マージャン全国大会「待った」 参加費から賞金は賭博?

 東京都内の広告会社などが優勝賞金150万円のマージャンの全国大会を企画したところ、警察庁が待ったをかけた。参加者から集めた参加費を賞金に充てるのは賭博に当たる恐れあり、というのだ。実行委員会は大会の中止を決めたが、参加予定者からは「あまりにしゃくし定規な判断で、現実に即していないのでは」と戸惑う声が相次いでいる。

 「第1回さわやかカップ麻雀フェスティバル」で、企画した広告会社ザピック(東京都豊島区)のほかマージャンプロの主要団体やマージャン店などの団体でつくる実行委員会が主催し、大手飲料会社も特別協賛していた。

 アマチュア約1500人と招待のプロ約50人が参加し、3〜4月に全国のマージャン店で予選を行い、勝ち残った二百数十人が5月下旬に都内のホテルで開かれる決勝トーナメントに出る。参加者から集める1人4000円の「参加費」やマージャン店などが出す「協賛金」の中から優勝150万円、準優勝30万円、3位と4位各10万円の賞金を出す計画だった。

 ところが、地方予選の開催を知った広島県警と大阪府警が2月下旬から3月初めにかけ、警察庁に「違法ではないか」と問い合わせた。これを受けて警察庁はザピックの越智亨社長から説明を聞いたうえで3月4日、実行委側に「刑法の賭博罪にあたる恐れがある」と指導した。

 警察庁は、参加費の一部が賞金に充てられることから、参加費そのものが賭け金に当たると判断した。参加費が会場使用料など大会運営だけに使われ、賞金に充てない場合は賭博に当たらないという。

 その後、マージャン店の業界団体である全国麻雀業組合総連合会が大会への協力を辞退した。実行委は今月7日に始める予定だった予選を中止し、参加費の返還を始めた。越智社長は「プロの主要団体がすべて協力することは異例で、マージャンの健全さをアピールして業界を活性化する好機だったのに残念だ」と話す。

 マージャンのプロ、アマ混合の全国規模の大会では麻雀最強戦(最強戦)が89年、麻雀王座決定戦(王座戦)が76年から毎年開かれている。両大会とも100万円以上の優勝賞金が出る。最強戦では主催する出版社が全額負担し、王座戦は参加費の一部が充てられている。

 王座戦の仕組みは今回のケースと似ており、事務局は「当局から指摘されたことは一度もない。指導があれば従わざるを得ないが、なぜ今になってという思いもある」と困惑気味だ。警察庁は、同様の大会を把握すれば指導するという。

 囲碁や将棋、スポーツなどの分野でも参加費を集める全国大会が行われている。参加費を賞品購入に充てることもあり、今回の解釈を厳密に適用すればこれらも賭博にあたる可能性がある。だが警察庁は「社会通念に照らして判断するべきで、何もかも問題視するつもりはない」と説明する。

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 〈賭博〉 刑法185条でいう賭博は、偶然性に左右される勝負に金品をかけて争うことを指す。花札やさいころ、トランプゲームなどのほか囲碁、将棋、スポーツの勝敗に賭ける行為もこれに当たる。罰則は50万円以下の罰金または科料。ただ食事など「一時の娯楽に供する物」をかけても罪にならない。

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 〈関西大学法学部の山中敬一教授(刑事法)の話〉 マージャンは健全な娯楽という見解もあり、取り締まるかどうかには賛否があるかもしれない。しかし、偶然性に左右される勝負に2人以上が財物をかける行為は賭博だ。参加費が賞金に回れば賭博の恐れありと解釈せざるを得ない。

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 〈「健康マージャン」の普及に取り組む日本健康麻将協会特別代表の井出洋介プロの話〉 規模の大小を問わず、参加費を取って賞金が出る大会が大半だ。警察庁の指導内容は現実に即していないと感じる。今回の指導で、マージャンのイメージが悪くならないか心配だ。 (03/24 07:43)

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