法 第5話
Name: モンテスQ◆b121c041 ID:81898458
Date: 2010/04/20 20:58
[七ツ夜と魔法(MELTY BLOOD×魔法少女リリカルなのは)]



黒猫、カラス、霊柩車。

ああ、柳の下を通るってのもあったっけ。

不運なのはお互いさまってコトだ。



~第5話「退魔/魔法生物」~





フェイトはジュエルシードの反応を追って、海鳴市から離れた温泉街に来ていた。

ここ数日はジュエルシードの反応も順調に捉えていて、使い魔のアルフも浮足立っている。

「アルフ、あんまり油断してたらだめだよ。母さんが待っているんだから。」

「うぅ~。そ、そんなこと言ってもさ、温泉だよフェイトォ。ジュエルシードの魔力は今夜が臨界点と踏んでいるんだから。それまでは確実な範囲は割り出せないさ。」

「確かにそうだね……でも、やっぱりぎりぎりまで探すことにするよ。そうすれば見つけて、すぐに封印できるから。」

アルフは温泉に入ってきな。と、フェイトは促す。

「!!そんな!?フェイトが頑張っているときに私がサボりみたいなこと出来ないよ!」

「大丈夫。念のため他に魔力反応が無いか調べてもらうから、集合時間は午後6時。場所は打ち合わせ通り。不測の事態があったら念話で。」


「……お、温泉饅頭買ってくるからね!」


そう言ってアルフは走って行った。だけど、気が付かなかった。

気が付けるはずが無かった。



フェイトはこの時点で一番の警戒対象をジュエルシードと位置付けていたのだ。


しかし、アルフが向かった温泉宿もまた、殺人鬼が居る危険地帯だということを知らなかった。






――――――――――






「ふぅふ~ふぅふふぅ~♪」

高町なのはは上機嫌だった。

理由は本人もあまり分からないでいる。

ただ、現在なのはと一緒に森の中を歩いているのが、七夜志貴ということである。

結局、夕方まで探し回ってジュエルシードを見つけることは出来なかったが大体の位置をユーノが絞り込むことができた。

あまり遅くなると、また恭也たちが五月蠅くなるということで旅館に向かって引き返している所で

「ねぇ、七夜さんは好きな食べ物とかってあるの?」

「そうだな、嫌いな食べ物なら幾つか挙げられるが、好きな食べ物は――――これといって見当たらないな。」(梅サンドは概念毒手だしな)

そう言うなのはちゃんは何が好きなんだい?と、七夜が聞き返す。

とたんになのはの顔が真赤になり

「えー、えーと?私は――――――――――」




「おしゃべれりはそこまでだよ。」

不意に女性の声でなのはが意識を取り戻すと同時に



―――――――七夜の瞳が蒼く光る

「!?七夜さん?」

とっさのことでなのはは驚くが、次の瞬間――――


「あんただね?この前フェイトをキズモノにしたっていうのは!!」

目の前に獣の耳を生やした女性が仁王立ちしていた。



「あ、あなたはいったい…?」

なのはが不思議そうに質問する。

しかし状況は既に臨戦状態。七夜は腰を落とし、いつでも相手を向かい打てる体制。ユーノは魔法の構築イメージを固めていっている。


「用があるのは、そこの男にだ。邪魔するなら、あんたもただじゃぁおかないよ!」


アルフは以前、結界内で攻撃を受けた時のことを無理矢理聞いていた。

そして魔力反応がある1人と1匹?の傍に居ることから間違いないと判断していた。


そんな状況を冷静に分析した七夜は――――――目の前の獲物に衝動が抑えきれずにいた。

「やれやれ。男としては、こちらから手取り足とりリードしたいところなんだが、如何やら最近のレディーは積極的らしい。しかし、はしたないなぁ?自分から襲われに来るなんて。」

七夜の言葉にアルフはさらに苛立つ

「――――っ、謝っても許さないからねっ!!!」

アルフは激昂し一直線に飛びかかる。右の拳を硬く握りしめ、七夜の頬を粉砕するべく横に振りぬいた。


しかし、そこには七夜の姿は無く、振りぬいた右腕は空を切る。

「!?何処だい!!」

アルフは驚き戸惑いながらも必死で七夜を探す。そして自分の真上から―――――




アルフに向けられる、殺したくて堪らないといわんばかりの、この世の殺意を全て詰め込んだように―――――蒼い瞳



――――――吾は面影糸を巣と張る蜘蛛、



小太刀を構え、木の枝の"下に、逆さまの体制で直立している"七夜がいた



―――――ようこそ、この素晴らしき惨殺空間へ



七夜が持っている小太刀は恭也の業物だっった。体術を主とする七夜にとって、小太刀はナイフと同様に扱うにはほとんど支障が無かった。



七夜は周囲の木々を足場に目にも止まらぬ動きでアルフを翻弄する。

一閃、また一閃と小太刀で確実に殺すための斬撃を繰り出す。


対してアルフは己が持てる動物本能を最大限まで研ぎ澄まし、これを紙一重で――――避けきれず、少しずつだが切り傷が出来る。




動物が血を流す



動物にとってその事実は2択を迫られる時である


逃げるか


(出来ない、こいつは蜘蛛だ。そしてこの場は奴の巣。逃げ腰になった瞬間に惨殺される!)



戦い殺すか


(それしかない!ここで殺らなきゃ、この後に控えているフェイトにも危害が及ぶかもしれないっ!)





―――――――戦闘続行




七夜はアルフの決心した瞳を見て口元が釣り上る



水月で跳ね、


「ちょこまか動いて!!あんた、人間か!?」


七夜で薙ぎ、


「血゛っ――――つ、」 血風が舞い


木々を使いあらゆる場所から六兎で穿ち、


「っ、カハ……」
アルフは背中を蹴り抜かれ肺から酸素をすべて吐き出してしまい、よろけながらも必死で振り返り――――



死を確信した。

(―――――ああ、何さ?あたしはこんな所で死んでしまうのかい?やっぱ温泉に入りたい欲が―――――)




―――――――「無駄だらけだ」――――― 一里四辻と繋げ"八点衝"(斬刑に処す)。






ガギン!!





「七夜さん!駄目ぇっ!!殺しちゃダメーーーー!!!」


そこには七夜と向かい合い、アルフに背を向けるなのはが、必死にシールドを張っていた。
















何だよ―――――――――何なんだよ、




月夜



                      違う



誰もいなくて



                      違う!



誰も生きてなくて


                      違う!!


全てが赤くて


                      違う!!!


皆殺されていて


                      チガウ!!!!


母さんが目の前で殺されて


                      ヤメロ


俺を庇って殺されて


                      ヤメロ!!




殺したのは―――――――鬼で



                      止めろ!!!!








『俺は鬼のように――――――"■"(なのは)を殺すのか――――――?』










日は山陰に隠れかけ、辺りは黄昏から深い闇が始まろうとしていた。





――――――――――――





一方その頃



フェイトテスタロッサはジュエルシードを見つけてしまっていた。


草むらに蒼く輝く魔力光

フェイトは喜びの色が隠せない

(やった♪ジュエルシード、しかもまだ覚醒しきって無い。これなら結界を張らなくても周辺に被害は出ないし、気付かれもしないはずだ。アルフは温泉に入っているだろうし、ここは一人で封印して私も温泉街に行ってみようかな?)



油断があったのは事実


しかしそこから引き起こされる悲劇はあまりにも残酷だ





日は沈み、辺りに闇が覆い始め




フェイトがバルディッシュを振り上げ封印しようとした瞬間


「やあ、こんな所で何をしているんだい?」


「!!!?」
ビクッっとフェイトは体を硬直させ、すぐに後ろを振り向くと―――――

学ランを着た眼鏡の特徴的な少年がいた


「こんな森の中で一人だなんて……お父さんかお母さんは何処だい?逸れちゃったのなら、俺でよければ―――――」


優しい眼、どこかで見たような姿だけど……そう言えば数日前に私を蹴り飛ばした男の人。

まさか、まだネコと一緒に攻撃してしまったことを怒っているのだろうか?と考えてみたが、…眼鏡をかけていただろうか?



「――――――君をコロス」



ドクン


男の人は、ゆっくりとした動作で眼鏡を外し胸ポケットにしまう。


右手にはいつの間にかナイフが握られていて


男の人の眼は蒼くこちらを殺してくるようだった。


「だ、……誰?」


フェイトにとっては心臓が止まるほどの恐怖感の中で漸く尋ねることができた言葉だった。




そして少年は静かにゆっくりと口を開き






「遠野志貴」





――――――自らの名前を名乗った。












~あとがき~

もう少し早く更新できるように頑張りたいorz 就活ラストスパート!!

七夜のトラウマを穿り返してみました。

この度は、遠野志貴君をタタリとして登場させていただきました。

目的が無くなってしまった七夜にとって恐れるものとは何か?

七夜の"記憶"から考えてみた場合、七夜自身が七夜で亡くなる。遠野志貴になってしまうかもしれない可能性。という感じかな~と思ってみたり。


遠野志貴君にはタタリらしく、コロス形に物事が結びつくようになっているものとご理解ください。


そして、ワラキアも白レンもオシリスも居ない状況でのタタリ

こちらは七夜自身が関係しているということでストーリーを勧めたいと思います。



好感度

なのは  +5
美由希  +8(散歩に行けなかったから)
フェイト -?




続きたい



[15623] 七ツ夜と魔法 第6話
Name: モンテスQ◆b121c041 ID:1f52e1b8
Date: 2010/04/27 23:54

[七ツ夜と魔法(MELTY BLOOD×魔法少女リリカルなのは)]


例外はない。

"限界"(いのち)を知れ■■■。

カタチがある以上、消え去るのが最低限の決まり事だ。



~第6話「蒼/"真実"(虚言)の夜」~



高町なのはは、必死に七夜を見つめていた。

キチギチと小太刀と魔法障壁がこすれる音の中、一目でわかる。

七夜の顔が、先ほどまでの凶悪な笑顔から、幽霊でも見てしまったかのような。青ざめた表情に変ってしまっている。

「お願い、七夜さん!殺しちゃダメ。落ち着いて話し合わなきゃ、何も解決しないよ!」

しかし、訴えかけるなのはに七夜は

「………そいつは人外だぞ?行ってしまえば魔物のようなもんだ。そんな奴が襲ってきて、殺してやらないのは礼儀知らずってもんだ。」

言い回しは普段通りのようだが、体は今にも崩れ落ちてしまいそうな位カタカタと震えていて、声に力が無い。


ガシャリ

と、ついには小太刀さえも手から落としてしまう。

「た、例え人間じゃなくても!生きているものの命を奪うなんて、そんな権利誰にも無いです!」




それを見ていた背後のアルフは

(ナンデだい?何故この子はよく知りもしないあたしに命をかけているんだい?解らないよ……男の方も、いきなり震えだして…)

そう考えていた時

『アルフっ!!!助けて!!!!』

叫び声のような念話がアルフに聞こえてきた

!!?『フェイト!!どうしたんだい!?フェイト!!!』

しかし、フェイトからの返事は返ってこない。

つまり、念話をしている余裕が無い程の緊急事態。意識を失ったか―――――

こうしてはいられない

フェイトのいるところまで、急いで移動しなければならない。

幸い男は既にこちらに視線を向けていない。

目の前の子どもも、こちらに背を向けている。



アルフは自分の持てるすべての力を振り絞り、七夜となのはに背を向け駈け出した。

そして急いでフェイトの居場所を魔力で探索する。

すると、幸か不幸か思ったより近く。

200メートルも離れていない、同じく森の中

そして、すぐにフェイトの姿をとらえることができた――――――――が、

そこは

木々がまるでニンジンがスライスされたかのように、辺りにゴロゴロと乱切り状態でで散乱し

そこに足をとられたのか、フェイトが尻持ちを着いている

右手に持つバルディッシュの切先を威嚇するように手前へ向けていて




その先には



「な!??何であいつがいるのさ!?!」



学ラン、黒髪、蒼く輝く瞳の、"先ほどまで自分が戦っていた少年"


どんなに男が早くても、最短ルートで移動しても、自分より早くたどり着くことは出来ない筈だ。

――――冷静になれ

フェイトからの念話が来たとき、男は自分の目の前に居た。

(まさか双子?)

―――――深く変えるな、余計な思考はいらない。だけど、

もしも今、フェイトの目の前に居る男が"さっきの男"と同じような奴だとすれば

森の中というこのフィールドは拙い。



そう思いアルフは一目散にフェイトに向かって飛び出し、半ば退当たり気味にフェイトを左腕で抱えると、右手にありったけの魔力を込めて



「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーーー!!!!」



地面を殴った




爆弾が炸裂した様な音と共に一面の土が舞い上がる

「逃げるよフェイト!!」

叫ぶようにフェイトに向かい声を掛けるが、当のフェイトは必死に男がいるであろう方向に腕を伸ばし

「―――駄目っ、まだジュエルシードがあそこにある!」


ジュエルシード!?つまりフェイトは封印作業を行うところを襲われたということだろう。

シーリングモードは無防備に近い状態だ。逃げ惑うことで精いっぱいだったようだ。


アルフは少しだけ迷い


「駄目だよフェイト。ジュエルシードがすぐそばにあるってことは、迂闊に砲撃魔法は使えないよぉ!!一旦退こうよ。空までならあいつも追っては来れない筈だからさ。」

しかしフェイトの目は強固な意志で

「…やっぱり行かなきゃ。母さんが待ってるから――――!!」

そう答えるとフェイトは自力で飛び上がりバルディッシュのモードを変え、ハーケンセイバーを打ち出す。

非殺傷設定の攻撃とはいえ、生身で受ければひとたまりもないダメージだ。



男の瞳を視る


そこで更に不安感が増す。


蒼い瞳は、まるで迫りくる斬撃を見ておらず、"斬撃の何か"を視ているようだった。

そして、ゆっくりとナイフを真上に揚げ




斬撃を"斬った"(殺した)。





「な!?」


アルフとフェイトは一瞬、何が起こったのか理解できなかった。

(魔力の塊を斬った?違う、斬っただけなら魔法の構成術式が崩れて、魔力が周辺に霧散する筈だ。)

今のは違う。斬られた魔法が形を失い、まるで最初っから斬撃が無かったかのように魔力さえも消滅してしまったのである。




「理解したか」


冷や汗が止まらない。さっきの、夕暮れ時に会った男のときよりも本能がデッドサインを送り続ける。


「これが」


ああ、そうだろう。その言葉が一番しっくりくる。



「モノを殺すっていうことだ。」




今度こそアルフはフェイトを抱え一目散に飛び逃げて行った。








―――――――――――――――








ジュエルシード。臨界点まであと僅か。






そこに、遠野志貴というタタリが触れた瞬間―――――――





《死徒27祖 13位 タタリ ズェピア・エルトナム・オベローン 恐怖 噂 吸血鬼 固有結界 アルトルージュ・ブリュンスタッド 契約 朱い月 白猫 悪夢 夢魔 オシリス シオン・エルトナム・アトラシア 記憶 再演 ――――――》




虚像は此処にカタチを持った








――――――――――――――








時刻は19時を過ぎたところ。




「軟弱だ!これほど軟弱な男は見たことが無い!!」




高町なのはは心底呆れていた


あれから七夜は、プツリと糸が切れた人形の様に意識を失い、なのはに覆い被さるように倒れこんできた。


「え?―――七夜さんっ!?七夜さん!!しっかりして!」


あわてて七夜を支えようとするなのはだったが


丁度その時


「なのは~?そこに居るのー?」

宿に戻ってくるのが遅いということで、二人を探しに来ていた高町美由希が


「あ、いた!い―――――――――――――…………………」


ここに二人目の、本日都合三人目の若者気絶者が出来た。



その後、なのははユーノを名犬のように使い、士郎とノエルを案内させ宿まで運び入れた。



そして、七夜が意識を取り戻してからは、士郎は今までのストレスを発散するかのように罵倒し挑発し始めて現在に至る。

そこに恭也が割って入り。

「お、俺の剣――――――御神の剣を勝手に持ち出した罪は重いぞ七夜ぁ!!」

気絶していた恭也から小太刀を拝借していた七夜は何処吹く風で。

「別にいいじゃないか?お前よりも俺の方が扱いは上手いと思うんだが?」

と、火に重油入りのドラム缶を投げ込む。



一方、美由希は意識を取り戻した後、漸く状況を理解したが

「良い?なのは。なのははまだ"ああいったシチュエーション"にはなっちゃいけない年齢なのよ。だから、明日は私が七夜君と一緒に居る番で――――」

なのはとしてはそれは拙い。ただでさえ、あれからジュエルシードの反応が忽然と消え去ってしまい、事後調査をしなければならず、森の方を美由希にうろつかれては非常に不味い。

そして、個人的感情だが何故か美由希と七夜が腕を組んでいるイメージが気に入らず


「ダメぇ!!七夜さんは私(と調査に行く)の!!」






士郎と共に、また恭也が気絶した。






こうして温泉宿での1日が終わるが







『       次のニュースです。            海鳴市で起きている連続通り魔事件ですが                   の目撃者証言では                 犯人は学生服に                     蒼い眼をした少年で                警察は                  』










~あとがき~

5月にまた社会福祉の現場実習が入るので暫く間が空きます。

個人的にはアルフのミミが堪らない。


好感度

なのは  +8
美由希  +10
フェイト -8


さぁ、ここからどうやって七夜がフェイトを落とすか考えねば!


続きたい



[15623] 七ツ夜と魔法 第7話
Name: モンテスQ◆b121c041 ID:c6f1147c
Date: 2010/05/25 10:58
[七ツ夜と魔法(MELTY BLOOD×魔法少女リリカルなのは)]


…懲りない黒幕だ。

噂を助長する■■■を象どるのはいいが、

私はいささか凶暴だぞ?



~第7話「再演(再縁)/再現(際限)」~




なのはたちが温泉から帰ってきてから数日


海鳴、遠見を中心に奇妙な噂が流れていた。


『殺人鬼が出る』

ニュースで流れていたかもしれない。聞き違いかも知れない。

『犯人は高校生』

不確かな、誰とも知れない目撃証言。

『蒼い眼』

街灯の反射でそう視えたのかもしれない。



道行く誰かがこういった


『噂が"ひとり歩き"している』





――――――――――





月村忍は眉間に皺を寄せながら、海鳴一の豪邸の居間で大量の書類に目を通していた。

七夜志貴に関する調査結果がようやく出たのだ。本来ならもっと喜ぶべきなのだろうが、結果はことごとく不安を引き立てるものばかりだった。


―――正体不明――――

―――戸籍無し――――

―――来歴不明――――

―――七夜姓…該当なし――――


「これは大問題だわ…」


名前や来歴を偽っている可能性は十分考えられた。

しかし、屋敷内に落ちていた毛髪もひそかにDNA鑑定に出していたのだ。

世界中の各医療機関から取り寄せた資料と照らし合わせ、一致。或いは血縁者でも見つからないものかと躍起になったが



該当者無し



世界のどこにも彼を証明できるものが無いのだ。

正体不明どころではない―――――――"正体不在"(アンノウン)だ



そしてさらに不安に追い打ちをかけるかのように最近の噂

海鳴に出没する殺人鬼

恭也からの報告では、彼は毎晩11時には就寝して、翌朝の6時半には起きているそうだ。

特徴が一致しているが、犯人ではなさそうである。

だけど



『噂を聞いた七夜は一瞬、とても動揺する素振りを見せた』

恭也が言うのだから間違いはないだろう。噂の人物について何か知っているのかもしれない。

それにしても、あのポーカーフェイスの七夜が動揺を顔に出すとは…最初に見たときは多分、私の血に反応したのだろう。こちらを殺したくて仕方がないといわんばかりの殺人鬼の眼つきだった。

高町家に居候し始めてからは、女性陣の前では優しい好青年のようだ。

「いったいどっちが本当の彼なのかしら?」


まあ、彼のことは不安だけれども、まずは巷の殺人鬼を何とかしないといけない。高町家の殺人鬼に事情を聴いてみるとしよう。






――――――――――





高町なのはは今夜もジュエルシードを探しに夜の街へ出向いていた。

しかし今夜はナニカガチガウ。

繁華街を行く人は殆どなく。たまにすれ違う人からは噂の声。――――――――殺人鬼、吸血鬼、食人鬼、―――――死都

なのはは、だんだんと不安になってきていた。

この町で何かが起きようとしている。

なのはの肩に乗るユーノも正体の知れない不安を感じていた。

夜の徘徊に七夜志貴は同行していない。

ただそれだけのことが、今のなのはには不安でたまらない。




蒼い瞳の殺人鬼


学生服の殺人鬼

刃物を持った殺人鬼


殺人鬼




先日の戦闘、赤銅色の髪をした女の人との戦闘時、なのはは身をもって実感した。

七夜の起こした行動は最早本能のレベルだと。

道場で見る兄姉の実力を遥かに上回っている殺人技巧。

「七夜さんって、今までいったいどんな人たちと戦ってきたのかな………」

「……なのは…」

ユーノも同じことを考えていたみたいだが、考えれば考えるほど答えが遠ざかっていくようだった






気がつけば小さな公園にまで来ていた。ブランコも無く、ただ鉄棒と砂場、ベンチがある簡素な造りの広場。


街灯は電気が切れかかっているのだろう、点滅を繰り返すが

『protection』

「え?」

気がついたときにはレイジングハートが自動システムにより対物理障壁を展開していた。

次の瞬間、豪雨のような黒い雨がなのはに向かって突き刺さるように降り注ぐ。

「――――な、なに!?」

動揺するなのは。しかし、意識を黒い雨に向けると同時に

「――――――――――ひっ、、、、、、い、や、、、、、いやぁあああああああ」

雨の正体が生き物。鳥だとわかる。





生き物が死んで逝く

死ぬ

死んじゃう


なのはの中で嫌な記憶がよみがえる。

全身包帯のお父さん

モノ言わぬお父さん

泣きじゃくるお母さん

暗いお姉ちゃん

無理をして怪我したお兄ちゃん








独りぼっちの私(なのは)






いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、




いつの間にかなのはの目の前に黒い巨漢が立ちふさがっていた。


「ふむ、幼い身でありながら、内包する魔力は既に我が混沌の一撃を防ぐか………」


なのはは目の前の焦点が定まっていない。目の前の黒い巨漢を脅威と感じる力も無くなっている。

「今までに無き夜に驚きはしたが……成程、原因が第2の魔法か虚言の再演かはどうでもいい。此の身は吸血ではなく暴食を主とする無限の系統樹。衝動のままに、役割ごと喰らいつくすとしよう。」

目の前の黒い巨漢は、黒いコートの中から狼の群れを放ち襲いかかる。


「なのは!!逃げて!!」

ユーノが必死に叫び、迫りくるオオカミの群れにバインドを掛けるが、すぐに黒い混沌に溶けてしまい押さえきることもできない。

ユーノは何としてもなのはだけでも逃がしたいと考えていたが、数秒後絶望が視える。




辺り一面は獣と魔獣の黒い群れ。

空も大地も黒く染まりあがる。


「我が名はネロ・カオス…混沌の名を冠する吸血鬼だ。

――――――契約しよう――――――――その肉―――――――――生きたまま少しずつ咀嚼しよう!!」

「!!」



一斉に獣が襲いかかる




もう助からない。そうユーノが思った瞬間



無数に降り注ぐ金色の光が、獣を消し飛ばしていた。



「ば、……バケモノ……管理外世界はバケモノがいっぱいだって、リニスが言ってたけど本当にそうだったんだ!」

フェイト・テスタロッサはバルディッシュをカタカタ振るわせながら、そんな感想をネロ・カオスの真上で漏らした。

本来ならフェイトはネロに攻撃を加えようなどと考えてはいなかった。

しかし、リニスからの英才教育の賜物か、優しい性格に育った結果か、"傷ついた"(虐待をうけた)自身と重なって見えたのか、身の危険に晒されている少女を視て見ぬふりをすることがどうしてもできなかった。



「ぬ?―――――ここは何とも不思議な地よ。私が知る魔術と異なる神秘を築き上げているとは。ますます興味がわいたぞ。」

ネロ・カオスは不敵に笑いだす。


「だが!!此の身を滅することが可能な者は殺人貴のみ、貴様のような脆弱な"意志"(能力)では揺るぎもせん!」





       武装666                 




ネロ・カオスは体内の密度を高め、地を蹴り大きく跳ね上がる。


そして一瞬でフェイトとの距離を詰めると腕を大きく振り上げ          防御障壁もろともフェイトを叩き落とした。




「―――――あぐぅっ!!―――――」

受け身もろくにとれなかったフェイトは痛みでその場に蹲ってしまう。唯一救いだったのは砂場に落ちた為、骨折などは無いことだが。

その場に留まる事は致命傷だった。




「――――その肉、悉く喰い砕こう!!」

ネロ・カオスから解放される混沌の群れ

上空からフェイトに向かって一直線で迫りくる






「………けて………」










「誰か助けて!!」

それはフェイトではなくなのはが叫んだ一言


                      殺されて良い命なんてない


目の前の少女を助けてほしい。


                     純粋な、しかし奇跡のような願望など
                     
                     
                     
                     




          閃走・水月
          
          
          


「やれやれ、可愛らしいお姫様を助けるだなんて、役者冥利に尽きろところだな。」


ここに、虚像の実現者が体現して見せた。


七夜志貴がフェイトを抱きかかえ砂場を離脱していた。

「やっぱり、脳天串刺しじゃあ満足いかなかったか?ネロ・カオス」

とたんに、なのはの顔に生気が戻り


「七夜さん!」


七夜はフェイトをなのはのそばに下すと、二人に向かい


「なのはちゃんは、これといって怪我がないみたいで何より。……こっちのお姫様は……打撲が酷いがしばらく休ませれば問題ないだろう。」

そう言って学ランを脱ぐと、座り込んでいるフェイトの肩にかけ、頭を優しく撫でた。

「――――え……???………え!?」

フェイトは混乱しているようだったが、七夜は気にせずネロ・カオスの方に振り返る。

「待たせてしまったかな?」

「……成程、貴様がこの夜の中心か。」

「……?何のことだ?今はレンもそばに居ないんだが?」

「そうか、ならば13位も堕ちたものだ。まさか契約に狂いが生じていようとはな…」

「あんたとは、もうちょっとまともな会話ができるのを期待してたんだが…仕方がないな。」

「ふむ、そういうことなら既に遠慮は要らんだろう。私は喰らう者であり、貴様は殺すものだ。咬み合わぬのは当然だ。しかし、幾度の夜を血に染め上げた者同士――――」

「――――ああ、お互いの魂が極彩と散るまで、      殺し合おうか       」


七夜は小太刀をさやから引き抜き、ネロ・カオスに向かって疾走し始めた。

その姿はまるで遠野志貴とネロ・カオスが公園で殺し合った時のようだった。

ただ、違う点を挙げるとすれば



七夜の持つ獲物は小太刀であり



"直死の魔眼を持っていない"ことだった。


1度目の夜は遠野志貴のなれの果てとして有していた。


2度目の夜は遠野志貴の"使われない行動原理"として呼ばれた為有していなかった。


3度目の夜は1度目の再演だが"2度目の夜から留まっていた"為有していなかった。




迫りくるオオカミや豹の群れを斬り進んでいく



バターを斬るようには滑らかにはいかない。

それでも



閃鞘・八穿


首を刈り取り


閃鞘・六鹿


顎を蹴り砕き


同時に飛びかかってくる獣を一瞬で無数の肉塊へと斬り刻む。



「今度こそ死んでくれよ!"吸血鬼"(ネロ・カオス)!!」







――――――――――――――――









「どうして……!?」

フェイトから思わず疑問の声が漏れる。

今目の前で自分たちを守るために戦っている青年は、口調こそ違ったが先日の温泉街で戦った青年と同一人物な筈だ。

あの時の言葉―――――――『君をコロス』―――――――――

とても怖い一言だった。

次に会ったら一目散で逃げ出したいくらいだ。

でも、今の彼は心の底から優しくて――――――――温かかった。

しかしそこで、隣で未だ座り込んでいる少女の先ほどの言葉を思い出す


『ナナヤさん』


(ナナヤ?トオノシキじゃないの?)

そんな疑問が浮かんだ。


そこで、隣の少女に訊いてみた。

「あの人の名前、なんて言うの?」


「え――――――……?…――――――っ!!!?」

少女は一瞬首をかしげるように不思議そうにこちらを視たが、その後とても顔を赤くし焦ったように驚き始めた。

(…………?言語が間違ってたかな?)


その後少女はカタカタと肩を振るわせ、俯きながら。

「……は、――――の」

「え?」

小さな声で呟いているようでよく聞こえない



「七夜さんは私のなのーーーーーーっ!!!!」



「!!?」

何か盛大な勘違いをしているようである。―――ああ、私がお姫様って言われたから、彼に嫉妬しているってことなんだろう。

頭のネジがちょっと緩い気がする。




気がする―――――――けど、




(、、、、、、、、、、、、、、)



私も、男の人にお姫様だっこされたことなんて無かったんだから、責任を取ってもらわなくちゃっ。












~あとがき~

執筆遅っ!!……堪忍や…

ひとまず、書きあがったところまでを投稿します。

そして重ねてお詫びを…


月姫(メルブラ)でやれ


ホラーチックな戦闘をなのはに任せるには良心の呵責が…


個人的には、なのは「なのちゃん」の方が大好きなんですけどね。やさしい、喫茶翠屋の白い天使…可愛いじゃないですか。

頭のネジが緩いのは私の好みと、フェイトとの2度目の戦闘が無かったことから、危機感が今一つ欠けているということになります。


リリカルの世界では型月の面々は弱いのでは?という噂も聞きますが、

私は両方ともステージが変われば優劣は付けづらいと思っています。



今回の戦闘を書いてみたかった理由は、マジでダンディーなジョージが少女を襲う変tうわなにおするやめr(y…




好感度

なのは  +12
美由希  +10
フェイト  +8(仮)and-5







[15623] 七ツ夜と魔法 第8話
Name: モンテスQ◆b121c041 ID:777c81eb
Date: 2010/06/05 22:23
[七ツ夜と魔法(MELTY BLOOD×魔法少女リリカルなのは)]


人間である以上、その疑問はつねについて回るのだ。

背徳、自虐、善意、博愛。

人間とはこれらの機能が付属したサルである。


~第8話「フェイト/退魔 ナイト」~



少しだけ時間は遡る

喫茶翠屋での仕事を終えた七夜は、いつも通り高町家の居間で桃子や美由希と雑談をしながら夕食を終え、食器の片付けをしていた。



「七夜君もだいぶウチでの生活に慣れてきたよね~。……その、良かったら週末に、…私と…」

美由希はさりげなく、七夜とデートの誘いをかけようとしたとき

「七夜、ちょっと父さんの部屋まで来てくれないか?それと美由希、週末は道場でみっちり鍛えてやる。」

恭也が横から割り込む。

「ちょ、恭ちゃん!?今週末はオフだって言ってたのに…!!」

「やれやれ、美由希さん。今週は俺もバイト代が入るから、宜しければディナーに付き合って頂いても良いかな?」

「――――っ!?貴様…!!」

美由希は"付き合う"という単語に、神速を開眼したかのような超反応で

「な、七夜君とディナー……デートの誘い――――――――――行くよ!!絶対行く!!」

そう言うと一目散に桃子のいるキッチンへと駆け出し

「義母さん!ど、ドレス!ウエディングドレス貸して!」

「ふふふっ、美由希ったら気が早いわね。まずは、七夜君にホテルでちゃんと口説いてもらわなきゃっ。」


女性陣が盛り上がりを見せる中で、七夜は背後からの殺気をそよ風のように受け流していた。そしてついに



「「ナーーーーーーーーーーーナーーーーーーーーーーーーーーーーやああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」」


二刀小太刀を振り上げる、発狂した不破剣士の2名が七夜に襲いかかってきていた。

二人の猛攻を七夜は軽やかにバックステップでかわし



「よっと」



玄関で靴をかすめ取ると、そのまま庭に出た。


「毎度のことながら、丸腰の相手に対しての刃物はどうかと思うぞ?」

以前の七夜に対してなら、ツッコミどころ満載の皮肉である。

しかし、今の恭也や士郎にとって挑発は起爆剤となり

高速戦闘を主とする2対1の図式が出来上がろうとしたところで―――――――





―――――――――魂がタタリの夜に反応した



「!!?」


七夜は驚き、そこに隙が生じる。


棒立ちとなった七夜に恭也が一直線に飛びかかり刀を振り上げる。

「覚悟!!!」





一瞬の間、意識を手放していた七夜は―――ふと、現実を取り戻し。


とっさに



「      極死      」

手ぶらの右腕を月夜にかざし

振り下ろすと同時にその体が消える。



「――――!!何処に!?」 士郎が驚くがそのときすでに

七夜は恭也と向き合うように逆さまに跳んでいて

左手は刀の鍔に手を掛け、右手は恭也の顎に手を掛け





「      七夜      」


恭也の後頭部を地面にめり込ませる形後ろに押し倒した。


士郎は驚きが隠せない。

いくら恭也の動きが怒りで単調になっていたとしても、この実力差は出鱈目だ。

七夜が攻撃に移る瞬間、右手を挙げたのは何か業物を持つことが前提とされることを意味している。

そして、後ろに押し倒された形となっているが、本来あれは首をねじ切る為の動作。

つまり、回避不可能の無慈悲な選択を迫る技だったはずだ。


「七夜君、君は……」

「なのはちゃんを探してきます。……最近なのはちゃんが出かけているのはご存じですよね?」

「え?あ、ああ。なのはも真剣そうだったから、こちらからは何も聞いていないがな。―――――――なのはに何かあったのか!?」

「今夜は少々危険な夜だ。鬼と吸血鬼と――――殺人鬼が出る。」

「吸血鬼―――――月村家のことか?」

「いいや、そんな殺しがいのない連中じゃないさ。」

七夜は肩をすくめながら気絶している恭也から小太刀を1本取り上げ、静かに鞘へと収める。

「衝動が、頭の中でガンガン五月蠅いんだよ……殺さなきゃいけない奴がいるってね。」

人外に反応する七夜の衝動。混血を殺すことを生業とする一族。強い衝動ということは―――より、魔に近いモノを意味する。

「それなら私も――――「駄目だ」―――っ、何故だ!!」

士郎は1秒でも早く駆け出しなのはの、我が娘の下へ向かいたいというのに

「士郎さんは待っていてください。」

その表情はいつも以上に優しく、狂気を帯びていた。



蒼く輝く瞳は誰が為に――――――





「俺が必ず助け出します。」




弱き者を魔から守るため




「退魔四家が一つ、七夜の名にかけて。」




七夜は士郎に背を向けると、影絵の街へと走り出した。






――――――――――





「七夜さん!!もう止めてっ!!、これ以上――――これ以上動いたら――――――――」


高町なのはは必死で叫び続けている。

その声は後悔の念でいっぱいであった。



自分のせいだ



自分はいつも通り、塾から真直ぐ家に帰って



自分はいつも通り部屋でごろごろして



『助けて』なんて叫ばなければ――――――――


――――――七夜さんはこんなにも怪我を負うことは無かった。




七夜志貴は既に満身創痍だった。

ネロ・カオスとの戦闘が始まってから、既に40分が経過しようとしていた。

ワイシャツはに血に染まり白い所を探すのが困難なほど。

左腹部の端には鰐に食い千切られ、おびただしい程の血液が今も地面に滴り落ちている。


しかし、それでも尚七夜は襲い来る獣をひたすら殺し続ける。


オオカミの群れを細切れにし、

オオムカデを輪切りにし、

混沌とした腕は5分割、

脳天を串刺しにし――――――可能な限り混沌を一か所に集めないように斬り飛ばしてゆく。




――――右肩口が豹に食い千切られた。



小太刀を左手に持ち替え、開きにする。




――――左足首を小型恐竜に咬まれアキレス腱がぶつりと裂ける。



右足に重心を置き、すぐさま解体する。





止めどなく溢れだす血液。


最早致命傷どころの騒ぎではない。

なのに、逃げ出そうとしない。戦意を喪失しない。闘争心は膨れあがるばかりで、尚も殺害対象のみを浄眼で見据えている。







傷の状況からして、もって後数分で訪れる





























「ふっ、どうやら今夜は私の勝利で終わるようだ。しかし、皮肉なものだ。喰らい合うは虚像とはな。ニンゲンではやはり物足りん!――――――だが」

ネロ・カオスは満足のいかない顔をする。


「本体の混沌残存数―――――――108………成程、魔の殺し方は心得ていると言う訳か。」

「さて……本当は無垢な乙女に頼むのは気が引けるんだが……」

そこで初めて七夜はなのは達の方へ振り返る。

「まだ動けるなら、そこいらに蠢いている混沌の残骸を消し飛ばしてくれ――――俺は吸血鬼を殺す。」

ネロに戻っていない混沌は今にも地を這いずり一つに固まろうとしている。





体中が軋むフェイトは

「母さんが待ってる……ここで死ぬはけには、いかない……バルディッシュ!!」

座り込んだまま魔法を構築し始め、上空から無差別に閃光を放つ。




大地を焼き切る轟音が合図となり、七夜は再びネロに向かって走り出す。





「人間風情が!!調子に乗るな!!」




七夜の身長の数倍はあろう甲殻類――――昆虫にも似た大型魔獣が繰り出される。





「悪いな、――――――――――調子に乗らせてもらうぜ!!」



七夜の体が宙を舞い相手の体の節や外郭の薄い所を狙い解体しつくして行く。




残り99



「ぬあぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」



ネロ・カオスは残りの命、全ての密度を高め自身を魔物へと変貌させる。



そのまま七夜に突進―――――――――――することは出来なかった。





ネロ・カオスを縛りつけるユーノ・スクライアのバインド





「このような脆弱なもので―――――――っ!!?」




確かに密度を高めたネロ・カオスに対してバインドは数秒しか持たない脆弱なものだっただろう。




しかし目の前の殺人鬼は












数秒で99の"混沌"(命)を殺しつくす。









「今回の教訓はこれに尽きるだろ……"女こどもには優しくしろ"ってね」







そう言い終わると七夜はネロの残骸の中に倒れ伏した。










―――――――――――







「すごい、あの人……」

魔法も使わず剣1本でバケモノを倒しちゃった。


黒い泥を倒すことが出来なかったみたいだから、私が消し飛ばしたけど……


本当にすごかった


でも


私に襲いかかっち来た時と同じような力で倒さなかったってことは…やっぱり別人


ちょっとややこしいけど


「………ナナヤさん…か、…まだ……ドキドキが止まらない―――――――――じゃなくって」





上手く動かない体を引きずりながら彼の倒れている所まで行くと、既に駆け寄っていた白い少女が。

「七夜さん!七夜さんっ!!いやっ!!死んじゃ嫌ーーーーーーーーーー!!」

半ば卒倒しそうな雰囲気で叫んでいた。

「なのは、落ち着いて!大丈夫だよ!この化物の残骸…たぶん命の塊みたいなものだから、こいつを上手く傷口に埋め込めば助かるかもしれない!!」


フェレットが白い少女を落ち着かせようとする。


私も無言で彼に、あまり得意ではない治療術式を使うべく魔法陣を展開する。


それに対してなのは?という白い少女はこちらの行動に気が付き。

「大丈夫だよなのは。形状から見て、たぶん応急用の治療術式だと思う。」

フェレットが私の魔法について説明をすると、一瞬頭がフリーズしたのか、白い少女は動きを止め



「あ………………、……………―――――――!…………だめ、……駄目ぇ!七夜さんは私が帰って看病するのぉ!!」



駄目だこの子…やっぱり頭のネジが緩いみたい。

それに、色々"お礼"もしたいから私の部屋に……………男の人をへや、に、………つ、つつつれ込む!!?

ああああ、アルフもいるし大丈夫!―――いや、アルフには休暇を挙げよう。ドックフード専門ショップに行かせれば2日は帰ってこないだろう。




その間2人っきり……………うん、そうしよう!!








~あとがき~


こいつら…こんなキャラだっけ?

このまま行くと、皆ヤンデレヒロインじゃないか!!

次回はまともに書きたいな、うん。

ネロ・カオスとの戦いは如何でしたでしょうか?

混沌の獣は死んで混沌(命)に戻ると、ネロ本体に戻らなければ元に戻らないという条件があったと思い

また、そうしないと、このメンツじゃ勝てないと思い、ネロさんには消えて頂きました。

美由希のドレス姿はパッケージでデフォです。



好感度

なのは  +15
美由希  +15
フェイト  +12 and-5



続きたい



[15623] 裏小話その2
Name: モンテスQ◆b121c041 ID:777c81eb
Date: 2010/06/06 22:21

[七ツ夜と魔法(MELTY BLOOD×魔法少女リリカルなのは)]


――――フ。信組の気配をたどってみれば、
待っていたのは哀れな犠牲者一人とはな。
出てくるがいい、そこの人間。



~裏小話その2-1「その頃、先生と教育ママは」~


「よくも私の事務所の住所を協会にばらしたな…覚悟は出来ているだろうな?"蒼崎青子"」

「あら~?どの口がほざいてるのかしら?…ひとの口座の残高マイナスにするまで使い込んだ"傷んだ赤"に言われたくないわね?」

蒼崎姉妹は草原で一触即発の状況だった。

「せ、先生!!?落ち着いてください!ほら、先生だって七夜の為に色々尽くしてくださって気分が盛り上がっているのは解りますが…」

「おぃ、そこの高校生。……いい眼を持ってるじゃないか……同じ顔でも、こいつはまた別格だ。イラついてる気分の憂さ晴らしだ。殺し合おうぜ。」

遠野志貴の青子に対するなだめの言葉を遮るように、着物に赤い革ジャン姿の両儀式が殺し合いへと誘う。

「あ、あんたもぶっ飛んだ思考してないで二人を止めてくれよ!~~~~あぁーーーっどうしていつも俺の周りは思考が物騒な奴しかいないんだ!!」



「私をその名で呼ぶ奴は―――――――誰であろうと"ぶち殺す"!!!!」

「私をフルネームで呼ぶなんて!――――上等っ!!私の金返せっ!!!!」










魔法使いと殺人鬼の夜は終わらない。










~裏小話その2-2「カオス再誕」~


なのは達を守りきり、七夜志貴はネロ・カオスを倒した。


ネロの残骸は殆どフェイトが消し飛ばしたが、草むらの陰に333の混沌の因子が再び集まろうとしていた。






そして






「ふぅっ、ニャる程。これが世に言うスプラッタ劇場という訳か……いゃあ、最近のCG技術は素晴らしい。まるで3Dテレビだニャ。」

「――――む?SOS信号?もしやこの世界にも"さっちん"がいるのかニャ?」

「予感としては母の愛情を求めながらも、同世代の幼女と百合ん百合んな関係に発展しそうな金髪"ツインテ"(ヤンデレ)な気がしてなぁりません。」

「まぁ、キリングフレンドにその辺は任せるとして。吾輩は早速今夜のワイフ(2次嫁)をハント(探)しに行くとするか…」









影絵の街に混沌のネコは歩きだした。







~あとがき~

短いながらも裏話第2幕でした。

OPの原因はさらっと書く程度でいいと思ったので、あと魔法使いの夜が出ていないので、こんなギャグになりました。

ネコ・カオスは…書きたかっただけです。ネロと言えばあとはギャグになってしまうので…

続くのか?




[15623] 七ツ夜と魔法 第9話
Name: モンテスQ◆b121c041 ID:8313d438
Date: 2010/07/19 10:26
[七ツ夜と魔法(MELTY BLOOD×魔法少女リリカルなのは)]


オレとよく似た眼を知っている?

それはどうも。

どうせ、そいつもロクなヤツじゃないんだろ。


~第9話「Re;/paradox」~



…まったく、あっちの世界での住人とまた殺し合えるのは、嬉しい限りなんだが…

いちいち戦うのに目的が付いてくるとは、俺は正義の味方じゃぁ無いんだけどな。

ヒロインを助けて自分はデッドエンドなんて、何処の三流役者だ?

…まぁ、こんな闘いも悪くは無いか。





「ええと、包帯は取り換えたから……後は、治療術式を再構成して…」



ん?聞き慣れない声だな?眠っているのも、そろそろ限界か。



起きるとするか






眼を覚ますと、はじめに映ったものは高町家の天井では無かった。


天井が高いモダンな造りの部屋…見知らぬ部屋


場所の特定は後回しにしよう。今は自身の確認が先決。

体を起こし、ベッドから降りる。

ふと見ると上半身は裸になっていて覆い隠すように包帯がくまなく巻いてある。


骨、筋肉共に違和感はない。強いて挙げるなら、体中に巻かれた過剰ともいえる包帯の量だが…

「死を覚悟するくらいの怪我だったんだがな…どうなってる?」

なのはちゃんたちが直してくれたのだろうか?だとしたら、なんて無様だ。

守った筈の少女に命を救われるなんて、安い男なんてレベルじゃない。

七夜志貴はどんな時でも余裕の姿で瓢々としているものだ。


ああ、どうしちまったんだ…





ガチャリ


と、部屋のドアが開き、この前の金髪の少女が少し驚いた顔でやってくる。


「え……と、ナナヤさん?で…いいのかな?眼が覚めたんだ。」

彼女の両手には換えの包帯と消毒液がたくさん抱えられている。どうやらこの包帯は彼女が巻いてくれたものらしい。

「ああ、おかげでだいぶ良くなったよ。助けてもらって感謝するよ、お姫様。」

「えーと、私…そんな、お姫様じゃぁ…」

「…そういえば、まだ名前を聞いていなかったな。それとも、お姫様のままがいいかい?」

「フェイトです。フェイト・テスタロッサ」

「フェイト…ああ、運命って意味か。いい名前じゃないか。」


少々からかう意味で口にしてみたが、フェイトは思いのほか顔を真っ赤に染め上げ、頭からは湯気が立ちのぼる。



「え、ええええええぇ、と、私!コンビニでお弁当買ってきます!」



そう言って包帯と消毒液を抱えたまま部屋を飛び出して行ってしまった。


「やれやれ、お姫様にはまだ刺激が強すぎたかな?」

そんな独り言を吐きながら、体の感覚を取り戻すためにベッドから降りて立ち上がる。

まずは、今いるフェイトの家を把握して、出来るだけ早くここから立ち去ることを考える。


部屋から出ると、モダンな造りのリビングへと出た。


しかし、フェイトは物欲に乏しいらしい。なのはちゃんの部屋と比べると思考が大人びているようだ。


まずは時間の把握、これは壁掛けのアナログ時計と外の様子から16時40分と判明。

日付は…確認できないがネロとの戦闘から、1晩ないし2晩は経過していると予測。

フェイトに預けた学ランは、テーブルの上にきれいにたたまれた状態で置かれていた。小太刀も同じくして隣に置かれていた。


ただ気になるのは、学ランの第2ボタンが紛失していた。


「……?まいったな。ボタンの代えはあったかどうか……」



そこでふと、棚に置かれている写真立てに眼がいく。

そこには、ひとりの金髪の少女と、ひとりの黒髪の女性の姿が映っている。

「これは…お姫様の写真かな?ってことは、隣に映っているのが母親か?……ん?」


しかしそこで、金髪の少女に違和感を覚える。

浄眼をつかい、眼を凝らしながら写真の少女を見つめる。


「……別人か?お姫様じゃないな……姉妹か双子か…?」

しかし、それでは説明がつきづらい。





姉妹にしては似すぎている。

双子だとしたら、この写真にフェイトが映っていないのは何故だ?


フェイトがひとり暮らしをしていて、そこに送りつけた写真だろうか?

だとしたら、えらくおかしな話だ。

何でフェイトしかここで暮らして居ないのか?

浄眼でフェイトを見つめたことがあるが、これといって普通の少女であり、退魔衝動も起きなかった。

彼女はまっとうな人間の筈だ。

タタリの複製者でもない。


「………」


すぐにここからいなくなるつもりだったが、気が変わった。この写真の金髪の少女はこんなにも幸せそうな顔をしているのに、フェイトは何で以前の翡翠みたいな眼をしているのか…



…まったく、自分を殺す殺人鬼を経て、雪原を守るシリウスの次は、"お姫様"(運命)を救おうとするナイトか?

何の冗談か。

しかし、悪くない。





漸く「七夜」としての人生が始まろうとしている。









―――――――








時は少しさかのぼり、ネロ・カオスとの戦闘が終わり、七夜の応急処置が終わったところで、公園で対峙する二人の少女。


「七夜さんは私の家に住んでるの!だから私が看病するの!」

高町なのはは未だに頭のネジが緩い発言をしていた。

「いやいや!!?なのは!?無理だから!どうやってこの惨劇を家族に説明するつもりだい!?」

ユーノ・スクライアは必死になのはに対しての説得を行いながら、金髪の少女に対して注意を向ける。

「ユーノ君!もしも七夜さんをアノ小に預けようとしてるなら…………」

レイジングハートの先をユーノに向ける。

「まって、なのは!?ご、ごめんなさい!!うん!ゴメンナサイ!!!」



「――――――え、と……」

対してフェイトは冷や汗ものだ。

自身の全身打撲は未だに痛みがあり、とても目の前の少女と闘うだけの体力は無い。

しかし、ここで引いたら、乙女として決定的にナニカに負ける気がする。

そう思い、ふと今、自分の肩にかかっている七夜の学ランを思い出すと


「………学ランの第2ボタンをアゲル」


「……………は?」
「…………………良いよ。その代り1晩だけだよ!」
「え?なのは!?ナニがドウなってるの!?」



ここに乙女の盟約が結ばれた。







―――――――――――






誰も居ないビルの裏路地




ヒトのいない細い通路



そこに在るのは死者


動く屍



蒼い眼が独り


右手に握るのは退魔の宝刀



無秩序な悲鳴の数多がこだまする




さぁ、虚言の月夜は太陽の浸食をハジメル





「賢者の石の再構成を開始する。基本ベースは三咲町のバックアップデータを活用。差異が発生する地点の修正演算を開始―――――――」









~あとがき~


短いです。 遅いです。 ご容赦を!



好感度

なのは  +15
美由希  +15
フェイト  +15 or -10



続きたい

H22/7/19 誤字を修正



[15623] 七ツ夜と魔法 第9-②話
Name: モンテスQ◆b121c041 ID:8313d438
Date: 2010/08/08 20:54
[七ツ夜と魔法(MELTY BLOOD×魔法少女リリカルなのは)]










~第9-②話「   /   」~


午後10時



「なのは、そろそろ本当のことを言ってくれないか?七夜君はどうしたんだ?」

なのはは自宅の前で待ち構えていた士郎につかまり、道場で折檻を受けていた。

なのはとしては1秒でも避けたい話、しかし忘れることは無く、誰にも話したくない惨劇の話。

「七夜君は…なのはを助けにいくと言っていた。つまり、なのはが危険な目にあう可能性を知り、わが身を省みず出向くほどの危険があったという訳だ。」

士郎は敢て吸血鬼という単語を避けていた。

吸血鬼…おそらく七夜がそう称した化物に遭遇した可能性は極めて高いと踏んでいたからである。

それと、吸血鬼について深く調べていけば、後々月村家の事情にも気がつき始めてしまうことを恐れてのことだった。

なのはは やがて大粒の涙を零しながら、よほど辛かったのであろう。顔をクシャクシャに歪めながら

「七夜さんは……ヒッ……グス……怪我して――――――私のせいで!!……血だらけになって……――――――た、私の………と、知り合いの!――――家で看病されてるの


私を    守って


   オオカミとか   いっぱい刀でこ――――――――――――――ヒッ!イヤ!!!イヤ!!!イヤーーーーーーーー!!!!
   
   
吸血鬼が!…黒い吸血鬼がっ!体から動物をいっぱい出してっ―――――七夜さんを襲って―――――――――」




しかし、なのはが錯乱しながら口にしたことは、士郎の知る吸血鬼とはかけ離れた、想像を絶する話だった。





黒いコートの吸血鬼

動物や化物の命を内包した吸血鬼

黒い混沌

666の命をもつ


ネロ・カオスという吸血鬼の話







「―――――何だそれは」

なのはの話がうそだとは思わない。

真剣な眼つきで、悲しそうな眼で話しているなのはを疑う士郎ではない。

「それが……吸血鬼だと!?」

「……うん、何だか七夜さんと前に戦ったことがあるみたいだったの。」

「っ!?」
士郎は言葉が出ない。

そんな不死身に近い吸血鬼――――いや、バケモノと殺し合ったことがある?

七夜はいったいどんな人生を送ってきたというのだろうか。

士郎も長らく裏の世界に身を置いていたが、そんな出鱈目な戦いは聞いたことが無い。

七夜の殺人術

そんなにレベルの高い戦闘技術を備えた彼の一族が滅ぼされるほどの鬼が存在していた事実

そしてなにより不安がつのる


『今夜は少々危険な夜だ。鬼と吸血鬼と――――殺人鬼が出る。』


吸血鬼は―――なのはが言っていたネロ・カオスという男に違いない。

鬼?……つまり七夜の一族を滅ぼしたモノと同じようなヤツがいるということだろうか?

それと


七夜と特徴が酷似した殺人鬼―――巷で話題になっている、眼鏡と蒼い眼の学ランを着てナイフを持った……


…………?    ん?ナイフ?眼鏡?


そういえば七夜はナイフや眼鏡なんて持っていたか?

なのはの話では、吸血鬼との殺し合いで使用したのは、恭也の小太刀だったそうだ。

七夜では無いのだろうか?


まあ、その話は後で月村家と話し合うとしよう。後は、なのはのことについてだ。


「なのは、次の質問が最後だ。今までは黙っていたが、何で夜中に出歩いているんだ?そろそろ話してくれ。父さんも、恭也だって心配しているんだ。」



「…それは……――――――お友達の探し物を一緒に探してるの…」


「探し物?」


「青い小さな石………」

なのはは、それ以上喋ることは無かった。





―――――――――





午後11時



士郎との話を終え家に入ったなのははリビングに居た。


なのはは精神状態が少し落ち着き、桃子が淹れたハーブティーをのんで色々あった一日の気持ちを休めていたところ

美由希がどたばたとなのはに詰め寄ってきた。

「七夜君は?ねぇ、七夜君は?今週末は二人きりでデートしてプロポーズしてホテルでディナーでいい雰囲気になって―――――ああ、なのはにはまだ刺激が強い話だったかな?とか七夜君だったらいっちゃって―――」

「………」

本当に最近の義姉はどうしたのだろうか?と、思うくらいのダメっぷりである。

今の義姉に対して最も有効的で脳髄へダイレクトで響く言葉を模索するなのは。


そしてトリガーを引いた

「七夜さんは金髪の女の子の家に泊まってるの」

なのはの口から飛び出す無常なる一言

擬音が聞こえるくらいの言葉の弾丸をもろに食らった美由希は容赦なく、無慈悲なまでのダメージによろけ膝をつくが、テーブルにしがみつきながら必死で、先ほどのなのは以上の錯乱ぷりを超える動揺を堪えつつ現実逃避をする。

「う、―――――――――――――――嘘だっ!!!!!七夜君はっ!七夜君は今週末私とウエディングで挙式でケーキ入刀は私の小太刀を使って―――」

「違うもん!七夜さんは私のっ!!!!」


「うわーーーーーーーーん!!母さん!なのはがっ!なのはが私の青春をどんどん奪っていくよーーーーー!」





―――――――――





なのはと美由希の不毛な会話が始まって30分、いつもなら血管に青筋を浮かべる恭也と士郎は高町家のリビングではなく、月村家にて事情を話していた。

「ネロ・カオス?……ちょっと待ってよ、そんな吸血鬼は聞いたことが無いわ。」

月村忍は頭を掻きながらノエルに指示をだし、世界中の情報を集めているが一致するものは一つもない。

「なのはちゃんに限って嘘ってことは無いんだろうけど……でも、こうも情報が出てこないなんて―――――」





「――――まるで七夜君みたい」




忍の愚痴るような一言

その瞬間、傍に居る全員がハッと顔を上げる

「七夜君なら知っている。もう水面下の情報収集は止めにしましょう。」

忍はそう提言する。

「あいつが素直に話すような奴だろうか?適当にはぐらかされてしまう可能性がある。」

恭也は七夜に対しての信頼はあまり持っていない。

「そうはいかないわ。殺人鬼の事件だってまだ解決してないし、類似点は彼にたくさんあるんだもの。」

そう忍が愚痴ると、テーブルの上のファイルを開く。

「さっき、また殺人鬼の情報が入ってきたの。こっちが判っていることは、学ランを着た少年・身長170センチ前後・眼鏡をかけていて殺人を行う際に外す・
瞳の色は青・ナイフで人を襲う……犯行回数は判っているだけで8件だけど『奇妙なことに海鳴市でも遠見市でも被害報告はゼロ』、そのかわり目撃者証言多数・
つまり殺しているはずなのに"誰も殺していない"」

「なんか変じゃないか?その情報…殺人被害の無い殺人犯なんて、それこそ矛盾しているだろ。」

恭也の言うことはもっともである。

まるで狐か狸に化かされたような虚言の現実。

殺害現場の痕跡や死体もない。

本当に殺人鬼が存在するのかどうかも分からなくなってしまう。


士郎は額に手をあてながら俯き

「七夜君……早く帰ってきてくれ…」

誰にも聞こえない声でそうつぶやいた。







――――――――――――――






「ふふっ、アハハッ!!アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ――――――――」

98管理外世界とは違う次元

ひとりの魔導師の住まう庭園にて狂気の笑い声が聞こえた。


たまたま人形に任せた、ジュエルシードの蒐集状況を覗き見ようと焦りの中でモニターを映しただけだったが、"アレ"がありえない現象だということを天才的頭脳は即座に見抜いた。


「共有情報の具現化?霊子の虚像?――――――素晴らしいわ!!"アレ"を解明できれば、アルハザードに行かなくてもアリシアをっ、アリシアを蘇えらせることが出来るわ!!」


「ああ――――最高よ!最高よフェイトォ……あなたは無能のガラクタだけど、今になって漸く母さんの役に立ってくれるなんて――――――最高の"娘"(人形)だわっ!!」


狂喜の声は夜深くまで続いていた。






――――――――――――




午前0時


なのは達が離れて数時間たった後の、誰も居ない公園


そこに、居るはずのない2つの影がぶつかっていた。





―――――――――お前に何百という命があろうが関係ない



ふっ、同一でありながら別人の相手とここまで殺し合う機会など、そうそうないと思っていたが……よかろう、夜が明けるまで喰らい合おうか!



俺が殺すのは■■・■■■という世界そのもの――――――――










~あとがき~


七夜のいない一方をまとめた、9話の補足回でした。



続きたい



[15623] 七ツ夜と魔法 第10話
Name: モンテスQ◆b121c041 ID:b53147a9
Date: 2010/08/28 16:45
[七ツ夜と魔法(MELTY BLOOD×魔法少女リリカルなのは)]


オレは追い出されて地下にいるんじゃねえ。

好きで地下にいるんだよ!

好きなの!

趣味なんですよ、モルグってヤツが!

……いやだねホント。

おまえも吸血鬼なら古典くらいかじっとけ。



~第10話「新たな清算」~



お姫様がコンビニから戻ってきたのは色々と思考を巡らせ終わって間もなくのことだった。時間にして15分程度といったところか?

余程急いで弁当を買ってきたのだろう、若干肩で息をしている。

「ただいま、ナナヤさん、もう起きて大丈夫なの?」

「ああ、傷もだいぶ良くなったみたいだし、性能的には問題ないさ。看てくれてありがとうな、フェイトちゃん。」

そう言いながら、今更ながらお姫様の服装を観てみると、それは年相応の可愛らしさを残したまま魅力のある姿だった。

上は黒で肩などにフリルがついたもの。ピンクのスカートは少し短めに見えるが、ニ―ソックスにより、はしたなさ等は感じられない。

「え、…と。私の服装…何か変ですか?」

「いいや、なかなか可愛らしくてね。ついつい見すぎてしまったみたいだ。確かに失礼な行為だったかな?」

「はぅうっ……」

お姫様は耳まで真っ赤になってしまう。やはり、こういった話題は少し自重した方がいいか。


「それで?わざわざ二人分の食事を買ってきたってことは、フェイトは俺に聞きたいことがあるってことでいいのかな?」










「志貴に襲われた……?」

食事を一緒に摂りながら、俺は驚きの言葉を聞いた。

遠野志貴が既にタタリとして現れていることは、連日の通り魔事件と高町士郎による話で予想はしていたが……

「よく生きていられたな。」

それが率直な感想だった。

「えっ、と…アルフも考えられないくらい怖がってたんだけど、そこまで強い人なの?」

どうやらお姫様は奴の力までは理解しきれていないみたいだ……無理もないか。アレを理解できるやつは、そもそも生命としての最悪なまでの欠陥と言ってもいい位だ。

「ああ、あいつには直死の魔眼が――――簡単に言えば視認する対象の死が線と点で視えるんだ。」

「死が…線と点…?」

お姫様は僅かに驚きながらも首をかしげる。

「万物には完全なものなど無く、誕生の瞬間から終わりへと向かう死が内包されている。」

つまりそれを線と点で認識する。

「その、……ナナヤさんは?」

「ん?何のことだい?」

お姫様は不安そうな顔で尋ねてくる。


「ナナヤさんは直死の魔眼を持っているの?ナナヤさんはあの人とどういう関係なの?」

「一つずつ答えて行くよ。」


なぜか、…何でだろうな。不思議とお姫様には嘘を吐きたくなかった。

自分の素生はタタリであること以外全て話そうと思った。

それは何故だろうか。


フェイトは寂しそうな孤独な眼をしてはいけないと思ったから――――――――











――――――――――――――









プレシア・テスタロッサは海鳴市を中心に展開されている奇妙な"現象"について、自分が知りうる限りの魔法と科学技術の全てをもって解明しようと動き出した。


"人形"(フェイト)の持つバルディッシュにハック―――――成功


1週間以内の戦闘記録―――――映像化


再生時間―――――現地標準時間18時から22時まで


フェイトのデバイスのデータをプレシアは着々と調べていく。


その中で目にとまったある戦闘記録


『やっぱり、脳天串刺しじゃあ満足いかなかったか?ネロ・カオス』


吸血鬼と謎の少年の戦闘



ネロ・カオス―――――吸血鬼


「ふふっ、本当に吸血鬼なんてものが存在するなんて……いえ、理論は以前…私も研究したことがあったわね。」

人間が人間を辞める。そんな馬鹿げたものを研究したかったわけではないが、プロジェクトFを行っていたときに副産物として出た理論があった。

しかし、それこそ欠陥理論であり、人体のDNA配列・細胞変化についていくことができず、強大な力を得ると同時に固体そのものが急速に劣化し崩壊してゆくものだった。

どうやら映像の吸血鬼も同じような理論に行きついた魔導師のようだ。

人体の崩壊を他の生命の因子を取り込むことによって防いでいると考えられる。

このことから、生命因子及び他者からの生命情報の吸収が、変異した人体の崩壊を防ぐ手段だということが見て取れる。

―――――そして気になるのが混沌と化した生命因子

この吸血鬼の体内は恐らく、一つの異界を作り上げていると推測する。

異界の形成は外界を"押し上げる"又は"塗り潰す"ことによって展開することが可能ということを以前、とある男から聞いたことがある。

この吸血鬼は異界を外界ではなく自身の内に展開しているのだろう。その方が世界の圧力の影響を最も受けずらい。





そして、そもそものこの現象も一つの異界からなるもの―――――記録の再現とでも言うべきか。

悪性情報――――無意識の集合




人々の恐怖による意識を集め具現化する。




人の意思―――――心、―――――――――――ココロ?






         心ヲ形ニ?




         
   "固有ノ心像ヲ世界ニ浸食サセル結界"





   
そうだ、それだ。私が欲しかった、望む力だ。

この現象の駆動術式を逆算――――――――不明

未知の現象…もしかしたらジュエルシードが関わっているのかもしれない。


いや…まって、先ほどの謎の少年の発言……もう少し、もう少しでいい、情報が欲しい。

その為には一度、あの少年のこちらまで連れてくるのがいいだろう。



何より、あの少年……ニンゲンジャナイ




外見はいたって普通の人間、だけどリンカ―コアどころか生命の構成型式が異常だ。

幸いなことに、現在この少年はフェイトと一緒にいる。話を聞くのも簡単だ。

そうだ、今までは散々の無能で、ジュエルシードも碌に集められていない"ガラクタ"(フェイト)だけど、丁度いい。

これを機会に"アメ"を少々与え、あの少年についているようにさせよう。









――――――――――――








「う~ん……」


とあるイケブログのわんにゃんランド

その一角にあるドッグフード専門店にてアルフは腕組をして唸っていた。

昨晩、フェイトから入ってきた念話の内容は

『今日は何となく気分もいいし、明日は少し休息を入れようと思うんだ。アルフはドッグフード専門店に行ってきていいよ。』

…そして足を延ばしたるは某都内までであった。

足元には大量に買い占めたドックフード

「あの時は、ドックフードに目がくらんで、あんまり考えてなかったんだけど……何か怪しいよ。」

わざわざ念話を使って自分を何処かに行かせるような行為。

別に主であるフェイトを疑いたくは無いが、何か事情があったのだろうか?

「……やっぱり戻るよ。」









――――――――――








ヤツが殺しそこなった?……はないな。第一、ご丁寧にも"あの野郎"が17分割にしやがったんだ。

吸血鬼■■は完全に死んだ。


となると、これは――――



…………成程、そういう事か。


この前の記録をこの土地で補完させようとしているのか。


役割も何ももう一度同じことが起きるだけだが……

そんな事象に縛られるつもりは毛頭ない。

"終わる"までとは言え、せっかくの肉体だ。

せいぜい、肉の楽しみを味あわせてもらうとするさ。









~あとがき~


好感度一覧を暫くお休みさせて頂きます。

そして、研修中なので牛歩更新は続きます。


今回のタタリ、説明すると再演による補完をテーマにしています。

一度おきてしまった事柄を、可能な限り同じキャストにより演じることによって、その土地を再現するということです。




続きたい




[15623] 七ツ夜と魔法 第11話
Name: モンテスQ◆b121c041 ID:00e8f240
Date: 2010/09/16 06:11
[七ツ夜と魔法(MELTY BLOOD×魔法少女リリカルなのは)]



あんたも俺も不確かな水月だ―――





~第11話「Each/lonely night」~



フェイトはとても悲しそうな顔をしていた。

七夜志貴の過去は想像を絶する話だった。

一族郎党を鬼に滅ぼされ、忌むべき敵の家に引き取られ、やっと光を手に入れ親友と過ごした日々も、魔の血統と吸血鬼の転生によりばらばらになり。


心臓を貫かれ、一命を取り留めれば記憶を弄られ――――――――七夜志貴という人物は失われた。


新たに生まれた人物、遠野志貴。

七夜の一族が伝える浄眼は制御ができなくなり、更には死に触れてしまい"理解"してしまった為に万物の終わりが視界を埋め尽くす苦悩。

漸く記憶を取り戻し、仇の鬼を打倒し自らも瀕死の重傷を負ったところで魔法使いに助けられ並行世界にやってきたという。


そして、私が出会った遠野志貴とは悪性の噂を具現化する吸血鬼"タタリ"が引き起こしている現象であり、目的は鏡の向こう側のような"七夜志貴"を殺す存在だと。


「はぁ、そんなに悲しそうな顔をしないでくれよ。今は過去の記憶も……小さい頃のことだからおぼろげだけど、ちゃんとあるんだ。直死の魔眼は使えないけど、見えざるモノは視える。お姫様がピンチの時は必ず守ってあげるよ。」

そう言って、慣れてないのだろうか。ぎこちないながらも、心の底からの優しい笑顔を向けてくれる。

「ナナヤさんは、どうしてそこまで私に優しくしてくれるの?」

気になる

その問いかけに対して七夜は少し言葉に詰まったが。

「昔、敵の家でくらしていた時に、俺以外の退魔の血筋にいた女の子がいたんだ。」

ズキリ、となぜか胸が痛みだす。

「その女の子は塞ぎこんでいた俺の心に太陽を照らしてくれたんだ。その子が見せてくれた眩しい位の世界は、悲しみや苦しみを全て優しく包み込んでくれるようだったんだ。」


「だけど、再会した時に――――彼女は塞ぎこんでしまっていた。」

「眩しい位の笑顔は曇り、陰り、瞳は暗く、彼女が心の底で待ち望んでいたはずの七夜志貴は………いつの間にか遠野志貴にすり替わってしまっていた。」

「俺が救いださなければならなかった。俺が彼女の笑顔を取り戻してあげなければならなかった――――――――俺でなければならなかった筈なのに――――」

「―――――――彼女は遠野志貴に救われてしまっていた。」

「七夜志貴である筈の俺は既に過去に死んだ存在であり、彼女の思い人はいつの間にか遠野志貴になってしまっていた。」


同じ姿で、何も知らない人に救われてしまった。

その喪失感はどれ程のものだったんだろう。


「だから、せめてもの償いなのかな。」

「囚われの"お姫様"の心を救うことは、俺自身の人生の清算何だと思う。何より、苦しそうな目をしている娘を放っておくなんて、今の俺には出来そうにない。」


囚われている?私の…心が?

「私……苦しそうなの?」

自分でもよくわからない。

「ああ、君が何かを欲しているのは分かる。」

私が欲するもの


ジュエルシード?

チガウ、あれは母さんが欲しているものだ。

私が欲しいものは――――――

「母さんの笑顔」

そうだ、私は母さんの笑顔が欲しい。私に微笑みかけてくれる母さんが――――――――


『フェイト、母さんよ。今通信を行っても大丈夫かしら?』

!!?

突然、目の前に光のモニターが現れ、母さんの顔が映し出される。その顔はいつも私に対して接するような厳しい顔じゃなくて、とても穏やかな顔だった。

「は――はい、大丈夫…です。」

一応身なりなどが崩れていない顔確認してモニターの前に出る。

『あぁ、フェイト。そっちでの生活はどうかしら?―――ちょっとやせたんじゃない?ダメよ、ちゃんと栄養のあるものを食べなきゃ。』

その言葉に驚きを隠せない。

母さんが私を心配してくれている?いつも私を鞭で叩く母さんがワタシヲシンパイシテクレテイル

ジュエルシード探索の為に時の庭園を出てからまだ1度も報告に出向いていない。

自然と意識が不安な方向へ傾いてしまう

また怒られてしまう。まだジュエルシードは1個しか手に入れてない。

マタオコラレテシマウ―――――――


「母…さん。……その、ジュエルシードはまだ、…………、…1個……しか手に入れてなくて、――――ゴメンナサイ!!ゴメンナサイ!!」

深く深く頭を下げてあらんかぎりの声で謝罪をする。

後ろにいるナナヤさんの悲しそうな顔が見えた気がするけど、構うことなく目を瞑り次の瞬間に来るであろう、母さんからの罵声に恐怖する。





『そうなの。でもいいわフェイト。1個でもあなたなりに頑張っているのでしょう?無理なお願いをさせているのは母さんだもの。慣れない生活で、調子もいま一つなのかしら。』

!!?

母さんが、ワタシヲキヅカッテクレテイル

『その様子だと、管理局もまだ現れていないのでしょう?焦ることは無いわ。危険があるのを知ってるとはいえ、母さんの大切なフェイトだもの、怪我もしてほしくは無いわ。』

そう言って母さんはワタシニホホエミカケテクレル





カアサンガハジメテワタシヲミテ笑ッテクレタッ、ハジメテ――――――――?――――――――カアサンガワラッテクレタ!!!

『そうそう。危険と言えば、この前あなたがジュエルシードを探している地域を調べてみたの。そうしたら、どうも大気中の魔力が所々不安定なところがあったのよ。そのことにつて色々資料を渡したいから一度こっちに戻ってきてくれないかしら?―――――あら?そういえばあなたの後ろにいる男は誰なの?』

そういえばナナヤさんのことを忘れていた。

「この人はナナヤさんっていうの。昨日ジュエルシードを探していたときに……その、吸血鬼に襲われたところを助けてくれたんです。そのせいで大怪我をしてたから、怪我の治療をするために部屋まで運んだんです。」

『あら、そうだったの。この度は娘を助けて頂きありがとうございました。お礼と言っては何ですが、吸血鬼?でしたっけ。そんな危ない生き物に負わされた怪我ならナニかと危ないでしょう。お手間を取らすようだけどフェイトと一緒に私のところまで来て頂けませんか?私のいる所ならしっかりとした治療が出来ますよ。』

ナナヤさんは少し考える素振りを見せると、チラリと私の顔を窺い

「ええ、それなら"呼ぶことにならない"。せっかくの御厚意、甘えさせていただきます。」

?"呼ぶ"って何のことだろう?その言葉に母さんとナナヤさんはお互いを見て、一瞬にやりと笑った気がしたけど、どんな意味があったのかな?

『それじゃあ、時間は今から1時間後。そちらの時間では19時40分かしら?夕食も兼ねてもてなしさせて頂きます。フェイトとも久しぶりの食事ね。母さん楽しみにしているわ。』



それでは、また後ほど会いましょう。と言って、母さんの通信は終わった。

同時に私の胸は今までにない位、高鳴りを加速させていた。

母さん―――――――――母さんっ!


ああ、これが私の望んでいた、私の願いだ。








このときは、まだ気がつかなかった






優しい嘘に居場所を見つけて、夢の中に逃げ込んでいるだなんて。




これっぽっちも考えてなかった。












――――――――――――――







遅い。



七夜さんが帰ってこない



治療にまだ時間がかかっているのだろうか?



そんな筈は無い。


一命は取り留めた筈だ。



それとも七夜さんは、なのはじゃなくて金髪の女の子と一緒にいることにしたのだろうか?



そんなの嫌だ



またなのはは独りぼっちになってしまう。



お父さんとお母さんは言わずとも。お兄ちゃんは忍さんと。お姉ちゃんは剣のつながりでお兄ちゃんと。

アリサちゃんやすずかちゃんには魔法のことなど話せない。このまま話さずに隠し通すことは出来るだろうけど、その内きっと何か隠していると感づかれて、二人は離れて行ってしまう。





もうイヤなのに、独りはいやなのに。




ミンナノノハカラハナレテユク。




アノコノセイダ




アノコヲナナヤサンガタスケタカラ…




……アンナコタスケナキ――――――――!!????


「チガウ!!!!」


今、自分は何を考えていた?!


殺されていい命なんてない。これは自分が最も尊ぶ目標であり命題だ。


それなのに何で――――



「違う、違う、違う、チガウ、チガウチガウちがうちがうちがうちがう!!!!!!」


その日は自分の考えていたことが怖くなり、部屋の片隅で膝を抱えながらよくわからない不安に駆られながら震えていた。









―――――――――――






高町士郎はある情報に目を丸くしていた。

『夜7時のニュースをお伝えします。海鳴市でまた新たな殺人です。被害者は36歳の男性会社員、○○○○○さんで――――――――』

「何だと!?」

ついに実在する被害者が現れた。

死体は全身の血が抜き取られており、所々食い千切られたような跡があったという。


「恭也!月村家に行くぞ。今回の件、如何やら相当危険なものだ。」

「ああ、本当に吸血鬼の被害が出たとなると、あっち(月村家)ものんびりしていられなくなる!」

士郎は出かける準備をしつつ、美由希に声をかける。

「美由希、ニュースを見て判るとおり、常時帯刀を許す。俺と恭也は、これから暫く月村家の方に警備で行く。留守の間はお前が桃子やなのはを守ってくれ。」

「え?え?待ってよ!私一人!?」

美由希は急な事態に動揺するが

「心配するな。ローテーションでときどき戻ってくる。後は七夜君が戻ってきたら協力してもらえ。なに、彼はこう言ったことに関してはエキスパートだ!!」

「七夜君が――――?」


彼の秘密を漏らしてしまったが、仕方がない。もしかしたら、既に何らかの形で動き出しているのかもしれない――――いや、彼は怪我を負っている。


それでも、彼の言う退魔衝動が本当だとすれば――――。







そう思いながら士郎は恭也を連れて月村家へ向かって行った。









~あとがき~



済みません許してください。なのはちゃんをあんなに壊れさせるつもりは無かったんです。

ということで、そろそろ、原作を大きく外れようかと…

自分でやっておきながらプレシアの優しさが怖い。




牛歩更新で続きます。




[15623] 七ツ夜と魔法 第12話
Name: モンテスQ◆b121c041 ID:00e8f240
Date: 2011/01/05 23:29

[七ツ夜と魔法(MELTY BLOOD×魔法少女リリカルなのは)]



幻のように思えるのは、その全てだ。

どんな些細な出来事だって、思い返してみれば偶然の上に成り立っている。

呆れるぐらい同じ繰り返しの日々だったのに、同じ一日なんて一つもなかった。

なら、それは。 一つ一つがもう戻りえない、かけがえのない時間だという事ではなかったのか。



~第12話「凶ツ夜と魔法」~




「くははっ、喰い足りねぇ!飲み足りねぇ!殺り足りねぇじゃねえか!!」


時刻は午後9時50分


私立聖祥大付属小学校の屋上にてミハイル・ロア・バルダムヨォンは高らかに笑い声をあげていた。

魔術基盤の独占

タタリの再演

並行世界

そのどれもが彼にとって最大の利点を与え、彼をこの地において最強たらしめる存在とする。

真祖の姫がいない地に落胆を覚えずにはいられないが、この世界にも月とガイアの意思があるであろう。

もしかしたら違った形で巡り合えるかもしれない。

その時は今度こそ永遠を手に入れる。そうロアは考えていた。

そして、すぐれた霊脈であるこの地で城を築く。

確かに感じるのは、かつて自身を殺した気配。

志貴がこの世界にいることを証明している。

「いいぜ、いいぜぇ!これもこの体の縁だ。きっちり清算してやるよ―――――と、言いたいところだがまずはお客さんかな?」


そう言いながら振り返った先には、二人の男が屋上の入り口から飛び出す姿が視えた。

「いい動きだ、だが残念。テメェらじゃ殺人貴に及ばねぇなぁ!!」

「恭也!!一気に詰めるぞ!!」

そう言って、嘗て不破の剣を極めた士郎が前に出る。

真剣を握ることで、明確な殺害対象を認識し、自己を内面から覚醒させる。

射抜くような鋭い眼は喫茶店のマスターのものではなく、戦闘者のそれである。

その背後には息子の恭也が同じく駆けている。

実践こそ乏しいが、一瞬であれば神速を可能とする才能は七夜にも迫ることができるだろう。


士郎はロアに向かって一直線に刀を突きだす。

例え避けられたとしても自分の後ろには恭也が待ち構えており、回避や撃ち合いというしっしゅんの行動でも時間を作れば、首を刎ねることができると

そう考えていた。

しかし、ロアがとった対応は二人の予想外のものだった。



ズブリ


「――――な……!?」


ロアの胸に深々と突き刺さる刀身。悪鬼のような笑み。

「悪いがお呼びじゃねぇんだわ」


僅かに体を動かしたのか、士郎は心臓を狙った筈だったが、胸の中心に刺さっていた。

しかし通常ならこの避け方を想定する者はいないだろう。誰が好き好んで致命傷に近い攻撃をすすんで受けるものか。

「この化物がっ!!」

士郎の背後から恭也が右に飛び出し横薙ぎに一閃する。


刀身が首に届くまで残り数センチ

そこで更にロアは口元を釣り上げる。

そう、まるでこちらが無様に罠へと飛び込む様を笑う、悪戯好きの子供のように。


「金属は危ないぜ?」

その言葉が届く前に、恭也は全身に雷を浴びる。

「恭也!!」

恭也の足元を見ると、魔法陣のようなものが床に浮き出て光っている。何か罠のようなものが仕掛けてあると士郎は判断し、恭也の腕をつかみ後ろに跳びのく。

「よくこの場所が分かったな?だが如何せんっ!、オレがどういう吸血鬼なのかは調べきれなかったようだなァ。ヒャハハッ!」

二人にとって状況は最悪と言っていい。

構内には無数の魔術トラップ。その多くが雷を主体としたものだが、人間というものは些細な電流でも体が反応してしまい、強力なモノでは体は消し炭になるほどだ。

中途半端なものでも心像が止まったり、肉が焼け焦げたりして間違いなく意識を刈り取られる。

実際、吸血鬼が小学校に居座っていると分かったのはつい1時間前の話だ。

丁度月村邸に到着したところ、監視衛星と被害者の発生情報をもとに忍が犯人がいるであろう地区を割り出し潜伏先を絞った結果、小学校の屋上に机やいすが残骸のように積み上げられている様を見れば、一目で判る話だ。

「くそ、忍君ら夜の一族が俺たち人間と何ら変わりないってことが再認識できるな。七夜君が戦ってきた化物はこんなやつらなのかっ。」

おもわず苦言を呈した士郎にロアは反応する。

「七夜?…ああ、お前ら志貴の知り合いか。」

「……ぐぅっ……キサ…マ…七夜の、事を知っている……のか?」

ロアの発言に、雷に打たれて意識が朦朧としている恭也が問いかける。

「ああ、当然だとも!なに、ガキの頃の親友でねぇ。殺し殺されの腐れ縁さ。」

「殺した?」

「―――ん?そうだぜぇ、テメーらのちんけな頭で理解するのは無理だろうが、俺も奴も既に死んでる存在なのさ。」

「馬鹿な!死んだ人間が、……お前らのような化物は知らないが、人が生き返るなんて話は在り得ない!!」

そうだろう。それこそ七夜がこいつに殺されたというのなら、伝承などにあるように吸血鬼にでもなってい限りありえない。

彼はどう見ても人間だ、日光も大丈夫だった。十字架やその他の物は確かめてすらいないから知らないが。



「確かにヤツは死んださ、今の奴は夢を見続ける亡霊ってところだろう。」

一瞬、ロアは月を見ながら遠い過去を思い出すようなな表情をしていた。

その表情はロアのものではなく遠野四季のものだったが、それもすぐにかき消え残忍な笑みに戻る。


「さて、あんまし喋ってると喉が渇いて仕方がないよなぁ?そろそろドリンクタイムと洒落込みたいんだが。」


クツクツと笑いながら迫りくる吸血鬼に、恭也と士郎は有効打を思いつくことができず、それでも小太刀を握りなおす。






―――――――――――――




七夜志貴とフェイト・テスタロッサは時の庭園へとやってきていた。


「ナナヤさん、こっちだよ。」

「ああ。それにしても魔法ってものはなんでもアリなんだな。こんな所に一瞬で移動するなんて……地球じゃないんだろう?」

「うん、母さんと私の家。時の庭園って言うんだよ。」

そう答えるフェイトは、いつもになく気分が高揚していた。

いつもなら、愛されたいと思いながらも鞭で叩かれることを恐れて、あまり母のところに積極的に出向きたいとは思っていない彼女が、ここまで楽しみになることなど初めてであった。

アルフを連れて来られなかったのが少々残念だが、向こうは向こうで楽しんでいるだろう。そう思い、あまり気にもしていない。

更に言えば、現在自信と手を繋ぎ柔らかな表情を向ける七夜に、今までにない感情が湧きでている。

フェイトにしてみれば今まで異性と話す機会など皆無であった為、さらには交友関係などアルフやリニスのみの家族同然の間柄しかいなかったからかも知れない。

七夜がいるだけで胸が高鳴り、手を握ることでアルフとは違う気持ちになることが新鮮でならない。



長い通路や階段を通り大広間を抜けると、普段は固く閉ざされている扉があけ放たれており、その先にプレシア・テスタロッサが立っていた。


「お帰りなさいフェイト。そしていらっしゃいませ。フェイトの母、プレシア・テスタロッサと申します。」

プレシアは柔らかな笑みを浮かべ、二人を迎える。

「うん、ただいま母さん。」

フェイトはその笑顔が押し殺されたものだとは知らずに幸せな気持ちでいっぱいになる。

「ああフェイト。こっちへ来なさい、もっとあなたのことが近くで見たいわ。」

そう言うとプレシアは腰をかがめ両手を広げる。


この瞬間、フェイトは母のこと以外頭の中から消し飛ぶ勢いだった。


(母さんが、母さんが母さんが母さんが母さんが、母さん、母さん母さん母さん母さん母さん母さん――――)


思わずフェイトはプレシアに向かって走り出しそして、その胸に向かって抱きつく。

初めて感じる母の温もり、記憶の矛盾から沸き起こる違和感などそっちのけで、フェイトはただただプレシアを抱きしめる。

「ふふっ、こらこら。お客様の前ではしたないでしょう。」

そう言いながらもプレシアはフェイトを抱きしめながら後ろ髪を撫でる。


「七夜志貴です。団欒の中でお邪魔してしまい申し訳ありません。」

「いえ、いいんですよ。ナナヤさんは娘の命の恩人。邪険にする筈がありません。」

そして暫く離れないフェイトを撫でながらプレシアは七夜志貴を見る。

(――――やはり人間ではないわね。かと言って、改造人間や人外、使い魔のようなものではもない。プロジェクトF.A.T.Eとはまた違ったアプローチのものかしら?)

「ごめんなさいフェイト。私はひとまずナナヤさんの体を看るから、少しの間待っててちょうだい。」

「あ、そうだったね。……ナナヤさん、母さんはとってもすごい生物学者なんだよ。」

そう言って離れたフェイトを一瞥すると、プレシアは隣の部屋の扉を開ける。

「それじゃあ、ナナヤさんの体調とかを看終わったら食事にしましょう。久しぶりに母さん頑張って料理を作ったのよ。楽しみにしていてね。」

「うん!!待ってるよ!■■!!」


―――――ドクンッ!!

と、プレシアの心像が跳ねた。

何か懐かしく、しかし聞いてはならないような言葉を聞いた気がした。

幸いなことに、言葉と心臓の鼓動が重なり上手く聞き取れなかったが、もしきちんと聞いたらプレシアは思わずフェイトを殺していただろう。



ふざけるな

何で私があんなガラクタに笑顔を振りまかなければならない。

何であんな役立たずを抱きしめなければならない。

何でアリシアでもないモノの髪を撫でなければならない。

そんな時間はいらない、必要ない、無駄だ。

全ては、アリシアさえ取り戻せばあんなガラクタ殺してやる。

ああ、殺す時間さえ惜しい。そんな暇があればアリシアと過ごしたい。

私にはアリシアしかない。

私の世界にはアリシアしかいない。

この気持ちをどう表わせばいいだろうか?

この世界をどう表現したれいいだろうか?


その鍵が、今目の前にある。


肉体から精神、記憶に至るまで、ありとあらゆる情報を七夜志貴から調べだす。

そのことだけを考えて、プレシアは七夜志貴を連れて扉の奥へと消えて行った。






―――――――――――






高町美由希は玄関先で小太刀を2本構えて立っていた。

海鳴周辺の殺人事件のため、士郎と恭也が月村家の警備に行ってしまった以上、自分が義母である桃子と義妹のなのはを守らなければならない。

大丈夫、御神の剣は守る為の最強流派だ。と、そう自分に言い聞かせる。

今まで散々義兄の恭也に指導してもらい、宗家の生き残りとしての自覚も持って修行してきた。

しかし、いざ実践となると、何もしていなくても武者震いが起きる。

吸血鬼事件――――そう巷では言われている。

そして、七夜君をその道のスペシャリストと称した義父。

自分の知らないところで何かが進んでいるのかもしれない。

そう思いはじめている。

先ほど確認したが、なのはは部屋で一人震えていた。

どうしたのか聞いてみたところ、少し錯乱していて「独りは嫌」と、まるで呪詛のように繰り返しつぶやいていた。

確かに父が大怪我で入院していた時、なのはは独りでいることが多かった。

小学校に入ってからは友達ができていたが、それまでひたすら孤独な環境にいたんだ。

自分は――――なのはの心を守ることができていなかった。

守らなきゃならない。大切な家族を、妹を。

その為の力であり、父も信用してくれたのだ。

七夜君にも早く帰ってきてほしいが、探しに行くことも出来ない。

そんな事を考えていると、ふと玄関先から見える道路に知っている人影が通り過ぎるのを見た。


学生服を着た青年。


それだけなら何処にでも見かける話だが、その姿は間違いなく七夜志貴だった。

美由希は思わず道路へと飛び出し声をかける。

「七夜君!―――良かったぁ。今話題の殺人事件の所為で今自宅を警備してたところなの。……あ、別に私がニートとか別にそういう意味じゃないよ?ほら、私が剣術学んでるのは七夜君も知っているでしょう?その関係でね。今はお父さんと恭――――」

最初は七夜の姿に安堵しつつも舞い上がっていた美由希だが、七夜の様子に違和感を覚え言葉が途切れる。

そう、よく見れば目の前にいる彼はまるで機械のように無表情で、眼鏡をかけて手にはナイフを握っている。

次の瞬間、七夜志貴は眼鏡を外し駆け出した。

ただし、すすむ先は美由希の方では無く、路地の先に見えるよれよれのスーツを着た40代も半ばの男にだ。

美由希は七夜の意図が理解できず、ただただ混乱の中にいる。

そして、男の傍に走り寄った志貴は――――一瞬で其のモノを無数の肉塊へと変えた。

「え?」

美由希の混乱が加速する。

これは何かの冗談だろうか?ナイフ1本でどのような技術があれば、あそこまで骨の多い生き物を解体できるのか。

――――――それどころではない。七夜志貴が殺人を犯した。少なくとも美由希の瞳にはそう映った。

「うそ……嘘だよ、ね?七夜…君?」

まさか七夜志貴が殺人事件の犯人なのだろうか?よくよく思い返せば、ニュースで報道していた気がする犯人の特徴は正に今相対している彼とそっくりだ。

しかし、気がつくと彼が殺した筈の男の死体が風に流され、まるで灰のように消えて行く様を見た。


「―――――俺はアイツみたいな殺人鬼じゃない。」


そこで初めて七夜志貴から言葉が紡がれたが、それは否定の言葉だった。


いつの間にか外していた筈の眼鏡を再び掛け、美由希の方を向く。




「俺は遠野志貴、初めまして…でいいのかな?とりあえず何処にでもいる普通の高校生なんだけどね。」









~あとがき~


漸く日本に戻ってきたのが年末でした。やっぱり秋入社って辛い……

海外勤務が中心になるので、日本に戻ってくるたびに1話ずつ挙げて行きたいと思います。

長い目で見てやって下さい。

確かメルブラのストーリーは弓塚さつき√の後日談だったと思うのですが、MBAAのロアは四季寄りなんでしょうか?若干混ざってるような気がするので、今回の話では凶暴性を重視してみました。

あとは固有結界、オーバーロード・ゲマトリアについてもオリジナルの設定を交えて書きたいと思います。




[15623] 七ツ夜と魔法 第13話
Name: モンテスQ◆b121c041 ID:eb91d28b
Date: 2011/03/05 17:32

[七ツ夜と魔法(MELTY BLOOD×魔法少女リリカルなのは)]



━━━八年前の━━━あの夏の日。

 ああ、ひたすらに憎かった。

 怖いとか痛いとか、そんな余分なものなんてなかったぐらいに。

 そうだ。俺は、ただ、ひたすらに憎かった。

 ならばやる事は決まっている。





~第13話「仮面/反面」~



「率直に言うわ。あなたのことを調べさせてもらうわよ。」

「貴婦人からの熱烈なアプローチは嫌いじゃないんだが……お姫様の次は女王様ときたものかな?」

部屋の扉を閉めた瞬間、プレシアは先ほどまでの温かな笑みを引き剥がし、歪な狂気の笑みへと変えた。

口元は頬の筋肉をこれでもかというほど釣り上げケタケタと眼が嗤っている。

対して七夜は予めその濁った瞳を視ていた為、初めからプレシアが自分に対して何かをしかけてくることを確信していた。

その為、違和感のない動きで常にプレシアから一定の距離を保ち続けていたので、即座に戦闘態勢に入る。

「ハッ!あのガラクタがお姫様ですって?呆れて罵倒する気分にもなれないわ。」

「いやいや、こんな継母まがいな態度をとってきたあんたに対して、それこそひたむきなまでに従順にしてきた娘を見たら、シンデレラにも視えるってね。彼女にとって今のあんたは魔法が解けた後の様だよ。」

「生憎とそちらの文化には疎いの。別に知ろうとも思わないけどね――――」

そう言うとプレシアは右手を天にかざし、部屋の天井付近に巨大な魔法陣を展開させる。

対して七夜志貴は丸腰だった。

時の庭園に来るときに一応の荷物として小太刀は持ってきているが、今はフェイトに預けてしまっている。

七夜は知る由もないがプレシアはランクSSの魔導師であり、ただの人間などそれこそ非殺傷設定の制限を解除した魔法を喰らえば消し炭となるだろう。

更に言って言ってしまえば、本がタタリである魂が魔力攻撃など受けた場合、どのような影響を受けるか解ったものではない。

つまり、七夜は彼女の攻撃をただの一撃さえ化することも許されない状況にある。

かといって、七夜がプレシアに対して攻撃を加える気があるかといえば否だった。

プレシアに危害を加えることは同時にフェイトを悲しませることにつながってしまう。

それは七夜にとって望むことではない。

故にとれる行動はただ一つ


部屋の中で数多の電撃魔法をただ只管かわし続けることのみ

「こりゃ白雪姫の方だったか?独りで踊るのも悪くないが相手がいるのに手持無沙汰にさせるのは気が引けるぞ。―――――俺を調べてどうするつもりだい?」

轟音が響く中で紙一重で攻撃をかわしながら七夜がプレシアに問いかける。

「五月蠅い」

常人とは一線を画す、人外じみた動きによって縦横無尽に駆け回りながら雷撃を避ける七夜に苛立ちを覚えながら、更に攻撃の手数を増やして徐々に七夜を追い詰めて行く。

それと並行して、プレシアはさらに部屋に張り巡らせた術式を用いて七夜の解析を始める。

別に拘束する必要は最初からない。言わばこの部屋自体が解析を行う装置であってプレシアは部屋から出ることができないように足止めをしていれば良いのだ。

しかし、それだけでは何処か思わせぶりな行動をとり続ける七夜に気がつかれてしまうかもしれない。

よってプレシアは病魔に侵された体に鞭をうち攻撃の手を緩めることなく追い詰める。

その結果、自身の手により七夜の身柄を完全に拘束できればこれ以上の無駄な疲労も無くなるからだ。

何せ時間がない。

フェイトを騙し続けるにしろ七夜から情報を引き出しアリシアの蘇生を行うにしろ、この体はあと一月も持たない。

病魔の症状は自身が起こしたヒュードラの事故の時に受けた影響により、魔導師の生命線であり第2の心臓とも呼べるリンカーコアが蝕まれているのだ。

他に例えれば放射能により被曝して遺伝子レベルにまで影響が出ているようなものである。

こうして魔力行使をするだけで並みの魔導師なら血を吐き絶命するほどの苦痛を伴う状況だ。

否、いかにSSクラスの魔力を有する魔導師であるプレシアといえども血を吐き僅かでも気を緩めればその場で倒れ命を失いかねない状況にあるのは変わらない。

それでもここまで魔法を使うのは愛しい娘を蘇えらせるための執念であり、意地でもある。

ここで吸血鬼になる為の理論を用いて人外に身を落とそうとも考えたが、相手はその吸血鬼すら殺した存在だ。

更には、ミッドチルダでも吸血鬼は幻想の域に達する最悪の化物であり、そこに身を落とすのは如何に娘の為ならわが身も厭わないプレシアといえど、未だに踏ん切りがつかない一因としてあった。


と、そこで部屋全体から解析処理が終わったことを知らせるアラームが鳴り響く。

同時にプレシアは攻撃の手を治め、七夜に向かいニタリと魔法行使による苦痛と自らのデバイスに送られてきた情報に狂喜しに歪に嗤った。


(できた!出来たわ!この情報が欲しかったの。これはプロジェクトFで魂や人体構成の研究を行っていたからこそ得ることができた成果!!そうよ、努力には成果を。苦痛の先に快楽を。絶望には幸福を。運命には奇跡を!!)

「ふふっ、クふふ、ふ、アハッ、ふあはっ!アァハハハハハハハハハハハハハハハハハァ!!!」

顔に手を当て天井を向きながら狂ったように笑うプレシア。

そこで漸く七夜も相手が自分のことを解析していたと気付く。

「まいったね、こりゃ。…いつまでお姫様を待たせる気なんだ?」

「ハハハハハ――――あぁ?     あなたはあの子のことを心配する必要はもうないわ。だってぇ――――――」

プレシアの口からゴフリっと、一つ咳き込みながら口の端に血が垂れる。



「私にとってあなたはもう玩具(ガラクタ)になるんですもの!!」



部屋の中で覆い尽くすような眩い閃光が支配した。







―――――――――――――――――――――







「ええーと……"遠野"志貴くん?」

高町美由希は混乱していた。

目の前にいる眼鏡をかけた少年はそっくりさんどころではなく、身なりからしても七夜志貴にしか見えない。

眼鏡をかければ別人ですという、新手のなんちゃって変装術か何かだろうかと一瞬思案してしまう。

「ああ、確かに俺は遠野志貴だよ。まあ、アイツとの縁も浅くは無い……っていうか一番近い気がするけどね。」

そう言って遠野志貴は柔和な顔つきで苦笑いを浮かべる。

七夜志貴とは微妙に違う、お人よしのような雰囲気がかろうじて別人だということを物語っているように感じる。

「そ、それで!……遠野君はあそこで何をしてたのかな?っと…ひとがいきなり消えたように見えたんだけど……」

最後の方を口ごもりながら美由希は遠野志貴の反応を改めて伺う。

あの動きは明らかにプロの業だ。

御神の業をもってしても太刀打ちできるかどうか微妙なまでに精錬された動きは、さながら地を這いながらも最速で獲物を仕留める蜘蛛のように思えた。

「ああ、あれなら案していいよ。あれは人間じゃなくて死者だ。」

「死者?」

「吸血鬼――――死徒って分類される奴に咬まれて、殺された人が亡者になって人を襲う姿さ。」

「ええと、それって吸血鬼に咬まれると同じ化物になって人を襲いだすってことでいいのかな?つまりさっきの人は既に襲われた人だったの?」

「その認識であってると思うよ。ああなったら残念だけど、もう助けるすべは安らかに眠らせるしかないからね。」

それは聞いていて気持ちのいい話ではない。助けられないから殺すしかない。

確かに正論っぽく聞こえるが、何処か納得できない節もある

「それに、死者が人間を襲えばそこから得た血を通して親玉に力が集まるんだ。」

「親玉って、その最初に咬みついた死徒って吸血鬼のこと?」

「まあ、そう言うことになるね。親玉を表舞台に引きずり出すには、雑兵を片付けるのが手っ取り早い手段だからね。」


――――バキン


遠野志貴がそう説明していた矢先、窓ガラスが割れる音が聞こえる。

「!!あの部屋っ――――なのは!!」

いったい何が起きたのだろうか。美由希は混乱の淵に立たされる。

吹き飛んだガラスの破片とともに上空になのはが姿を現す。

学校の制服に良く似た、それでいて所々がゴテゴテしたデザインの服であり、手には紅い宝石が先端で輝きを放つ杖。

そして瞳には明確な憎悪の炎。

「ジュエルシード確認……"殲滅対象"――――七夜さんの"ニセモノ"と確認―――――ロック。対象者の魔力による存在濃度――――91%、有効な攻撃手段は純粋な魔力による砲撃と推定。対軍戦闘用プログラムを使用、対象者以外の被害は26%カット。ディバイン・シューターを半自動追跡(セルフオート)モードへ移行。使用スフィアは8弾、内3発は完全自動追跡(フルオート)に設定。」

それはまるで機械のように無機質で、淡々とした口調で紡がれる言葉の意味はまったくといっていい程理解できないが、なのはの精神状態が普通でないことが容易に知れた。

先ほどまで震えていた筈の妹が、いつもか弱くそれでいて純真な眼をした少女が、ここまで非情な、不破の、殺す者の眼をするなんて信じられない。

「あなたを封印すれば、アノ金髪な子はやってくるのかな?そうすれば七夜さんも戻ってくるのかな?なのはは独りぼっちじゃなくなるのかな?悪いのは誰なのかな?」

ぶつぶつと、そんな言葉をこぼしたのがかすかに聞こえた。






―――――――――――――――――――――



「さあさあ!下らねぇお二人さん!いい加減学習しようぜ?流れる血がもったいないじゃねぇか。」

士郎と恭也は戦闘場所を校庭にまで移動していた。

相手の使う雷撃は相性が悪すぎる。

いくらコンビネーションを組もうとも、トラップ型のものと眼に見えるカミナリがタイミングと体の自由を悉く奪い蹂躙して行く。

何とか特攻を掛け傷を負わせたとしても、またたく間に再生し笑いながらカウンターを繰り出すのは悪夢としか言いようがない。

これを七夜は殺した?

何の冗談だ、どれだけの業と技を内包すればこんな化け物に勝てるというのか。

「そもそも不死身のようなこいつがどうしたら死ぬっていうんだっ……!!」

「あ゛ぁん?成程どうやったら俺が死ぬか知りたいと、なるほど!簡単だ殺せばいい―――――そう、"殺せば"な!!!!」

高らかに声を張り上げロアは極大の雷を上空にうならせる。

「ヒャハハッ!!今日は最ッ高に気分がいいぜ!ついつい殺り方にも粋が入っちまうじゃねぇか。」

ゾワリ、と嫌な感覚に襲われる。

低温の油が体中にこびりつくような、足がまったく別の意思に乗っ取られるような不自由な空気が辺り一帯を埋め尽くす。

「なぁ?固有結界って知ってるかぁ?」

ニヤニヤと邪悪な笑みの吸血鬼は二人に問いかける。

まるで処刑者を前にその方法を披露する、映画の中で見るような、中世の背徳貴族のように両手を広げる大仰なリアクション。

「逝っちまいな――――――――」




オーバーロード・ゲマトリア








―――――――――――――――――――――







接続――――変異魔力地帯及び固体、名称タタリ


七夜志貴を媒体としたタタリの発生体とリンク―――――完了。

これにより97管理外の海鳴を一帯とした地域の異常現象の発生源が彼であることが証明される。

七夜志貴の不在状況で展開されているタタリについて――――――不明。

人形(ガラクタ)の戦闘記録にある、七夜志貴のタタリとの遭遇がジュエルシード封印時に行われ、結果として封印をのがしている為、七夜志貴のタタリ――――自称遠野志貴に取り込まれている確率が高い。

七夜志貴を媒体に発生中の全タタリを検索―――――アクセス可能2件。

・遠野志貴――――内部に異常魔力を確認、ジュエルシードと推定。

・吸血鬼ミハイル・ロア・バルダムヨヲン


以上2名と七夜志貴の記録―――アクセス・ロード(解析開始)




プレシアは自分の持てるすべての思考力を総動員してタタリを解析していた。

魔術師たちが扱う魔術はミッドチルダやベルカの魔法とは根幹を異にするものである。

魔術回路という擬似神経により体内生成された魔力を外界に存在する魔力の呼び水とし、世界を変革させる力の一端を再現させるものが魔術。

リンカーコアという架空の心臓とも呼ぶべき魔力生成器官からあふれ出る魔力を利用し、複雑な数式により科学的に現実を改変するのが魔法。

その異なる技術である魔術をを無理矢理に魔法で再現させるために公式を頭の中で考え、狂気の渦にいた。





 死徒の広義として、生命としての後天的、或いは先天前に逸脱した存在。
 
 超越種としての魔術的、概念的等による肉体の逆行再生、復元呪詛。
 
 ネロ・カオスの死徒の王たる所以は固有結界の体内展開と復元呪詛の融合。
 
 混沌を呪詛に組み込むことで消滅前の因子はネロ・カオスという個に復元される内界因子完結型の結界とでも呼ぶべきかしら。
 
 自己の中で生命の因子を系統樹とし完結させ、混沌として溶かすことで世界を再現しそこからアルハザードへ至ろうとしたわけね。
 
 調べれば調べるほど私の上をいく世界の住人ね、こんな不死同然…そのものな存在が何故あんな少年に殺されたのか―――
 
 その結論は必要ないわ。
 
 
 
 ミハイル・ロア・バルダムヨヲン
 
 最強の真祖から力を得た死徒、無限転生者。
 
 魂の情報を解析し条件指定の転生術式。魂の汚染による転生者の強制死徒化。
 
 固有結界オーバーロード、過負荷ではなく汚染としての意味でのオーバーロード。
 
 対象者を最悪の魔力で汚染し死に至らしめる。
 
 魂の情報解析――――この技術があれば――――――彼等の中で使われる最大の神秘である第3の『魔法』にカテゴライズされるモノだけど―――私は過去と未来を同時に突き進むことでクリアして見せるわ。
 
 最強の死徒としての魂を利用した永遠(無限大)の汚染……固有結界もそうだけどコレの持つ術式技術はものすごいレベルの天才だわ。
 
 
 
 ワラキアの夜
 
 現象として現れ存在しない『タタリ』
 
 個人としての姿は無く吸血鬼の噂がある特定の地域を発生条件とする。
 
 『タタリ』という現象も発生地域を結界とし、その地域の人々の想像力をワラキアが曲解し心像風景として展開しているのね。
 
 固有結界の心像風景を他者に委ね、現象の駆動式と同化させることによってワラキア自身が固有結界になっている……
 
 そして何よりすごいのは物事を殺すことに曲解してしまうとは言え、死者の完全な人格再現――――

 一夜限りとはいえこの駆動術式を解明できればアリシアだって蘇えらせることが……!!
 
 
すごいわ、この三者は紛れもない天才
 
あの男よりも遥か先を行く成功者であり、運命に敗北した失敗者でもある。
 
そうだわ、駆動術式は私たち側の魔法にある封次結界をベースにしよう。
 
外界と内界を隔てるモノを明確にし、世界の圧力から逃れるにはこの時の庭園を利用しよう。
 
庭園内部を結界とし、扉を駆動術式に組み込む。
 
タタリの駆動術式を逆算――――高速思考、演算による未来予測に意図的なバグを作り、悪性情報を肥大させ現実を浸食させるものね。

ヒュードラの高速演算装置で代用、あれには嫌な思い出しかないけどアリシアを殺したのもこれなら、蘇えらせるのもこれの役目だ。

悪性情報を良性に変換するのはデバイスを使用し、機能の78%を当てる。

魂の情報媒体にアリシアの肉体を使用。

器には――――――甚だ不愉快だけどF.A.T.E(ガラクタ)を使用うか。

そうとなれば今まで鞭で痛めつけた傷も全て治療しなくてはならない。

術式維持に必要な魔力は――――ジュエルシードが3つあれば足りるわ。

そう、これが最後だ。残り2個でいいとなればあのガラクタも全力で毟り取りにいくだろう。

何だ、かんたんじゃない。

世界も、運命だって今の私になら覆せる。

ああ――――――その為にはまず血が必要だ。あの駄犬如きの血じゃ全然満足できない。

人間の血が必要だ、ちょっとでいい。

魔力が芳醇で濃厚な完備にして魅惑的なルビーの様に輝く血が!!!!





―――――――――――





「お願いフェイトォ、もう少しだけジュエルシードが必要なの。あと2個あれば母さんの用も事をなすし、七夜さんの容体も回復させることができるの。」

ナナヤさんの容体が安定しないから本格的に治療しなければならず、結果母さんと私の二人きりの食事となった席で、今までにない位優しい母さんの笑顔に私は心の奥底から喚起していた。

そして同時に母さんから頼まれたことに少し動揺する。

「ナナヤさん、やっぱり吸血鬼の怪我って酷いのかな……」

「ええ…――――そのことなんだけど……」

なんだろう?母さんの表情が曇り視線をそらすようなそぶりを見せている。

「母さん?」

「…その、なんて言ったらいいのかしら。七夜さんの肉体に吸血鬼の泥のようなものがこびりついているんだけど、その泥が彼のことを蝕んでいるみたいなの。」

「それって――!!?」

そのことに驚くとともに先日の白い少女に怒りが湧いてくる。

私のジュエルシードの回収を邪魔し、せっかく助けてあげれば今度はナナヤさんを苦しめる―――――初めて他人に憎悪した。

彼女の所為だ、彼女が余計な事をしなければナナヤさんは、ナナヤさんは!!!!

「ごめんなさい、本当は大事な娘をあんな危ない世界に行かせるなんてことしたくないのだけれど……」

「大丈夫っ、です!……ジュエルシードは必ず持って帰るから。母さんの役に立つから!」

そしてナナヤさんを絶対に助けて見せる。

そう深く心に刻み込み、あの白い子に復讐の刃を向けることを誓った。








~あとがき~

何処か急ぎ足のように話を勧めるのは心苦しい。

上司から韓国語話せるようにならないと出世させないといわれました。=日本に帰れない。
中国語と英語を勉強するだけで精一杯だ、ニートになりたい。
なのに次の仕事先がインドって喧嘩売ってるのかな?以上押さえきれない愚痴でした。



今回の指向としては、原作の友情ものをぶち壊して真逆にしてみよう。という感じです。

プレシアさん……ぶっちゃけ型月世界で生まれたら、ああた最強です。もうあなたが主人公でいいよ。※ヒロインは七夜です

実は何故だか分からないのですけど最終話だけ先行して書き終わりました。


続きます




[15623] 七ツ夜と魔法 第14-①話
Name: モンテスQ◆b121c041 ID:eb91d28b
Date: 2011/05/25 01:07

[七ツ夜と魔法(MELTY BLOOD×魔法少女リリカルなのは)]



―――ロア、意思を殺すのが意思の力だというのなら。

   お前は一人、こっちは三人分だ。




~第14話-①「月姫/  」~



それは突然の出来事であった。

辺り一面を塗り潰す黒い渦が恭也と士郎に襲いかからんとするまさにその瞬間

先ほどまでの禍々しいイカズチと打って変わって、更に吸血鬼とは違う魔法陣が上空に現れ辺りを剛雷で埋め尽くされた。

突然の異変に吸血鬼も動揺したのか、何か行おうとした術を中断させてしまう。

「んだぁ?人がせっかく気持ちよくなってたところを萎えさせやがって。俺に雷で仕掛けるってことはアレだよなぁ?」

隅々まで犯して欲しいってことでいぃんだな?

「―――お嬢さんよぉ」


ロアは眼前の20メートル先、地上か3メートルほどの位置に浮遊する金髪の少女に殺気を向ける。

雪のように白い肌、月のように透き通る金の髪

姿こそ違えど、それは彼がかつて幻視した"永遠"と重なる。

彼を壊し彼女を壊した出会いに重なる。

追い求めたものと重なる。

だからこそ苛立つ、憎悪する嫌悪する侮蔑する軽蔑する――――――――決して許すことなど出来ない。

ナニヲ許さない?彼女の姿に似ているのが許せない。

ダレヲ許さない?そんな愚かなことを考えること自体が許せない。


「……私の永遠を汚すようなら、容赦はしない。己が生まれた意味すら理解できないようなガラクタには、相応の末路というものを教えてあげようじゃないか。」


凶暴な影が形をひそめ、聖職者のような淡々とした口調と永久凍土のような氷の瞳で静かな威圧感を漂わせる。


しかし、蛇はこの時自らのセリフとは裏腹に別の事柄を考えていた

この夜はすでに経験済みで、ただこの地に過去を再演させる為だけの舞台だということを。


自らは何故この地の学校を選んだのか。この地に"たまたま純粋な魔力の発生物質があったから"だ。

本来であれば奇跡のような偶然、或いは必然か。

そして対峙するのは白き姫に似た少女。

何の冗談だ。つまり目の前の彼女は代役ということか。

自身が様々な因縁と敗北という形で幕を下ろした劇のやき直し。映画でいえば出来の悪いリメイクだ。

ということは今度の夜はどうあがいても結局は自分は志貴に勝つことができないと言うという事実を突きつけられたような気分だ。


ここで一つの大きな疑問が生まれる。

(なら、ここにいる人間二人は何だ?)

自身の記憶にこのような人間はキャストとして含まれていない。

ならば、これはイレギュラーという存在か。

はたまた自分が勘違いしているだけで、"あの夜"とは関係のない事象に巻き込まれただけのただの偶然が重なっただけのことなのか。


―――――いいや、違うな。こいつらはアラヤにこの夜を認識させ記録させるための媒体か。

ガイア(世界)に修正事項を書き込みアラヤ(この世界の住人)の証人(目撃者)を立てる…廻りくどいが上書きの手段としては及第点か

(どちらにしても、この俺を捨て駒にあてがうなんざイイ度胸じゃないか)

ガチリと頭の中で歯車を繋げ魔術回路が再び唸り声を上げる。


まずは戦ってみなければ相手の能力を測ることは出来ない。

飛行魔術を扱うことには多少驚きはしたが、それがこの世界における神秘の上位に位置づけられると考えるのは早計だ。

もしかしたら彼女らが扱う技術ではそう難しくないのかもしれない。

魔力の質が違う所からも推察できる。

第一に金髪の少女から感じたのは"軽い"と言う気配だった。無論本人の印象では無く魔力の重みだ。

魔術師はその身を使い純度の高い魔力を生成し無色に彩を付ける。

しかし彼女の魔力には元々の色がついた状態だ。

どちらにもメリットとデメリットがある。

空を飛ばれるのは厄介だが…いやそれ以外のことも平然とやってのけるだろう。

だからこそ殺り甲斐がある。そう思ってしまう。

白き姫のキャストに納まるあの少女がどれ程のポテンシャルを秘めているのか、幾度にもわたる転生の果てでこれほど新たな興味は無い。


「来るがいい、キャスト(代理人)。その姿の意味を私に刻み込み、そして知るが良い。外れ者とは言えかつては27祖の頂点に君臨した我が魂、その猛りをとくとご覧に入れよ!」







―――――――――――――





対してフェイトは硬い意思と緊張感を持って目の前の男と向き合っていた。

一目見てこの場所が異常地帯だと判別できた。

なんで管理外世界に魔導師がいるのか?

学校という少年少女が勉学に励む為のコミュニティーの敷地に正体不明の魔力場が形成されていて、広場には無数の魔法トラップ。

そして自分と同じく電撃の魔法を使う男。


自然とバルディッシュを硬く握りしめる。慢心は無い、持つべきは氷のような冷たい思考に刃のごとき研ぎ澄まされた緊張感だ。

そしてジュエルシードがあるこの場にやってくるかも知れない、白いバリアジャケットの少女を叩き潰すことのみを考えろ。

「母さんが待ってる……ナナヤさんが待ってるんだ!あなたが何者かなんてどうでもいい。善人でも、悪人でも…魔導師でも、吸血鬼でも――――そんなの関係ない。邪魔をするなら潰します。」

宣言とともに、はためかせるマントを風に響かせるように、地を這うような低空の高速飛行で一気に男の懐に傍へと飛び込む。

バルディッシュの魔力固定噴出部分から自らの魔力によって作られた鎌を体の後ろに回し、反動とともに一気に振り抜く。

狙いは男のわき腹。

躊躇わず、戸惑わず、慈悲無く不要な心を閉じ込める。

その瞳に炎は無く氷のような瞳で死神をなす。

「型に嵌り過ぎている。一見その実力は高いように見えるが、自身(ポテンシャル)を型に押し込めるのはマイナスだ。」

目の前の男は地面を滑るように、姿勢すら変えずに後ろへ避ける。



『私がそんな硬い子に視えた?』


フェイトの魔力が一気にバルディッシュへと流れこむ。

先端の発出口はそれに応えるように金色の刃を伸ばし、デスサイズのごとく巨大な三日月を創る。


「成程、確かにこれなら"処刑人"だ。だが、死神は戴けない。それは奴の領分だ。」

迫りくる伸びた刃に男は顔をしかめると右手を大きく突き出し、バルディッシュの鎌を弾く。

男が発光部分に触れたとき、熱したフライパンにステーキをのせた時のような、肉を焦がす音が聞こえた。   目を瞑るな。

男の右手が赤黒く焼け爛れ煙を上げている。   ダカラドウシタ

相手を傷つける覚悟なんて、とうに出来ている。

男の左手が鋭いナイフのように雷を帯びた状態で突き出される。

右手を潰してバルディッシュを弾いたのもこのカウンターが狙いだ。

だけど、そんなことは既に解りきっている。


『ファイア』


そう小さくつぶやくと、予め上空に待機させておいた無数のスフィアを弾丸の嵐のように降り下す。

男もこの状況は拙いと判断したのか大きく飛び退き、そして地面を片足で大きく踏みならすと、地面のいたるところから魔法陣が出現し、そこから雷を空に向かって放つことで応戦を始める。


そんな無防備な敵を見逃す程私は優しくない。私の優しさは全て母さんとナナヤさんに向ける為のものだ。

お前になんて一秒でも気を使うか。

スフィアは元々無差別設定に降らせているから、私自身の上にも幾つかが迫ってきている。

『収束――――補充―――――集束』

左手を上へ掲げ、私の近くにあるスフィアをかき集める。

そして新たに数弾を作りだすと―――― 一点へ、私の手の上へ集中させる。

『フォトンランサー・ファランクスシフト』

放電する空気、夜の闇を蹂躙する金色の光、その全てを 今まさにあの男へ喰らわせようとする自分。

そうだ、アイツを倒してジュエルシードを手に入れるんだ。

アイツをなぎ払って奪うんだ。

アイツを消し去って、殺してでも――――コロシテ奪エ

無駄な躊躇いはいらない。

そんな心はいらない。

ただ今は、機械(システム)のように目的(コマンド)を完遂させろ。


『スパーク ――――――』


集束させたスフィアを巨大な槍へと変え狙いを定めろ

犯せ、侵せ、その手の中にある金色の輝きは魔導師の協定を破る禁忌の一撃。

ニンゲンには使ってはならないとされる、常時魔導師を縛る良心と道徳の鎖を引きちぎれ。

アイツは化物だ、吸血鬼だ。ならばこの掟は意味をなさない。ああ、そんなことはもうどうでもいい。

化物だろうが人間だろうが、本モノだろうが偽モノだろうが、私の邪魔をするのならこの世から消し去ってやる。

今まさに放たんとする一撃は―――――


『――― エンドッ!!!』


殺傷設定魔法


それを明確な殺意を持って投擲した。






――――――――――――――――





縦横無尽に地面を壁を電柱を屋根を標識を

あらゆるものを足場に遠野志貴は駆けまわり、なのはのスフィアを避けている。

限界まで体制を低くし、0からトップスピードを叩きだす七夜と同じ動き。

その動きに目が追いつく美由希となのはは人の枠組みの中でも異常な分類であろう。

特になのはなど何の武術も知らない小学生だ、その筈だ。

それが、目の前の遠野志貴と交戦し渡り合う。

空を飛んでいるだけでメチャクチャだ。

遠野志貴もなのはもお互いの姿を見据え、そして無機質の瞳で空と地面を駆けまわる。



『殲滅対象(ターゲット)行動値(アスレチック)8%修正(アハト・リセット)―――完了(ロード・クリア)。第2次開放(セカンドルート・ブーストオン)』

なのはの周りに更に無数の光球が現れ遠野志貴に向かって放たれる。

遠野志貴は攻撃のめをくぐり抜けるように動くが取り囲まれては逃げ場は無い。

ついにその足をとめた遠野志貴は、上空で砲撃魔法の態勢をとるなのはに向かい話しかける。

「なんで自分が狙われてるのかよく解らないんだけど、なのはちゃんでいいのかな?止めるならこれが最後通告だ。これから先は俺も気を使う余裕がなくなるよ。」

圧倒している筈の者向かって、暗に自身が格上だと主張するかのような言葉を吐いた遠野志貴に対してなのはは静かに激怒した。




「なに――――?なんなの?ニセモノさん。なのははこんなに強いよ?この前の化物とだって次に戦えばなのはは負けないよ?七夜さんに大怪我させるようなこともしないよ?あの金髪の子にも負けないよ?ジュエルシードだって全部集めるよ?学校にだって塾にだってしっかり真面目に行くよ?そうすればなのはは独りぼっちじゃなくなるもの。七夜さんだって帰ってきてくれるもの。体育だって苦手だけど頑張るよ?もう泣かないよ?だからあなたみたいなニセモノには興味がないの。どうせ魔力の塊を取り込んだだけの蜃気楼(ガラクタ)でしょう?壊れかけた人形みたいなあなたに何の意味があるって言うの?なのはに勝てるとでも思っているの?なのははあなたみたいな人形(ガラクタ)はいらないの。だって生きてすらいないんでしょう?命じゃないんでしょう?解るんだよ?レイジングハートは優秀だもの。あなたは人間じゃない。ただの張りぼてだもの。殺されていい命なんてないけど、あなたはただの現象だもん。消えたところで何の不都合も不条理も不幸もないでしょ?私があなたを完膚なきまでに押しつぶしてことごとくを凌駕(蹂躙)して、その存在を貶めて(殺して)あげる。」

その顔は歪(いびつ)に歪み、まるで泣いているようだった。


「…酷いいいようだね、勝つことは―――――そうだね、無理かもしれない。」





遠野志貴は魔眼殺しの眼鏡に手をかけゆっくりと瞳の青を晒す。



でも



「コロス事なら出来る。」


「こ、ろす……?あはっ。アハハハハハハッハハハハッハハハハッハハハッハハハッハハハ」

遠野志貴の言葉に何がおかしかったのか、なのはは狂ったように笑いだす。

「やっぱりあなたは七夜さんじゃない!!偽者だ!!七夜さんは誰も殺さないもの。なのはの事を守ってくれる優しい人だもの、あなたはそこに在るだけで七夜さんを侮辱する!!」

だから

「消えちゃえ」

その声とともに禍々しいさくら色の砲撃が学生服を包み込んだ。






――――――――――――――――――――






「艦長、ロストロギアの位置が判明しました。同時に魔導師の魔力反応を複数確認。―――――なにこれ!!?一部地域に解析不能の魔力力場が発生しています!!」

「ロストロギアとの関連性はありますか?」

「解りません。ですが、ミッドチルダの魔法とはまったく異なる構成の結界だと考えられます。」

「…そうですか、現地への偵察、及び戦闘には十分な警戒が必要ね。」

「艦長、ボクが先遣として現場に向かいます。管理外世界での魔法行使及び戦闘は即刻停止させるべきです。」

「まずは情報収集を最優先に考えてちょうだい。解析不能ということは何らかの特殊な空間の様になっている可能性が高いわ。戦闘の詳細地区を割り出してモニターに出して下さい。」

「了解しました―――――出ます。該当区域のうち、この世界の学校…でしょうか?モニター映します。」


「………なんだ、これは………ランクAA、いやAAA魔導師か!?こんなメチャクチャな戦闘――――ちょっと待てっ!!あの金髪の娘っ、非殺傷設定を解除しているぞ!??」

「あ、相手方の魔導師、でしょうか?こちらの打ち出している雷ですが同じく殺傷設定だと思われます。」

「ちぃっ!!今すぐ出る!!座標設定を頼むぞエイミィ!!!」









~あとがき~

自分が日本を離れている間に東北関東大震災が起こったということは現地の報道とネットで知りました。
被災し命を落とされた方々にこの場を借りてお悔み申し上げるとともにご冥福をお祈り致します。

今回はキャーネロアサーン+ヤンデルなのはを意識してみました。
ネロアさんが金髪幼女を襲う様を…もうネロアさん誤字じゃなくてもいいかも。死徒の皆さんはロリコンということで。

フェイトの性格が原作と大きく違うって?
プレシアさんの娘なんだ。一つの事に執着したり、過保護になることで病むことくらい本編でもあったような気がする。
…申し訳ない。



ヤンデル娘コワイ

続きます




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