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[27457] 【番外編】せいびのかみさま【IS 転生チートオリ主】
Name: 巣作りBETA◆bbda2e80 ID:2feb198d
Date: 2011/05/25 10:46


 これはIS(インフィニット・ストラトス)の二次創作SSです。以下の点にご注意ください。

・転生チート男オリ主が出てきます。ISには乗りません、多分。
・女オリキャラが出てきます。
・メインヒロインは束さんです。ぶい。
・色々と設定がおかしい部分があります。問題が発見され次第修正します。
・他SSとオリジナルISその他のネタ被りが発生する可能性があります。
・ぶっちゃけISSS見てたら我慢できなくなって書きたくなっただけです。
・更新が超不定期です。

 以上が許容できる方はお進みください。

第一話:2011/04/29 投稿
第二話:2011/04/29 投稿
第三話:2011/04/29 投稿
第四話:2011/05/04 投稿
番外編:2011/05/04 投稿 ※削除しました
第五話:2011/05/04 投稿
第六話:2011/05/05 投稿
第五話:2011/05/06 修正
番外編:2011/05/07 投稿
第七話:2011/05/07 投稿
第六話:2011/05/08 修正
番外編:2011/05/09 投稿
第八話:2011/05/11 投稿

2011/05/11:その他板へ移動しました。

第六話:2011/05/11 修正
第九話:2011/05/15 投稿
第九話:2011/05/15 修正
第十話:2011/05/21 投稿
第十一話:2011/05/22 投稿
第十一話:2011/05/23 修正
番外編:2011/05/25 投稿




[27457] 第一話「そうだ、宇宙行こう」
Name: 巣作りBETA◆bbda2e80 ID:2feb198d
Date: 2011/04/29 14:50



 第一話「そうだ、宇宙行こう」


 やあ! 皆大好き転生チートオリ主だよ! 今日も元気にニコポ祭りだ!

 ……ゴメン。あんまりにもアレだったんで嘘ぶっこいてみた。
 改めましてこんにちは。佐倉源蔵、今年で十四歳です。転生チートオリ主です。マジで。
 新ルールの「神様ルーレット」で見事チート頭脳とIS世界への転生を果たしました。

 束と同い年で。

 え、それ意味なくね? 公式チート頭脳に勝てるわけなくね? とか思ったね、三歳ぐらいの時に。
 その次の日には幼稚園で篠ノ之って名前の女の子見つけました。ゆかりんヴォイスの。

 いやー、ホント性格ぶっ飛んでるよねアイツ。最初一ヶ月ぐらい凄かったもん、目つきとか。虫けらを見る目ってあーゆーのなんだね。
 でもそれさえ乗り越えれば楽しいよ。まだ子供だったからかあっさり身内カテゴリーに入れたし。あと可愛い、これ正義だよね。
 やることもぶっ飛んでるけどね。あの回転するジャングルジム、グローブジャングルだっけ? あれ改造したりするし。幼稚園児なのに。
 巨大な球体がパンジャンドラムみたいに火噴いて転がってく様はトラウマもんだよね。片手で止めた挙句投げ返してくるのも充分トラウマだけど。

 え、千冬さんですけど何か?

 まあそんなこんなで元凶束、扇動俺、鎮圧千冬のトライアングルが出来上がる訳ですよ。これがまた面白い。
 ただまあ、他の連中が騒ぎの規模についていけなくなって束の身内カテゴリーが増えなくなっちゃったんだけどね。別にいいけど。
 そんなこんなで二人との付き合いも十一年目! で、今は何をしてるかって言うと―――、

「………。」
「………。」
「………。」

 織斑家のリビングで頭抱えてます。俺達の前には織斑パパと織斑ママの言い訳が書かれた紙。要するに夜逃げだね。
 あ、今思い出したけど二人ってホントは高校の時に知り合うのか? 原作読んだ時にそんな記述があったよーな無かったよーな。まあいいや。

「……どーする?」
「どうもこうも……私が『二人』を守って行くしかあるまい」
「だよねー。ゲンゾーもそれくらい解るでしょ?」

 そりゃ解るけどさ。でもここ日本よ? 普通に考えれば警察行きの問題でしょ。住居はあるけど保護者無しってケースは珍しいだろうけどさ。
 ……ん? ああ、解ってるよ。この世界の千冬は『五人家族』だ。いや、二人抜けて今は三人だけどまあそれは別に良いや。
 イレギュラーの名前は『織斑千春』、数字に季節と織斑家ルールに則ってるのがよく解るね。一夏の双子の姉なんだそうだ。
 俺と同じ転生者かどうか探りを入れてみたがどうにも解らん。まあヘイトでもない限り敵に回る事は無いだろうから放置。

「まあ、いざとなったらこの天才束さんがなんとかしてあげるから!」
「束には敵わんが俺も神童と呼ばれた身だ。何か問題があったら言ってくれ」
「束、源蔵……ありがとう」

 ありゃりゃ、こりゃ大分参ってるな。普通俺達が天才だの神童だの言ったら何だかんだでツッコミ入れてくれるんだが……。

(ね、ね、ゲンゾー)
(ああ、解ってる。こりゃ何か気を逸らせるようなイベント作らねーと駄目だな)
(ゲンゾーも中々解ってるね。そう、イベントが無ければ作れば良いんだよね!)
(だよね!)

 しかし何が良いかな、と居間でテレビを見てる双子に目を向ける。最初はこっちに興味があったみたいだが、今はテレビに夢中だ。
 因みに一夏はまだ箒ちゃんとはあまり仲が良くないらしい。姉の繋がりで多少は面識があるみたいだが、子供の足じゃここから神社って遠いしな。

 あ、そうだ。皆想像してみてくれ。千冬と束のセーラー服。徐々に女性として主張を始める胸の膨らみ。うん、良いね。最高。

「……ん?」

 ライトブラウンの地毛を弄りながらテーブルに突っ伏すと、二人が見てるテレビが目に入った。宇宙特集……だと……?


「そうだ、宇宙行こう」




 時は流れて約一年。俺達は中三に、一夏達は六歳になっていた。ついでに言うと今は高校受験も終わった三月半ば、当然主席入学ですよ。束が。
 ダカダカと唸りをあげてキーボードが文字を吐き出し、俺と束の前のブラウン管モニターにそれが溜まって行く。
 しかし、俺は『右腕一本』だからどうしても束より遅くなってしまう。まあ仕方ないか。

「おーい、中二病ー。そっち準備良いー?」
「誰が中二病じゃ誰が。そっちこそ終わってなかったら乳揉むぞ」
「焼き殺されてもいいなら良いよー?」

 何とも物騒な内容だが、現在俺達は世界初のIS【ハミングバード】の最終チェック中だ。まあ、今はまだ開発コードもロクについてないんだが。
 それにこの程度の罵詈雑言はデフォですよ僕達。ゆかりんボイスでナチュラルに罵倒される日々って割と楽しいんですよ、知ってました?
 なんて手を休めずに考えてると、ハミングバードを着込んだ千冬が呆れたように声をかけてくる。

『全く……源蔵、いい加減にそれは止めろ』
「馬鹿な! 俺からセクハラをとったらメガネしか残らんではないか!」
『……随分と偏った肉体構成だな』

 あ、ツッコミ諦めやがった。もっと熱くなれよヤンキー予備軍。これから物理的に熱くなるがな。

「それにしても、まさかこの束さんがこの程度の物を作るのに一年もかかるとは思わなかったよー」
「まあ一応学生だしな。理論と実践の差ってやつだ」
『……むしろ一介の中学生がどうやってこんな装甲材を持ってきたのかが気になるんだが』

 そこは内緒ですよ。ちょちょっと帳簿を弄っただけですよ。

「それよりなによりちーちゃんちーちゃん、どっか変な所とかある?」
『いや、大丈夫だ。それに往還自体は何度か試したからな、慣れたものだ』
「デブリが怖いが、そんな装備で大丈夫か?」
『それは設計した本人が言う台詞ではないだろうが……』
「俺がまともに作ったのなんざブースターぐらいだよ。他は束に聞け」

 全く、神様にチート頭脳を貰った筈なのに束の方が頭良いって何だよそれ。乳に脳味噌でも詰まってんのか?

「ゲンゾー、少し頭冷やそうか……?」
「ヒィッ!?」

 やめてやめて天地魔闘の構えやーめーれー!
 と、手を上下に構えた束がぴたりと動きを止めた。その視線の先には俺の頭皮。ヅラじゃねーぞ?

「……あれ? ゲンゾー、背伸びた?」
「ん? ああ、そーいや追いついてきたな」

 この時期の人間と言うのは大体女子の方が成長が早い。それに追いつくように男がグーングーン伸びて行く……なんかMSみてぇ。

「ま、そんな事どーでもいっか。今回ので技術蓄積も充分できたし、次はもっと武装とか載せれそうだよー」
「……ああ、こないだ作ってたのはそれか」

 白騎士ですねわかります。今回のでまともな話題にならないって解ってんだな、お前さん。
 もう有人大気圏離脱&再突入もクリアしてんのに話題にならないとかね。因みに今回は手近な廃棄衛星をバラす予定です。

「さて、漫才やってる間に打ち上げ時間だ。千冬、準備は良いか?」
『ああ―――では、行って来る』
「いーってらーっしゃーい」

 ドゴン、と音の壁をぶち抜いて巨大なブースターが尾を引いていく。その風に揺られて長袖の左腕部分がバタバタとはためいた。
 ……学生のみによって作られた単独大気圏離脱可能なパワードスーツ、これが話題にならない筈が無い。ならば何故話題にならないか。
 簡単な話、話題にしてはいけないのだ。だってパーツの九割以上が盗品だし。普通に作れば何億ってレベルだからね、ISって。

「……よし、じゃあ次はゲンゾーの番だね」
「は?」
「―――だから、それ」

 ぴ、と束は俺の左腕を指差す。表面上はいつも通りだが、やはりこの話題になるとどこか空気が硬くなる。

「いや、別にもう慣れてきたし」
「嘘ばっかり。ノート取るの手伝ってるの誰だと思ってるのさ」
「……まあ、可能なら治したい所だけどな」

 先月の初回起動実験時、妙にハイになってきて徹夜した俺達は揃って配線を一つずつ間違えたまま起動。ギャグ漫画かってレベルで大爆発が起こった。
 その時に束を庇ったら左腕が吹っ飛んだ。こう、スパッと。どうも作業並行してやってて中途半端に搭載してた装甲の縁で見事にやってしまったようだ。
 まあそんな訳で現在俺は左肘から先が存在しない。これがまた中々に不便だったりするが、束にはこの程度で止まってほしくは無い。

「技術蓄積もできた、ってのはこっちの意味もあるからねー」
「成程。じゃ、一つ頼むわ」
「まっかせて! 最高の手に直してあげる!」

 なんか漢字が違う気がするがスルーで。



「で、何してくれちゃってんの君達」
「んー……お披露目?」

 あれから一ヵ月後。何か空が騒がしいと思ったらやっぱり予想通りやってくれちゃったよこん畜生。おーおー白騎士頑張ってます。
 あ、そうそう。遂に一夏達が篠ノ之道場に入ってきたよ。俺も一応入ってるよ、弱いけど。っつーか柳韻さん強すぎ。聖闘士かってレベルだよあの人。
 しかし学校帰りに異性の家に上がりこむ、という心躍るシチュエーションの筈なのになんとも無いのは機材でこの部屋が埋め尽くされてるからだろうか。
 なんてことを『左手』で柿ピー食いながら考える。そしてどうしてお前はこっちを見ずに掌を差し出してくるのか。

「ちょっとちょーだい」
「はいはい」

 一瞬ナニでも乗せてやろうかと思ったがまず間違いなく細切れにされるので止めておく。ただでさえサイボーグなのにこれ以上怪我してたまるか。

「この線ってミサイルだよな。何発出てる?」
「2341、だね」
「キリ悪いしあと四発撃っちまえよ」
「んー、良いよー」

 頑張れホワイトナイト。俺達は君の活躍を柿ピー食いながら見守ってるよ。あ、寒いからコタツ入れて。



 そんでもって現在年末、16歳。ここ暫く束がどっか行ってます。失踪癖はこの頃からなんだなー、と現実逃避。
 だってさ、

「ですから私はあくまで篠ノ之束の助手として開発に携わっていただけでコアの製造法なんて知らないんですよっつーかこれ何度目だこの糞豚が!」

 一息で言い切り、ぢーんと若干古めの受話器を電話本体に叩きつける。今度は国某省(誤字に非ず)だ。毎週決まった時間に電話かけてくるんだね、歪みねぇな。
 束っぱいの代わりに電話応対の毎日ですよ。一日五回は確実に鳴るし、その度に同じこと言わないといけないし。でもまだスーツにグラサンが来ないだけマシか。

「だぁーもぉーめんどくせぇーなぁー! 束ーっ! 早く帰ってくるか乳揉ませろボケェーッ!」
「やだー」
「ってうぉおっ!?」

 某最強地球人の真似を窓から外に向かってやったらその相手が現れた。何を言ってるか解らねぇと思うが俺もよく以下云々。

「ただいまー」
「はいお帰り。世界情勢凄いことになってるって言うか随分と楽しくなってきてるけど」
「おぉー、頑張った甲斐があったねぇ」

 頑張ると世界がめちゃくちゃになる、なにこのフリーザ様並の天才。

「腕の調子は?」
「ああ、上々だ。最近は変形機能とかつけて遊んでる」
「相変わらず頭のネジ飛んでるねー」

 や か ま し い わ 。お前だって似たようなもんだろ。

「あ、そうだ。コア一個よこせ。趣味に走った機体作るから」
「良いけど、まだ男性開放はできてないよ?」
「良いよ良いよ、どういう戦い方するか考えてニヤニヤするだけだから」

 ほい、と世界が求めて止まないコアの一つを手渡される。これ一つで一軍に匹敵するんだから驚きだよね。
 それとこの世界のISは千冬のパーソナルデータを元に作ったせいか、やっぱり女性しか扱えなくなっていた。
 束の奴が『不可能なんてない』って豪語するキャラ付けしてるのが原因で束の気まぐれとか思われてるんだよね、世界中に。
 まああと何年かあれば一時的に開放するのは可能だろうし、白式が大丈夫なのは白式の意思による物だろう。

「……って言うかゲンゾー、また背伸びた?」
「応、遂に180の大台に乗ったぜ。そっちこそ乳デカくなったな、揉ませてくれ」
「そんな流れるような土下座されてもねー」
「そしてナチュラルに人の上に座るって凄いなお前」

 体格差を利用した谷間覗きから見事なDOGEZA。その背中に束がちょこんと座る。あの、動けないんですが。

「しかし今外務省は大変らしいぞ。やれよこせだのやれ情報開示しろだの」
「ふっふーん。まあ束さんが本気を出せばこれくらい楽勝だよ! 最近ゲンゾーはどんな感じ?」
「日本政府から声はかかってるけど、お前が前例として逃げてくれてるから俺は刺激しないようにって最小限の干渉で済んでる」
「おー、そっかそっか。流石は束さんだね!」

 物凄く情けない格好のままで黒幕っぽい会話をする。あ、でも尻の柔らかさが心地いいので継続決定。うん、駄目人間だね俺。

「っつーかそんなどーでもいい事聞いてどーすんだよ」
「あれ? 解った?」
「何年幼馴染やってると思ってんだよ。あとたまには家に顔出してやれよ、箒ちゃんがお前の扱いについて悩んでたぞ?」
「なにぃっ!? 待っててね箒ちゃん! 今から束おねーちゃんが遊びに行ってあげるからねっ!」

 言うが早いが束が窓から飛び出していく。来る時も来る時だが玄関使えよ馬鹿野郎。

「あ、出席日数足りてないって言うの忘れてた」

 知ーらね。



 はーい皆さんこんにちは。一年ぶりの佐倉君だよー? なんて言ってられる状況じゃないんだけどねー、っと危ない危ない。

『無事か、源蔵!?』
「何とか。いやー、いい加減に大ピンチだねー」
『……もう少し緊迫感を持ったらどうだ貴様は』

 そんな事言われてもねぇ。こちとら高校生で国のお抱えになった人間ですよ? こんな襲撃なんて日常茶飯事ですよ。
 大体ここ数ヶ月、グラサンスーツが山盛りで来てるんだぞ? 何でエージェントホイホイ(巨大ゴキホイ)が一日で全部埋まるんだよ。
 因みに最近まで来なかったのは日本政府が頑張ってたからなんだそうだ。やるじゃん、日本人。

「で、亡国機業の連中か。相変わらず手荒だねぇ」

 っつーか何で外人がIS使ってんだろーね。建前上はまだ国内にしか無い筈なのに。

『全くお前といい束といい……私の周りの天才はこんな連中ばかりか』
「んー、でもまあ千冬がこっちに来てて助かったよ。他の連中に【暮桜】を使わせる訳には行かないしね」

 白騎士の次に作られた織斑千冬専用IS暮桜。装備こそ刀一本だが、それを補って余りある機動性と頑強さを併せ持った傑作機。
 そもそも格闘戦のデータ取り用に作られていた機体だったが、白騎士事件時の銃器使用率の低さと俺のロマンと束の気まぐれでこうなってしまったのだ。
 まあ、元々千冬って機械あんま得意じゃないしね。ISの操作がイメージメインなのもそのせいだし、多分銃器も苦手なんだろう。
 ……俺が一零停止だの何だのの銃器使用に関する項目をノンストップで講義したのがトラウマになってる可能性もあるが。

『それもそうだな。私としてはさっさと調整を終わらせて帰りたい所だったが』
「それに幾ら調整で直せるとは言え変な癖がつくのも嫌だし、慣性制御も最低限に抑えてるし……ぶっちゃけここの人間じゃ使いこなせないよ」
『ん? ああ、そっちの話か。まあ慣れてしまえばどうと言う事は無い』

 ホントバケモンだなテメー。きっと俺でも無理だぞ、最近鍛えてんのに。

『……何か不快な気配を感じたが、今は何も言わないでおいてやる』
「そんな理不尽な。で、そろそろ行ける?」
『―――ああ、完璧だ。相変わらず良い腕だな』
「お褒めに預かり恐悦至極。じゃ、頑張ってな」
『任せろっ!』

 最終調整を済ませた千冬が銃火の中をカッ飛んでいく。その音を聞きながら俺は机の影に身体を預けた。

「しかし、まだ【零落白夜】が無いんだよなぁ……まあ、【第二形態移行】してないからなんだろうけど」

 そろそろなる頃だとは思うんだけどね。ほら、なんかビカーって光ってるし。



 ういっすお疲れオリ主だよ! 現在僕はアラスカに居ます! 何でかって?

『それではここに【IS運用協定】の締結を宣言します!』

 そう、アラスカ条約だよ。しかも束の奴が居ないから俺が代わりに色々とやらされてるんだ。ふざけんじゃねえよ。

「えーっと、【国際IS委員会】の設置と国別のIS所持数の規定に特殊国立高等学校……通称【IS学園】の設立、と。あと【モンド・グロッソ】もか」

 中々に面倒な事が山積みである。ねえ世界の皆さん、僕まだ未成年なんですけど。あえて一人称変えちゃうくらいめんどくさいんですけど。
 あとパーティーの席でナチュラルにワイン勧めてくんなよ。こちとらスーツも親の金だぞこの野郎。ここんとこ苦笑以外の親の顔見てねーぞこの野郎。

「まぁ、まだ暫くは動けないか。学園も土地と建物何とかしないといけないし、モンド・グロッソ終わってからかな。なぁ束」
『あ、あれれー? 何でわかったのー?』

 ヴン、と低い起動音をたてておっぱい、もとい束を映した空中投影モニターが姿を現す。わからいでか。

「お前が接触してくるなら、ホテル戻って来たこのタイミングかなーと思ってな」
『むむむ、ゲンゾーに行動パターン読まれるとは束さんもまだまだだねー。精進精進』
「心にも無いことを言うのはどうかと思うぞ。精進って単語を辞書で引いてみろ」
『ゲンゾーにだけは言われたくないなー』

 何を仰る。俺ほど欲望に忠実な人間はそう居ないだろ? おっぱいとかおっぱいとかおっぱいとかとりあえず揉ませろ。

『そう言えば今度出てくる桜花、だっけ? ゲンゾーが作ったんだよね』
「ああ。可もなく不可もなく、ついでに拡張性もあんまりない機体に仕上げてみました。ぶっちゃけハミングバードの方が強いぞ」
『懐かしー。他の国のも一通りやったんだよね?』
「ああ、イタリアの【フォルゴーレ】、イギリスの【ブルーハリケーン】、アメリカの【ダブルホーネット】にドイツの【ヴァイサー・ヴォルフ】……フランスと中国はまだかかるな」

 どれもこれも後に第一世代と呼ばれるであろう機体達だ。とりあえず今までの兵器の延長線上って考えだろうしな。
 そして世界がモタついてる間に俺は一人で第二世代を作るのだよ。フゥーハァーハァーハァーハァー。

『フランス? あそこってそんな会社あったっけ?』
「まだどこも作っちゃ居ないがデュノア社の動きが活発になってる。数年以内に国のお抱えで参入してくる筈だ」
『ふーん』

 現在IS条約に加盟しているのは日本、中国、CIS(ロシア含む)、中東IS連盟、インド、イスラエル、パキスタン、オーストラリア、アメリカ、カナダ、メキシコ、ブラジル、イギリス、ドイツ、フランス、オーストリア、イタリア、ギリシャ、北アフリカ諸国連合、南アフリカ、ナイジェリアの18ヶ国と3地域だ。多分もう増えないだろ。
 それを現在所在がハッキリしている467個のコアをそれぞれ割り振り(議論すると年単位で揉めそうなんで俺が勝手に決めた)、勝手にドンパチしたらあかんよーとか書いてあるのが今回の条約な訳だ。

「あとはまあちょこちょこマイナーチェンジしたやつを各国に、って感じかな。汎用性を無駄に高くして発展を遅らせてやる」
『万能兵器ほど弱い物は無い、だっけ? 暴論だと思うよ束さんは』
「やかましいわい。ある程度共通したフレームに違う武器を載せて多様化、ここに量産機のロマンがあんだよ」
『ふーん』

 流すなボケ。

「そんな訳でパーツ変更による多様化ってテーマに気付けばそれが第二世代、【イメージ・インターフェース】使った特殊武装試験機が第三世代って所かな」
『イメージ・インターフェースって……【ちーちゃん用簡単操作できる君】の事?』
「それそれ。武装に転用しようと思えばできるからな。本当は寄り道なんだが歴史の発展には必要な寄り道だから無問題」
『じゃあパーツ変更無しで全領域・全局面対応可能なのが第四世代?』
「だな。第一世代でもある程度は可能だが、IS同士の戦いを目指すのは第二世代からだし」

 因みに今の俺の頭の中には『第五世代』の構想もあるんだが、それは暫く保留だ。きっと束に追い抜かれるだろうし。
 あとこの特殊武装ってのはアレだ、【単一仕様能力】を汎用化した物。零落白夜が出てきてからポコポコ出てきたんだよね。シンクロニティ?

『んー、全領域対応……あ、そうだゲンゾー、暮桜が進化したって本当?』
「ん、ああ。コアと操縦者の意識シンクロが一定以上になった劇的な形状変化……第二形態移行、って呼んでるけど」
『うーん、我ながらよく解らない物生み出しちゃったねぇ。で、何か変な能力が出たっても聞いてるよ?』
「誰だよリークしたの……攻撃対象のエネルギーを0にするとんでもない技だよ。ブレードが変形してエネルギー刃が出てくるようになった」

 ま、原作通り捨て身技なんだけどね。暮桜が勝手にブレードに雪片って名前付けちゃうし。暮桜さんマジ厨二病。

『ほうほう……他のISで再現はできないんだよね?』
「ああ、だから単一仕様能力って呼んでる。っつーかぶっちゃけお前に解らん物は俺にも解らん、ことISに関しては特にな」
『おやおやゲンゾー、当然の事を言っても褒めた事にはならないんだよ?』

 ムカつくこの小娘。畜生、通信じゃなけりゃ押し倒してあひんあひん言わせてやんのに。

「知りたけりゃ自分の目で見る事だな。来年には丁度良さそうな祭りも有る、たまには顔出せよ」
『うん、そーする。あーでもちーちゃん怒ってるかなー』
「怒ってるだろうな。まあアイアンクロー食らっても愛が滾ってるだけだと考えれば良いさ」
『おおう、ナイスアイディア! じゃ、そーゆーことでー』

 相変わらず破天荒なお姫様だこと。



 良い感じに一夏がフラグ職人やってます。どーも、ゲンゾーです。まだまだプロローグだよ。
 今日は第一回モンド・グロッソがあったよ。ちなみにイタリアだよ。

「そんであっさり優勝してるコイツは本当に人間なんだろうか」
「ふむ、辞世の句はそれでいいな?」
「ごめんなさい」

 ヒュパァァァンと見事なDOGEZAを繰り出し、目の前の最強人類の魔の手から逃れる。

「知らなかったのか? 私からは何人たりとも逃げられんぞ」
「なにその大魔王って痛い痛い痛い痛い、やめれ」
「やはり吊り上げんと威力が出ないな……」

 何この人恐ろしい。幸いにも俺の身長が190超えてたお陰で威力が下がっていたようだ。

「と言うか本当に伸びたなお前は……」
「何だ惚れたか? だったら是非束と3Pをだな」
「やっちゃえちーちゃん」
「心得た」

 どうしてこのタイミングで出てくるかなこの兎娘はってだから痛い痛い頭蓋が軋んでるーっ!

「久しぶりだな、束」
「ひっさしぶりー! ゲンゾーは相変わらずオープンな変態だねー」
「ふむ、それには同意するが迷惑度ではお前の方が遥かに上だと言う事を忘れるなよ?」
「痛い痛い痛いー! やーめーてー!」

 こ、これはまさかのダブルアイアンクロー!? とか考えちゃうくらい痛いです。そろそろ離して。

「それで束、どうしてここに居る? 優勝を労いに来た、と言うわけでも無かろう?」
「そうだぞ。それにどうして兎キャラなのにバニーガールで来ない」
「黙れ」

 ぎゃあ。ねえ、なんか出てない? 俺の頭から出ちゃいけない物とか出てない? それくらい痛い。

「んー、なんか箒ちゃんがお引越しするって聞いたから。大会見に来たってのもあるけど」
「ああ、それか。その情報は正しいぞ、要人警護プログラムとか言うものだそうだ」
「ウチの親はそれ使って日本中の観光地転々としてるらしいよ。誰かが場所のデータ弄ったのかね」

 それ警護できないよね、ってツッコミは無しだ。俺からのささやかな親孝行なのだから。

「んんー、そりゃ参ったねー。箒ちゃん盗さ…保護用カメラも新しくしないと」
「しかしこれで箒ちゃんは『幼い頃別れた幼馴染』という珍しい属性を得る訳か……嫌いじゃないわ!」
「……本当にお前らは相変わらずだな」

 そういう君もね。顔が笑ってるよ、苦笑だけど。



 さて、今度は一気に二年だ! はっはっは、一年ずつだと思ったか!? ネタがないだけなんだけどな!

「精々【打鉄】と学園ができたってぐらいだしなー」

 しかもまだ学園は完成してねーでやんの。国際IS研究基地として見れば充分完成してるんだがな。

「……ん?」

 と、緑茶飲みながらニュースサイトを眺めていた俺の手が止まる。そこには大規模な列車事故の記事。

「オルコット家の頭首が死亡、か……大変だな、あの子も」

 とは言えここに居てできる事はそう多くない。IS絡みの事でなければ俺はただの若造なのだから。

「鈴もちゃんと転校してきたみたいだし……そろそろ楽しくなりそうだ」

 誰にとってか、は言わんがね。ふっふっふっふっふ。



 とりあえず第一話です。期間が長いので話を細切れにしてあります。この辺はバトルが無いんでパッパと飛ばします。
 第一話って言ってますがまだプロローグ前半みたいな感じですからねー。本編キャラも喋ってるのが2人だけと言う事実。
 っつーか条約加盟国とか第一世代とか考えんの超楽しいんですけど。どの国がどの国に肩入れしてるとかね。

 それと何か原作で矛盾してるように感じられる設定が幾つかあったのでわざと無視している部分があります。ご注意下さい。

 源蔵は基本的に束と同ベクトルの人間です。若干マイルドになってるくらい。あとエロスと一夏弄り。
 釣り合いを持たせるために束と同レベルのキャラにしてみました。あと原作にちょこちょこ介入します。
 特徴は長身メガネとサイボーグ。現時点で「神の手(ゴッドハンド)」等の異名を持ってます。チートキャラですから。
 千春については本編開始後に。これもまた別の地味なチート能力持ちです。

 尚、このSSは可愛い束さんを目指しオリジナルISで満足する事以外は考えていません。ではまた次回。




[27457] 第二話「物語の始まりだ」
Name: 巣作りBETA◆bbda2e80 ID:2feb198d
Date: 2011/04/29 03:25



 第二話「物語の始まりだ」


 やぁ、佐倉源蔵だよ。今回は若干長めだよ、機体解説と『アレ』があるから。

「で、どうだ? 各国の機体の見立ては」
「んー、自信満々に第二世代って言ってるけど……【夕紅】の敵じゃないな。汎用性を求めすぎてる」

 まあそうなるように第一世代を組んだんだけどね! 量産機のロマンはカッコいいけど特化型には負ける運命なのさ!
 あ、暮桜は研究所行きになりました。ぶっちゃけ無くても勝てる相手ばっかりだし、たまには機体のタイプ変えないとな。
 ここ数年の訓練のお陰で千冬もまともに銃器扱えるようになってきたしね。あ、もっかしてやまやのお陰か?

「そんな事は解りきっている。詳細を話せと言っているんだ」
「ワーオ傲慢。でもそーだねー、どこも俺が渡した機体の発展系ばっかりだ」

 イタリアはフォルゴーレを発展させて【テンペスタ】ってのが出来上がってる。コンセプトはスピード特化で良い感じだけど、操縦者の技量が追いついてないな。
 イギリスがブルーハリケーンからの【メイルシュトローム】、【ミューレイ】って会社が作ったらしい。コンセプトは丁度アメリカとイタリアの中間くらい、別名器用貧乏。
 ドイツはヴァイサー・ヴォルフを研究して【シュトゥーカ・ドライ】。重装甲重装備とISとは思えない設計だがこういうのは大好きだ。単機での制圧能力を重視してるっぽいし、ひょっとしたら一番の強敵かも。火力だけなら現行の第二世代では最高峰だね。
 しかし、今度EUの方で【イグニッション・プラン】とか言うのやるって聞いたから期待してたけど……やっぱりまだまだだな。

 アメリカがダブルホーネットを突き詰めて作った【ビッグバード】は良いね、【クラウス】社の設計で『とりあえず銃載せとけ』って考えがよく解る。流石はアメリカ、大雑把過ぎてもう大好きだ。その分機体が大型化して機動性が犠牲になってるのはご愛嬌。
 日本に限っては俺が直々に打鉄を作ってやったけどね。夕紅ばっかりじゃアレだし、原作通りの堅実な仕様にしておきました。【倉持技研】と【ハヅキ】社の連中がやさぐれてたのが印象深かったね。

「他も似たり寄ったり。中国やオーストラリアなんかは第一世代の改良型で来るつもりみたいだな」
「舐められているのか純粋に開発が間に合わなかったのか……選手には同情を禁じ得ないな」
「どう見ても後者です本当にありがとうございました」

 結局デュノア社も間に合わなかったっぽいな。その代わりインナーはスウェーデンの【イングリッド】社との2トップみたいだが。アレか、デザインか。

「まあ何かトラブルでもない限りは大丈夫だろ。さっさと終わらせて帰ろうぜ」
「そうだな。しかし一夏達ももう中学生か……ようやく目を離しても心配がなくなったよ」

 それで今度の事件でまたブラコンが再発する、と。可能な限り手は尽くしたつもりだが、それで大丈夫だろうか……。



 現在時刻朝の八時、って言ってもイタリアの標準時だから日本は現在午後四時。もうすぐ日が暮れる頃だ。
 ついでに言うと現在俺はキーボード相手に格闘中。左手の超高速タイプ機能も長時間の使用によるオーバーヒート直前だ。

「源蔵、まだか!? まだ一夏は見つからんのか!?」
「落ち着け、って言っても聞かないよなオメーは。現在日本に残してきた端末で全力捜索中、ついでに千春は無事だぜ」
「当たり前だ、これが落ち着いていられるか! これで千春まで無事でなかったら貴様を磨り潰している所だ!」

 ドアがぶっ壊れんじゃねーかってぐらいの勢いで千冬が作業室に入ってくる。お前、一分前も同じ事やってたよな。
 あれから数日、決勝戦当日に当然のように一夏誘拐イベントが発生しやがった。無事であると知っているとは言え、その知識もどこまで役に立つか解らないのが怖いな。
 可能な限り監視をつけておいたが、結局は機械頼みだったのが仇になった。俺特製の『お守り』を一夏が家に放置しちまったのも痛いな、発信機入りなのに。

「現在各国にコネ使って捜索依頼中。それとやまや、千冬抑えてろ。作業の邪魔だ」
「む、無理ですよぉ~! あぁもう代表補佐なんてやらなきゃ良かった……」

 チッ、使えん乳眼鏡だ。これから暫くテメーはやまやで固定な。
 こないだだって無茶やってバイパスぶっ壊しやがったし。あれ直すのに何時間無駄にしたと思ってんだ。

「ハァ……千春の様子は?」
「メールの文面からは落ち着いた感じがするな。今は俺の家で隠れてるそうだ」
「そうか……まあ、お前の家なら安全だろう」

 伊達に何年も各国のエージェント達をホイホイで粘着液塗れにしてないからな。特に女だった時は思わず一眼レフを取り出してしまうくらいの芸術品だ。

「それにしても、お前のお守りとやらには何が入っているんだ? 発信機は想像がつくが……」
「トリモチ入りスタングレネード。一発限りだが千春は運良く使えたらしい」
「そうか……ハァ」

 さっきから溜息が多いぞ馬鹿者。少しは落ち着け……と考えてる俺の方がおかしいのかね、この場合。

「っと、ビンゴ! ドイツ特殊部隊さんからのお便りだ! 位置情報来たぞ、カッ飛べ千冬!」
「解っている!」
「……間違いなく協定違反ですよねぇ。それに決勝戦、不戦敗になっちゃいます」
「ハッハッハ、君と俺達が黙っていれば良いだけの話さ。それに千冬にとっては名声などより身内の無事の方が嬉しいんだよ」

 そういうものなんですか? と聞かれたのでそういうものなんですよ、と答えておく。実際はただのブラコンなんだが。

「とりあえずドイツさんにはこれで借り一つ作っちまったな、早い内に返さんと」
「どうするんですか?」
「んー、高官さんに緑の乳眼鏡をプレゼント、とか」

 おーうマヤさんIS起動しちゃ嫌ですよーう。

「まあそれ考える前に政府に何て言い訳するか考えようぜ」
「……あ」



「第三世代機……ですか?」
「ああ。ドクター佐倉の事は知っているだろう、彼から齎された技術だ」

 私、セシリア・オルコットがその名前を聞いたのは14歳になる頃でしたわ。先日から学び始めたISの教官が珍しく私を呼んだので何事かと思いましたわよ。
 ―――佐倉源蔵、またの名を『神の手』と呼ばれる世界最高峰のIS開発者。かの『大天災』篠ノ之束と共にISを作り出した『世界で最もISに詳しい男』。

「各国の第一世代ISを作り、第二回モンド・グロッソでも傑作機と名高い打鉄を世に出したもう一人の大天才……大天災の前に世界は彼に追いつく必要がある、とも言われているな」
「……正直、話を聞く限りではあまり好ましい人物とは思えませんわ。現在の風潮の責任の一旦は彼にある、とも言われてますわよね?」
「公の場で女の尻に敷かれていればそうも見えるか……功績に目を向ければ篠ノ之束と同等かそれ以上の物なのだがな。まあ、それは別に良い。それよりも今は第三世代機の話だ」

 そ、そうでしたわね。つい極東の猿の事などが話題になってしまって本来の話題を忘れてしまう所でしたわ。
 ……うぅ、やはり貴族たる振る舞いをする為とは言え、他人の事を猿などと呼ぶのは気が引けますわ、対策を考えませんと。

「現行の第二世代機と組み合わせたハイローミックス構想らしいが……注目すべきはむしろこの斬新な切り口だろう、読んでみろ」
「えっと、『思考操作技術による思念誘導攻撃機操作に関する基礎理論』……?」
「まあ早い話が【遠隔操作技術】だ。IS丸ごとと言う訳には行かないらしいが、研究するに値すると上は判断したらしい」

 遠隔操作……!? 無人機と並んで不可能と言われる技術ではありませんか!
 それにこの武装、まるで我が国で唯一発見された単一仕様能力【帰還者】を兵器化したような……。

「それにしても、どうして彼はこのような物を? 彼は強烈な日本贔屓と聞いていますが」
「それがどうも妙でな、世界各国にこれと同レベルの理論がばら撒かれているらしい。未確定情報だがドイツにも何らかの理論が渡っているらしい」
「一体どうして……?」

 私は渡された分厚い書類に視線を落としますが、当然ながらこんな事務的な文面からでは何も解りませんわ。一体何を考えていると言うの……?

「それがな、どうもこの理論は政府関係者に『本人から手渡し』されたらしい」
「で、ではドクター佐倉は欧州に居ると? 先日開校したIS学園に籍を置いていると聞いていますのに」
「ああ、昨年の夏頃から欧州各地で存在が確認されている。全く、神か悪魔のつもりか……?」

 教官のその言葉に、私の背筋がゾクリと震える。そうだ、彼はあの大天災と同種の存在。コアこそ作れないと聞くが、それに付随する技術では世界一であるかもしれないのだ。
 そして今彼が行っているのは、私達の第二世代の水準を『上から引き上げる』行為。まるで神か悪魔のように悪戯に知恵を与え、どうするのかを眺めるという行為。

「恐らく、そう遠くない内に第三世代ISの開発が始まるだろう。そして、その操縦者は恐らく君になる」
「なっ!? ど、どうして私なんですの!? 確かに光栄な事ではありますが、サラ先輩ならまだしも代表候補生でもありませんのに……」
「彼にとってこの国の情報を盗むなど造作もないのだろう。ご丁寧にその理論の一番最後に最適と思われる操縦者の事まで書いてあるぞ」

 心臓が高鳴り―――否、震え上がる。嫌な想像が頭の中を駆け巡り、そうであってほしい心とそうであってほしくない理性がせめぎあって指を震わせる。
 やっとの思いでページをめくると、そこは既に最後の一枚。分厚い紙の束を留めているクリップがカタカタと音を立てていた。

「……一体、何者なんですの?」
「さて、な。私はモンド・グロッソの時に一度だけ見た事があるが、その時の感想は『掴み所が無い』奴だった……気をつけろよ」
「……はい」

 ―――その数ヵ月後、私は彼と相対する事となる。そして、美しき蒼い雫とも。



「よっ」

 ……面倒な奴に出会ってしまった。

「無視すんなよボーちゃんよぉー」
「……私の名はラウラ・ボーデヴィッヒです」
「うん、だからボーちゃん」

 ―――面倒だ。

「まあそれはともかくラウラ君、どうよ最近調子は」
「上々です。これも教官のご指導の賜物です」

 相手をするのは非常に面倒だが、その頭の中身は間違いなく一級品だ。かの大天災と肩を並べると言うのも頷ける。
 新技術の研究のみならず整備や改良に強く、整備を依頼した我々の部隊のISが見違えるように性能が向上した。
 この性能を独力で引き出そうとするならあと数年、もしくは世代の更新が必要だろう。一体なにをどうやっているのか。

「して、ドクトルは何か私に用でも?」
「あーいや、こっちでの仕事もそろそろ終わりだしな。挨拶しとこうと思って」
「―――っ」

 彼――我々は畏怖と敬意を篭めてドクトルと呼んでいる――の仕事、それは日本代表IS操縦者織斑千冬専属整備士。それが、終わる。


 つまり、教官の仕事も、終わる。


「まあ、千冬の方はもう少しこっちに居るが、俺はこの後ロシアとフランスに行かねばならんのでな。だから早めの挨拶だ」
「そうでしたか。他の者にはもう?」
「ああ、クラリスには早く帰れとまで言われちまったよ。そんで漫画を送れ、と。まさかあそこまではまるとはな……」

 ドクトルは同じ部隊の一員である筈の私よりも皆と仲がいい。それに思う所が無い訳ではないが、私とて彼とこうして普通に会話している。
 ……眼帯をつけるようになってから、連絡や命令以外でまともに喋った相手は教官とドクトルだけだ。教官には私から近付いたが、ドクトルは気付けば今の位置に居た。
 そうして立場上無為に追い払う事もできず、仕方無しに応対していたらこの有様だ。恐らく、生来の喋り上手なのだろう。

 ―――ッ。

「……悔いの無いように、教わる事全部教えてもらえよ」
「え……?」
「そんないかにも『教官と別れたくないですー』って顔されても困るんだっつーの。もう少し前向きに生きてみろ」

 ぽん、とすれ違いざまに軽く頭を叩かれる。思わず反射で投げ飛ばしそうになったが、言われた言葉の意味を考えるとそうもいかなかった。

「とりあえず第三世代機の理論は置いてってやる。きっと気に入ると思うぜ?」
「……ありがとうございます」
「応、達者でな」



 ……ある日、私は新型機が出来ているらしいラボへ来ていた。沢山のサードパーティーを巻き込みながら、まともに完成しなかったあの機体が。
 更衣室で着替えていると噂が聞こえてきた。何でも新しい研究員が来て一日で山ほどあった問題点を解決していったそうだ。随分と下手な冗談だな、って思った。

「って言うかロシア経由でドイツから来た日本人って何なのさ……」

 確かドイツの機体はシュトゥーカ・ドライで……ロシアはフランカー、だったっけ?
 防御と近接戦に特化した単一仕様能力【流体装甲】を持っている機体がある以外は大した事ない機種らしいけど……。
 なんて考えている間にいつもの研究室に辿り着いちゃった。いつもここは空気がピリピリしててあんまり長居はしたくない。

「失礼しまー……」
「ハッピィブゥァァアスデェェェイッ! おめでとうっ! 君は今日新たに生まれた! そう、ラファールよっ!」

 おそるおそる扉を開けた私を出迎えたのは大音量でよく解らない事を言う声で―――、


 そこに、兵器という名の芸術品があった。


「ああ、君がシャルロット君だね? はじめまして、佐倉源蔵だ。好きに呼んでくれ」
「あ、え、えと……シャルロット、です。はじめまして」
「いやはやこんな機体が作れる自分の才能が怖い、とテンプレをかましたところで解説だ。コイツは【ラファール・リヴァイブ】、第二世代機だな」

 叫んでいた人はゲンゾウ、と言うらしい。どこかで聞いたような名前だけど……どこだっけ?
 よく解らないテンションをしたその人は私が考え事をしている間もつらつらとスペックを述べていく。
 それを聞く限り、決して突出した能力は無いけど全てが高水準で収まっている、といった印象だった。

「特に操縦の簡易化と素体の高性能化による汎用性の向上は素晴らしいの一言だな、まあ操縦系は各国のデータから俺が作ってるんだから当たり前だが。
 他にも多方向加速推進翼を四つも搭載してるが、コイツは航空力学に基づいて可能な限り低燃費で済まそうって考えだ。低燃費って大事だよな」
「はぁ……」
「ま、要するに何が言いたいかってーと、最後発機なんだからこれぐらいの性能ないとやってらんねーよなって話」

 台無しだった。

「ま、これでヴァンのハゲ進行も止まるだろ。最近アイツどんどん頭薄くなってるからなぁ……」
「―――ッ!」
「ん、あ……あー、悪い。ちょいと軽率だったな」
「い、いえそんな……」

 ヴァン。それはヴァンサン・デュノアの愛称。そしてそれは、私の『父さん』の名前。
 そう呼ぶって事は、この人は父さんと仲が良いんだ……もしかしたら、ううん、きっと全て知っているんだろう。

「まあお詫びって訳じゃないが、一つ君にプレゼントだ。ついてきな」
「え……?」

 その全てを知っているであろう目には軽蔑や同情の類の感情などなく、眼鏡の奥で悪戯っぽく光っているだけだった。
 ……そう思うと、言動の一つ一つが全てわざとらしく見えてくる。考えている事は行動の通りなのだろうけど、必要以上に感情を露わにしているように見える。

「さ、着いたぜ。カスタム機……と言うか厳密にはラファールの別プランだな。使いやすさを重視したんで本採用は向こうになったって訳だ」
「これって……」
「ああ。その名も【ラファール・リヴァイブ・カスタム】、拡張領域の拡大と一部パーツの変更で若干ピーキーだが第二世代としては最高峰の性能だ」

 その戦衣装は先の芸術品よりも洗練されており、何よりも野暮ったいネイビーカラーから鮮やかなオレンジへの変更が目を引いた。
 それに私はほぅ、とため息をつき……要するに見惚れてしまったのだった。

「他にもプランはあるが……まあ後はそっちの都合で変えてくれ。でもこの【黒の棘尾】、通称『要塞殺し』は変えない事をお勧めするな」
「……どうしてですか?」
「決まってるだろう―――ロマンだよ」

 ……まあ、悪い人じゃない、のかな?



「アイッ! シャルッ! リタァーンッ! ちなみにここ数回の会話は全部外国語ナンダゼッ!」
「……はぁ」

 何だ何だテンション低いなイィィィチ夏クゥゥゥゥゥゥゥゥンッ! こちとら流体装甲のデータからナノマシン制御作ってデータ送り返した所なんだぜフゥワッフゥッ!
 睡眠時間が足りんぞ、睡眠時間がぁぁぁっ! どーせあの研究所じゃ流体制御なんざできんだろうがなぁっ! 今作ってる機体も流体装甲止まりらしいし!

「あー、とりあえず座ったら?」
「そうだな、そうしよう」

 自分でもあんまりだと思うテンションに一夏がドン引きしているので元に戻す。全く優しい子だ。千冬はもーちょいこういう所を見習うと良い。
 あ、コイツ双子葉類とかアホな事考えてやがる。なんでこう考えがバレるのかね、コイツは。

「突っ込まんぞ」
「え、な、なにが!?」
「慌ててるのがアホな事考えてる何よりの証拠、と。箒ちゃんへの手紙があれば今のうちに預かっとくけど」
「あ、じゃあお願い。でもまさか手紙もロクに出せない状況なんてな……」
「しょーがねーだろ。俺と違って束の奴は完全に失踪してんだから」

 要人警護プログラムの一環で日本中を転々としてる篠ノ之家だが、先日遂に親父さん達と箒ちゃんが離れ離れになったらしい。
 幸いにも情報管理がザルなので会いに行く位は簡単だがな。っつーか警護なんだからこんな簡単に会えちゃ駄目だろってくらい簡単だ。
 で、俺はと言えば原作中トップクラスに情緒不安定な掃除用具娘の精神安定に奔走している。具体的には一夏からの手紙を渡す事だが。
 あとたまに一夏と剣道の稽古をしてたりする。バイト三昧と言っても月に一日ぐらいだったら問題無いしな。

「ホント、何やってんだかあの人は……」
「だがそれが良い、とは昔の偉い人の言葉だ」
「誰だよ……」
「まあそれはともかく千春はどーした?」
「さぁ? 鈴と遊びに行ってるんじゃないか?」

 って事はまた何かしらの作戦の用意でもするつもりか。原作と違って箒との交流があるから適度に乙女心(笑)が刺激されてるみたいだな。
 なんて考えてると客人の来訪を告げるチャイムが鳴る。ようやく来たかミスターバレット、もといダダンダンダダン。

「誰がターミネートマシーンのテーマっすか、誰が」
「「お前」」
「……俺、なんで一夏の親友なんかやってんだろ」

 それはきっと見ていて楽しいからさ! 君にはハーレム非構築系のオリ主になれる才能がある! いずれ挨拶だけで年上眼鏡っ娘落とすしね! 死ね!

「で、源蔵さん。例のブツは?」
「ん、ああ。ホレ」
「いやー、持つべき物は開発者の兄さんだよな」

 ニュアンスが近所の兄ちゃんって辺りに一夏のブラコン魂を見た。と考えながら月末発売予定のディスクをハードにセットする。

 その名も【IS/VS.SP】。スペシャルエディションの名に相応しく売り文句が『佐倉博士完全監修!』である。っつーかこれで最初の合わせて23種目だぞ。
 元々IS/VSは第二回モンド・グロッソをゲーム化した物であり、某巨大掲示板で『優遇商法』と新しい言葉を生み出した問題作だ。当然ながらKOTYにノミネートとかしたんだがまあ詳しい事は原作読め。
 このバージョンの最大の特徴は『機体エディット機能』を搭載した事である。流石に俺のようにネジ一本までこだわるのは不可能だが、シュトゥーカ・ドライにテンペスタの推進系乗せて強襲仕様とかが可能だ。俺も一回やったら強度不足で空中でバラバラになったが。
 そんな訳で大まかなパーツ単位でのオリジナルIS作成機能は本作品の目玉となり、最初の情報からドカンと某F通に掲載された。ぶっちゃけ俺監修って事より扱いがデカかったのは若干ムカついたよ。これでも世界的権威なんですが、俺。
 更に第一回大会の詳細なデータを俺経由で入手できたので容量が許す限りぶち込んである。勿論千冬のデータも入っており、暮桜が選べるってだけで予約が殺到してるらしい。ブリュンヒルデの人気恐るべし、だな。
 ついでに言うと俺完全監修なんで初期キャラの強さに操縦者の腕は入っていない。だから暮桜が割と弱い。でも某F通のインタビューでその事言ってあるから問題ないだろ。問題ない……よな?

 あと、隠し要素としてハミングバードのデータを入れてあるのは内緒だ。常時超高速戦闘みたいになってるから非常に扱い辛いが、それさえ超えればキャノンボールなら負けなしだぜ!

「うおおおおっ! マジでエディットできるぜオイ! よし、ビッグバードとシュトゥーカをミックスだ!」
「なにそのトリガーハッピー仕様」
「もしくはレッツパーリー。まず間違いなく飛べないな」

 まああいつらはISっつーか男のロマンですから。絶対開発チームにそういう連中いるから。

「一夏は当然ドノーマルの暮桜だよな?」
「え、いや、どうだろ……」
「ゲームとは言え戦術眼を鍛えるには丁度良いはずだ。千冬がどう考えてどう動いてどう勝ったか、それを知る良い機会だろ」
「じゃあ、まあそういうことなら……」

 そしてこれを足掛かりに織斑一夏改造計画がスタートするのだよ! 厳密にはもう始まってるけどな! ファファファ!



 珍妙な鐘が鳴り響き、授業の終わりを告げる。やっぱチャイムはキンコンカンコンだろって思うのは俺が日本人だからだろうか。
 なんて考えるのは鈴も中国へと引っ越していった次の夏。丁度期末テストの直前だ。このクラスの担任は理系がそれはそれはお粗末なので特別に授業を代わっている。

「ほい、そんじゃ今日はここまで。明日は実体弾の弾道計算についてやるからなー」

 うえー、と非常に女子らしくない声が聞こえてくる。その気持ちは痛いほどよく解るが、悲しいけどここって学校なのよね。

「よーし解った、こりゃ今度の期末のメインになるな。覚悟しとけよー」
「えぇーっ!? そんなぁーっ!?」
「ぶーぶー! 横暴だー!」
「そうだそうだー! 酷いよ源ちゃーん!」
「今度の薄い本佐倉先生総受けにしてやるー!」

 うっせぇ黙れ。っつーか最後のは俺有名になってからちょこちょこ出てるから。ちょっとどっかの代表と握手とかするとすぐ実況スレ立てやがってこの野郎。
 折角なら俺のホモとか千冬ばっかじゃなく束のエロ描けよてめーら。買ってやるから。

「そうか仕方ないな。上位五名くらいまでには一日目と二日目のサークルチケットを進呈してやろうと思ったんだが……旅費その他諸々全部俺持ちで」

 ぴた、と教室の空気が凍る。はっはっは、知ってんだぞ? 寮の中で薄い本が爆発的に市民権を得ている事ぐらい。

「やるしかないわ! 今日から合宿よ!」
「この殺伐とした空気……嫌いじゃないわ!」
「そう かんけいないね」
「ゆずってくれ たのむ!!」
「ころしてでも うばいとる」

 何をする貴様ら。っつーか誰だ今本気で殺気出してきたの。

 ……しかし、女尊男卑の世の中とは言え未だに世界最大の同人誌即売会は男がメインだ。いや、こんな風潮だからこそ、か。元々は女性参加者の方が多かったんだしな。
 メカミリからの派生でISジャンルが当然のように独立し、既に二日目西1全域が指定席だ。当然ながら俺の考察&1/8フィギュアサークルは半オフィシャルなんで壁配置。
 他にも企業とか色々顔突っ込んでるからチケットは割と手に入ったりする。それを期末頑張ったで賞として生徒に振舞って何が悪い。俺の分は確保してあるし。

 でもさー、幾らISスーツがエロいからってコスプレ絡みで問題起こすのやめてくれない? 準備会から真っ先に俺ん所に連絡来るんだけど。喧嘩とか俺に言われても困るから。

「ねぇ、山田先生。そう思いません?」
「佐倉先生……主語抜きでいきなり声をかけられても困るんですが」
「そこはホラ、その眼鏡で何でも見通すって設定で」
「設定って何ですか設定って!」

 相変わらず片手間で弄れて楽だなコイツは。



 やまやを弄りながら昼食を取り、自分の城である第一多目的工作室――通称『注文の多い整備室』――へと戻る。午前に実機の授業があると整備実習が入るが、今日は特に無いのでのんびり出来る。
 と、珍しくプライベート用のケータイが唸る。誰だ、と開いた画面には酢豚の文字。鈴か。

「応、どーした? アレか?」
『解ってるなら話は早いわ……源さん、何アレ』

 恐らくアレと言うのは先日『佐倉源蔵著 ISパーフェクトガイドブック 入門から応用まで』と一緒に送ったアレの事だろう。

「上手く使えって書いてあったろ? なら上手く使えよ」
『あのねえ! 【空間圧作用兵器】なんてどう考えても第三世代兵器じゃない! どうしろってのよ!』
「そいつを渡せば第三世代機ができる。優秀な成績を残せば国家代表になれる。そうすれば一夏もメロメロですよ旦那」

 どうよこの見事な三段論法。

『う……そ、それホント?』
「まあ少なくとも奴のシスコンは治るだろうな、千冬に勝てば」
『出来るかぁっ!』
「あきらめんなよ! 俺だって気温30度近い外に一歩も出ないでクーラーにあたってんだから!」
『あんたこそちったぁ外に出なさいっての!』

 むぅ、怒られてしまった。一体何処に問題があったのやら。きっと全部ですね解ります。

「ま、そいつ使うつもりなら学園に来ると良い。日本に来れば一夏にも会えるしな」
『むぅ……ま、まあ考えとくわ。ありがと、源さん』
「どーいたしまして。年末までには決めとけよ、推薦状出すのって時間かかるからよ」
『うん。じゃあまたね、一夏達によろしく』

 これでラストの仕込み終了……と。あとは本番だけだな。



 寒い。クッソ寒い。帰ってコタツで寝たい。いやホントに。

「まーそーも言ってらんない訳で。はい皆さんこんにちは、代表候補生の皆さんですね? 佐倉源蔵と申します、と」
「「「「「………。」」」」」

 返事ぐらいしろや。こちとら掻巻無しで行動してんだぞ。まあ別に良いけど。
 ふむ、ちょろい、酢豚、根暗眼鏡は居るな。オッケーオッケー、ここ一つ変わったよ。
 ……正直、シャルロットとラウラも呼ぼうか考えたが流石の一夏さんもキャパオーバーしちまうよなと考えてやめた。

「それじゃあ各人手元の資料にあるように動いて下さい。終わり次第一般入試始めるんで」
「「「「「はいっ!」」」」」

 元気があって大変よろしい。んじゃ俺は試験用の打鉄とラファールの準備があるんで戻りますよ。

「源さんっ!」
「佐倉先生、だ。試験の時くらいはそう呼べ」

 と思ったら声をかけられたので文句と共に振り返る。しかし鈴、お前相変わらずちっこいな。

「あ、えと……教本とか、ありがとう」
「どーいたしまして。しかしお前凄いな、IS歴一年未満で代表候補生なんてそうそう居ないぞ?」
「大したこと無いわよあれくらい。あの教本もだいぶ役に立ったしね」
「それでも実技クリアせにゃならんだろ。そこは完全にお前の努力と才能の結果だよ」

 べふ、と頭を撫でてやる。体格差からか非常に撫でやすい位置にあって良い。殴られたが。

「ったく、いつもいつも撫でんなって言ってるでしょ!」
「いやぁ、つい。一夏だったら良かったのか?」
「え、いや、えと、だめってことはないんだけど……」

 流石一夏さん。妄想だけで好感度上げやがったでぇ……。

「とりあえずさっさと戻って試験受けなさい。今日は割と忙しいんだよ俺」
「あ、ごめんなさい」
「まー頑張りな」

 ばっははぁーいと背中越しに手を振る。まあ鈴の成績ならまず大丈夫だろう。セシリアと良い勝負かな。



 さて、ここからが問題だ。現在朝の九時二十六分、そろそろ試験が始まる時間であり、運命が動く時間だ。
 要するに一夏が迷い込んできてる訳だが、このシーンってかなり切羽詰ってたのね。あと四分で女子ゾロゾロ来るぞ?

「お、来た来た」

 一応設置されてる監視カメラに一夏が映り、打鉄が低い起動音を上げ始める。あ、他の先生達気付いた。

「はいはいお邪魔しますよっと」
「え、げ、源兄ぃ!? どうしてここに!?」
「俺ISの学者さん、ここIS学園の試験会場、どぅーゆーあんだーすたん?」
「あ、あいえすがくえん……?」

 起動させた本人である一夏を放って皆が騒いでいる。そりゃそーだろーな、一夏って男だもん。でもきっとこれ束の差し金だもん。
 だって本当は『動かす予定が無かった』この打鉄が昨日起動してたし。どう考えても束が性別ロック解除したって事だよな。
 ……むしろ個人的には『関係者以外立ち入り禁止』の部屋にどうして入ってきたかが気になるぜよ。一夏君。

「静粛に! この件については私が預かる。以後この事については国際IS委員会からの発表があるまで口外厳禁とする! 良いな!?」
「「「は、はいっ!」」」
「では時間が押している、さっさと起動試験を始めろ。私は彼を別室へ連れて行く、何かあれば連絡したまえ」

 わかりました、という声を背中に聞きつつ一夏の首根っこを掴んで部屋を出る。うん、やっぱこの部屋立ち入り禁止なってるよ。

「まあ、試験会場がここになった段階で薄々気付いてたんだけどな。そっから束の仕業だったんだよなー、きっと」
「えと……源兄ぃ、離してもらえると助かるんだけど……って言うか束さん?」
「そ。まあ部屋に着くまで待ってろ、と言いたいが一つだけ良いか?」

 一夏の首根っこを左手で掴んだまま右手はドアを指差す。さあ読め。

「お前何で入って来てんねん」
「あ……」
「気付けド阿呆」



 カクカクシカジカジカサンマンエン

「とまあ、こんな具合だ。何か解らない事は?」
「えっと……俺、これからどうなるんだ?」

 ほほう、早速そこに思考が及ぶか。教育してやった甲斐があるというものだ。

「そーだな、最悪の場合解剖されてホルマリン漬け」
「げっ」
「まあそりゃ最後の手段だろ。とりあえず一ヶ月以上は政府か国際IS委員会の護衛と言う名の監視がつくかな」
「……それも嫌だなぁ」

 そう言うな。俺だってIS発表直後はそんな感じだったんだから。

「とりあえず珍しいケースだし、一回試験受けてみるか? 丁度別口のアリーナが空いた所だ」
「試験って……ISの?」
「ああ、試験官と一対一で戦う至極シンプルなもんだ。別に負けても問題ないぜ、勝てる奴なんて一年に一人いるかどうかだから」

 と言いつつ今年は既に二人勝ってるんだよね。お陰でやまやが絶賛沈鬱中だが。
 っつーか代表候補生五人と連続で戦った上にこんなジョーカーだもんな。そりゃ壁にぶつかりもするか。

「ん、じゃあまあ少しだけなら……」
「オッケー。ホントは保護者に連絡とらなきゃならんが、まあ千冬だったら事後承諾でも問題無いだろ」
「……また殴られるよ?」
「それもまた一興。んじゃ着いてきな」

 ―――さぁ、物語の始まりだ!



 やっとプロローグ終わった……長ぇ……。

 チート全開で介入しまくってみました。でも修正力みたいなのが働いてる気がしないでもない。
 源蔵の行動は大体原作通りに進んでいきます。物語を変えるのは実働部隊である千春の役目。

 本編は誰の視点で行くか……いきなり変わってる部分があるんでその辺にご期待下さい。
 次回の更新は、まあGW中には……。



 痛い!

「……どういうつもりだ」
「どうもこうも、言ったままの意味だっつーの。原因は不明、束なら何か知ってんじゃねーの?」
「はぁ……どいつもこいつも」

 あ、そーいえば千春がIS学園受験してたっけ。よし受からせよう。えこひいき万歳。

「現在国際IS委員会が発表の準備中。機体は倉持の所に良さそうなのがあったから唾付けといた」
「待て、まさか専用機を与えるつもりか!?」
「データ取りにはそれが一番でしょ。それに万が一の時に手元に無いなんて事にならないようにしないと」
「それはまあ、そうだが……」

 今ごろ委員会は上から下への大騒ぎだろーなー。明日からまた暫く忙しくなるなー。

「騒動が落ち着いたらどこの所属にするかでまた揉めるだろうな」
「そうだな……束め、今度会ったら絞り倒してやる」
「えー、だったら俺にやらせてよ。鎹作ってくるから」
「死ね」





[27457] 第三話「私の名前は、織斑千春」
Name: 巣作りBETA◆bbda2e80 ID:2feb198d
Date: 2011/04/30 15:55



 第三話「私の名前は、織斑千春」


 はぁ、とため息をつく。昔からため息をつくと幸せが逃げるなんて言われているが、生憎と今この状況で俺に幸せが残っているとは思い難い。
 がたいと言えば今ここの生徒で一番ガタイが良いのは俺なんじゃなかろうか、といつものウィットに富んだジョークも不発気味だ。

「皆さん、私がこのクラスの副担任の山田麻耶です。山田先生、って呼んでください。
 ―――決して、断じて、絶対に! 『やまや』なんて呼ばないで下さい、良いですね?」

 そう言う服のサイズが合っていない先生は俺の目の前、つまり俺は最前列のど真ん中だ。もしこのクラスが苗字順なのだとしたら、このクラスには相当な数のあ行がいる筈だ。

「……くん? 織斑くん? 聞こえてますかー?」
「え、あ、はいっ!?」

 っといけねぇ。いつの間にか自己紹介が始まっていたらしい。先生に促され、慌てて教室の中心を向いて立ち上がった俺は一瞬フリーズする。

「うっ……」

 教室中から集まる視線、視線、視線……普通の高校生活でも最初はこうだろうが、こと俺の場合は事情が違う。だって俺以外全員女子だからな。


 ―――特殊国立高等学校、通称IS学園。
 ありとあらゆる兵器を凌駕する『何故か女性しか使えない』最強の鎧、インフィニット・ストラトス。略して『IS』の操縦者を育成する世界唯一の機関。それがここだ。
 細かい所は省くが、ISは女性にしか使えない。つまりそれを教えるこの学園も当然ながら女子校な訳だが、俺は生物学的にも社会的にも男、MAN、MALEである。

 つまり現在俺は『1学年約120人中1人だけ男子』という双子の姉がよく読む小説のようなシチュエーションに陥っているのだ。けどな、千春。これ、ちょっとした拷問だぞ?


「えっと、織斑一夏……です」

 やめろ! そんな期待するような目を向けるんじゃない! 俺は源兄ぃとは違うんだよ! 千春も千春でどの挨拶がインパクトがあるか、とか考えなくて良いから!
 助けてくれ、と言わんばかりに窓際で一番前の席に目を向ける。ゆっくりと目を逸らされました。ひでぇよ。
 ならお前だ、と言わんばかりに『廊下側の前から三番目』の席を見る。今度は顔引き攣らせながらだよ。ブルータスお前もか。
 畜生、こうなったら男は度胸! 何も浮かばない時はこうしろってばっちゃが言ってたって源兄ぃから教わった!

「以上です!」
「もう少しまともな事は言えんのかお前は」

 スパーン! と俺の頭から快音が鳴り響く。こ、この角度、速度、そして回転角はっ!

「り、呂布なりーっ!」
「それは本人が言う台詞の一部だ馬鹿者」

 パコーン! と更にもう一発。でも源兄ぃに聞いたぞ、世界最強だって。ついでに陳宮が束さんで高順が源兄ぃだって言ってた。

「で、何で千冬姉がここに? 源兄ぃが居るからもしかしたらとは思ったけど……」
「織斑先生と佐倉先生、だ。公私の区別をつけろ戯けが」

 メコッ、と今度はグーがっ! グーが脳天にっ!

「おごぉぉぉ……」
「席に着け―――さて、諸君。私が織斑千冬だ。私の仕事は貴様らを泣いたり笑ったり出来なくする事だ、覚悟しておけ」

 一瞬の静寂の後、黄色い大歓声が響き渡る。嬉しいのか? けどちょっと待てお前ら、今千冬姉凄い事言ったぞ!?

「冗談だったのだがな……まあ良い。自己紹介を続けろ」

 千冬姉も大分源兄ぃに毒されてるなぁ、と思いながらクラスメート達の自己紹介を聞いていく。ん? 代表候補生って何だっけ? えーっとガイドブックガイドブック、っと。



「やっと休み時間か……」

 ふぅ、ともう一度ため息をつく。授業自体は予習範囲に収まっていたから問題は無かったな、特に『解らない所は無かった』し。

「少しいいか?」「ちょっといい?」
「へ?」

 下ろしていた視線を上げると、そこには見慣れた二つの顔。いや、この組み合わせで見るのは初めてか。
 そして何故いきなり睨み合ってんだお前らは。俺に用があるんじゃないのか?

「私はこいつに話がある、下がってもらえるか」
「ご生憎様、私もコイツに話があんのよ」

 何このギスギス空間。

「えーっと、箒? 鈴? どうしたんだ一体」
「一夏、誰だコイツは!」「コイツ誰よ一夏っ!」
「え、えっと、こっちが篠ノ之箒でコイツが凰鈴音、お互い話したことあるだろ?」

 それぞれ呼んでない方を向いて喋る。小学一年からのファースト幼馴染と小学五年からのセカンド幼馴染だ。
 直接の面識はない筈だが鈴の事は箒への手紙に書いた事あるし、鈴には手紙書いてる所見られた事あるしな。名前だけはお互い知ってるはずだ。

「そうか、お前が……私が一夏の『最初の』幼馴染、篠ノ之箒だ」
「そっか、アンタがねぇ……私が『つい最近まで居た』幼馴染、凰鈴音よ」

 何この空気。何でこんな剣呑としてんだよ、まるで鍋やってる時の千冬姉と源兄ぃじゃんか。

「あ、箒」
「ん、な、何だ?」
「………。」

 箒が視線をこっちに戻すと少し驚いたように表情を崩す。あと鈴がこっち睨んでくる。何なんだよお前。

「手紙にも書いたけど、中総体優勝おめでとう。ホントは応援行きたかったんだけど千冬姉が許してくれなくてさ」
「あ、当たり前だ馬鹿者、平日なのだから学業に励むべきだ……願をかけた甲斐があったな」
「………。」

 ん? 何か最後の方が良く聞こえなかったな。そしてドンドン鈴の表情が怖くなっていく。だから何なんだよお前。

「そういうそっちはどうなのだ? 鍛錬は続けているか?」
「あー、まあボチボチって所かな。源兄ぃに言われてなかったら途中で辞めてたかもな」
「そ、それは駄目だ! 全く、幾らアルバイトをするとは言え三年間帰宅部で過ごすのはどうかと……」
「ン、ンンッ!」

 箒と話してるといきなり鈴が咳払いをする。何だ、喉風邪か? 季節の変わり目は風邪ひきやすいからなぁ。

「あ、そう言えば鈴って代表候補生なんだな。こっちに居た頃はISの勉強してる感じじゃなかったし、一年でなったって事だろ? 凄いな」
「ま、まあね! それにしてもこっちに来る準備してたらビックリしたわよ、アンタがIS動かせるなんてさ」
「俺も驚いたよ。源兄ぃが居なかったらさっき千冬姉が来た時もパニックになってたかもな」
「………。」

 今度は鈴と話していると箒の視線がドンドン冷たくなっていく。ホント何なんだよお前ら。

「わかんない所とかあったら任せなさい。どーせアンタの事だから教本間違って捨てたりするんじゃない?」
「し、しねえってそんな事! それに源兄ぃに解説本貰ったからな、特に解らないって部分は無いぜ」
「ああ、パーフェクトガイドブックってやつ? あれって後で見直すとかなり良い出来なのよね、あのまんま教本にしても良いってぐらい」

 一回電話帳と間違えて捨てそうになったのは内緒だ。あのタイミングで解説本届かなかったら間違いなく捨ててたぞ。

「い、一夏っ、私も貰っているぞ。それに……姉さんからもな。だからどうしてもと言うなら私が教えてやろう」
「ああ、やっぱり束さんからも来てたんだ。後でそれ見せてくれよ」
「う、うむ! ならば昼休みにでも―――」
「さっさと席に着け馬鹿者共が」

 バババーン! と出席簿アタックが鈴、箒、俺の順にヒットする。え、何で俺まで?

「もう始業のチャイムは鳴っているぞ。今度はグラウンド十周してきたいか?」
「い、いえっ!」
「すいませんでしたっ!」

 周りを見ると確かに全員座っている。いつの間にチャイム鳴ったのかは気になるけど千冬姉、ここグラウンド五キロあるらしいじゃん。フルマラソン超えてるじゃん。

「それでは授業を始める。山田先生、お願いします」
「はい、解りました」

 あと後ろの方で誰かが立ったり座ったりしてた気がするけど気のせいかな?



「ちょっと、よろしくて?」
「へ?」

 入学初日からいきなり授業があるというスパルタな校風に気疲れを起こしていると、後ろから声をかけられる。
 そっちを向くと、見事な『お嬢様』といった感じの外国人がこっちを見下ろしている。あ、タレ目だ。好きなサイヤ人はターレスなんだろうか。

「まぁ! 何ですのそのお返事は! 私に話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度と言う物があるのではないのかしら?」
「悪いな。えーっと……オルコット、だっけ?」
「ええ。イギリス代表候補生、入試主席のセシリア・オルコットですわ。以後お忘れなきよう」

 へぇ、ここって入試の順位まで出すんだ。競争意識を高めるため、とかそんな感じなのか?

「そうか、よろしく。で、何の用だ?」
「これだから下々の者は……ですが、貴族とは寛大さも求められる者、その態度については大目に見て差し上げましょう」

 何だコイツ。生きてる貴族って初めて見たけど何かムカつくな。どことなく演技臭いし。

「そーか、そりゃ大変だな」
「……馬鹿にしていますの? 唯一男でISを操縦できると聞いていましたけれど、期待外れですわね」
「俺に何かを期待されても困るんだが……」

 IS関係だと精々源兄ぃのコネを頼れるぐらいだ。千冬姉はそういうの嫌いだし、束さんは論外。

「まあでも、私は優秀ですから。貴方のような人間にも優しくして差し上げますわよ。解らない事がありましたら、泣いて頼まれれば教えて差し上げても良くってよ?」

 ……はて? 何やら教室の両脇から不穏な気配がするんだが。

「何せ私、入試で教官を倒した二人の内の一人ですから。そう、エリート中のエリートなのですわよ」
「あれ? 俺も倒したぞ、教官」
「はぁ!? あの場に居合わせた者の中にしか居なかった筈ですわよ!?」
「呼んだ? イギリスの代表候補生さん」

 あ、鈴だ。そう言えば鈴は中国の代表候補生なんだよな。って事は、もう一人ってのは鈴の事か?
 そして何故箒は俺の隣に来てるんだ? あと何かオーラが出てる気がするが気のせいだろう。うん。

「あら、もう一人と言うのは貴女でしたの。中国の代表候補生さん」
「そ。それで一夏も教官倒したって本当?」

 いきなり話の矛先をこっちに変えるなよ。何かオルコットが凄いこっち睨んでんだけど。

「倒したっていうか、いきなり突っ込んできたのを刀で受け止めたら動かなくなったんだけどな」
「ふ、二人だけと聞きましたが……」
「女子ではってオチじゃないの? ってゆーかそれって私達の入試終わってすぐ言われた数字じゃん。あの時まだ一般の試験始まってなかった筈よ?」
「代表候補生でもない者に教官が倒せる筈ありませんわ!」
「ま、それもそうね。ってゆーか落ち着きなさいよアンタ」

 そうだ、確か源兄ぃが代表候補生がどうとか言ってたっけ。って事はあの前は鈴達がやってたのか。何だよ、教えてくれたらもう少し早く会えてたのに。

「これが落ち着いていられ―――」
「授業を始める、早く席に着け」

 チャイムが鳴り終わる前に千冬姉が教室に入ってくる。それまで思い思いの場所に居たクラスメート達は慌てて自分の席へ戻っていった。そりゃ殴られたくないもんな。

「それではこの時間は実戦で使用する各種装備の特性について説明だが……その前に再来週行われるクラス対抗戦にでる代表者を決めないといけないな」

 対抗戦? 何か面倒そうな行事だな、まあ俺以外なら誰でも良いけど。

「クラス代表者とはそのままの意味だ。会議や委員会への出席も行ってもらう、クラス委員長と言えば解りやすいか。
 クラス対抗戦は各クラスの実力推移を測る物であり、競争による実力の向上を促す物だ。一年間変更はしないのでそのつもりで」

 うわー、そりゃ面倒そうだ。なる人はご愁傷様。

「さて、自薦他薦は問わんぞ?」
「織斑君が良いと思いますっ!」「右に同じっ!」「以下同文っ!」「前略中略後略!」

 ……そう言えば源兄ぃが言ってたっけ、お前は客寄せパンダだって。

「マジかよ……」
「織斑、辞退は認めんからな。さて、他に立候補は? いないならこのまま―――」
「待って下さい! 納得いきませんわ!」

 机を叩く音に反応してそっちを見ると、オルコットが勢いよく立ち上がっていた。その証拠に髪の毛ドリルが揺れている。

「そのような選出、認められませんわ! 大体、男がクラス代表など良い恥さらしではありませんか!
 まさかこのセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえと仰いますの!?」

 なにこのひと。

「実力から行けば代表候補生である私がクラス代表になるのは必然。それを物珍しいからという理由で勝手に決定されては困りますわ!
 第一、私はわざわざ極東の島国までIS技術の修練に来ているのですわ。見世物のようなサーカスをする気は毛頭ございません!」

 な に こ の ひ と 。
 トリップ入ってて若干怖いんだけど。

「大体、文化としても後進的な国で暮らさなくてはいけないこと自体、私にとっては耐え難い苦痛で―――」

 何だとコラ、そっちだって大したお国自慢もないだろ。
 と立ち上がろうとする所に声が被さる。

「ったく、黙って聞いてれば散々言ってくれるじゃないの。それと知ってる? 誘導ミサイルが当たらないようにバレルロールを繰り返す機動を『サーカス』って言うのよ」

 その声の主はもう一人の代表候補生である鈴だった。
 お前、それはためになる知識だけど今のは俺が言う所だろうが! 中途半端に腰浮かしちまったじゃねーか!

「そ、それに何が文化後進国だよ。イギリスなんか世界一料理がまずい国で何年覇者だっての」
「なっ……! 貴方、私の祖国を侮辱しますの!?」
「先に言ったのはアンタでしょ。あ、織斑先生。私立候補します」

 そうだよな、代表候補生だからクラス代表ってんなら鈴もそうだよな。
 なんて意識を鈴に向けていたらオルコットの怒りのボルテージが更に上がっていた。

「貴方! 話を聞きなさい! ああもう解りましたわ! 決闘です!」
「おう、良いぜ。四の五の言うより解りやすい」
「ふむ、ならばその意気込みは試合で見せてみろ。一週間後の月曜の放課後、第三アリーナで凰を含めた三人で総当たり戦を行う。各員はそれぞれ用意を―――」

 怒気をぶつけ合う話し合いが終わり授業が始まると教室内の全員が思った時、プシュッと空気が抜ける音がして教室のドアが開く。

「おいーっす、ちょいと失礼ー……っと、何だ? ねるとんゲームか?」

 二ヶ月ぐらい早いか、と言いながら入ってきたのはIS開発の世界的権威だった。



 一夏と鈴とオルコット君が立っている。時間から見ても代表決めの真っ最中だろう。
 フッフッフ、同じクラスに捻じ込んだ甲斐があったな。これでもう鈴は2組なのでいないなんて言わせないぜ! グーグル先生にもな!
 唯一気になるのは酢豚の約束と対抗戦だが、まあそこは何とかなるだろう。暫く忙しいぜ、一夏君よ。

「……何かありましたか、佐倉先生」
「いえ、専用機持ちに必要な書類を渡しに。ついさっき用意できたそうで、あと四組にも持ってく所です」

 視線が怖いぞ千冬さんよ。防音しっかりしてるから中で何話してたか聞けないんだって、ここ。

「そうでしたか、では授業を始めるので手早くお願いします。ああ、良い機会なので自己紹介でもどうぞ」
「んじゃ遠慮なく。技術部長の佐倉源蔵だ。二年以降の整備科、三年の開発科と研究科は俺の下につくことになる。一年は整備実習の時に俺が見る事になるな」

 以後お見知りおきを、と締める。俺だって真面目な挨拶くらいできんだよ、束じゃあるまいし。

「そんじゃあ凰君、オルコット君、こっちに」
「あ、はい」
「はい」

 二人が席を離れるのと同時に一夏が腰を下ろした。こういう空気は読めるんだけどなぁ、コイツ……。

「必要な書類に記入して今週末までに学生課の窓口に自分で提出するように。提出するまでは自主練習だけじゃなく授業でも展開は禁止だからな、面倒な事になりたくなかったらさっさと出してくれ」
「解りました」
「解りましたわ」

 二人とも代表候補生だしこういうのは慣れてるんだろう。が、セシリアの様子が若干おかしい。

「……オルコット君」
「な、何でしょうか?」
「お前また変な事言って喧嘩売ったろ」
「う゛っ」

 ビンゴ。初めて会った時と何も変わってないぞコイツ。もうセ尻アッー!・掘るコックと呼んでやろうか。最低だな。
 あと鈴は何事もなかったかのように席に戻って書類の確認をしている。早いなお前。

「自尊心を持つなとは言わんが、もう少し冷静に判断できるようになれ。それでもガンナーか?」
「申し訳ありませんわ……」
「それとインターセプターも使え。稼動ログ見たがありゃ酷すぎる。副兵装も使いこなせない奴は三流以下だぞ」
「うぅ……」
「返事はどうした返事は。それとティアーズの稼働率だが……」
「っ!」

 流石にいじめすぎたか。もう完全に俯いちまってる。でもギリギリ三割ってこれホント酷いぞ?

「男なんぞにここまでボロクソに言われたくなかったら腕を磨け。そして俺を見返してみろ」
「……はいっ!」

 やれやれ、SEKKYOUなんて柄じゃないんだがな。あと涙声やめて。クラス中からの非難の目線が痛いの。

「あー、それと織斑君。君には専用機が用意される事になった、受領の際は君にも彼女達と同じ書類を書いてもらうのでそのつもりで」
「あ、はい。解りました……って、専用機!?」

 こっちが仕事用の口調なので自然と一夏の口調も事務的な物になる。そういう切り替えは大事だよね。ラストは駄目だけど。

「貸与機の空きがなくてね、それならいっそ専用機を持たせた方がデータ取得も楽だろうって事。週末には届くらしいが……」
「……えと、ありがとうございます、で良いんですかね?」
「んー、むしろ一人謝らないといけない可能性があるが、まあその辺は君次第だ」

 逆恨みだしね。全く、どっちか最初から俺に預けろっての。そーすりゃ今頃どっちかは完成してたのに。
 ちなみに貸与機ってのは学園側が成績優秀な生徒に在学中だけ預ける学園所属のISだ。卒業時にコアは返却する必要があるが、稼動データは職場へ送られるので色々と役立つのだ。

「はぁ……」
「それじゃあ俺はこれで。何か知りたい事があれば大抵は第一多目的工作室に居るから聞きに来るといい」
「はい、解りました」

 ……やれやれ、また薄い本描かれそうだな。けど、これでも一応兄貴分なんでね。
 ぽん、と無造作に一夏の頭に手を置く。この十五年、ある状況下で何度もやって来た行動だ。

「女所帯の中に男一人って辛さはお前より知ってるつもりだ、愚痴ぐらいは聞いてやるさ」
「……ありがとう、源兄ぃ」

 ホント公私の区別ができねー奴だな、と考えながら乗せた手を離してデコピンをかましてやる。ここで左手使ったらKYだよね。あー使いたい。

「佐倉先生、だ。そんじゃあ励めよ少年少女。目指せISの星、ってな」



 その人は不思議な人だった。会って半日も経ってないけど解る。私の隣に居るこの人は変な人だ。そう確信している私の顔が彼女の眼鏡に映っている。

「ん? どしたの簪。そっちの番だよ?」
「ううん……何でも……えと、『雑草などと言う草はない』」
「『今まで食べたパンの枚数を覚えているのか?』」
「か、か……『カッコイイからだ』」
「えーっと『ダリウス大帝こそが正義だ』」
「それ、違う……ズール皇帝……それにスパロボだよ、それ……」
「あれ? そうだっけ? じゃあねー『騙して悪いが仕事なんでな』」
「……『泣きたい時は泣けばいいんだよ』」
「『避けろナッパ!』」
「それも……違う……前後逆……」
「あちゃー、それじゃ私の負けで」

 ……どうして私は名言しりとりなんかやってるんだろう。

「にしても先生遅いね。どーしたんだろ」
「さっきの、時間……お腹痛そう……だった」
「ああ、それじゃトイレか。なら仕方ないね」

 私と同じ位の長さの黒髪がふわりと揺れる。少し癖の入った髪は頭を揺らす度にそれに合わせてよく動く。
 織斑千春。それがこの子の名前。織斑なんて苗字はそうある訳じゃない。それはつまり、

「……出来の良い姉を持つと大変だよねー」
「ッ!?」

 バレた!? でもどうして!?

「よくいるんだよね、『気になるから聞いてみたいけどコンプレックスに思ってたらどうしよう』って悩んでる子。同じ顔してたもん」
「あ……その、ごめん……」
「良いの良いの、私は気にして無いから。でも、差し支えなければでいいんだけど……簪もなんかあるの?」

 ―――ッ。

「その顔は肯定、って事で良いのかな。詳しくは聞かないけど……出来の良い姉を持つと大変だよねー」
「……うん」

 会話が途切れる。けど、それはどこか心地良い沈黙で、

「うーっす、お邪魔ー」

 先生の代わりに白衣を着た男の人が入ってきた。誰?

「……あれ? アクニャ先生は?」
「さっきから戻ってきませーん」
「多分トイレだと思いまーす」
「何やってんだあの人は……まあ解った、隣のクラスの邪魔にならないようにな」

 クラスの皆が答える。だからこの人は誰なんだろう。

「ああ、俺は佐倉源蔵。ここの教師だ。整備系の授業は全部俺の受け持ちだからな、基礎ちゃんとやっとかないと後で泣くぞ?」
「佐倉先生、それで何かあったんですか?」
「ああ、織斑君か。えっと、更識簪って子は?」

 え? 私? それにこの二人、面識があるのかな……?

「私……です……」
「ああ、君か。これ、専用機持ちの子に配ってる書類だ。今週中に必要事項を全部書いて学生課の窓口まで持ってきてくれ、それ書かないと使用はおろか整備もできないからな」
「っ……はい。わかり……ました……」

 封筒を受け取る時、左手でそっと右手の中指に嵌められた指輪に触れる。

「ああ、それと『千春』。お前に後でプレゼントがある、期待しておけ」
「……まさか」
「そのまさか、だろうな。何、お前にしか出来ん事だ。えこひいきも多分にあるが素直に受け取っておけ」
「はぁ……束さんと言い源ちゃんと言い……」
「なぁに、簡単な話だ。俺にえこひいきされたかったら俺に気に入られるようになれ、ってな」
「相変わらず最低ですね」

 はっはっはっはっは、と佐倉先生が笑う……それは全然似ていないのに、あの人の笑顔を連想させられた。
 その後ろで教室のドアが開き、どこかスッキリした様子の先生が帰ってきた。

「何してるんですか、佐倉先生」
「ああ、アクニャ先生。いえ、ちょっと書類を渡しに」
「……ああ、専用機の。と言うか佐倉先生は授業、無いんですか?」
「指示だけ出してきました。時間が必要な作業でしたし、この書類は他人に任せられない類の物なんで」

 ……そうだ、佐倉先生ってあの人に似てるんだ。掴み所が無いって言うか……。

「そんじゃま励めよ少女達。コンダラ引けとは言わんがな」
「佐倉先生、今時そんなネタ解る女子高生なんか居ませんって」
「でもお前解ってんじゃん、って俺が教えてんだもんな。んっじゃなー」

 佐倉先生はひらひらと手を振って教室を出て行く。それを尻目にアクニャ先生が授業を始めようとしていた。
 でも、私はその前に聞いておきたい事があった。

「……ねぇ、今の人……知り合い?」
「うん。大天災に惚れた大天才、あとブリュンヒルデの幼馴染……やれやれ、出来の良い身内を持つと大変だよね」
「……うん」

 大変だって言ってるけど、その表情はとても静かな笑顔で……私も、そう在りたいと思った。
 だから、私はこう言った。

「千春……もう一回、自己紹介していい?」
「……私の名前は、織斑千春。改めて、これからよろしく」
「……うん。私は、更識簪。よろしく」



 気がついたら一日で出来たでゴザル。休日パねぇ。

 しかし千春殆ど動いてねぇ。詳細は専用機持ちになってからかな……。
 あと簪のキャラ解んねぇ。六巻の途中で止まってんだよなぁ……今週中に把握しとかねば。ミスあったらその時に修正します。






[27457] 第四話「友情、努力、勝利」
Name: 巣作りBETA◆bbda2e80 ID:2feb198d
Date: 2011/05/04 00:10



 第四話「友情、努力、勝利」


 ようやく私の出番ね……ってそんなメタ発言してる場合じゃない、か。初めまして、織斑千春よ。
 皆さんご存知、織斑一夏は私の双子の弟。国語の成績が若干悪くて恋愛関係になると物凄い発想の飛躍をする恋愛台風。
 正直ラヴ・ザ・スタンピードとかに改名しても問題ないんじゃない? あ、でも眼鏡分が足りないか。それむしろ私の担当だし。
 私の見た目は至って簡単。姉さん―――織斑千冬をショートカットにして身長を何センチか下げ、眼鏡をかけて雰囲気を優しくすれば出来上がり。
 そんな私は今、同じクラスの更識簪って子とお昼を食べに食堂へ来ている。そして目の前には何故か顔に紅葉をつけた不肖の弟。負傷だけにね。

「で、どうしたのアンタ。鈴も一緒に居るかと思ったんだけど」
「いや、何か怒らせちまったみたいでな……」
「また何かやらかしたのね。とりあえずアンタが悪いわ」

 速攻で結論を出し、簪と一緒に一夏と同じテーブルに着く。ここの食堂って凄いお洒落よねー。

「話も聞いて無いのに決め付けんなよ!」
「経験を踏まえて言っただけよ、そんでアンタが悪いんでしょ?」
「……そうなる、のか?」

 私に聞かれても困るっての。と言うか隣で黙々とご飯食べてる箒の顔見てれば大体解るわよ。

「そうだな。横で話を聞いているだけでも大まかな事情は解ったし、第三者の意見を言わせて貰えば全面的に一夏が悪い」
「だってさ」
「はぁ……何だってんだよ」

 この子はこと恋愛に関しては病的なまでに吹っ飛んだ思考するからねー。事実は小説よりも奇なりって言うけど、確かにまだ一夏以上の思考回路したキャラには出会えてないわ。

「それはそうと千春、久しぶりだな。元気そうで何よりだ」
「箒もね。師匠達はお元気?」
「ああ、いや……最近は会えていない。辛うじて源蔵さんが手紙を運んでくれるくらいでな」
「そっか、ゴメンね」
「い、いや、こちらこそ最近は千春に手紙を出していなかったしな。構わない」

 一夏には週一ペースで送ってたのにねー。気づかれてないとでも思ってるのかな。

 ……佐倉源蔵。私の目の前に居る篠ノ之箒の姉である篠ノ之束と共に世界最強のパワードスーツ『インフィニット・ストラトス』を作った大天才の片割れ。
 と、世間一般の認識ではそうなっている。けどそんな評価は私達から見ればちり紙以下の価値しかない。因みに私は昔からなんとなく源ちゃんと呼んでいる。

 背は高くおおよそ2m、髪は色素が薄くライトブラウン、IS開発中の事故により左肘から先が義手、視力が悪く眼鏡をかけている。外見はこれくらいかな。
 昔篠ノ之道場に通っていた名残か肉付きは良く、こないだまでたまに一夏と竹刀を振っていたので人並みには腕も立つ……けど、中身が酷い。
 束さんにベタ惚れなのは良いけど真顔で堂々とセクハラ発言をするのはどうかと思う。やれ乳触らせろだの尻揉ませろだの、挙句の果てにはヤらせろだの。
 正直な所、束さんが失踪したのって源ちゃんから逃げるためなんじゃないかと思う。でもたまーにまんざらでもなさそうな顔するんだよね、天邪鬼なのかな。

 それ以外の性格は兄貴気質とでも言うのだろうか、他人の面倒を見るのが好きらしい。昔から私達の面倒見てたからかな?
 そのせいか頼られる事は多い(主に一夏と弾)けど、それ以上に場を引っ掻き回すのが大好きらしい。束さんと違って最後の一線は見えてるらしいけど。
 ただその分厄介になった問題の矛先が大抵私達に向いてるのは勘弁してほしい。頭がいい人間って皆こうなのかな。

「なあ千春、その子は?」
「ん? ああ、同じクラスの子。親睦を深めるために一緒にご飯をね」

 っと、いつの間にかボーっとしてたみたいだ。いけないいけない。簪の紹介もしとかないとね。

「……更識、簪」
「俺は織斑一夏、よろしくな」
「篠ノ之箒だ。よろしく頼む」

 ……あれ? ちょっと待って? 簪、なーんか雰囲気おかしくない?

「よう。こりゃまた変わった組み合わせ……でもないか」
「あれ? 源兄ぃ、どうしてここに?」
「俺だってたまには学食くらい来るさ。座っていいか?」
「どーぞ。簪、ちょっとだけ詰めて」

 あと佐倉先生な、と源ちゃんが私の隣に座る。お盆の上には山盛りの生姜焼き定食が乗っていた。

「そんで鈴の奴は……まあ、その顔見れば一発だわな」
「げ、源兄ぃまで……はぁ」
「後で鏡でも見てみな。綺麗に手形付いてんぞ」

 喋りながらも源ちゃんは箸を止めない。あっという間に山盛りの生姜焼きが消えていく。

「で、どうした。昔の約束でも忘れてたのか?」
「いや、その……鈴の料理の腕が上がったら酢豚を毎日食わせてくれるって約束だったんだけど……」
「「ぶふっ!」」

 味噌汁を飲んでいた私と簪は揃ってむせる。炎じゃなく味噌の匂いが染み付きそうだった。

「……あー、一夏。お前的にはどういう約束だったんだ?」
「どうって……店に行けば食わせてくれるって話じゃないのか? 料理が上手くなったら、って厨房に立てるようになったら、って事だろ?」
「……これだよ」

 解る。その気持ちは凄いよく解る。一夏、流石にその勘違いは無いわ。簪も凄いジト目で睨んでるし。
 ……と言うか、本当に当人達しか知らないような事を知ってるんじゃないかと思うくらい勘が鋭いわね。源ちゃんって。

「そんでクラス代表ってどーやって決めんだ? そういう話だったろ?」
「ん、ああ。今度の月曜に三人で総当たり戦だってさ。そう言えば千春のクラスの代表って誰なんだ?」
「ん」

 お椀を置いてから隣に座っている簪を指差す。おお、驚いてる驚いてる。まあ一組って騒がしいのばっかりみたいだし仕方ないかな。

「自己紹介の時に先生がうっかり専用機持ちで日本の代表候補生だって漏らしちゃってね。それで自動的に」
「へぇ! そうだったのか。それなら強―――何だよ、そんな睨んで」
「……別に」
「ちょ、ちょっと簪? どうしちゃったの?」

 簪は理由もなく人を睨んだりする子じゃない。どっちかと言えばオドオドビクビクするタイプだし、その反動か正義のヒーローに憧れてる所がある。それなら相応の理由があるはずだけど……。

「しょーがねーわな。結局ここの入試の時に機体が間に合わなくて教官に負けて、今度は目の前の男のせいで開発が凍結同然なんだからよ」
「っ!」
「開発に関与して無いから知らないと思ったか? 生憎とここに来るISの情報は自然と俺の所に集まって来るんだよ」

 源ちゃんの一言に簪が反応する。それもそうだ、こんな性格だけど源ちゃんはIS研究の権威でこの学園の全ISを管理しているんだから。
 ……参ったなぁ。仇の双子の姉でわざわざ相席させるとか嫌がらせ以外の何物でも無いわよこれ。失敗したなぁ……。

「でも倉持ん所も馬鹿だよなー。出来もしないのに無理やり手ぇ広げて、結局どっちも間に合ってない。どっちか俺に預けてりゃ最悪でもそっちだけは完成してたろうに」
「あー……えっと、ゴメンな? なんか、俺のせいで……」
「……別に」
「まあそうツンケンすんな。コイツだってモルモットなんだし、自分の意思でそうなった訳でもないしな」

 モルモットって……確かに合ってはいるけどさ。やっぱり源ちゃんって束さんと同種の人間だよね、解り辛いけど。

「それに罪を憎んで人を憎まず、って言うだろ。一夏の場合罪を犯したわけでもないし、こうやって自分が存在する事の余波を見て罪悪感を抱いている。ここは許してやるのがヒーローってもんだろ?」
「!」
「いや、そこは普通ヒーローじゃなく大人なんじゃ……って、簪?」

 何か眼鏡の向こうが輝いてるんですが。え、何? 本当に勧善懲悪系がツボなの?

「はいごっそさん、と。お前ら、ISの勉強ついでにコイツの機体完成させるの手伝ってやりな。けど、色々と事情があるから無理強いはしないようにな」
「あ、ああ……って言うか相変わらず食うの早いな、源兄ぃ」
「お前らが遅いんだよ。昼休み終わっちまうぞ?」

 ほんじゃなー、と空のお盆を持って源ちゃんが去っていく。どうして一番遅く来て一番早く食べ終わるのか。
 けどまあそれは別にいい。いつものことだし。それより聞かなきゃいけない事がある。

「ね、簪……未完成って、ホント?」
「……うん。動かすだけなら、できるけど……色々、足りない……」
「あっちゃー……それで、言いたくなければいいんだけど……事情って?」

 多分、ここから先は完全に簪個人の問題だ。それも感情論とかそういう類の。しかもこの説得を失敗したら四組は確実にアウトだろう。

「その……お姉ちゃん、この学校の……生徒会長、なの」
「……人呼んでミス・パーフェクトとかそんな感じ?」
「………(コクン)」

 うわっちゃー、コンプレックスだよ……私にも昔はあったからよく解るわ。一夏とか源ちゃんとか見てたらどうでもよくなったんだけどね。

「色々あって……ロシアの、国家代表で……IS一人で作ったり……」
「凄っ」

 さっきから一夏と箒は口を挟めないでいる。と言うかこの状況で口を挟めるのはただの馬鹿か紙一重の馬鹿だ。
 でもなー、源ちゃん見てたから解るんだけど、ISって一人で作れる物なのかな? 源ちゃんですらパーツの納入がどうとか騒いでたし。

「それで……私でも、頑張れば……できるかなって……」
「出来るわけねーだろこの根暗眼鏡が」
「っ!?」

 いつの間に戻ってきたのか、源ちゃんが簪の死角にドアップで近付いていた。
 ……源ちゃん、簪いじめたらある事無い事束さんにチクるよ?

「確かに【ミステリアス・レイディ】は二年の更識楯無が一人で『組み上げた』フルスクラッチタイプの機体だが、何もパーツ一つ一つから作ったって訳でもねーぞ。
 第一、あれの最大の特徴である『ナノマシンによる流体制御』は俺が作ったもんだ。武装は殆ど【モスクワの深い霧】からの流用だしな」
「え……? そう……なん、ですか……?」
「ああ。機体構成も高レベルに纏めてあるが、それも時間と才能をフルに使った結果だ。ついでに今現在も微調整を繰り返してる。
 お前はそれに相当するだけの時間を使って機体を組み上げるつもりだろうが、その間にクラス代表が必要な行事なんざ全部終わっちまうぞ?」

 大きいのは一学期に集中してるからな、と源ちゃんが鼻を鳴らす。そりゃ無理だ。
 いくら簪が天才的な腕だとしても三ヶ月程度じゃできっこない。それができるのは私達の目の前に居るこの人くらいだ。

「それに俺を見てみろ。確かに螺子一本から機体を全て組み上げる事は可能だが、普段はそんな事絶対にやらん。面倒だし、何より効率が悪い。
 じゃあどうする? 簡単だ、人を頼れば良い。一人じゃ半年かかるもんでも単純計算で二人いりゃ三ヶ月、三人いりゃ二ヶ月だ」

 実際はそんなに簡単じゃないだろうけど、源ちゃんが言ってる事は全て正しい。
 結果のために感情を捨てる、科学者的な思考とでも言うんだろうか。

「特にお前はクラスの代表、三十人の期待を背負ってるんだ。だが、それは同時に三十人分の苦労を背負ってるって事でもある。だったらその分は皆に迷惑かけたって良いんだよ。
 それに関係なくても自分から突っ込んでくる奴には特大の迷惑をかけてやれ。それ相応の働きをさせて見せろ」

 それになにより、と源ちゃんが席から離れる。

「これこそ勝利の三原則」
「―――友情、努力、勝利」
「そーゆーこと。そんじゃま急げよー? 時間ねーぞー?」

 しかし説教臭くなっていかんな、と今度こそ源ちゃんが食堂を後にする。説教臭いのは昔からだと思うけど。
 私達は流石にこれ以上時間をかけるといけなかったから殆ど食事は終わっていた。その中で簪が口を開く。

「……千春」
「ん? なーに?」
「……手伝って、くれる?」
「勿論」

 ここでやらなきゃ女が廃る、ってね。それと簪、私達の目の前に居るアイツを甘く見ちゃいけないよ?

「なあ、更識……いや、簪」
「……な、何?」
「俺にも手伝わせてくれ。どうであろうと結局は俺の責任なんだし、ISの勉強にもなるしな」
「……う、うん」

 これだよ。しかもいきなり呼び捨て。既に簪の頬が赤くなりかけてるのは見なかった事にしておこう。



 ようやく一日の仕事を終えて俺の城に戻ってくる。多目的工作室がある整備科棟に隣接した小ぢんまりとした一軒家、そこが現在俺が住んでいる場所だ。
 当然ながら学生寮、教員寮の両方から離れているこの場所は多少うるさくしても怒られないのが良い所だ。若干移動に時間がかかるがそれも数分の差だしな。

「それにしても今日は疲れたな……SEKKYOUしちまったし……んぁ、電話? しかも一夏? もしーん!」
『い、いきなり叫ばないでくれよ源兄ぃ。ビックリするだろ』
「悪い悪い。んで、どした? そろそろ寮にいる時間だと思うが」
『やっぱり知ってたか……源兄ぃ、もしかして部屋割りも知ってるのか? 何でか箒と一緒なんだけど……』

 知ってると言うか俺が原作どおりにしたんだけどね。だってそっちの方が面白いだろう?
 千春は簪と同じ部屋になってもらいました。マジ眼鏡部屋。

「知らない奴と一緒にするのもどうかと思ってな。まあ暴れようがナニしようが備品壊さなきゃいいよ、俺としては」
『えっと……既にドアに穴が……』
「……そう言えばここってドアに鉄板とか仕込んでないんだよな。いや、まさか鉄板ごとぶち抜いたのか!?」

 とか唐突に現実逃避してみる。普通にドアを木刀でぶち抜くだけでもありえないんだけどね。

「で、それより何より早速やらかしたのか? 勘弁してくれよ……監督責任こっちに来るんだからさぁ」
『えっと……ゴメン』
「とりあえずやまやか千冬に報告だな。あいつら一年寮の担当だから」
『あ、そうなのか。そっか、寮監ならたまにしか帰ってこれないのも仕方ないな』
「そーいや言ってなかったな。まあとりあえず今日はもう寝ろ、明日も早いぞ」
『ああ。おやすみ、源兄ぃ』
「応、おやすみー」

 電源ボタンを押して通話を終える。全く、やっぱりやらかしてくれたか。実にいいね、すばらしい。

「で、『六花』。お前はどう思う?」

 見る限りは『誰もいない』机に声をかける。誰かの前でこんな事してたら黄色い救急車呼ばれちまうな。

『どう、と申されても情報が不足しているため回答は出力できません』
「ハハッ、それもそうだな。だがきっと長い付き合いになる相手だ。覚悟しとけよ、色々と」
『入力情報が不適切と判断します。不適切でない場合は具体的な入力をお願い致します』
「……全く、まだまだお子様だなお前は」
『入力情報が不適切と判断します。不適切でない場合は具体的な入力をお願い致します』
「……風呂入って寝るか」

 べ、別に相手をするのが面倒になった訳じゃないんだからね! とか言ってみる。キメェ。



 七巻が見つからんでゴザルよー! 簪のキャラがわからんでゴザルよー!
 仕方ないんで気にせず進めようと思います。週末までには何とかしたいなぁ……。

 源蔵、SEKKYOUをするの巻。あと酢豚イベントスタートの巻。でもまだ一日目の巻。
 なんかこのペースでやってたら束さん出てくる前に力尽きそうなんでサクサク進めようと思います。
 4巻の話は束さん祭りになる予定です。だってメインヒロインですから。

 所でふとゾイドのスラッシュゼロ見たんですが、やっぱゾイドの重量感って半端無いですね。
 ISで一番足りないのは歩きモーション時のあの重さかもしれないです。




[27457] 第五話「踏み込みと、間合いと、気合だ!」
Name: 巣作りBETA◆bbda2e80 ID:2feb198d
Date: 2011/05/06 00:37



 第五話「踏み込みと、間合いと、気合だ!」


 さて、入学式から一週間が経った。まあそれは良い。一夏が竹刀でべちべち叩かれたり弐式をどこから手をつけていいのか解らなかったりしたが予定調和だ。
 結局簪君(更識妹って呼んだら泣かれて千春にボッコボコにされた)は解らない所は俺に頼るらしい。うん、これでも先生だからね俺。頼られたら全力で動くよ。

「……で、まだ来ないの?」

 俺は一夏の専用機【白式】が来るのをモノレールの発着場で待っていた。その隣には眼鏡を光らせた千春が座っている。

「おっかしぃよなぁ……今日の昼には着くって言われてたんだが……」
「もう放課後よ? 一夏達はもうピットに着いてる頃だろうし、オルコットさんだってとっくに準備してる筈よ?」

 そんな事俺に言われても困りますがな。ぶっ壊れてても手元にあれば何とかできるが、手が届かない場所だとどうしようもない。
 っつーか束が手ぇ加えたらしいし、そのチェックでもやってんのか? やめろよそういう徒労。

「それで源ちゃん、一夏の専用機のスペックってどんな感じ?」
「佐倉先生、な。ホントはまだ授業残ってるんだわ俺。でも受領は指導部か技術部、あと経理部及び渉外部の部長クラスじゃないと駄目だからさ。
 で、スペックだったな? 簡単に言えば暮桜の焼き直しだ。速くて堅くて刀が一本、以上」
「……それ、大丈夫なんですか?」

 先生として話しているので千春も生徒としての口調に直す。こういう所ってこの双子似てないよね。

「んー、元々零落白夜を再現する為の機体だったんだけど計画が頓挫してな。そんで色々あって束が手を加えて完成させたんだ。
 実体剣を包むエネルギーフィールドがどうしても再現できなかったらしいが、束の手にかかればそんなもんさらっとクリアできるだろ」
「零落白夜って……姉さ、織斑先生が現役時代に使ってたISの技ですよね?」
「ああ。相手のシールドエネルギーに干渉して対消滅するエネルギーを発する技だ。
 競技用ではリミッターをかけてあるが、全開放状態だと一瞬でISが待機状態まで戻るんだ。おっそろしい技だぞ」

 威力測定の時に危うくやまやが真っ二つになる所だったからな。少しぐらい乳削ればよかったのに。

「そんで話を戻すが、白式は格闘戦オンリーの機体だな。やれる事は近付いて切る、それだけだ」
「……凄いとんがった機体だって言おうとしたけど、よく考えたら姉さんってそれで世界最強になってるのよね」
「だが高機動型の割には堅いし、乗り手次第でどこまでも強くなれる機体だな。中々楽しみだ」
「……スルーしたのは姉さんが怖いから?」

 うん!

「やれやれ……こんな風に見られるから貰い手が見つからないのよ。幼馴染なんて良いポジション持っといて……」
「いやぁ、俺としては束の方が好みなんで。千冬も好きではあるけど」
「それもそれでぶっ飛んでるけどね。やっぱり源ちゃんも学者ってこと?」
「多分なー。お、来た来た」

 誰か(主に世界最強の人間)に聞かれてたら色々と面倒な事になる会話を切り上げ、ようやく姿を現したコンテナを見る。

「佐倉博士ですね。それでは白式、確かにお渡しいたしました」
「んー。何か凄い遅れたけど何で?」
「……その、ウチの主任がごねまして。最後まで反対してたんで大人しくさせて持ってきたんです」
「それで大丈夫なの? 日本最高峰の研究所」

 多分駄目だろうな。あとどう大人しくさせたかが気になる。まさか×××板行きの方法じゃなかろうな。

「よし、手伝え千春。【一次移行】はオートでやればまず三十分前後はかかるからな、一秒でも早く装着させてやらんと」
「りょ、了解! それじゃあありがとうございました!」
「え、ええ。こちらこそ遅れてしまい申し訳ありませんでした」

 千春と一緒に糞重いコンテナを運ぶ。ああもう、授業みたく外なら牽引車使えるのに。

「っと、そういえば源ちゃん」
「なんだよ。佐倉先生だって何回言えばわかんだ」
「私の専用機ってまだなの?」

 ああ、なんだそれか。やっぱり千春も気になるのか?

「ガワだけならもう完成してるよ……そうだな、今日夕飯食ったら整備棟に来な。そろそろ良い頃だろ」
「……何か物凄い嫌な予感がするんだけど」
「なぁに、ちょいとばかし調整が難しくてな。それにホレ、一人だけ先にゲットしたら後ろめたいだろ?」

 特に未完成のもん渡された奴と同じ部屋だと特にな。



 一夏改造計画の甲斐もありラストにビシッと決めた以外は殆ど原作通りになった一夏対セシリア戦。
 二戦目は初心者の一夏に配慮してセシリアと鈴なのだが、ちょいとここで思い出してほしい事がある。

 一夏はさっきブルー・ティアーズを切り払った。うん、これはいい。原作通りだ。
 そしてISには自己修復能力が備わっているが、パーツが全損した場合は再生できない。うん、これもいい。
 さて、この二つの要素が合わさるとどうなるか? うん、そうだね、プロテインだね。

「………。」
「……申し訳ありませんわ」
「別にいいさ、こうする事が俺の仕事だからな。ただ、元々調整に時間がかかるBT兵器をこの短時間で完璧に直さないといけないんだよなぁ……」
「ぐっ……」

 そう。いくら予備パーツがあるとは言え、ブルー・ティアーズの調整をしなければいけないのだ。

「しかもさっきの試合、インターセプター使ってれば勝てたよなぁ……」
「うぐっ……」
「一次移行してないズブの素人をいたぶった挙句に負けるんだもんなぁ……」
「せぐっ……」

 一応整備科の生徒達には課題を出してあるから問題ないと思うが、こちとら無断欠勤してるようなもんだ。
 手前ふざけんな馬鹿野郎、と言いたくもなる。だってバレたら減給もんだし。いや、注意だけかな。

「……でもさ」
「?」
「良い目、してたろ? 一夏の奴」
「……はい」

 ちょろいなイギリス代表候補、流石イギリス代表候補ちょろいな。
 そして今から戦う相手はそんな所は既に通過している相手だ。こりゃ勝ち目がない。

「―――よし、調整完了! ちゃちゃっと行って来い!」
「はい、ブルー・ティアーズ、セシリア・オルコット! 行きますわっ!」

 さぁて、何秒持つかな?



「おいーっす、不順異性交遊やってるかー?」

 次の試合に向けて千春、箒、簪の三人と白式の調整をしていると源兄ぃがピットに入ってきた。何言ってんだアンタ。

「何ってまあ、ナニだけどよ」
「こんな所で考えてる事読まれた!?」
「それぐらい楽勝だっつーの。で、どうだ? コイツは」

 いつも通りの源兄ぃは不意に優しい目をして白式の装甲に触れる。
 それは普段の悪戯好きな兄貴分ではなく、どこか……そう、まるで娘を見る父親の目のようだった。

「そうだな、最高だよ。射撃武器がないってのはちょっと驚いたけど」
「武装が試作品同然だからな。だが高出力のエネルギー体でできてる刃だから、大抵の物は一撃で切り落とせるぜ」
「やっぱりそうなのか……」

 とは言え競技用に最大出力は抑えてあるが、と源兄ぃは言って空間投射モニターを一つ呼び出した。

「さて、それじゃあ鈴に勝つ為に一つアドバイスだ。言っとくが鈴は強いぞ、相性的な問題で」
「鈴のISってどんなのなんだ?」
「中国の第三世代型【甲龍】だ。基本的には近接型だがフロートユニットを丸ごと空間圧作用兵器【衝撃砲】に使ってるのが特徴だな」

 衝撃砲? 名前からして射撃武器だってのは解るけど……って、それかなり相性悪くないか!?

「そう、かなり悪い。しかも衝撃砲は砲弾及び砲身が不可視なのが特徴でな、射角もほぼ360度。ただ突っ込むだけじゃ勝てないぜ」
「砲弾も砲身も見えないって……それじゃどうやって避けんだよ」
「勘。まあオルコット君との試合を見る限りは稼働率も40%かそこらだろうし、気をつけるのは射角制限が無いくらいだろ」

 勘って……まあ鈴の事だから結構簡単に見破れそうだけどさ。

「それで佐倉先生、策って?」
「ああ。離れたら勝ち目がないし、かと言って常時接近戦ができるほど優しい相手でもない。なら最大の一撃をぶち込むしかない」
「確かに零落白夜は当たれば終わりだけどさ……そう簡単にはいかないだろ?」

 理屈は簡単だ。けど世の中簡単なことほど難しいからな。どうすりゃ良いんだよ。

「ああ。だから玉砕覚悟で常時零落白夜って手もあるな」
「手『も』って事は、先生の策は違うんですか?」
「当然。その名も【瞬時加速】―――千冬が現役時代に得意としていた技だ」



 頭の中で源兄ぃに言われた事を反復しながらピットを出る。そこにはさっきまで試合をしていた筈なのに疲れが見えない鈴の姿があった。

「一夏! 今謝るならちょっとは手加減してあげるわよ!」
「手加減なんざいらねぇよ。でも約束を勘違いしてたって事は謝る。悪かったな」
「な……べ、別にそんなうわべだけ謝られても嬉しくなんかないわよ!」

 何だ? 鈴の奴……まあ、確かにそうかもな。意味は自分で考えろって言われちまったし。

「さて、それじゃあ準備は良いか? さっさと始めようぜ」
「第一これじゃ折角の計画が―――って通信? 誰よこんな時に! 一夏、ちょっと待ってなさい!」
「あ、ああ」

 何かボソボソ言ってたと思ったら誰かから通信が入ったらしい。相変わらず忙しい奴だな、鈴は。

『―――。』
「……そう、そうよね。約束した時点で気付かなかったんだもんね、確かにそうだわ」
『―――。』
「うっ……わ、解ったわよ。それじゃ切るわよ? いい加減始めたいし」

 さっきから妙に顔を赤くしたままの鈴が通信を切ってこっちに向き直る。やっぱり忙しい奴だな。

「一夏、こないだは殴ったりして悪かったわね」
「殴ったって言うかビンタだったけどな」
「そこ突っ込む所違う! っとに……それじゃあ、お互い謝ってスッキリした所で始めるわよ!」
「ああ!」

 お互いに武器を構えた所で試合開始のブザーが鳴る。わざわざ待っててくれたのか。

「たぁぁぁっ!」
「背中で吐いて……吸って……ぶっ飛ぶっ!」
「っ!?」

 一度エネルギーを吐き出し、それを吸引。そのまま勢いをつけて吐き出す事でスペック以上の加速を行う事が出来る技だ。
 源兄ぃに教わったのはイメージと『最初の一手にこれを使う』こと。どうせ手が無いのはバレてるんだし、最初の一撃で決められなければ負けだと思えとまで言われた。

「はぁぁぁぁっ!」
「瞬時加速!? でもっ!」

 加速しながら零落白夜を起動。鈴も一瞬驚くが、手に持った大刀でカウンターを取りに来た。
 けど負けるか! 源兄ぃに教わったこの台詞の通りにするだけだ!

「踏み込みと、間合いと、気合だぁぁぁぁっ!」



 総当たり戦の結果は一位鈴、二位一夏、三位セシリアの順になった。が、ここで一夏以外が代表になると困るので鈴には色々と吹き込んでおいた。これで代表を譲るだろう。
 ……しかしまずいな。少し一夏を強化し過ぎたか? セシリアが折れても困るし、ゼフィルス戦までに何とかしないとな。

「でも惜しかったね。やっぱり青竜刀と正面から打ち合ったのがまずかったのかな」
「青竜刀じゃねぇ! ありゃ柳葉刀だ! ゴテゴテしすぎてて解り辛いが柄の長さが決定的だ!」
「……武器マニア」

 で、現在俺の城には客人二人。千春と付き添いの簪である。はっはっは、その称号は褒め言葉だぜ?

「それじゃあ千春、コイツが俺からの入学祝いだ。受け取ってくれ」

 ドアのロックを外し、その中へと歩を進める。ここには小さいながらもIS整備には充分なガレージがあるのだ。

「これが……私の、機体」
「綺麗……」
「あんがとよ。コイツの名前は【六花】、雪の結晶の別名だな」

 そこに鎮座しているのは俺が丹精込めて作った『第五世代概念実証用第三世代機』である。

「よし、早速一次移行始めるか。今回は俺が手動でデータ入れるから十分ぐらいで終わる筈だ」
「は、はいっ」

 事前に借りておいたISスーツ(管理科に変な目で見られた)を千春に投げて寄越し、六花に繋げてある端末を起動させる。
 入学時の身体測定で解っている範囲のデータを入力しながら待っていると、数分で着替え終わった千春が六花の装甲に触れていた。
 その表情は硬く、緊張か興奮かそれともまた別の何かが渦巻いているような顔であった。

「よし、そんじゃ乗ってくれ。データの微調整するから」
「あ、はい!」

 言われるまま千春は六花に乗り込み、シートに身体を預ける。六花は自動的に搭乗状態へと移行し、リアルタイムでデータの取得を始めていた。
 そのまま誰一人として言葉を発する事無く数分が経ち、俺は空間投射ディスプレイをかき消す。

「ほい調整終了、と。超速いな流石俺」
「………。」
「………。」
「……はいスンマセン。ナマ言ってマジスンマセン」

 こういう無言の圧力やめてホント。胃がキリキリするから。おっかしいなぁ……束なら許される言動なのに。

 ―――第五世代概念実証用第三世代IS、六花(リッカ)。
 この機体は第二世代の特徴である装備変更による用途の多様化を突き詰め、固有装備ごとの性能の特化を目指している。
 故に素体の状態では多少足が速いだけの機体であるが、勿論俺お手製の機体なので白式に若干劣る程度の速度は出せる筈だ。
 だが、この機体の最大の特徴はそこではない。伊達に第五世代の概念実証機ではないのだよ。


『おはようございます。独立型戦闘支援ユニット、六花です。操作説明を行いますか?』


「……しゃべ、った?」
「シャベッタァァァァ」

 千春も簪もポカンとしているので合いの手を入れておいてやる。

「……う、動けぇぇぇぇ! で、良いの?」
『はい。流石は我がマスター、完璧な返答の入力に感謝の意を表します』

 そして千春は中々にメタトロンに毒されていた。まあ俺のせいなんだけどさ。

「あの……これ、って……」
「ああ、IS『六花』に搭載されている戦闘補助用人工知能『六花』だ。背中側の腰のちょっと上にそいつのメインユニットがある、そこだけは絶対に守れよ」
『私としては絶対防御を発動させたい所ですが現状では不可能です。よろしくお願い致します、マスター』

 六花の起動を完全に確認し、俺は機体に接続されている全てのプラグを排除する。その間も限りなく白に近い水色のボディがライトの光を受けて輝いていた。
 形状は殆ど俺の設計通りだが、全体的に流線型になっている。それと尻の後ろ側にあったフロートユニットが外側へと移動している。六花自身が必要だと判断した結果だろう。
 千春はバイザーに覆われた顔を巡らし、着け心地を確かめるように手を握っていた。下半身にブースター系が集中しているせいかドレスを着ているようにも見える。

「見ての通り、コイツの最大の特徴は戦闘支援用AIを搭載している事。そいつとの意思疎通のレベルがそのまま強さに反映されると言っても過言じゃないな」
「意思の疎通……」
「ホレ、お前他人と打ち解けるの早いだろ? だったらAIでも行けるかなと思ってな」
『よろしくお願いします、マスター』
「う、うん……」

 どうも難しく考えて緊張しているようだが、別にそう構える必要は無いさ。女の子らしくお喋りでもしてなさい。

「さて、そんじゃあ機体特性の説明だ。まず固定武装は腕部パーツの内側にナイフが一振りずつ。最後の武器だな」
『武装展開:特殊複合ナイフ』

 俺の説明に合わせて六花がナイフを展開する。手首の部分に柄が来る設計になっているので、片手で展開するのは少しばかしコツが居る筈だ。

「それと量子展開用武装には六銃身型のGAU-19をベースに改造したガトリングガンが二丁、銃剣付きでな」
『武装展開:GAU-IS』
「きゃっ!」

 千春がナイフを仕舞ったのを確認し、今度は展開用の武装の説明に入る。急に重さが生じて驚いたのか、千春が一瞬倒れそうになる。
 が、ISのパワーアシストがあればこの程度は何も問題は無い。すぐに持ち直して重さを確かめるように振っている。危ないっての。
 これは本来なら固定武装として使用する物だが、集弾率を気にしなければ片手で運用可能だ。銃剣は殆どおまけだが直接殴るよりはマシだろう。

「細かいデータは後で確認するとして、次は基本的な機体性能だな。コイツはこの状態だと高速戦闘型になるが、このままだと真価を発揮できない。六花を積んでる意味が無いからな」
「このままだと……?」
「そう。両肩と腰、あと背中にジョイントがあるのが解るか? そこに換装パーツを装着する事で様々な場面に対応できるようになるぞ」

 それじゃあパーツセットのご紹介だ、と指を慣らして大型の空間投射モニターを出す。

「現在完成してるパックは四つ、設計が終わってるのが二つと構想段階が二つ。ただし試合用のISは転換容量が規制されてるから一度の戦闘で使えるのは二つ、ギリギリ三つだけだな」
「どうして一つ分増えるの?」
「手持ちのガトリングと予備の弾を全部抜けば丁度一つ入るんだよ。ただ弾切れになったらナイフしか使えなくなるから、その辺は考えないと駄目だけどな」

 まず一つ目、と言ってパックの詳細を表示する。

「ガトリングパック『レインダンサー』、コイツはGAU-8の改造品をジョイント部に六つ搭載する大火力仕様だ。その分機動性は犠牲になるが毎分4,200発×6の銃火に反撃できる奴なんざそう居ない」
「毎分25,000発以上……!?」
「ただマガジンの方も改造済みなんだが、2,000発ちょいしか入んなかったんだ。だから無補給だと30秒で弾切れになる」

 何をそんなに詰めてるんだお前は、という視線が二人から来る。そう怒るなって。

「だから予備のマガジンもセットで量子化してあるんだって。それに一気に全部撃つ必要は無いしな」
「まあ確かに……」
「……凄いけど、尖りすぎ」

 的確な評価ありがとうございます。それじゃあ次。

「ミサイルパック『メテオストライク』、コイツは一つのジョイントに八発の誘導ミサイルと一発の対IS用小型巡航ミサイルを搭載してる。合計五十四発のミサイルが隕石のように降って来るぞ」
「これって……山嵐?」
「ああ、そう言えば弐式にも似たようなの積んであったな。アレよりは一発ごとの誘導性は低いが、六花の火気管制があるから遜色ない命中率が期待できる筈だ」

 それに何より殆ど機動力が低下しない、というのが良い。パック全体の中でも火力と速度のバランスが一番良い。

「タッグ組む機会があればお前ら二人でやってみろよ。百二発のミサイルパーティーの始まりだぜ?」
「……ちょっと、良いかも」
「うん、良いかも」
『流石は我がマスター、中々に病的ですね』

 はいそんじゃ次ー、と表示データを切り替える。今度は先の二つに比べて大分スマートな印象のパックだ。

「レーザーパック『レーザービーム』、今完成してる中では一番の速度を誇るが、継戦能力は一番低いな。カードリッジ式のレーザー砲を六門装備してる」
「レーザー兵器って……オルコットさんのBT兵器みたいな?」
「そうそれ。まあアレは思念操作がメインだからレーザーはオマケなんだがな。単発の威力ではこのパックが最高だが、最大威力で撃つと十発も撃たない内に弾切れになるので注意、と」

 勿論予備のエネルギーパックも同梱してあるが、それでもやはり心許無い。ではどうする? こうする。

「ただここのエネルギーパイプを繋ぐ事で機体側のエネルギーを使う事も可能だ。使いすぎると自滅するが」
「ふむ……その辺は戦術との擦り合わせって事?」
「そうなるな。まあ余程無茶な戦い方しない限りは特に問題ないだろ」

 それじゃあラスト、と最後のファイルを開く。今度は今まで三つのパックの特徴が合わさった形だ。

「腰にガトリング、背中にミサイル、肩にレーザーを装備したミックスパック『スタンダード』だ。勿論特徴らしい特徴は無いが、問題が一つ。コイツを使うと手持ちガトリング用の弾を半分に減らさないといけないんだ」
「どうして?」
「元々最初の三つは使用容量に若干の差があるんだが、別種の装備を一つのパックに入れると使用容量が跳ね上がるんだよ。だからコイツは若干使う容量が大きいんだ」

 もう一つ別種の装備を一つに纏めたパックがあるが、そいつも多分容量が大きくなる。
 もしそれとスタンダードを同時に使うとなると、手持ちガトリングの予備弾はゼロになってしまうだろう。

「どれを使うかはお前の自由だが、このパックは基本的に六花側からの操作で動かす事になる。そこは注意しろよ?」
「え? って事は……」
「最悪の場合、足の引っ張り合いになるって事だ。そうならないようにお互いの性格を知っておくのも大事だぞ」
「わ、解った」
『よろしくお願いします、マスター』

 コイツは元々『六花』の戦闘経験を蓄積させる為の機体だからな。他にも色々と積んではいるが……まあそれは良いか。

「他にもガードパック、ワイヤードパック、ファストパックなんかがある。追々作ってくから、まあ期待しとけ」
「は、はい。よろしくお願いします」
「お願いされました、と。ああそうそう、手持ちガトリング以外の装備も設定し直せば使えるからな。変えたくなったら言ってくれ」

 今は開発コード『多目的拳型エネルギー発生器』『X型高機動ブースター』『プレートバスター』『カスタムシールド』の四つが企画中だ。どれから作ろうかな。

『まずは私とマスターの相互理解に勤めるべきと判断します』
「そうだね。よろしく、六花」
『よろしくおねがいします、マスター』

 と、俺が思索に耽っている間に話が進んでいたようだ。おお、もうこんな時間か。いかんいかん。

「それじゃそろそろ終わりにするか。待機状態にしてみ」
「はい―――とわっ!?」
「千春……!?」

 難なく千春は六花を待機状態にするが、着地時に何かがあったのかすっ転んでしまった。どーした?

「あてて……な、何これ!?」
『入力情報が不適切と判断します。不適切でない場合は具体的な入力をお願い致します』
「……ダブルメガネ?」

 どうも六花は眼鏡を待機状態に選択したらしい。それも今まで千春が使っていたようなシンプルな物ではなく、妙にメカメカしいデザインだった。
 ……と言うか、ぶっちゃけMP3プレーヤー付きのサングラスである。色は機体色と同じ限りなく白っぽい水色だ。

「あれ? これ、度も入ってる……」
「……そう言えば、千春……目が悪いんだっけ……?」
「うん。でもこれ凄いわ、ちゃんと見えるもん」
『ありがとうございます』

 今まで使っていた眼鏡は予備にするらしい。そろそろ戻った方が良いぞ、千冬に怒られる。俺が。

「それじゃあ源ちゃん、ありがとうね」
「どういたしまして。書類は明日渡すからな」
「う……簪が書いてたアレ?」
「アレ。経験者が居るんだから細かい事はソイツに聞け」

 とっとと帰れ。俺はまだやる事残ってんだよ。

「……それじゃあ、先生……おやすみなさい」
「おやすみー」
「応、寝ろ寝ろ……っと、忘れる所だったな」

 二人の姿が闇に消えた後、俺は机に置いておいたケータイを鳴らす。
 滅多にかけないその番号は数回の呼び出し音の後、その主へと声を届けた。

『もすもす終日~? どったのゲンゾー』
「終日お前を愛してるー。いやちょっとな」
『(ブツッ)』

 あ、切りやがったあの野郎! ふざけんじゃねえよ! リダイアル連打連打連打ァッ!

『……それで? コアでも欲しいの?』
「ああ。ちょっと面白い機体を作ってな、それ用にもう一つ欲しいんだよ」
『どんな感じの? こっちで基本的な調整はやっとくけど』

 どんな感じか、か。そうだな……。

「AI用に調整って出来るか? コア自体の意思は希薄な方がいいな」
『オッケー。けどその代わりに最近の箒ちゃんとちーちゃんとはるちゃんといっくんの様子を教えて貰おうじゃねえか、げははははは』

 うーむ、精一杯ダミ声にしてるのが可愛らしいとか考えてしまう俺は重症なんだろうか。

「良いぜ、それじゃあ―――」

 さて、今日も寝るのは遅くなりそうだな。



 うおぉー! オリジナルIS考えんのマジ楽しい! 尖がった性能のIS最高!

 衝撃砲の稼働率とかは完全に独自設定です。もう少し上の性能があってもいいと思うんだ、第三世代機は。
 そしてこのSSの『第五世代機』は……もう解りますね。原作でも度々出てくるアレです。閣下には反対されそうですが。

 そしてラストにフラグ立てる馬鹿。お前のせいかよって言う。



 トチ狂って三次ネタやらかしましたがご指摘を頂いたので削除致しました。
 不快に思われた方が居られましたらこの場を借りて謝罪致します。申し訳ありませんでした。




[27457] 第六話「こんな事もあろうかと」
Name: 巣作りBETA◆bbda2e80 ID:2feb198d
Date: 2011/05/13 21:23



 第六話「こんな事もあろうかと」


「おはこんばんちわー」
「お、おは……?」

 六花を千春に渡してから数日。何か呼ばれたので一夏達がたむろしてる第二整備室へと足を運ぶ。
 そこには一夏達は居らず、簪が弐式の設計図と睨めっこしていた。

「あれ? あいつらどーした?」
「えと……操縦の練習に……」
「煮詰まったから気分転換?」

 コクン、と力を失ったように簪が首を縦に振る。んー、割と重症っぽいねー。

「そんで何ができねーんだ?」
「あ……か、荷電粒子砲の……出力調整が……」
「あー、ハイハイ。あれムズいんだよなー」

 参考にできるデータがあると大分違うんだが、生憎と手元に無いんだよな。取るのもちょっと時間がかかる。

「それと……マルチロックオンの、システムも……」
「まだ出来てないんかい。そんな完成度で大丈夫か? 対抗戦、来月の頭だぞ?」
「うぅ……」

 大丈夫だ、問題ない。と返して欲しかったがそんな余裕もない、と。参ったなこりゃ。

「因みにB案とかって作ってるか?」
「……B案、ですか?」
「そ。現状の案が何らかの都合で通らなかった場合の策だ。今の場合だと荷電粒子砲以外の武装とか、マルチロックオン以外の方法とか」

 ふるふると首を横に振る。んー、まあ学生だし仕方ないか。これから覚えておこうな。

「オーケー。なら俺が考えてた案はどうだ? これなら今日中に最終調整まで行けるが」
「え……?」
「こう見えても先生だからな。生徒が困ってるのを黙って見てられるほど薄情じゃねえんだよ」

 指を一つ鳴らしてディスプレイを表示する。そこには現在の形と少しだけ違う弐式の姿があった。
 そう言えば簪の眼鏡ってディスプレイなんだよな。懐かしいモン使ってんなー。

「荷電粒子砲の代わりにパック換装用のパーツを装備するんだ。六花と共通の規格だから汎用性は高いぜ」
「六花と……」
「とりあえず六花に使えるパックは全部使えるし、火力が欲しいなら……そうだな、プラズマ砲かマイクロウェーブ砲とかどうだ?」

 ……あれ? マイクロウェーブ砲って条約禁止武器だったっけ? まあいいや。

「でも……ロックオンシステムは……?」
「ああ、簡単な話だ。IFF積んで味方以外の全目標を一斉にロックオンすればいい。簡易的にだがマルチロックオンできるぞ」
「あ……!」

 どうしてこんな簡単な事に気付かないのか。少なくともコアネットワーク使って擬似IFFとか再現できるだろうに。

「あの……じゃあ、それで……お願い、できますか?」
「ああ。ただ俺も忙しいんでな、ずっと見てられるって訳でもない。そこは勘弁な」
「いえ……ありがとう、ございます……」



「はぁ、はぁ、はぁ……」
「何……これ……!」

 無事に簪の打鉄弐式も完成し、万全の状態で望んだクラス対抗戦。
 第一試合の対戦カードは俺対簪の専用機持ち同士の戦いだった。そこまでは良い。

「避けろっ!」
「く……ぅ!」

 だが、その試合の最中に謎の全身装甲のISがシールドを突き破って現れた。
 コイツはまずい。よく解らないが白式がそう言っている……気がする。

「お前は一体、何なんだぁっ!」



 ……あれ? これってまさか俺のせいですか?
 レッドランプに包まれた観客席で食いかけのポップコーンを処理していると電話が鳴る。千冬だった。

『佐倉先生!』
「解ってる。えーっと投射型モニターはまだ掌握されてないか。んじゃ緊急避難要綱1の2。
 『敵性と思われるISの学園への単機襲撃』っと。はいスタート」

 教員権限を使い生徒の避難を開始する。が、その流れもすぐに止まってしまった。
 理由は簡単。避難経路が塞がれたから。と言うか俺もアリーナから出れませんがな。

「チッ、悪いがアリーナ内の見取り図くれ。あとリアルタイムの一夏達の状況も」
『解った。山田君がそちらの端末へ送っている筈だ』
「お、来た来た。オッケー、そんじゃ一旦電話切るぞ」
『ああ、こちらでも何とかしてみよう』

 さてと、シールドレベルが4だから余程の状況じゃなきゃこっちには流れ弾は来ない。はいOK。
 んじゃ次は一夏達か。通信繋がるかな?

「一夏ー、簪ー、聞こえるかー?」
『源兄ぃ! 聞こえるぜ!』
『こちら更識……聞こえます……っ!』

 よーし通信は掌握されてないな? なら問題ない。

「これから俺が技術部長権限でお前達の競技用機能制限を開放する。お前らもうエネルギーヤバいだろ?」
『え!? た、確かにヤバいけど……そんな事出来るのか!?』
「俺を誰だと思ってやがる。それにな、技術屋にはこういう時伝統の台詞があるんだ」
『伝統……ですか?』

 ああ。耳かっぽじってよく聞きな。


「こんな事もあろうかとぉ! お前らの機体調整した時に機能制限外せるようにしといたのさぁ!」


 暗証番号認証、指紋認証、静脈認証、音声認証、全開放承認。

『すげぇっ! エネルギーゲージが二倍になりやがった!』
『凄い……こんなに……!』
「ただ気をつけろよ。その分のエネルギーはお前達を保護する最後の砦だ。それが無くなったら本当にお終いだぞ」
『『了解っ!』』

 一夏の左手が開閉を繰り返している。この状況で浮かれるとかアホかアイツは……。

「それと簪、IFF弄って一夏をロックオンしないように注意しろよ」
『はい……!』

 よし、これでコイツらはオッケーっと。そんじゃ次はこっちの生徒か。
 確か千冬達と一緒に居たよな、箒ちゃん達。ならあの子らに頼むか。

「あー、こちら佐倉。凰君、オルコット君、聞こえるかい?」
『こちら凰! 聞こえてるけど何も出来ないわよ!』
『こちらオルコット。悔しいですが凰さんと同じですわ……』

 ありゃりゃ。既に千冬にお叱りを受けた後か。でもな、そうも言ってられんぞ。
 ―――ゲートロックへの強制介入を開始。現在データを書き換えています。

「悪いが凰君、観客席の六番ゲートまで来てくれるか? それとオルコット君は千春と一緒にピットに出といてくれ」
『観客席? この非常時に何考えてんのよ源さん!』
『そうですわ! それにピットに出た所でゲートが閉鎖されていますわ!』
「黙れ。俺はお前達個人と話しているんじゃない、代表候補生と話しているんだ。返事は?」

 代表候補生ともなれば半分軍人みたいなもんだ、この言葉の意味に気付けない事は無いだろう。
 ―――ゲートロックへの強制介入失敗。データがコンマ一秒単位で書き換えられています。

『りょ、了解!』
『了解しましたわ!』

 二人との通信を切り、ついでに一応試みていたロックの解除をやめる。やっぱ物理的にやるしかないな。

「よーしお前らそこどけ離れろー。今からドアぶっ壊すから」
「先生! 助けてください!」
「お願い源ちゃん!」
「解った解った。とりあえず限界まで離れてろ、危ないからな」

 ドアに群がっていた生徒達を引き剥がし、俺は白衣の袖を捲る。
 やれやれ、あんまりこれやりたくないんだよな。危ないし。

「……俺のこの手が光って唸る! このドア壊せと輝き叫ぶっ!」

 最初の一言を音声入力し、左の義手が限界を超えて運転し始めた事を確認する。既に若干熱いが気にしたら負けだ。
 装甲の一部が開き、その隙間から何かちょっと人体に悪い感じの光が溢れ出る。決してコジマなアレではない。

「ひぃっさぁつっ! シャァァァイニングッ! アァァァァァッム!」

 誰も殺してないがな、と心の中でツッコミながら思い切り左手をドアに叩きつける!

「ぶち抜けぇぇぇぇぇっ!」

 左腕の全装甲が展開し中に仕込んであった緊急用ブースターが露出。そのままブースターに点火する。
 左腕の残った部分まで吹っ飛びそうな衝撃に耐えつつ、少しずつ歪み始めたドアに力を込め続ける。

「フィニィィィィィィィッシュ!」

 指先が入るくらいまで歪んだドアに小指から捻じ込み、全身からひねるように左腕を突っ込ませる。よし入った!
 手首と肘の中間ぐらいまでがドアを抜いた事を確認し、俺は肘のロックを解除する。このままだと巻き込まれるからな。
 何に? 当然アレにだよ。

「爆破ッ!」

 頭を抱えて身を丸め、爆風に飛ばされるように観客席を転がっていく。あ、コレ痛い! 凄い痛い!

「ふぅ……よし、穴は開いたな」

 頭を軽く振り、人の肩幅程度の穴が開いた事を確認する。やっぱり自爆装置はロマンだが危な過ぎるな。別のにしとこう。

「ちょ、ちょっと何よこれ! 源さんでしょやったの!」
「ご明察。悪いがIS展開してこの穴広げてくれるか? 責任は俺が取るから」
「……まあ、緊急回避って事よね。もう深く考えるのやめるわ」

 それが一番だな。と駆けつけた鈴と二人で納得する。あ、でも火器使うなよ? 俺ら吹っ飛ぶから。



 めっこめっこと微妙な擬音を出しながらドアをぶっ壊して避難経路を作る。力仕事に使われる甲龍が泣いてる気がした。
 本当なら観客席全てを開放しておきたい所だが、生憎と時間がない。俺の移動経路確保って事で勘弁してもらおう。

「お、来てるな。じゃあ予備の腕付けてる間にIS展開しとけ」
「……まさかまたぶち抜く気じゃないでしょうね?」
「さーて何のことやら」

 ピットの工具入れの裏に置いてある予備の腕を装着し、動きを確認する。よし、問題ないな。
 ……自分でやっといて何だけどさ、至る所に腕が隠してある学校って嫌だよね。

「どうして工具入れに義手が入ってますの……?」
「こんな事もあろうかと、ってやつさ。それと技術部長権限で競技用機能制限を開放する、六花はレーザービームへの換装を」
『よろしいですか、マスター』
「うん、お願い」
『了解しました』

 どうやら六花は順調に育ってるみたいだな。今回の戦利品と合わせて……まあ、臨海学校には形になるかな。

「それじゃあ各員最大火力でここのシャッターぶっ壊してみようか。機能制限開放した今なら簡単にぶち抜けるぜ」
「やっぱり……」
「責任は源ちゃんが取ってくださいよ」
「……まあ、ストレス解消には良さそうですわね」

 何か一人台詞がおかしかった気がするがまあ良いか。どかーんとやっちゃえ。

「龍咆、最大出力!」
「スターライトmkⅢ、ブルー・ティアーズ……デッド・エンド・シュート!」
「六花! レーザービーム、フルバースト!」
『思いだけでも、力だけでも。ですね』

 後半になるにつれておかしい気がしたが無視する事にしたぜ!
 三人分の火力は如何にIS用ゲートと言えどもオーバーキルだったらしく、爆炎と共にその殆どが吹き飛ぶ。爽快な光景だ。

「よし、それじゃ行って来い!」
「「「『はいっ!』」」」

 俺が声をかけると三人はスラスターを吹かせてアリーナへと飛んでいく。俺に出来るのはここまで、かな?

「っ!」

 はい違いましたー! って言うかちょっと箒ちゃん! お前生身でどこ行く気だよオイ!

『一夏ぁっ!』

 と言うかいつの間にマイク盗んでますか君は。これ始末書もんだぞコラ!

『男なら……男ならそのくらいの敵に勝てなくてなんとする!』

 ビシッと決めたつもりか? けどゴーレムの不揃いのセンサーアイがこっち向いてますよね箒ちゃんよぉ!

「啖呵は良いけどその後の事考えろ馬鹿娘っ!」
「きゃあっ!?」

 箒ちゃんの腰を抱えて全力でピット内へと走って戻る。って撃ってきた! 原作になかったよなこの攻撃っ!

「どっこいしょぉぉぉぉっ!」
「っく! 源蔵さん、何を!?」
「馬鹿野郎! そりゃこっちの台詞だこの掃除用具! 生身でISの前に出るとか死にたいのかお前は!」

 ピットの隅へ転がるように退避し、箒に説教をかます。SEKKYOUとか言ってられる状況じゃないぞ今のは!

「いいか、俺にとって『篠ノ之箒』って個人は『篠ノ之束の妹』でしかねぇ。解るか? 惚れた女の妹に怪我なんざさせたらアイツに会わせる顔がねぇんだよ!」
「―――っ、す、すみません……」
「……まあ、解ればいいさ。悪いな、こっちこそ怒鳴り散らしちまった」

 そもそもこの状況が束のせいだってのは一旦置いておこう。いつか身体で返してもらうから。

『佐倉先生! 織斑君が!』

 と、ピットの上にある管制室からやまやの声がする。スピーカーの制御取り戻したのか?

「何だ、まさか敵のビームの中突っ込んだとか言うなよ!?」
『そ、そのまさかですぅ!』
「……勘弁してくれ」

 何のために過剰なくらいの増援送ったと思ってんだよ、あの馬鹿。
 ……まあ良い。とりあえず残骸の回収だな。



 IS学園名物地下50メートル研究所。まあ名物と言うか「なぜ作ったし」レベルの代物なんだが。
 そこに今回の襲撃者が横たわっていた。流石に過剰戦力との戦いでボロッボロだがコアは無事だ。ならば良しとす。
 と、この部屋唯一の扉が開いた。機密保持の都合上仕方ないんだろうが、これって機材出し辛くてしょうがないんだよね。

「源蔵、居るか?」
「んあー? ああ、千冬か。解析結果聞くか?」
「ああ、頼む」

 来たのは千冬だった。って事はそろそろ一夏が目ぇ覚ました頃か。解りやすくていいな、このブラコンとシスコンは。
 一夏も何か知らんが完全に簪フラグ立ててたし、原作より面白い事になってそうだ。が、悲しいけど今って勤務時間中なのよね。

「メインフレームボロボロ、駆動系ズタズタ、胴体部分に至っては穴だらけだ。コアが無事なのが不思議なくらいだな」
「……それで?」
「ビーム関連は南アフリカ製のパーツ、足回りはメキシコ、基礎フレームは中東のかな。あくまで勘だけど」

 勘なので当然ながら報告書には書けない。が、それを当てにして動けるのが人間だ。

「全く……こんな物が作れるのはやはりアイツだけだな」
「だろーね。センサーはオーストリアとイスラエルの両方の特徴があったし、何よりそん中に詰まってる物が異質すぎる」
「……と言うか、この状況の物を見てよく判別がつくな、お前は」

 台座に並べられているゴーレムのパーツ群を眺めて千冬がため息をつく。確かに素人目には何も解らないだろう。
 ビームの熱で変形した物、柳葉刀で真っ二つにされた物、ガトリングガンで蜂の巣になった物etc…。

「まあ、熱で変形したとしても特徴ってのは残るもんだからな。見せる奴に見せれば解るさ」
「そういうものなのか?」
「そういうもんだ。あ、コアは技術部預かりにして良いか? 時間かければ解るかも知れん」
「本当か?」

 すんません嘘です。このコア使いたいだけです。

「……まあ、一介の教師が何を言っても無駄か。それでは頼みます、『佐倉博士』」
「ええ、頼まれました。『ブリュンヒルデ』」

 さぁて六花。待ってろよぉ!



 ゴーレムさん出番殆どないでゴザルの巻。と言うか前線に出ないせいかサクサク進む。

 とりあえずここで一巻相当分終了。打鉄弐式が原作と比べて若干火力不足です。でもその分燃費その他は良い。
 次は遂にあの二人が登場します。戦闘描写は二巻分だと……千春視点で一回ですね。マジ少ねぇ。まあ良いや。
 どうせパックのお披露目回だし。何気にラウラの天敵だったりします、お楽しみに。



 ……源蔵に他のSSの機体解説モドキとかやらせてみたい今日この頃。




[27457] 番外編「機体解説:強羅」
Name: 巣作りBETA◆bbda2e80 ID:2feb198d
Date: 2011/05/07 02:40


 注意!

 ここから先はその他板の『葉川柚介』氏の『IS学園の中心で「ロマン」を叫んだ男』とのクロス要素があります。
 筆者の拙い文章力で解説を行っております、読まれた方が不快に思われる箇所があるかもしれません。

 また番外編ですので本編とは一切の関係はありません。ご注意下さい。




 機体解説:強羅


「んぁ? ああ、どーした? 機体の解説? まあ良いけど……どれよ?

 ……『アレ』か。解った。


 日本企業の蔵王重工製第二世代IS『強羅』。全身装甲が特徴的な機体だが……コイツを一言で表すと『ロマン』だ。むしろそれしか無い。
 パッと見は新手の勇者ロボ、モチーフは日本らしく鎧武者かな。機体のタイプとしては重量級パワー型。足は遅いがパワーは第三世代と比べても遜色ないな。
 性能自体は遠近両方に対応してるが、主な使用者は射撃寄りだな。まあ速度が低めだからある意味当然か。亡国機業の連中に使われたら無駄に悪っぽいデザインになりそうだ。
 アンロックユニットを持っていないが背中に羽がある。mktnウィングって奴だ。ごめん嘘。


 まず内蔵武装は右腕のロケットパンチとカメラアイから発射するゴウラビーム。どっちもある程度のチャージが必要で使い勝手はあまり良くないな。
 ……そんなものはロマンの前には関係ない? それは俺も大好きだがそれ言うとまともな解説にならないから以下それ禁止。
 ロケットパンチは回転力させて威力を高める事が可能だ。速度はそれなりに速く、後付け装備のドリルと組み合わせる事でドリルブーストナッコォとなる。ナックルじゃない、ナッコォだ。
 ゴウラビームは内蔵火器としては珍しいビーム兵器だな。初見で至近距離だと避けるのは至難の業……誰だ今サイクロプスっつった奴は。

 
 続いては使用装備についてだ。ぶっ飛んでるぞー。

 アナ……ゴホン、アルゼブラ社製マシンガン、カンタータ。威力は高いが集弾率は悪いな。まあ六花のGAU-ISも似たようなもんだしなー。文句言ったら肥溜めにぶち込まれそうだし。
 ビームマグナム。コイツも威力は高いが取り回し辛い一品だ。ただ同サイズのビーム兵器の約四倍(当社比)の威力を出せるのは凄いと思うぞ。
 ドリル。もう何も言うことは……解ったよ。実用性皆無の円錐螺旋だ。先端以外が先に触れてしまうと逆に自分の方が危ないと言うリスキーな武器でもある。細かい事は物理勉強しろ。
 バット『黄金』。金色に輝く野球用のバットだ。それ以上でもそれ以下でもない。が、あえて言うならバスターホームランとかも好きだぞ、俺は。
 大口径キャノン。ようやくまともな武器が出てきたな……強羅と同じ蔵王重工製のグレネード砲だ。量子展開時に独特の変形機構があるのが特徴で、全長は3メートルちょいだ。


 次はパッケージの紹介だ。こっちもぶっ飛んでるな。

 重量型火器パッケージ『パーティータイム』。普通のISならまともに歩けないどころか自重で潰れかねない重量と大火力だな。
 内訳はクローシールドと内蔵ガトリング二門が左右に一つずつ。因みにガトリング自体はGAU-ISと全く同じ物だ。集弾率って言葉が馬鹿らしくなる弾幕が見れるぜ。
 あと全身にマイクロミサイルパックと両肩に八連装ミサイルコンテナが一つずつ。パッと見だと追加装甲に見えるミサイルパックには3発から9発のミサイルがギッシリ詰まってる。被弾したら自滅するな。
 トドメとばかりに背部マウントには大口径ビームキャノン、エメラルドバスターを搭載している。PICもシールドバリアも展開できなくなる、ある意味最悪にして最高のエネルギー効率を誇る武装だ。
 ……まあ、足を止めて撃ち合いをするなら良い仕様だ。相手の攻撃一発当たったら誘爆するけど。

 次は何考えて作ったんだパッケージ、もとい超攻撃特化型パッケージ『不知火』だ。独自にサブジェネレータを搭載しており、使用後のエネルギー消費は殆どない。かといって継戦能力に優れている訳ではないがな。
 まず背部増設ブースターの空我。超加速にはチャージが必要だが最高速度は銀の福音の瞬時加速にも迫るぞ。加速しながらパージする事で質量弾として使用可能、パージアタックの一種だな。
 大出力拡散ビーム砲、岩窟砲。左腕に装着する本体エネルギー供給型ビーム砲で、最大出力で撃つと砲身が焼き切れる不思議な武器だ。粒子加速器の発注間違えたんじゃないか?
 電磁加速式射突型ブレードの古鉄。右腕に装着する直径8cmの超大型パイルバンカーだ。もう杭と言うか既に『砲』だな。因みに拳銃換算だと315口径×1000mmという化け物でしかない数字を吐き出すぞ。
 まず間違いなくどれも強羅以外ではまともに使えないな。いや、六花のアームズでもギリギリ行けるか? 使わせる予定は無いが。

 そんでもってこれはむしろパックじゃなく一つの装備って言ったほうが良いのかな。まあ良いや。
 大型近接武装コンテナ『弁慶』。強羅にしては珍しく近接武器が揃っている箱だ。基本背負いっぱなしだが格闘戦の邪魔にはならないらしい。
 大剣の大鉄塊……それは剣と言うにはあまりにも以下略。そもそも剣に鉄塊なんて名前付けるか? 変形機構とかも特に無いし、ただ巨大な鉄の塊だ。
 双剣、マンティスライサー。蟷螂の刃のような二振りの小太刀だな。ただ火器と違って色々と仕込めないのか、これも普通の武器だ。
 クローの虎爪。武術でも中々見られないタイプの武器だが、これもやはり普通の武器だ。ああ、耐久力は見た目の割にそこそこあるな。
 あと目玉の溶断破砕マニピュレーター、光神。特大の特殊前腕装甲だ。色々と俺の光指と一緒なのは秘密な。あと試合でこれ使ったらレギュレーション違反で反則負けとられそうな気がする。
 他にも長柄の武器があるらしいが使ってる映像は手に入ってないな。アタッチメント式って仕様にはあるが、耐久性大丈夫なのか?


 次は操縦者に関してかな。

 強羅の第一人者にしてグレオンの申し子、通称『ワカ』23歳。その筋の人間にはカルト的な人気を誇る最高のトリガーハッピーだ。グレオン的な意味でも体形的な意味でも。
 身長が低いせいか強羅を展開するとどこかスパロボチックな格好になるがそれもまた良し。たまに装備で全身見えなくなる事もあるがそれも良し。
 カラーリングは大体黒とかグレー。どことなく試作機か二番機的な雰囲気だが、むしろ都市迷彩なのか?
 名言に「ビームは、まずいです…」「正面から行かせてもらいますよ、それしか能がありませんから」「全てを焼き尽くすだけです!」「面妖ですね、変態技術者どもが…」等がある。
 っつーか最後のは面と向かって言われた。ちょっと目覚めかけたのは秘密だ。

 もう一人は『神上真宏』。別名に『妖怪ロマン男』『ロマンでご飯三杯いける』『むしろロマン食って生きてるんじゃね?』がある、まあ要するにロマン馬鹿だ。
 カラーリングはワカとは違って非常にカラフルな機体だな。ファイヤーパターンからファイバ○ドを連想するのは俺だけかな。俺だけだな。
 最近は更識さんちの娘さんと仲が良いらしい。爆散しろ。あと束の谷間に鼻の下伸ばしやがった。うん、爆散しろ。


 ―――で、最後はこの機体最大の謎『合体機構』についてだな。

 まず最初に確認された右腕と武装のみの合体だが、コイツに正式な名称はついていない。まあ悠長な事してられる状況じゃなかったしな。
 何と言う事でしょう、雪片が5メートルクラスの大刀にモデルチェンジ。それに強羅の右腕を合わせる事で無理矢理振らせているのです。まあコイツはコレくらいで良いか。

 次は本命の全身合体だな。名前は『白式・荒神』。白式・雪羅をベースに右腕が強羅の物になって雪片がまた巨大化してるな。
 アンロックユニットに強羅のようなファイヤーラインが走った他、全身のカラーリングも変更されている。俺はトリコロールっつーかクロスボーンみたいな印象を受ける。
 エネルギー射出口が巨大化してスラスター出力が上がってるな。あと胸部装甲は強羅の物に、ヘッドセットには兜と一本角が追加されている。

 ……もう何がどうなってるんだかサッパリ解らん。と言うかアレだ、こういう時にこそこの言葉を使うべきだな。ロマンだ、と。
 攻撃防御移動、全ての出力がただ加算しただけじゃないくらいに上昇している。これは恐らくコアが2つ存在する事による相乗効果だろう。
 ついでに言うと反応速度も上がってるな。人間の限界ギリギリまで引き上げられてる。正直、体に悪いと思うぞ、コレ。
 それにホラ、何よりリスクのない合体は燃えないからな。回数制限とか時間制限とか。操縦者に来るタイプのは使う人間としてはノーサンキューだろうがな。
 現在確認されている技は超巨大零落白夜『ギャラクシーソード』。名前はモチーフにした技からだが、これもまたとんでもない出力を発揮している。多分全力なら星が真っ二つになるんじゃないか?


 ……疲れてるのかな、俺。凄く電波受信しまくった気がする。
 だがまあ、ロマン度と攻撃力の相似関係は一考の余地ありだな。何故かどれも攻撃力が高いのが強羅の特徴だ。
 あと強羅のコアだが、純粋だな。むしろ純真と言うべきか。正義を愛する子供のような思考をしている。良い傾向だ。少なくとも猪の白式よりはずっと良い。

 ああ、もうこんな時間か。それじゃあ俺はアームズパックとか『G・B』とか色々作らなきゃなんねーから、この辺で勘弁してくれ。んじゃな」



 ……長ぇ! ちょろっと書いて終わりにしようと思ったらビックリするほどの密度と長さになったでゴザルの巻。
 これも愛、いや、ロマン故か。どうでもいいですがモンブランケーキはあんま好きじゃありません。栗は好きなんですが。

 書くに当たって本文を参照しつつ書いています。なのでむしろ解説と言うかただのまとめみたいになってますが……。
 そして自然と混ざるネタとロマン。なんだこれ。呪いか、呪いなのか。ロマンと言う名の呪いなのか。

 あとようやく七巻を入手しました。なので現在書いてる話が書き終わり次第、修正と番外編『弐式開発記』をやろうと思います。殆ど原作通りですが。





[27457] 第七話「カッコイイからだ!」
Name: 巣作りBETA◆bbda2e80 ID:2feb198d
Date: 2011/05/07 23:32



 第七話「カッコイイからだ!」


「……最近、学園側の俺に対する扱いが酷いと思うんだよ」
「は、はぁ……」

 気温も上がってきた六月。俺は最寄の国際空港まで足を運んでいた。理由は簡単、二人の転校生の受け入れである。
 ……あのさぁ。何で技術部長って肩書き持ってる人間がパシられなきゃいけないわけ? しかも何でわざわざ転校生迎えに行かなきゃ行けないわけ?
 それに最近何故か俺ばっかアリーナの整備やってる気がするし。重機動かすのってケツに来るんだよ?

 で、俺の隣には明日からの転校生。シャルロッ……シャルル・デュノア君が旅行用のキャリーバッグを持って立っている。
 大人気ないとは解っているが、こちとら愚痴ってないとやってられないのである。ラウラ来るまで時間あるし。あ、座れば?

「で、どうだ? 最近そっちは」
「そうですね……大きな事は何も。リヴァイブは少しずつ手を加えてますけど」
「何だ、まさか黒の棘尾外したとか言うなよ?」

 黒の棘尾<ブラック・テイル>、全ての第二世代武器中で最高の火力を誇るパイルバンカーである。装弾数一発。
 まあ要するに原作で使っていた【灰色の鱗殻】と同種の武器なのだが、やっぱり中途半端に何発かあるよりはロマンがある。
 どうせ原作通りの仕様になってるんだろうが……そう言えば何で機体名英語なんだろ。ラファール・ラニメ・クチュン・ドゥ、とかじゃねーの?

「そのまさかです。流石に一発きりじゃ使い勝手が悪すぎるので灰色の鱗殻って武器に変えときました」
「何だよぉー、そこにロマンがあるんじゃねーかよぉー」
「ロマンにこだわって負けたら元も子もないじゃないですか」

 馬鹿野郎! ロマンのない勝利など米のないカレーライスだ! それただのカレーだ! ナンでも食ってろ!

「全く、これだから『女の子』はロマンが解らんと言われるんだ」
「―――ドクトア。『僕』は『男の子』ですよ」

 ……全く。ヴァンの野郎、ここまで徹底的にやらんでも良いだろうに。どうせすぐバレるんだし。

「そりゃ学園行ってからの話だろうが。それに俺は知ってるんだし別に良いだろ」
「……そう、ですかね?」
「ああ。もし辛くなったら俺ん所に来い。人目気にしないで済むぞ」
「……ありがとうございます」

 と言うか身体測定とかあるの思いつかなかったのか? 俺が担当になってなけりゃ一発でアウトだったぞ?

「それにしても日本語上手いな。前会った時よりずっと綺麗な発音だ」
「ありがとうございます。それなら学園でもやっていけそうですね」
「まあ問題ないだろ。むしろもう一人の方が……あ、来たな」

 国際線の到着を知らせるアナウンスが鳴り、俺と『シャルル』はベンチに下ろしていた腰を上げる。

「もう一人ともお知り合いなんですか?」
「ああ。お前に会う少し前にドイツに居てな、その頃に」
「そう言えばそうでしたね。ドクトアってやっぱり凄い人なんですね」

 はっはっは、褒めろ褒めろ。あと無自覚なハニートラップを仕掛けようとするな、それは一夏にやれ。

「お、居た居た。おーい、ラウニャー」
「……私の名前はラウラ・ボーデヴィッヒだと何度言ったら」
「って事でコイツがもう一人の転校生。仲良くしてやってくれ」
「は、はい」
「………。」

 おいおい、そんなに睨むなよ。照れるじゃないか。

「それじゃあラウラ、荷物はそれだけか?」
「はい。必要な装備は別途で本国に申請しますので」
「そうか。じゃあ行きますか」

 踵を返して駐車場へ。そう言えば最近、護衛のグラサンスーツが居ないんだけど何で? 政府さん、僕要らない子?

「でもなー、最近は色々と頑張ってんだけどなー。コア無しで動くアシストスーツとか」
「何なんですかいきなり」
「………。」

 IS学園の校章をボンネットにデカデカとペイントしたランチア・ストラトス、通称『ISカー』で高速をひた走る。
 因みに二人乗りの車なので助手席にシャルルとラウラの二人を乗せている。二人とも小柄なのでギリギリ乗れているが料金所が怖い。

「いやさ、とある国の政府とか色んな所からの要望でね。流石にIS以上とは言わんがデッドコピーとかは作れないか、って」
「できてるんですか?」
「試作品はね。コアの謎動力は再現できないからシールド系はほぼ全滅だけど」

 何気にエネルギー系大火力砲の次にエネルギー使ってるんだよね、シールドって。特にエネルギーシールドとか。

「シールドが無いって……空気抵抗とか大丈夫なんですか?」
「まあモロに受けるわな。あとPICと武装量子化も全面カットだな、コストが割に合わん」
「確かにその辺ってISの中でも金食い虫ですからね……」

 お、流石に自分の家がどこで資金使ってるかとかは知ってるんだ。まあテストパイロットだしな。

「だからいっそ飛ばさないでレスキューとかに使うって方向性になると思う。あとは機械化歩兵か」
「……分隊支援火器の個人使用等ですか?」
「ああ。他にも使い道は色々とあるが……例えばコレだな」

 俺はフロントガラスに指を一つ鳴らす。と、車の内装が全て消えて外の景色を映し出し始めた。
 正確には内装に合わせてモニターが起動し、車に搭載されたセンサーから入手した映像を映してるだけなんだが。

「わっ!?」
「これは……」
「こーやって運転用の視界確保、とかな。ハイパーセンサーと空間投射ディスプレイのちょっとした応用だ」

 シートやハンドルがいきなり空中に浮いているのは中々に恐怖心を煽るが、慣れてしまえば全方向が見れてむしろ安全だ。
 当然ながらこの改造は日本政府には秘密だったりする。8ナンバーの車検料は魅力的だが果たしてこれで取れるかどうか。

「本当なら腕生やしたいんだが時間がなくてな。変形機構入れると車としての耐久性が怖くてさー」
「「………。」」
「なぜそこで黙る。あとはエアバッグ代わりにカードリッジ式のエネルギー積んだバリアーかな」

 多分一個で車一台買える値段になるけど。誰が買うんだそんなモン。

「他にもPICとスラスターをバイクに乗せて空飛ばしたりとか、色々やってんだよ」
「はぁ……」
「………。」

 何だろう、この『凄いんだか凄くないんだかよく解らない人』を見る目は。
 あとラウラそっぽ向くな。お兄ちゃん悲しい。

「あ、そうそう。デュノア君の寮の部屋だが、織斑一夏と同じ部屋になるらしいぞ」
「っ!」
「……はい。解りました」

 お、ようやくラウラも反応したな。お前さ、軍事と織斑家以外ホント興味ないよな。

「ある一部が壊滅的に鈍感な事を除けば基本的には気の良い奴だ。仲良くしてやってくれ」
「……その一部が凄く気になるんですけど」
「はっはっは、生徒の個人情報をそう軽々と教えられる訳がないだろう?」
「どの口が言いますか!?」

 この口。どーせ一日で解るような事だし別に良いじゃんよ。



 今日から本格的に実機での授業が始まるらしいんだけど……あれって山田先生か?
 って、こっちに落ちてくる!? まずい!

「ひゃぁぁぁ~! どいて下さぁ~い!」
「うおぁっ!?」

 ドゴーン、と結構前に俺がやったようにグラウンドにクレーターが出来上がる。
 俺はギリギリで白式を展開したが、結局衝撃を殺しきれずに山田先生ごと転がってしまった。

「あいたたたた……先生、大丈夫ですか?」
「は、はい……あの、織斑君……その、手が……」
「へ?」

 手? 左手は頭を抑えてる。じゃあ右は? 何か柔らかい物を掴んでいる。もとい握っている。
 ……胸部装甲だ。そうだ、これは胸部装甲なんだ、衝撃吸収素材の。だから俺は悪くない!

「っ!?」
「ふふふ……次は当てますわよ?」

 立とうと身体を起こした直後に二筋の閃光が俺の前を横切る。この色はセシリアのビームだ。
 そ、そりゃそうか。事故とは言え先生の胸を思い切り揉―――って何だ今のガシーンって!

「一夏ァッ!」
「ちょ、お前それ洒落にならねぇっ!」
「問答―――無用ぉっ!」

 鈴の甲龍が持つ柳葉刀――青竜刀って言うと源兄ぃに怒られる――、双天牙月が連結されてこっちに投擲される。
 真正面から投げられたそれを間一髪で回避するが、確かあれって戻って来るんだよな!?

「って、アレ?」
「……戻って来ない?」
「あったしはぁ~荒野のぉ~はっこび屋さぁ~」

 見失わないようにハイパーセンサーを使いながら目で追うと、何故かいつもと違って直進を続ける双天牙月。
 そしてその先にはコンテナを満載した牽引車を運転する源兄ぃの姿が。暢気に歌なんぞ歌ってます。

「ってそんな場合じゃねぇー! 源兄ぃ! 逃げてぇー!」
「でありま……ってうおぉ!?」
「駄目ですわ! この角度では!」

 セシリアがライフルを構えて撃ち落とそうとするが、角度が悪いのか撃てていない。
 俺も瞬時加速を使って双天牙月を追いかけるが、当然ながら間に合わない。

「舐めんなオラァッ!」

 ……けど、源兄ぃはやっぱり俺の想像の上を行っていた。
 牽引車から飛び降りて、自分から双天牙月めがけて走り出した!?

「キャアァァァーッ!」

 クラスの誰かがこの後の惨劇を予想して悲鳴を上げる。だが、俺にはハッキリと見えていた。

 まるでスローモーションになったような世界で、双天牙月の刃が目の前を通り過ぎた瞬間に源兄ぃの左手が伸びる。
 そのまま柄に指を添えて身体を捻りながら手首を返し、竹とんぼのように回る双天牙月の下へと潜り込んでいく。
 そして指先の力だけで双天牙月の軌道を調整し、自分の頭上へと持ってくる。その慣性を殺さないように手首、腕への動きが大きくなる。

 ……気がついた時には源兄ぃ自身が何度か双天牙月を回し、ゆっくりと回転速度を下げている所だった。

「この凶暴チャイナが……何しやがるんだ、よっ!」

 いや、それだけじゃない。速度を落としつつも源兄ぃは双天牙月を振りかぶり、こちらへ投げ返してくる。
 ただ流石に腕力が足りなかったのか、それは何メートルか飛んだ後に地面へ深々と突き刺さっていた。

「ふぅー……っとに危ねぇな。おいやまやテメー、ラファール展開しといて何ボーっとしてんだよ」
「わ、私だって撃ち落とそうとしてました! ただ射線上に佐倉先生が居たから撃てなかっただけです!」
「まあ良いか。オイ鈴! テメー後で始末書と反省文と本国への報告書だぞ! 解ったな!」

 鈴を指差してから停車していた牽引車に源兄ぃが乗り込む。その迫力に俺達は何も言えなくなっていた。

「……凰、オルコット。お前達の相手は山田先生だ。良いな?」
「は、はい……」
「源さんの相手させられるよりはずっと楽だわ……」

 俺も同感だよ。と鈴の呟きに頷いていると、牽引車を操作して源兄ぃが千冬姉の後ろに移動してきた。
 牽引車には六つのコンテナが連結されており、前の三つに『打鉄』、後の三つに『疾風』と達筆で書かれていた。

「へい訓練機お待ち。打鉄三機とラファール三機」
「どうも。大丈夫でしたか、佐倉先生」
「織斑先生の鉄拳に比べりゃ、尖ってるだけの鉄板なんざ布切れと大して変わりませんよ」

 そして源兄ぃはどうしてこういう余計な事を言うんだろうか。千冬姉に攻撃されるの解ってるだろうに。
 あ、源兄ぃのTシャツにも『打鉄』って書いてある。見た感じだとコンテナのと全く同じだし、プリントの柄なのかな。

「げほっ、ごほ……まあ回転角と突入角度さえ解れば簡単ですよ。物理の勉強です」
「……相変わらずですね、佐倉先生は」
「人間そう簡単に変われるもんじゃないって。あ、そろそろ終わるな」

 源兄ぃが空を仰ぎながら言うと、丁度鈴とセシリアが山田先生にグレネードでまとめて吹き飛ばされた所だった。結局模擬戦見てなかったな。



 シャルルの班のメンバーが千冬姉にまとめて頭を叩かれているのを横目に眺めていると、源兄ぃが俺の班へやってきた。

「うっす。どうだ調子は」
「まあまあかな。やっぱり皆飲み込みが早いよ」
「まあ物珍しさだけで入学できてるお前とは違うからなー」

 うっ……確かに言われてみれば俺以外、全員が全国クラスのエリートなんだよな。千春だってそうだし。双子なのに……。

「そう言えば打鉄の設計したのって源兄ぃなんだよな?」
「ああ。第二世代機の国内コンペがあった時に正体隠して応募したらブッチギリで採用された」
「何やってんだよアンタは……」

 俺達の班が打鉄を使っていたので、ふと源兄ぃが関わってた事を思い出して尋ねたらしょうもない答えが返ってきた。

「ちなみにラファールも色々あって最終的に俺がやった。元々はデュノア君の機体に近い設計だったんだが、安定性を高めるために今の形に変えたんだ」
「へぇ……じゃあシャルルのやつの方が元々の形なんだ。ラファールのカスタム機って聞いたけど」
「ああ、あれもあれで俺がちょっとばかし手を加えてるがな。純粋な主機出力だとカスタムの方が高いぜ」

 そうか、じゃあ世界で使われてるISの殆どは源兄ぃ製って事なのか? あ、でも専用機は流石に違うか。

「そう言えば源兄ぃ、ISって装着する時にガニ股になるのは直せないのか? 俺はともかく女子がそのせいで歩き辛そうなんだけど」
「って言われても、元々歩く為に作った脚部じゃないからなー。足なんて飾りですって言った阿呆も居るくらいだ」

 当然ながらそんな輩は粛清しておきました、と笑う源兄ぃ。だから何やってんだよ……。
 確かに宇宙開発用のスーツに脚はあまり要らないだろうけど、今は地上で動く事もあるんだし少しは考慮して欲しいかな。

「あ、源兄ぃ。そう言えば一つ聞いておきたかったんだけどさ」
「ああ、何だ?」
「何でISってこんなゴテゴテしてるんだ?」

 あ、何か今押しちゃいけないスイッチ押した気がする。
 だって源兄ぃの目が光ってるもん。こういう反応の時は大抵しょうもない理由の時だ。


「それは……カッコイイからだっ!」


 ……やっぱり。



「と、言う事が昨日ありましてですね」

 タッパー丸ごと酢豚の昼飯とかその午後の俺の受け持ちの授業とかもありましてですね。
 因みに今日は3と4組の授業の日でしてね。あとここは原作同様1学年は4クラスでしてね。じゃないと俺が死ぬ。過労で。

「はぁ……」
「昨日一夏が言ってたのはそれだったのね……」

 今日は早めに準備して待っていると千春と簪が一足先に出てきた。自前のスーツ持ちって早いんだよな。
 簪は原作通りの黒地にオレンジのノーマルな物だが、千春は少しばかし形が特殊だ。
 紺地に白とカラーリングは一夏と同じだが、首元が開いており肩周りが大きく露出している。

 ―――要するに競スク型だ。無論俺の趣味だが、決して無意味と言う訳でもない。
 六花は肩にパックのジョイントがあり、それを支える可動型の装甲が肩に装着されるので露出していようが問題ないのだ。

「因みに俺は千冬みたいに甘くないぞ? 騒いだら島一周させるからな」
「何キロあるのよ……」

 それは秘密だ。

「でもさー、あの子らも大変だよねー。政府の意向だか何だか知らんがあんな激戦区に放り込まれてさ」
「確かに一組は専用機持ちばかりだけど……激戦区?」
「鞘当的な意味で。訓練機の圧迫が無いから転入自体は楽なんだけどさ、条約絡みで国との交渉がまた大変なんだよ……どこも一枚岩じゃないし」
「いや、いきなり政治的な話を出されても困るんですが……」
「だって事実だしなー」

 軍部が転入良いよって言ってるのに外務省が駄目だとか言い出したりするしね。お前ら仲良くせいっちゅーねん。

「その点日本は気楽だよな。一番動かしやすい代表候補生を同じクラスにしないし」
「……? 私……ですか?」
「タカくくってんだよな、他の国に行く訳無いって。ここの生徒会長の事忘れてんのかね」
「ゴメン源ちゃん、話が見えない」
「だから、ハニートラップ要員だよ。和名だと色仕掛け」
「い……っ!」

 ぼんっ、と簪の顔が赤くなる。自分が一夏にそうしてるシーンを想像したんだろうか、エロい奴め。
 あと千春さん、怖いんで睨まないで下さい。そうしてると千冬にそっくりなんだよオメー。

「って言うか源ちゃん、仕事は? 他のクラスの授業とかあるんじゃないの?」
「生憎と今は三年の開発科と研究科の時間でな。元々あの連中は頭良いからほっといても勝手にやってんだよ」
『それは大丈夫と言って良いんでしょうか?』

 六花よ、暫く見ない内に随分とツッコミが上手くなったな。あと急に喋るな、ビビるから。
 ん? ああそうか。簪がまだ帰ってきてないのか……って、まさかお前らこの状況に慣れてるのか?

「あとこっちの組は専用機持ちが少ないからな、俺も操縦を教える側に回るんだよ」
「え? 源ちゃん操縦できたっけ?」
「別に操縦できなかろうがイメージを伝える事はできるんだよ。それに、俺を誰だと思ってやがる」
『変態ですね。技術を持った』

 変態に技術を持たせた結果がこれだよ! ってやかましいわ。

「何をやってるんですか、佐倉先生……」
「ん、ああ。アクニャ先生。おはようございます」
「……おはようございます。織斑さん、更識さん、済みませんが一つ模擬戦を頼まれてくれませんか?」

 朝っぱらから憔悴した様子のアクニャ先生が現れる。ストレスはお肌の大敵ですよ。
 しかしこの二人の模擬戦か、良いね。面白そうだ。

「解りました。簪ー、そろそろ戻ってきてー」
「で、でも私……おっきく、ないし……え、だがそれが良い……? ―――ハッ、な、何?」
「模擬戦だって。操縦の前にどういう物かを見せたいんだって」
「あ……うん、わかった……」

 一体簪の中で一夏はどんな奴になってるんだろうか。すげぇ知りたい。
 あと千春のスルースキルが異常なまでに鍛えられている件について。

「それで、まさかアクニャ先生がお相手を?」
「まさか。二人にやらせますよ」
「なーんだ。久々に『闘牛アクニャ』の暴れっぷりが見れると思ったのに」
「む、昔の話ですよ。昔の。あははははは」

 嘘つけ。榊原先生と酒飲み行って『組』一つ壊滅させたって聞いたぞ、元スペイン代表。

「あ、そう言えば佐倉先生」
「ん? どうした織斑君」

 簪と準備運動をしていた千春がこっちを向く。まだ始業時間ではないが、他の先生の目があるのでちゃんと切り替えをしているのが偉いな。

「どうしてISのインターフェースってイメージ操作なんですか?」
「開発時のテストパイロットが誰だったか考えてみな。ホラ、あいつ結構機械に弱いじゃん。お前ん家にDVDデッキ置いたらその前で三時間唸ってただろ」
「……聞かなきゃよかった」

 今頃一組の教室では担任がくしゃみをしているだろう。



 やれやれ、聞くんじゃなかった。しょーもなさすぎるわね。

「千春……そろそろ……」
「オッケー、それじゃ六花。行くわよ」
『諒解』

 ああ、今日はそれなのね。解った、付き合ったげるわ。

「鬼に逢うては鬼を斬り」
『仏に逢うては仏を斬る』
「ツルギの理、ここに在り!」

 一度左手で顔を隠し、握りながら思い切り前に突き出す。その手を開いた瞬間、私は光に飲み込まれた。

『六花・グラップラー、展開完了』

 それは簪にも見せた事の無い、新たな力。だって昨日完成したばっかりだしね。
 肩、背中、腰のジョイントから1メートル以上の鉄の塊が生えたような姿。それが今の六花の姿だった。

「あれ……? それ……」
「新しいパック。楽しもう、簪」
「……うん。それじゃあ……先、行ってるね……」

 既にガードパックの『フォートレス』を見せた事があるせいか、簪は一言で納得してくれた。

「へぇ、早速そいつ使うのか。相性はあんま良くねぇぞ」
「大丈夫です。って言うか、弐式は全体的に隙が無いから相性もへったくれも無いですよ」
「それもそうか」

 始業のチャイムが鳴るのと同時に空へと飛び上がり、20メートルほどの距離をとって打鉄弐式と向かい合う。
 簪の背面装備は大出力の可変速ビームランチャー【V.S.B.R.】か……遠距離に持ち込まれたら駄目ね。

『制限時間は十分、外に出ないようにね』
「はい!」
「はい……!」
『それじゃあ、試合開始!』

 アクニャ先生の合図と共に私は前へ出る。それと同時に六花側の制御で手の中にGAU-ISが収まる。ナイスタイミング!

「ダダダダダダダダァーッ!」
「当たらない……!」
『もーうまーんたーい、です』

 反動を抑えるためにGAU-ISを腰溜めに撃つ。本来ならそれでも集弾率は悪いけど、生憎と私は一人じゃない。
 そう、六花がパワーアシストに回すエネルギーをリアルタイムで調節してくれている。特に今回は接近するまで六花の出番は無いしね。

「この……! コンテナ1、展開……発射!」
「げっ!」
『熱源8、接近中。ミサイルです』
「まだ……ヴェスバー、高速モード……!」

 本来ならマルチロックシステムにより『敵の迎撃を回避しながら追尾する』ミサイルだが、簡易マルチロックシステムで稼動している現在は純粋な追尾弾だ。
 簪はマニュアル入力によりそれと同等の攻撃が可能だが、現在装備している背面パックの都合によりそれをするのは多少手間がかかる。
 が、別に牽制として使うならわざわざ難しい制御を行う必要は無い。第一、八発程度のミサイルが直撃してもシールドエネルギーは大して削れないのだ。

「六花! ミサイルは私が迎撃するからビーム射撃警戒!」
『了解。V.S.B.R.内に高熱源確認、射撃可能まであと約3秒』
「早いっての! ……よし、迎撃完了!」
「遅い……!」

 両手の装甲を量子化して外し、マニュアルでヴェスバーを高速モードへ切り替えて射角調整まで行う。直後、空に二筋の光が走った。
 粒子ビームを高速で放ち、貫通力を持たせるタイプの射撃。パーツの破壊ではなく絶対防御の発動を狙った攻撃である。

「次弾発射まであと何秒!?」
『二十秒と推測―――警告、熱源16接近中。ミサイルです』
「ああもう埒が明かない! 突っ込むわよ!」
『了解。エネルギー調整をパワーアシストからスラスターへ変更します』

 接近戦を警戒しているのか、簪はアウトレンジからの攻撃しかしてこない。
 が、今の装備でそれを選択していると言う事は、両手をその制御に使っていると言う事だ。
 それなら一度接近してしまえばこちらの勝ちは間違いない。ならば突っ込む。どうせ大した威力じゃないし。

「来た……!」
『警告、近接用装備を確認。作戦が読まれています』
「問題なし! 六花、メガアーム展開!」
『了解。以降アーム制御へリソースを割り振ります』

 弐式が対複合装甲用超振動薙刀【夢現】を持っているのが見える。確かに簪は接近戦でも強いけど、それはお互いに腕が二本だったらの話。
 六花が肩、背中、腰のロックを外し、『グラップラー』の真の姿を見せる。バシャ、という音と共に折り畳まれていた『六本の腕』が開放された。
 近接重量型ISの主腕出力並みのパワーを持つサブアームによる格闘戦、それがアームズパックの真骨頂だ。

「マシンアーム……!?」
「行っけぇぇぇぇっ!」

 簪が気づくがもう遅い。弐式の機動性は高いけど、グラップラーパックはそんなに重くない。だからこの距離なら逃げられない!

「しまった……!」
「六花!」
『一番、二番、敵IS主腕拘束完了。三番、四番、五番、六番、攻撃開始』

 四本爪のアームがガッチリと弐式の腕を掴み、機体を密着させて夢現の間合いよりも内側に入る。この距離なら薙刀は逆に使い辛い筈だ。
 私もGAU-ISが使い辛くなったので量子化し、左腕に格納してある特殊複合ナイフを展開。超至近距離で簪めがけて振るって絶対防御を発動させる。
 その間も目まぐるしく背中と腰のアームが弐式のアーマーを殴り続け、あっという間にシールドエネルギーがゼロになった。

『バトルオールオーバー、バトルオール痛っ!』
『なにやってんですか佐倉先生! ……試合終了。勝者、織斑千春。二人ともご苦労様、降りてきて』



 千春が簪に接近戦を仕掛け、運良く捕まえる事ができたので勝負は千春の勝ちになった。
 まあ試合の運びとしては遠距離で戦う簪と近距離戦に持ち込もうとする千春の組み合わせになったし、タイプが噛み合わない場合の試合としては良い感じだったろう。
 で、今は何をやってるかっつーと、

「通常兵器でISを倒す事は実は不可能じゃないぞ。まあ、一個師団で足りるかどうかは解らんが」

 何故か戦術講義みたいな事になっている。アルェー?
 俺は首をかしげながらも次の生徒にラファールに乗るように指示する。まだ授業中なんだぜ。

「でも佐倉せんせー、ISにはシールドバリアーがあるじゃないですかー。攻撃は当たりませんよー?」
「当たりはしないがエネルギーは減る。ゼロになれば動けなくなるからそれでアウトだよ」
「でも機動性を高くすれば当たらないんじゃないですか? そうすればエネルギーも減りませんし」

 んー、まあ中学出た直後じゃこんなもんか。

「飽和爆撃って知ってっか? 絶え間なくミサイルやら何やらをぶち込み続けるんだ。そうだな……ざっと48時間ぐらいか」
「えー、きっと大丈夫ですよー」
「そりゃ機体はな。だが中身が持たん。丸二日爆音と衝撃に包まれてみ、まずアウトだ」

 若干想像し辛いが、爆発音や振動というのは割りと精神に来るモノだ。
 そりゃ想像できる経験なんざ無い方が良いが……この学園の生徒である以上はそういう事も考えなきゃならん。

「でも先生、そもそもそんな攻撃受け続けるとかならないんじゃないですか?」
「ネックはそこなんだよなー。逃げられたらお終いだし、そもそも一体だけとも限らんし。三体以上一緒に居るとさっきの作戦効かないし」
「ふーん」

 あ、興味ないのね君達。先生ちょっとショック。
 とか黄昏てたらさっき送り出した子が戻ってくる。はい次ー。

「それよりセンセー、聞いて下さいよー。こないだ私、町でイケメン見つけたんですよー」
「……またその手の話題か。で、連絡先の一つでも聞いてきたのか?」

 部活か何かで上級生から『アレ』を聞いたのだろう、確かこの子は一度もその手の相談はしてこなかった筈だ。

「えーまー。それでセンセー、こういう事の相談に乗ってくれるって先輩に聞きましたけどー」

 全部ビンゴかよバッキャロウ。別に乗りたくて乗ってる訳じゃねーんだよ。ファッキン。

 ……ここIS学園には、俺を含めて常時居る男が片手で足りるくらいしか居ない。
 更に気楽に相談ができる相手、となると更に減る。この時点で一夏はただのパンダだからアウトだ。
 そこで轡木さんか俺かになる訳だが、そこは花の女子高生。悩みなんて色恋沙汰と体重の事が八割である。
 で、年齢の関係上、色恋沙汰が俺へと回ってくるのだ。彼氏持ちはむしろ既婚者の轡木さんの方へ行くが。

「……そんで聞きたいのは何だ? 細かい所は俺にも解らんぞ」
「んー、男の人ってどういうのが好きなんですかー?」

 知るかボケ。

「むしろ『絶対に許せないのは何か』を本人にそれとなく聞くのが一番だぞ」
「えー、何ですかそれー」
「個人の嗜好ってのはそれこそ千差万別でな。そいつ自身の事を知らん事にはどうしようもない」
「おっかしいなー……センセーに聞けば大丈夫って聞いたのにー……」

 だから知るかボケ。

 ……こちとら最初期からISに携わってるせいか色々な異名を持っている。左手がサイボーグだから『神の手』とかな。
 そしてその中に『整備の神様』というのがある。俺が弄った機体は他の連中が弄るのより遙かに性能が上がるから、だそうだ。
 そりゃIS技術広めたの俺達だからな、俺達が作業しやすいように規格作ってんだよ。それもある意味当然だ。
 そしてここからが問題なんだが、当然ながらそんな異名も学園内に広まっている。そりゃそうだ、IS絡みの話なんだから。
 けどどこがどうなったのか『整備の神様』のご利益が『恋愛成就』になっている。どうしてこうなった。

 まあ、理由はおおよそ察しはつくが。

「男ってのは単純なもんでな、余程の事がなけりゃ女の事は嫌わない……いや、嫌えないようにできてるんだ」
「そうなんですかー?」
「そうなんですよ。だから多少小奇麗にしてれば嫌いはしないさ。あ、でも高慢な奴は大抵嫌われるぞ」
「んー、わかりましたー。あとでそれとなく聞いてみますー」

 この学園の生徒ってこのレベルのアドバイスで十分なんだよな。顔は全員良い方だし、ここの生徒ってだけでかなりのステータスだし。
 だから最低限の事を言ってやるだけで上手くいく。そしてアドバイスに乗ってやった結果が『恋愛成就』な訳だ。どうしてこうなった。

「そう言えば先生。先生って好きな人とか居るんですか?」
「ん? まあ居るけど」
「え!? 誰!? 誰ですか!?」
「やっぱり同僚の先生!? それともまさか禁断の愛ですか!?」
「轡木さんですねわかります」
「アッー!」

 うん、後半黙れ。

「違うってーの。まあ、名前だけならお前らも知ってる奴だぞ」
「え? 名前だけなら……誰?」
「んー……有名人ですか?」
「そりゃあなあ。世界的な有名人だし」

 うーんうーんと悩む俺の担当の女子達。やはりこういう話題の食いつきは半端じゃないな。

「束だよ、篠ノ之束。幼馴染なんだ」
「あぁー。確かに有名人だわ」
「ちょっと腑に落ちないけど……でも失踪してるって聞きましたけど」
「まあ何処にいるかは解らんがな。連絡つけるだけならできるし」

 と言うかケータイが繋がるって事は電波が何とかなる所に居るって事か?
 あ、でも基地局ハッキングすりゃいいのか。犯罪だがそれくらいサラッとやってそうだ。俺だってできる。

「そう言えば先生って篠ノ之博士と一緒にIS作ってたんですよね。もしかしてその頃から?」
「もっと前からだな。小学校上がる前くらいか」
「早っ」
「性格はその頃から全然変わってねーよ。身内にゃトコトン甘いがそれ以外の人間にはトコトン冷たい」

 まあ俺も人の事は言えんがね。この学園に居るのも全世界に干渉しやすくする為だし。
 肩書き使った正攻法って強いからね。ぶっちゃけ他人の評価とかどーでもいーっす。

「……ん?」

 はて、何か忘れてる……いや、この微妙な違和感は違うな……。
 ……あれ? 俺こないだ箒に何て言った? あれ? えっと……。

「うわっちゃぁ……」

 そーだよ、アレ禁句じゃん……ったくメンドクセーなあの掃除用具は。



 そして唐突に終わる。今回試験的に戦闘描写を入れてみました。んー、あんまり長くならん。

 源蔵はある意味では束以上の狂人です。狂ってる事に周りが気付かない事が最大の問題。
 ただ転生チートなので転生前の人格をベースにまともな仮面を作ってます。作れちゃってます。

 あと今回、原作で束さんが殆ど運動してないのに動けてるように源蔵も人間離れした事してます。
 物理の勉強したってあんな事できないよ! 出来る訳無いよ! と物理はほぼ毎回赤点だった人間が言ってみます。


 次は七巻絡みの設定を修正した後、源蔵視点メインで弐式開発記になると思います。なのでこの先は少々お待ち下さい。では。





[27457] 番外編「弐式開発記」
Name: 巣作りBETA◆bbda2e80 ID:2feb198d
Date: 2011/05/09 23:17


 ※この話は第六話の途中に入ります。
  原作の時系列としては鈴が転入してくる前で……あれ? マジで? そんな早いの?



「サプラーイズパーティー!」
「は?」
「………。」
「……何やってんだ、源兄ぃ」

 夕飯食って整備室の様子を見に来たら変な目で見られたでゴザル。ノマッキッ! やべぇ死にてぇ。
 と言うか一年の専用機持ち(と掃除用具)が全員集合していた。何、お前ら暇なの?

「まあ見回りついでにどんな様子かな、と。どうだ?」
『正直作り直した方が早いのでは、と皆様考えていたけど口にできなかった状況です』
「ちょ、六花っ!」
「うぅ……」

 六花の辛辣な表現に倒れこむ簪。フロートユニットの前後ぉぉぉぉん!に着いたジェットブースターが床にぶつかってちょっとへこんだ。

「まあ中途半端に直すよりはそっちの方が良いと思うがね。どーせ完成してからも弄るんだし」
「そう……ですけど……」
「まーちょっと見せてみ」

 何も出来ないくせにメインコンソールを占領していた一夏をどける。代表候補生の二人ならともかく何故お前が座る。
 まー本格的な整備実習は夏休み終わってからだから、今の時期なら出来ない事は何もおかしくはないんだがね。

「えーっと……駆動部の反応がコンマ下1桁で遅い!? コア適正値13.64%!? 何だこりゃ!?
 火器管制は打鉄のまんまだし、シールドエネルギー出力も高すぎるぞこれ。主機はリミッターかかってるし……」
「そ。もうどこから手をつければ良いのか解んないくらいチグハグなのよ」
「流石に私もこんな状態のISはどうすれば良いのかサッパリでして……」

 だろうな。こりゃもう整備科でもかなり上位の連中じゃないと何して良いか解らないレベルだ。
 それにこの面子の中で一番ISに詳しい代表候補生組がお手上げなんだ、他の連中もそうだろう。

「この調子なら全部ガッツリ作り直した方が早いな……あ、B案使うなら装甲形状も変えないといけないぞ」
「あの、システムの最適化とかは……」
「ロクなモン積んでねーのに最適化とか意味ねーから。あと特性制御……速度重視だからスラスター類だな」

 この分だと機体制御もドノーマルの打鉄だろうし、メインスラスターの出力と姿勢保持スラスターのチェックも必要か。
 高速用のシールドバリアーも搭載してないかもしれないし、バリアーの展開ポイントも弄らないとな。PICの緩衝領域からずらしとかないと反転しちまう。

「えーっとそうなると偏向重力推進角錐を……前に五か六かな? 後はメインの反応次第で脚部弄って……反重力制御も危ない気がする」
「……箒、解るか?」
「わ、私に聞くな!」

 はいはいハーレム作って腎虚で死ね。ハイパーセンサーは基本的に独立した物だから弄らなくて良し、と。
 ウイングスカートは少し削っとくか。腰溜めに撃つ形になるから……ヴェスバーだな。あとはまあ六花の余りパーツで良いだろ。

「スラスターと各部ブースター、装甲に量子展開装備、内蔵火器も見直しだな。殆ど全部じゃねーか」
『残りはハイパーセンサーと競技用リミッター程度ですか』
「コ、コアとか通信系は大丈夫だから! 簪、そんなに虚ろにならないで!」

 次々と修正点が明らかになり、まとめに入った所で簪の色素が完全に抜けた。真っ白に燃え尽きた感じだ。
 けどねお嬢ちゃん、まだ終わってないんだよ。

「マルチロックオンは……後回し。推進ユニットコントロールシステムは最優先で直さんといかんな、機動性重視だし。
 エネルギーバイパスオペレーティングシステムをシミュっとく必要があるし、シールドバリアーの制御システムも弄らないと駄目か」
「か、簪! 大丈夫か!? 傷は浅いぞしっかりしろ!」
「……う、うん。大丈夫、織斑君……」

 途端に険しくなる女性陣(-千春)の視線。まあ役得の代償って事で。等価交換ですよ。

「参ったな……データチェックとパーツの新造も必要か。流石に手が足りんぞこれは」
「そんな……」
「ああいや、今日中に済ませるなら、って意味でな。俺一人でも週末には完成するぞ」

 それくらい時間あればこのレベルの機体なら1から作れるがな。あ、でもコアの習熟時間が必要か。

「じゃあそれで良いんじゃないの?」
「いや、男に二言は無い。今日中と言ったからには今日中に終わらせてやる」
「どうやってだ? 手が足りないって言われても俺達じゃ邪魔になるだけだと思うけど」

 フッフッフ、俺を舐めるでない。不摂生してるからマズいぞ。

「簪は一旦コイツ仕舞って第一多目的工作室に移動。あと千春はこの連中呼んでくれ。一人か二人来ればいい」
「っ! ちょっと源ちゃん、いきなり六花に表示しないでよ。ビックリするじゃない」
「だって空間投射やるより楽なんだもんよ。んじゃ頼むぞー」

 そう言って俺は第二整備室を後にした。早足で第二アリーナの横を通り、『注文の多い整備室』の電源を入れる。
 と、ゾロゾロと鴨のように一夏達が追いかけてきた。どーした、もう用はないぞ?

「あ、源兄ぃ、俺達はどうしたら良いんだ?」
「別にどうも。見学するなり帰って寝るなり、好きにしろ」
「わかった。じゃあ見学してるな」

 ほほう? 女性陣の帰りたいオーラをガン無視してまでメカが見たいのか。良い傾向だ。
 果たして女性陣が帰りたそうにしてるのはIS開発に興味が無いからなのか、新たなライバルの誕生を危ぶんでいるのか。多分後者だな。

「それで源蔵さん、さっき千春に見せていたのは何のリストだったんですか?」
「ん? ああ、二年と三年の成績上位者リスト。あいつらなら助手に丁度良いからな」
「そんな理由でこんな時間に生徒を呼びつけるんですか……」

 大丈夫だ。アイツは間違いなく来るだろうし、他二名ほど乗りそうな連中も居る。

「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン! 二年整備科黛薫子、ただいま参上!」
「お、早速来たか。流石に早いな」
「そりゃーもうジャーナリストはスピードが命ですから! それで先生、報酬は頂けるんですか!?」
「交渉次第だ。好きにしろ」

 早速眼鏡を光らせたパパラッチがカッ飛んで来た。こんなんが整備科の総合成績一位なんだから世も末だよね。
 ……おい、誰だ今お前が整備科のトップなんだから下につくのもそんな連中ばっかりなんだろって言った奴。その通りだよ。

「あ、佐倉先生。京子とフィー呼んどきました。私達居れば充分ですよね?」
「ああ、お前呼べばあの二人も来るだろうと思ってな。どうせ担当機も無いし暇だろ?」
「暇ってほど暇じゃないですけどねー。まあこういう事に参加できるくらいには」

 黛が総合成績の一位なら高梨京子は実技の一位でソフィー・カークランドは座学の一位だ。とは言え転科時のテストの成績なんだが。
 この三人は成績は優秀だが、本来持つべき担当機が存在しない。中にはグループを掛け持ちしてる連中が居る中で、だ。
 聞く気が無いんで聞いてないが、多分黛は部活をやる時間が欲しいんだろう。他二人も似たようなものの筈だ。

「源ちゃん、先輩が他は呼ばなくていいって言ってたから呼ばなかったけど……大丈夫なの?」
「おお、ちゃんとこっちに来たか。確かにあいつらが来れば問題は無いぞ。二年整備科の3トップだからな」
「……先輩、そんな凄いんだ」
「あーやって一夏に突撃インタビューしてるの見る限りじゃそんな面影は一切無いがな」

 人手を呼びに行った千春が戻って来た。こういう時に無駄に広い千春の交友関係は便利だな。一度会っただけでコネ作れるって相当だぞお前。
 話の続きだが、二年のトップ3人は担当機を持たない代わりにフリーで動いているのだ。今回みたく3人で組む事もあれば、バラバラに担当する事もある。

「ずっちーん、メガゲーン、お待たせー」
「ふにぃ。お待たせしましたぁ」
「お、来たな二人とも。そんじゃ俺も準備しますか」

 黛が高梨とカークランドに説明している間に俺は工作室の壁の前に立つ。そこには人間の腕サイズの穴がぽつんと空いていた。

「ツゥゥゥゥルコネクトォッ!」

 バチンと左腕の義手を外し、その穴に思い切り腕をぶちこむ。ガチリガチリと二段階の接続が完了したのを確認し、俺はゆっくりと腕を抜いた。

「メガッ! アァァァァムッ!」

 俺の声と共に、某勇者王に繋がるアイツよろしくサイズが合っていない腕がその姿を現す。さあ驚け! 突っ込め!

「……誰ももう突っ込む気無いっぽいよ?」
「……ローテンションなんて大嫌いだ。あ、簪。そこで展開してくれ」
「は、はい」

 最後の情けとばかりに突っ込んでくれた千春の優しさが逆に悲しい。
 だがとりあえずこれで必要なものは全て揃った。後はサクサク進めるだけだ。

「そんじゃ始めるぞ。メガアーム、展開っ!」

 ジャキンバリンバシャン! と音を立てて巨大な左腕がバラバラになる。
 いや、正確には細い副腕の集まりであった本来の姿を現しただけなのだが。

「き、気持ち悪っ! 何それ!?」
「何を言うか。コイツは精密作業用多目的工作腕『メガアーム』、見ての通り工具の塊だ」

 ほれ、と気持ち悪いとか言ってきた鈴の目の前に腕を出してやる。この副腕一つ一つには工具が備え付けられているのだ。
 モンキーレンチにマルチクランク、高周波カッターとレーザーアームは勿論、オシロスコープとマルチテスターも付いている。
 他にも超音波検査装置やプラズマバーナー、火炎放射器にデータスキャナーと半田ごてまである。あと細かい物を持つためのサブアームもバッチリ。完璧だ。

「いや気持ち悪い物は気持ち悪いから」
「……フン。学園内で使える工作機械の七割がこの中に納まってる、と聞いたら凄さが解るか?」
「残り三割は?」
「サイズが俺よりでかいものばかりだ。三次元工作機とかな」

 とと、いかんいかん。ついムキになっちまった。
 もう遅いしさっさと終わらせてしまおう。総員、整備体制に移れ!

「よし、黛はエネルギーケーブルもってこい。一番から四番までと七番八番。三本ずつ」
「わかりました!」
「高梨は……よしできた。この図面通りに新規パーツ作って来い」
「了解っす」
「カークランド、装甲のロック全部外してケーブル全部見えるようにしとけ」
「ふゆぅ。お安い御用ですよぉ」

 テキパキと俺の指示の下で三人が動く。俺が次に何をしようとしているのかを予想し、行動を先読みしているからできるスピードだ。
 これは俺が整備のイロハを教えたからできる事であり、作業スピードが基本的にクソ早い束とでさえ同じ事はできない。

「……先生、キーボードはノーマルなんですね」
「ん? ああ。配置を変える奴は二流だろ。ボイコン、アイコン、ボディコンに頼ってる内は三流」
「……そう、ですか?」

 手持ち無沙汰なのか簪が尋ねてくる。そう言えばさっきもカスタムしてたの使ってたな。

「タイプ速度くらい普通にキーボード触ってりゃ速くなるっつーの。まあ一番早いのは義手からの直接入力なんだが」
「先生、ケーブル持ってきました!」
「あふぅ。せんせぇ、ロック解除完了しましたぁ」
「オッケー……見えた、そこだぁっ! この指戯を受けてみよ!」

 メガアームの工具を限界まで使ってケーブルの交換をする。だから鈴、キモイとか言うな。
 全身の換装は普通ならどんなに早くても十分はかかるが、今の俺なら七分前後で終わる。

「わはぁ。せんせぇ、私システムやりますねぇ」
「あ、それじゃ私も。ここって投射ディスプレイ多くて良いですよねー」
「応、それじゃそっち頼んだぞ。終わり次第俺も合流するな」

 さぁて、まだまだ行くぜぇ!



「主機リミッター解除、左メインスラスターの二番から五番ポート全開放! オルコット! 下から順に二番七番三番四番でケーブル繋げ!」
「は、はいですわっ!」
「エネルギーライン確認……右脚部の姿勢制御用が安定しねーぞ! 鈴! ネジの締まり具合チェック!」
「解ったからその腕近づけないで!」
「簪! 火器管制のオートとマニュアルの設定変更できたか!?」
「あ、あと五分……!」
「遅い! 六花、簪のカバー! 千春は六花用のジョイントパーツの予備持って来い!」
『了解しました』
「はいっ!」
「一夏と箒は高梨が戻り次第新造パーツにヤスリかけてバリ取り!」
「わ、わかった!」
「か、角を削れば良いのだったな……」

 フハハハハ乗ってきたぜぇぇぇっ! YEAAAAAAAAAAAAAAAAH!

「黛! 姿勢制御できたか!?」
「できてます! 現在メインスラスターとの出力の見直し中!」
「なら終わり次第スラスターの稼動域チェック、それも終わったら関節やれ!」
「はい!」
「カークランドはPICの調整終わったか!?」
「にやぅ。現在重力制御系とバリアー系と同時に進行中ですぅ」
「解った。なら全部終わったらバイパスやれ!」
「みゆぅ。解りましたぁ」
「新造終わり! ここ置いときますよ!」
「よし一夏と箒はバリ取り! 高梨はこっち来てガワ弄るの手伝え!」
「解りました! レーザーアームどこっすか!?」
「俺の腕の使え! 実習のより出力高いから気をつけろよ!」
「はい!」

 えーっとアレ終わり、ソレこれから、ドレ手ぇつけてない? コレ今終わった!

「関節チェック終了! ケーブル接続終わりましたか!?」
「終わってる! バイパスチェックは!?」
「ひにぅ。今終わりましたぁ」
「メガゲン! ジョイント来ましたしパーツ搭載始めますよ!?」
「解った、やれ! よし、推進系も終わったしあとは最終チェックか。簪、火器管制良いか!?」
「はい……チェックおねがいします……!」
『とりあえず内蔵火器と現在登録されている量子展開用武装分は終了しました』
「えーっと……よし、足りない分は勇気で補え! 各員接続してるもん全部外して機体から離れろ!」

 わらわらと機体に張り付いていた連中が離れ、最終拘束具も解除される。

「……主機点火、副機起動……PIC正常動作確認。シールドバリアー展開……干渉なし、偏向重力・反重力制御共に問題無し……」
『コア・ネットワークへの復帰を確認。通常モードでの初期起動を確認』
「火器管制システムオールグリーン……ハードウェアの正常動作を確認中……完了」
『チェック項目の外部参照を開始します……終了しました。異常なしと判断します』

 ガチン、と何かが嵌ったような音と共にゆっくりと打鉄弐式が浮かび上がる。

「セルフチェック全て正常……全チェック項目パス……打鉄弐式、起動……!」

 ドン、と不可視の衝撃が弐式の全身から迸る。車で言えばセルキーを回しきり、エンジンがかかった状態だ。

「よっしゃぁ! 成功っ!」
「あたりめーだよ、幾らテンション任せの突貫とは言え俺が関わってるんだ。問題なんざある訳ねーっての」

 ひゃっほー! と全員で成功を喜ぶ。これこそモノ作りの醍醐味だな。

「よーしお前ら寝ろ寝ろもう寝ろ。俺も眠いから寝る」
「はーい。簪、一緒にお風呂入ろ」
「……うん。あの……佐倉先生」
「応」

 ゾロゾロと生徒達が寮へ戻っていく。その最後尾に千春と簪が居た。

「ありがとう……ございます……」
「何、諦めなかった奴の背中をちょいと強めに押しただけだ。それにこれからが大変だぞ、調整とかな」
「……はい!」

 最後に一際強く頷き、二人は手を取って駆け出していく。うん、青春だねぇ。百合の花が似合いそうだねぇ。

「ま、コアの適合率は少しずつしか上がらんし……んぁ?」

 俺も風呂入って寝るか、と踵を返すとなにやら足の裏に硬い感触が。


 ネジ。


「………。」

 ………。

「……知ーらねっ」



 書いてみて分かった事。整備シーンって迫力出し辛くてムズイでゴザル。
 とりあえずマッドらしくニタニタ笑いながらやらせてみました。

 さぁて次はラウラ戦だぁ!




[27457] 第八話「ご迷惑でしたか?」
Name: 巣作りBETA◆bbda2e80 ID:2feb198d
Date: 2011/05/12 00:55



 第八話「ご迷惑でしたか?」


「………。」
「………。」

 気まずいよ……初っ端からコレかよ……。
 結構前(クラス対抗戦時)に箒に禁句を思いっきり言っていた事を思い出し、こりゃ謝らなアカンと箒を探して12分。
 寮から少し離れた空き地で真剣片手に顔をダルンダルンに緩ませている阿呆を見つけた。危ないってお前。色んな意味で。

「……それで、話と言うのは?」
「あー、いや……こないだのクラス対抗戦の時にさ。俺、お前の気にしてる事言っちまったじゃん? だから、謝っとこうと思ってな」
「あ……」

 何故か居合いの練習をしていた(顔が緩んでいたのはどうせ一夏絡みだろう)箒に話がある、と切り出して数分。
 いつも通りにすぐ切り出さない俺を不審に思ったのか、疑問と言うよりは警戒色を強めて箒が口火を切った。
 だが、どちらかと言えば精神的な物で切り出し辛かっただけの俺には渡りに船だったのだが。

「何を今更って思うだろうけど……やっぱりけじめはつけとこうと思ってな」
「……そう、ですか」
「それとさ、どーも俺達の間には認識の齟齬があると見た。それをハッキリさせたくてな」

 自分の事ながら相変わらずの軽薄な口調に反吐が出そうだが、こればかりはもうどうしようもない。
 それに、今言った事は事実だ。チート頭脳をフル回転させて出した答えだしな。

「齟齬……ですか?」
「ああ。篠ノ之束って個人の捕らえ方について、な」
「っ―――聞かせて下さい」

 ありがたい。これで拒否されてたら今後一生微妙な距離感で接する事になってたかもしれないからな。

「俺から見ればさ、篠ノ之束ってのはタレ目で乳がデカくて何故か運動神経が良くて俺の事ナチュラルに罵倒してくる幼馴染なんだよ」
「………。」

 お前は何を言っているんだ、と某格闘家のようにジト目で睨まれる。そりゃ身内のこんな妙な評価を聞いたらそう思ってしまうだろう。
 それに、もしかしたら『こんな評価』は一度も聞いた事が無いのかもしれない。こと束に関しては特に、な。

「だからさ、アイツが世界的にどう思われているのかってのをたまに忘れちまうんだ」
「……それは流石にありえないと思いますが」
「マジなんだって。もしISを作らずに束が失踪していなかったとしても、多分俺から束に対する全ては変わらない。考え方から、この想いまで。全部」
「………。」

 自分の中の冷静な部分が「んな訳ねーだろ」とツッコミを入れる。ああ、お前は正しいよ。
 確かに、本来言葉一つ違うだけで変わるもんが変わらないってのがおかしいのは解ってるが、ちょっと黙ってろ。

「まあ所詮はIFな訳だが……つまり俺から見れば束の頭が良かろうが悪かろうが関係無いんだよ。俺から見た『篠ノ之束』って人間は変わらない」
「……それで、何が言いたいんですか?」
「お前が束をどう思っていて、アイツの妹だと言われる事をどう思っているか。それを考えた。
 ……こないだは、悪かったな。教師として触っちゃいけない部分だった」
「―――まあ、もう過ぎた事です。謝罪も頂けましたし、今後はあまり気にしないようにします。無理でしょうけど」

 それに、と箒は言葉を続ける。

「あの件に関しては、少し感謝もしているんです。その……一夏の優しさを感じる事ができましたから」

 ……あ、ありのまま今あった事を話すぜ! 失言の挽回をしようと思っていたら一夏の好感度上げに使われていた。
 何を言っているのかわからねーと思うが、俺も何をされたのか解らなかった。フラグだとかニコポだとかそんなチャチなもんじゃ断じてねぇ。
 新種の恋愛原子核の恐ろしさの片鱗を味わったぜ……。

「……そうか。じゃ、この話はここで終わりだな。ぶはー、疲れた」
「はぁ……少しは罪悪感を持って下さい。これでも色々と気にしているんです」

 しかしあそこまでガッツリトラウマ刺激してよく邪険に扱わないな、俺の事。
 信頼されてるって事なのかもしれんが、その信頼に応えられるかどうかは解らない。それに、

「んー、多分無理だなー。正直な所、俺がお前達の兄貴分やってるのも束の身内だからだし、鈴達は一夏の身内だからだしな。俺個人としては束一人が居ればそれで良いんだ。
 だから俺は束を守るし、束が笑っていてくれればそれで良い。けど、束はお前達が居ないと駄目だって言う。だからお前達が笑ってられるようにする。それだけだ」
「……案外、一番『外れている』のは貴方なのかもしれませんね」

 狂っている自覚はある。もう殆ど思い出す事もない『前世』の自分の常識と照らし合わせると、俺は狂っている。
 こうして謝りに来たのも『教師』だからで、『佐倉源蔵』という個人の視点だと何も謝る理由は無い。円滑な関係の構築という面では有効かもしれない、と思う程度だ。
 多分、俺みたいな人間を『人でなし』とか言うんだろう。まあ面と向かって言われた所で「それがどうした」と一笑に付すがね。

「だろうな。それで束の身内が笑っていられるよう、2メートルに届かないこの目の届く範囲までを守る。そこが限界だな」
「……全く、姉さんが少し羨ましいです。ここまで想われているとは」

 はぁ、と箒はため息をつく。まあお前ら完全に追う側だしな。

「ま、男ってのは追いかける生き物だからな。ありゃ追い甲斐のあるウサギだ。
 だが、一夏の兄貴分って観点から言わせてもらえば……もう少し勇気出して素直になってみな」
「……はい」
「ただまあ、勇気を出した結果が学年全体に広まってたら世話無いけど」

 どうも一夏の部屋から引っ越すイベントは終わったらしい。でもお前ら、ちょっと単純すぎやしないか? むしろ誰か狙って噂流したろ。
 何故か俺の所に裏を取りに来た連中まで居るくらいだからな。信じられるか? こんな連中が将来的に国防の要を担ったりするんだぜ?

「……すいません、殴って良いですか?」
「駄目だっつの」

 やれやれ。相変わらずシリアスが似合わんね、俺は。まあ、シリアルな位が丁度良いさ。



「……どったの? ロードローラーにでも轢かれた?」
「違うわよ……ったく、崩山があれば熱殻拡散衝撃砲でとかちつくしてやるのに」
「……織斑千春、か」

 新しいパックが完成したので訓練ついでに試験をと思って簪と第三アリーナへ足を向けると、そこにはヤムチャよろしく倒れ伏した友人二人が居た。
 ……正直、こうやって客観的に事態を見据えていないと何時爆発するか解らないくらい怒っている。ここまでトサカに来たのは久しぶりだ。

「ええ。昨日は居なかったし、初めましてって事で良いかしら?」
「ああ……アリーナを使うなら好きにしろ。興が削がれた、私はもう戻ろう」
「それはちょーっと困るのよねぇ……それとも、負けるのが怖いのかしら?」
「……何?」

 私達に背を向けたロリータが再度こちらへ向き直る。因みにロリコンって本来別の意味なんだよね。
 ……それはともかく、私自身無理矢理だと思う煽りをする。若干恥ずかしいが、こうする理由はちゃんとある。

「生憎と私は家族愛に満ち満ちた人間なの。で、目の前には最愛の弟を張り倒した女が一人……ここでハイそうですか、って見逃す訳には行かないのよね」
「……成程。私としては無駄な争いはしたくないが……その目から逃げられるとも思えんな」
「そう。じゃあ決まりね……簪、下がってて」
「……嫌」
「へ?」

 簪を庇うように前に出るが、それに合わせるように簪も前に出る。

「……織斑君を殴った人を、見過ごすなんて……無理」
「へぇ……こういう非生産的な事は……ああ、そっか。そうよね」

 ここで退いたら、ヒーローじゃないもんね。助けられたいって願望だけじゃない、確かな願いを持ってるんだもんね。
 簪にとって一夏は白馬に乗った王子様だし……IS白いし。それを貶されて黙ってられるならヒーローなんか憧れないよね。

「って事で二対一になるけど良い?」
「そっちは日本の代表候補生だったな……面白い。刺激的にやろうか!」

 そう、と応えて両の足でアリーナの大地を踏みしめる。
 ……ここまで立派な悪役やってくれたんだし、それ相応の台詞は必要よね。

「憎悪の空より来たりて」
『正しき怒りを胸に』
「『我等は魔を断つ剣を執る!』」
「『汝、無垢なる刃! 六花・スパイダーガール!』」

「汝は勝利を誓う刃金、汝は禍風に挑む翼……!」
「蒼穹の空を超え、星々の海を渡り……翔けよ! 刃金の翼!」
「舞い降りよ――打鉄弐式!」

 打ち合わせも一切無いのに簪がバッチリ合わせてくれる。微妙な改変まで入れるとは流石ね。
 ……でもアイオーンじゃなくてアンブロシウスなんだ。速度特化だから合ってるけど。

「ククク……面白い。お前達を分類A以上の操縦者と認識する」
「そりゃ光栄ね……それとも余裕かしら?」
「フン! 正々堂々となぶり殺しにしてやろう! さあ、ショータイムだ!」

 何が気に入ったのか知らないけど、どうも強敵に認定されたっぽい。ふざけんじゃないわよ。
 私と簪は左右に分かれて飛ぶとボーデヴィッヒの【シュヴァルツィア・レーゲン】へ十字砲火を仕掛ける。
 ……参ったわね。変換容量全部試作品にしてきちゃったから普段通りには出来そうに無いわ。

「王の巨腕よ、打ち砕け!」
「突進だと? ふざけるなっ!」
『敵IS右腕より特殊フィールドの発生を確認、現在データ照合中』

 右腕装備用ブースター付き巨大ナックル『ポルシオン』で殴りかかるが、六花からの妙な情報に慌てて針路を変える。
 あの機体は第三世代、って事はまず間違いなく特殊な武装がある!

『ヒット。PICと同質の反応から【アクティブ・イナーシャル・キャンセラー】と推測されました。
 特定力場内の物質の慣性を停止及び操作する技術です。接近戦は危険と判断します』
「それじゃあ左の『ビゴー』も使えないじゃない……六花、両手の二つを量子化、『メガスマッシャー』を出して!」
『了解。胸部粒子砲、展開します』

 両腕のナックルを解除し、量子化していた胸部粒子砲『メガスマッシャー』を出す。
 スペック通りなら威力は充分だけど、燃費の悪さも折り紙つきらしい。主兵装はこれで良いけど、もう一つ欲しい。

「六花、他に使えそうなの何か持ってたっけ!?」
『検索します。巨大格闘用クロー『アウトロー』、アウト。物理巨大刀『鬼丸』、アウト。
 ……ヒット。全身装甲型多連粒子砲『ボルテッカ』、手部可変粒子砲『レイガン』、使用可能。
 ただし使用されるエネルギーからシールドパック『フォートレス』への換装を提案します』
「何でどれもこれも燃費悪いのばっかなのよぉっ!?」

 私と六花が漫才をしている間も打鉄弐式から放たれるミサイルと迎撃の砲弾が飛び交っていく。
 砲弾はドカンドカンと放たれるシュヴァルツィア・レーゲンからレールカノンだ。ああいうの無いの!?

『折角だしデカいの撃ちまくりたい、とマスターが仰った筈ですが』
「……そうだったわね。やっぱり『コレ』使うしかないのかしら」
『賛成。恐らくワイヤードパックの切り札ならばAICに防がれる事はありません』

 撃ち出されるワイヤーブレードが地味にシールドエネルギーを削っていく。迷ってる暇は無いわね。
 と、六花から警告音が鳴る。この音は警告じゃなくて注意喚起だっけ?

『注意。打鉄弐式より高エネルギー反応、荷電粒子砲『GENO』を使用する模様』
「させるかっ!」
「それはこっちの台詞よ!」
『背部コンテナ開放、拘束用ネットミサイル『ダンディライオン』一番から四番、発射』

 ……ワイヤードパック『スパイダーガール』には他のパックにない特殊な装備がある。それは『相手を拘束する為の武装』。
 その一つが背部コンテナに収まる六連装拘束用ネットミサイル『ダンディライオン』だ。それを二基装備している。
 そして発射された弾頭が弾け、GENOを撃つ為に足を止めた弐式目掛けて飛んでいたレーゲンの針路を阻む。が、それはあっさりと切断されてしまった。

「この程度っ!」
『高エネルギーのトンファーブレードにより切断されました。粘着効果は期待できません』
「でも良いわ! 『ワイヤーガン』発射!」
『進路クリア。ワイヤースタンガン『ワイヤーガン』一番二番、発射』

 私達に背を向けたレーゲンに対し、腰部ジョイントに一門ずつ搭載しているワイヤーガンを放つ。
 見た目はレーゲンのワイヤーブレードとそっくりだが、こちらのは二股になっている。更に電撃機能付きだ。
 が、流石に同種の武器を持っているだけあるのか、背後からの奇襲はあっさりと避けられた。ついでに弐式の荷電粒子砲も。

「まずはお前からだっ! 停止結界の餌食となれ!」
「機体が……!?」
「簪っ!」

 命中精度を上げるために空中に停止していた弐式にレーゲンが接近し、AICを使う。その瞬間、弐式はピクリとも動かなくなってしまった。

「落ちろっ!」
「きゃぁぁっ!」

 そこに容赦なく撃ち込まれるレールカノン。更にトドメとばかりにプラズマ手刀がお腹に突き立てられた。

「こんのぉっ!」
「かかったな!」
「っ!? しまった!」

 瞬時加速を使ってレーゲンに接近した瞬間、ガクンと機体の動きが止まる。
 その視線の先にはレーゲンの無骨な右腕が翳されており、私もAICに捕まってしまったのだと即座に理解できた。

「さて……先の二人は大人しく出て行ったようだし、これで援軍も期待はできんぞ。王手だ」
「……そうね。それと知らないみたいだから教えてあげるわ」
「ほう? 何だ、言ってみろ」

 獲物を前に舌なめずりは三流……じゃなかった。こっちだった。

「私はね、一人じゃないの―――六花ぁっ!」
『肩部独立粒子砲『インコム』一番二番、目標補足完了』
「なっ―――遠隔操作ユニットだと!? 馬鹿な!」

 AICに補足される直前、真後ろへ向けて射出されていた二基のインコムが地上スレスレを通ってレーゲンの後ろへ現れる。
 と、何故か急にAICを維持できなくなったのか、私の体も動くようになった。よし、これなら!

「メガスマッシャー!」
『インコム、ファイア』
「くぉぁああああっ!」

 三方向からの高出力粒子砲を受け、レーゲンが大きく揺れる。十秒も受ければシールドエネルギーが尽きかねない大火力コンビネーションだ。これで勝つる!
 が、ボーデヴィッヒは被弾しながらも機体を飛ばし、レーザーの連続照射から逃れてしまった。

『報告。今までのデータと照合し、AICはレーザー兵器の防御には不適である事が予測されます。
 また、使用に極度の集中を必要とする為、複数の展開等の使用は不可能な模様』
「六花、アンタ戦いながらそんな事考えてたの?」
『ご迷惑でしたか?』
「まさか。最高よ」

 下がるレーゲンを追わずにインコムを巻き戻し、その間に六花の報告を聞く。

「流石は教官の妹と言う事か……いや、ドクトル謹製の機体性能故か?」
『お褒めに預かり感謝の極み―――マスター』
「あら……仕切り直しと行きたい所だけど、邪魔が入っちゃったわね」
「うおおおおおおっ!」

 ハイパーセンサーが示すのは闖入者。今一つ空気の読めない我が愛しの弟であった。パリンと割れるアリーナのバリアー。

「大丈夫か、千春!」
「まーね。でも何でここに?」
「アリーナの外で鈴とセシリアに会ってな。千春達がアイツと戦ってるって聞いたんだ」

 その意気やよし。でもアリーナのシールド切り裂いてくるのはどうよ。

「一夏、簪は無事だよ」
「織斑、君……」
「そっか、良かった。シャルルもありがとうな」

 推進系がやられたらしい簪がデュノア君に支えられてこっちに来る。んー、ちょっと強度が足りないかな?

「さて……散々やってくれたな」
「フン、貴様か。丁度いい、ここでお前から血祭りにあげてくれるわ!」
「こっちのセリフだっ!」

 ポーヒー、とどこか気の抜けるブースト音を響かせてレーゲンが白式へと斬りかかる。
 一夏も雪片弐型を展開し、手刀と鍔迫り合いをしようと振りかぶった。どっちも鍔無いけど。

 ……が、

「何をしているか貴様らっ!」

 デデーン! とどこかから聞こえてきそうな御大将……もとい我らが姉君の登場である。うん、そこまでは問題ない。
 けど姉さん、そのレーゲンの方を止めた『ISの全長よりも大きいブースター付きの肉厚な剣』は何?
 ……確かそれ、源ちゃんが作った『斬艦刀』シリーズの一つよね? 取り回し重視の鬼丸よりずっと大きいじゃない。

「教官……!」
「千冬姉!」
「お前ら、力が有り余っているようだな。ならばそれは今度のトーナメントで発揮して見せろ。
 以後、トーナメントまで一切の私闘を禁じる! 解ったな?」

 二人が剣を収めたのを確認し、姉さんは巨大な実体剣を肩に担ぐ。だからそれもう重量の単位、トンだよね? ね?







 キンクリ食らったような気がするが気のせいだろう。無事にトーナメントは中断された。うん、それ無事じゃないよね。
 何かタッグ決めのドサクサで一夏の次回のタッグの相手は簪になったらしい。こりゃ千春の差し金だな、抜け目がない。

 が、問題はそこではない。

「………。」
「………。」

 俺の目の前には箒さん。今日も今日とて良い所が無かったお嬢さんである。こないだとは尋ねる側が逆だ。

「……専用機、か?」
「……はい」

 まあチート頭脳のお陰で劣化しない原作知識から考えれば当然だな。でも言う相手が違うだろうが。

「アレだな、一夏達とつるんでると感覚が狂ってくるよな」
「は……?」
「箒よ、世の中には代表候補生なのに専用機を持てない人間が山ほどいるのを知っているか?」
「―――っ」

 もう自然とSEKKYOU臭くなってしまうのは諦めよう。元々こいつらより年食ってるんだし、それをするのに相応しい立場に居るんだ。
 ……本当なら千冬かやまやの仕事の筈なんだけどなぁ。ま、こういう相談を持ちかけられるぐらいには信頼されてるのかね。

「一夏と千春は別として、他の連中には専用機を受領するだけの理由がある。解るか?」
「……優秀だから、でしょうか」
「一言でいえばな。細かく言えばセシリアはBT適正が高かったからだし、鈴は俺がアイツ経由で空間圧作用兵器の論文を中国に渡したからだ。
 シャルロ…シャルルはデュノア社のテストパイロットだからだし、ラウラはあんなナリだが少佐階級だ。あ、簪は純粋に優秀だからだな」

 姉のちょっかいも多分にあるんだろうが、簪は単体でも充分優秀な奴だ。
 ネガティブも最近は克服できてるみたいだし、あと一歩かな。

「で、特に誇れるものは胸くらいしかないお前さんは前例を作った俺を頼りにきた、と」
「むっ、胸は関係ないでしょう! 胸は!」
「はっはっは。だが無理だぞ? 理由は幾つかある。聞くか?」
「……はい」

 どうしてコイツは一々俺の相手をまともにやると疲れるって事を学習しないんだろうか?
 こちとら持ち味はテンションのギャップとセクハラだ。箒にとっては束とは違った意味でやり辛い相手だろう。

「まず一つ、現在専用機のネタがない。お前自身どんな機体が欲しいって希望は無いだろ?」
「ええ、まあ……」
「次に時間がない。今度の臨海学校に備えて色々と準備が必要でな、時間が空いてないんだ」
「各種装備の試験……ですよね?」

 そーそー。狙撃用セットとかね。

「そんで表向きはこれが一番の理由。コアが無い」
「……ん? では、六花のコアは……?」
「IS条約締結前に束に一つ貰っといた。だから実はコアの総数って467じゃないんだよね」
「……本当にお似合いですね」

 はっはっは、そう褒めるな。照れるじゃないか。俺に嫌味は無駄だぞ?

「実はこっちが最大の理由なんだが人には言えない大事な秘密。
 ……お前に勝手に作ると束が怒るだろ」
「そう……でしょうか?」
「アイツお前の事大好きだからなー。後でちょっと電話してみろよ、喜んでコアごと作るぞ」
「………。」

 ……本当なら箒は専用機の一つや二つ、既に持っていてもおかしくはない。身柄を狙われた事も一度や二度じゃきかないんだし。
 だが、何故か未だに持っていない。束が満足できる性能の機体ができない、とかならまだ良いが……箒の精神性を考慮した上で、なのだとしたらちょいとばかし問題だ。

「子に親は選べん、とは言うが兄弟姉妹も同じ事だ。折角のコネだ、存分に使え」
「……良いんでしょうか?」
「世の中、何一つ平等であった試しなんざねーよ。お前だって立派な乳持ってんじゃねーか」
「だ、だから胸は関係ないでしょう!」

 はっはっは。危ないから真剣出すのやめて。

「確かアイツ人によって着信音変えてるらしいし、自分のケータイからかけてやりな。喜びのあまりテンションぶっちぎるかもしれんが」
「……解りました。失礼します」
「ほんじゃなー、おっやすみー」

 箒は一礼して踵を返す。今回の束の挨拶はやっぱりもすもす終日なんだろうか?
 なんて考えて約二分。疲れたしそろそろ寝ようかと思ったら来客です。

「入るぞ」
「……ノックぐらいせぇや」

 何でちーちゃんは勝手に入ってくるのか。と言うかお前、今まで出待ちしてたのか?

「知るか。ほれ、束だ」
「ん? 噂をすればなんとやら、お前の左斜め16度後ろに俺ガイル?」
『裏拳で鼻っ柱叩き折るよー。やっほーおひさー』

 おひさー。と返しながら千冬のケータイと空間投射ディスプレイを接続する。
 ヴン、と低い稼動音を立てて束の顔が現れた。っつーかお前そこ暗くね? 赤とか目に悪くね?

「源蔵、今日のあのシステムの事だが……」
「あー、それか。ああ、ありゃ俺達がドイツに居た頃に作った演習用プログラムが元になってるな」
『ふーん……あ、アレ作った所は謎のキノコ雲と共に塵になったからね』
「よくやった。褒美として俺の嫁になる権利をやろう」
『オプーナ買う権利の方が良いなー』

 それはともかくVTシステムだ。シュヴァルツィア・レーゲンに原作通り搭載されていた代物だったが……正直最初に見た時は驚いたね。
 どこであんなモーションパターンとか入手したのかと思ったら、あれ俺が入れたやつだったわ。

「元々はその場に居ない奴の代わりをするためのシステムだったが……不完全極まりないが一応第五世代技術ではあるぞ」
『んー、束さん的にはあんな不細工な代物を認める訳には行かないんだけどねー』
「技術の蛭子は何時の時代も生まれるもんさ。エルカセットとか」
「何か果てしなく間違った例えな気がするのは私だけか」

 気にしない気にしない。あの時代は何か色々とアレな感じだったし。文化的にも。

『あれ? そーいえば見慣れない所だけど……ゲンゾー、そこどこ?』
「え、俺の部屋だけど?」
『……ふぅーん』

 キョトン、と可愛らしい擬音から一転、ジト目でこっちを見下ろしてくる束さん。何かあったか?

『そっかそっか。そっちで一つだけセキュリティが破れない所があったけど、そこがゲンゾーの所だったんだ』
「何やってんのお前。っつーか何でいきなり機嫌悪くなったよ」
『別にぃー。ゲンゾーってそういう所は昔から気にしないよね』
「?」

 駄目だチート頭脳使っても解らん。ええい一夏を呼べぃ! あ、やっぱいらね。戦力にならなそうだ。

『ちーちゃん』
「解った解った。源蔵、これを外してくれ」
「はいはい。ポチっとな」

 最後までどこか不機嫌そうな束の顔がディスプレイごと消える。千冬は苦笑してるし……何なんだ?

『――――。』
「ああ、解っている。心配するな」
『――――。』
「全く、相変わらずだな……源蔵、お前ももう寝ろよ」

 千冬はケータイを片手に部屋から出て行く。どうも束は何か言ってるようだが距離があって聞こえない。

「ああ、おやすみ」

 ……だがまあ、久々に三人揃っての会話は楽しかったな。
 俺と束がグダグダと駄弁ってたまに千冬が突っ込む……なんか小中の頃思い出しちまった。

 箒に発破はかけといたし、まず間違いなく臨海学校に束は来るだろう。ははっ、やべぇ。今からスゲー楽しみなんだけど。



 束さんちょろっとだけ出て来るの巻。次回以降束さんの出番がガンガン増えていきます。
 そして束さん久々の登場記念って事で遂にその他板へ移動しました。初の移動なのでドキドキです。

 地味に箒をちゃん付けしなくなりました。本人と向き合い始めた証拠。束と源蔵の身内判定の違いはFateのライダーとセイバーの違いに似てたりします。
 ……そして自然と厨二病を患うラウラ。あれぇ? おっかしぃなぁ……。

 次回、臨海学校一日目まで行く予定ですがその前にあるキャラが登場します。ヒントは「大抵のSSでクズ」。乞うご期待。





[27457] 第九話「地獄に堕ちろ、この野郎」
Name: 巣作りBETA◆bbda2e80 ID:2feb198d
Date: 2011/05/15 21:00



 第九話「地獄に堕ちろ、この野郎」


 やっほーこの入り方も久しぶりだね。見た目は大人、頭脳はチート、その名も俺!
 で、今何やってるかって言うと、

「―――と言う事で今年も花月荘に……」
「くかー……」

 寝てます。因みに周りは現在職員会議中。ずらっと並んだ女、女、元女、女。あと末席に轡木さん。
 でも大丈夫、僕チート頭脳持ってますから。寝ながら聞くとか楽勝です。最初に気付いた時はビックリしたけど。

「―――では以上です。解散」
「ん、んぅ……あー良く寝た」

 ぐぐっと背筋を伸ばすとボキボキと背骨が鳴って心地良い。周囲の先生方は呆れたように苦笑して会議室から出て行った。

「佐倉先生、よろしいですか?」
「んぇ? 何すか、教頭」

 俺の前に典型的な『ザマス』が現れる。指導部の長、鬼婆こと教頭だった。

「全く、毎回毎回貴方は会議の度に寝て……今回の会議の内容は把握していますか?」
「毎度の各国の情勢とIS稼働状況の報告、あと今度の臨海学校についてですよね。
 ああ、今日は一年の副担が居ないから技術系は可能なら授業を手伝うように、でしたっけ」
「……解っているなら良いですが、貴方も一応教員です。生徒達の見本になるよう行動して下さい。良いですね?」

 ウッセーオニババー。教頭は言うだけ言ってさっさと会議室を後にする。俺アイツ苦手。相手すんのマジ面倒。

「全くお前は……よくそれで会議の内容を把握できるな」
「常人とは脳の作りが違うんだよ、俺と束は」
「あながち否定できないのが怖いな……」

 教頭と入れ替わりに千冬がやって来た。俺が歩き始めたのに合わせて隣を歩く。

「そーいや今日やまや居ないんだっけ?」
「ああ。臨海学校の下見に行っている」
「そっかそっか。んじゃ一時間目だしお前のクラスにお邪魔するかね」
「……良いだろう。ただし、下手な真似をしたらどうなるか、解っているな?」

 こわーい。何だよ教員免許持って無いくせに。俺もだけど。

「そんじゃ先行っててくれ、トイレ寄ってく」
「……お前と言い一夏と言い、少しはデリカシーという物を覚えろ」
「月火水木キン肉マン?」
「……それはデリカットだ」

 良く解ったな。いや、このネタ高校の時にやったな、確か。

「さて、と……」

 週の平均使用人数五人以下の男子トイレで思索に耽る。体は用を足す為に動いているが。
 千冬は先に教室に行ってるだろうし、物を考えるには丁度いい時間だ。

「まさかもうあそこまで行ってるとはな……」

 俺だって好きで居眠りをしていた訳じゃない。こちとら寝る間も惜しめと世界中に言われる立場だ。
 昨日はパーツを揃えるのと、先のトーナメントで発生した六花の「ある能力」について考えていた。

 ―――『弾道支配領域予測機能』。これは元々六花に搭載してるシステムの一つであり、十全の力を発揮するのに必要な能力の一つだ。
 名前の通り、弾丸や弾頭が支配する領域……つまり弾が突っ込んでくる場所を計算して予測する機能である。
 視覚的には菱形の断面を持つ柱が迫ってくる、と言った感じか。具体的に言うとYF-21のアレだ。

 ……俺の予想では六花は千春との意思疎通にかなりのリソースを使っており、このシステムを起動させる余裕など『まだ』無かった筈だ。
 別種のシステムが起動可能な程に意思疎通に割り振るリソースが減る……つまり、二人の意思疎通のレベルが俺の予想を上回っているという事になる。
 俺の予想ではこのシステムの起動は福音戦だった。これだけあればアレには勝てるからな。

「けどそうなると……『アレ』が福音で出て来る事になるか。参ったな……あれはあんま束に見せたくないんだけど」

 そして恐らく、『あのシステム』がゴーレムⅢ時に発動する。いや、もしかするともっと早いかもしれない。
 別に弾道支配領域予測機能については公表してしまっても構わない技術だ。ただ必要な処理能力が半端じゃないので使い物にならないだろうが。
 だが、『あのシステム』は完全な第五世代技術の一歩手前の物である。それが今の状況で発動すれば何が起こるかは俺にも解らない。

「はぁ……まあ、難しく考えても仕方が無いか。幸い、もう暫く余裕はあるしな」

 ぶるるっとシバリングを起こして竿を仕舞う。そう言えばもうすぐ束に会えるよね、よし、出番だぞマイサン!

「……まあ、無理なんだろうが」

 あーやだやだ。自分の瀬戸際のヘタレっぷりも意外と臆病な束も嫌になる。束に涙は似合わんのだよ。
 こういう時はアレだな、世界をひっくり返すのが一番だ。という事でコイツの出番。

「簡易重力操作機~!」

 ててててっててーん、とダミ声でポケットから箱を取り出す。
 確かデフォルトだと足元だったな。よし、ワールドワイドNINJAで行こう。

「ぽちっとな」

 キュイイ、と箱が音を立てて作動した事を知らせる。俺はそれを確認すると『両足』を壁につけた。

「うん。外部重力遮断も重力発生も問題なし、Gは0.75で固定済みっと」

 いつもより四分の一ほど軽い体のまま壁を歩いて登り、天井に足をつける。おー、何か新鮮。
 因みに重力が足元に働いてるから髪の毛が逆立ったりしないのがポイントだ。無論、今日着てる『疾風』Tシャツもね。

「っとと、いけねぇいけねぇ。一時間目は一組だったな」

 階段で少し戸惑いながらも一年一組の教室を目指す。丁度入り口に来た時に始業のチャイムが鳴った。

「おいーっす」
「「「ぶふぅっ!?」」」

 パシュ、と軽く空気の抜ける音と共に教室のドアが開く。その数秒後に教室の至る所から噴き出す声。よし、大成功。
 えーっと今日の大賞は……鈴だな。ツボに入ったか。あ、千冬がギリギリ堪えてやがる。ちくしょー。

「佐倉先生、それは一体……」
「なに、偏向重力技術のちょっとした応用だ。お前らだってIS使う時は反重力制御やるだろ?」
「そういう問題じゃないんじゃ……」

 あ、シャルロットになってる。そーいやこないだから毎回時間無くてこいつらの授業見てやれなかったからなー。

「そんじゃあ早速授業を始め……よっこいしょっと」

 ドアと天井の間の壁をまたいで越える。おお、驚いてる驚いてる。
 因みにこっちから見ると机が天井から鈴生りになっているように見える。超シュール。

「佐倉先生、降りてください」
「まあこのまんまだと授業し辛いしね、っと」
「全く……」

 千冬に言われて降りる事にする。降り方は設定を手に変更し、外部重力遮断を解除してから電源を切るという手順を踏む。
 ぶらーん、と天井から片手でぶら下がる形に一回なり、その後ゆっくりと降りる。まあ別に壁歩いて降りても良かったんだけどね。



「そうそう、整備科の授業は毎日八時間だぞ?」
「「「えぇ~!?」」」
「何驚いてんだっつーの。こうでもしねーと時間足りねーんだよ」

 授業の合間に雑談を挟んでいると、ケータイが唸りを上げる。流石に授業中はマナーモードにしてあるぞ。

「……また珍しい奴から来たな。よし、ちょいと授業中断。社会勉強だ」
「……おい」
「まーまー、そう悪い話じゃない筈だから」

 空間投射ディスプレイを表示し、ちょっとだけ設定を弄ってケータイのテレビ電話モードとリンクさせる。

「はいなー。どったのヴァン」
『……済まんな、こんな時間に』
「っ!?」

 ビクリ、とシャルロットの肩が震える。そりゃそうだろう、世界で一番恐れる人間が電話の向こうに居るんだから。
 皺も深く頭頂部が前見た時よりもさらに寂しいフランス人、ヴァンサン・デュノアことクズ野郎である。

『……ん? そっちの画面が表示されないんだが……故障か?』
「いや、ちょっと設定弄った。こっち学校だからさ」
『ああ、それもそうか……と言うか、授業は良いのか?』
「ん、いーのいーの。っつーかそっちこそ真夜中だろ? さっさと寝ろよ社長さんよ」

 『静かに』と人差し指を唇の前に持ってくる。状況を察したのか、全員一言も喋らずに居てくれた。
 ありがたい。特に激昂しやすい連中が多いからな、このクラスは……その筆頭が担任ってのもどうかと思うが。

『……今度、そちらで装備の試験があるだろう。それに関してな』
「おめーん所のやつならとっくに来てるっつーの。と言うか、そんな事プライベートな電話で話すなよ」
『……それもそうだな。済まん』
「やれやれ……しかしお前、随分と禿げ散かしたな? 頭頂部がかなり寂しい事になってるぞ?」

 と言うかやつれている。顔の皺も増えたし、これでまだ三十代だと言うから驚きだ。五十過ぎにしか見えん。

『……言うな』
「んー、でもさ。そろそろいい加減気になってるんだよな。お前、『どうして其処に居る』んだ?」
『……済まん、質問の意図が解らん』
「漠然とし過ぎてたか。んじゃまず一つ……お前さ、愛人なんて作れるような性格だったっけ?」

 思わず椅子を蹴って立ち上がりそうになった一夏の前に手を翳す。解ってるよ、お前がそういう奴だって事は。だが今は黙ってろ。

『……どこでその話を?』
「有名な噂だよ。人の口に戸は立てられぬ、って日本語教えたろ? そーゆー事だ」
『……そうだな。俺自身、愛人を作ったなどと思った事は一度も無い』
「けどついでにこれも教えたよな? 火の無い所に煙は立たない……いい機会だ、説明してもらうぜ?」

 おー、怖い怖い。教室中から鋭い視線が俺達に集まってるよ。
 あと千冬さん、ちびりそうだから殺気出すのやめて下さい。

『……俺が田舎の生まれだと言うのは、知っているか?』
「大まかな経歴は知ってるけど」
『……なら、俺がどうやってこの地位に居るのかも知っている筈だ』

 ほう、それを俺に言わせるか。中々のヘタレっぷりだな、お前も。

「元々やり手の人間だったけど、社長令嬢と結婚して一気に社長まで駆け上ったって聞いた事があるな。婿養子だったか?」
『……ああ、その通りだ。だからこそ俺は、社長として求められる姿を演じなければいけない』
「やれやれ、企業人ってのは大変だぁねぇ……で、どーしてそこで生まれ故郷の話が出てくるんだ?」
『……俺には、幼馴染が居た』

 おおっとぉ!? 割と予想できてたパターンだけどコレまずくね!?
 教室の二箇所から高熱源反応だと!? 流石に両端同時に止めるのは無理だぞ!?

「そ、それで?」
『デュノア社に就職して数年の間、俺は実家から通勤していた……デジレと出会うまでは』
「……あー、端折れる所は飛ばそう。な?」
『そうだな……その後、俺はデジレと結婚する事になり、俺は実家から離れる事になった』

 危ねー。ヴァンが自分語りモード入ってて助かったわ……流石に長話もできんし、色々と反応する連中が多すぎる。

『……その時までに、『アイツ』との関係を清算していなかった俺が悪いんだろう。引っ越す日の朝に、な』
「あー……つまり……ヤっちまった、と。しかも大当たり」
『……目が覚めたら全て終わっていた』

 なにそれこわい。

『昔の友人から、アイツに子が居ると聞いて……理由も無く解ったよ。俺の子だ、と』
「フム。だがお前は既に所帯持ち、と」
『連絡を取ろうとすると避けられ、会おうとしても時間も無い。無理矢理送った金は送り返された』
「一途と言うか何と言うか……男には到底真似できんな。お前に迷惑をかけたくなかったんだろうよ」

 俺だって束と言う世界で最も愛しい幼馴染が居る。一歩間違うとコイツのようになりかねない。

『そして……アイツが死んだ、と連絡が来た。あの子は俺が引き取りはしたが……このザマだ』
「成程、ねぇ……それで、お前さん的にはどうしたいのさ」
『どうもこうもあるか……! 今更何を言えばいい! 俺の不徳の致すところだ、とでも言えと!?』
「言えば良いじゃん、そのまんま」
『言える訳が無いだろう! ヒラであった頃ならいざ知らず、今の俺はこの会社の社長だ! そう軽々と頭は下げられん!』

 ドンドン出てくる心の叫び。こんだけ溜まってりゃ禿げ散らかしもするわな。

「地位を失うのが怖いか? 尊敬を失うのが怖いか?」
『地位なぞ要らん! だが、会社を纏める立場である以上は一定の信頼を得なければやっていけん!』
「お前が働いた中で得てきた信頼と言うのはその程度か?」
『ああそうだとも! たった一つの事で全てが崩れ去る、その程度の物しか築けなかった俺の責任だ!』

 周りが冷静に見えてるヘタレって酷いなオイ。

「だがそれでもお前は親だ。多少の重圧には耐えなければいけないだろ?」
『お前には解らない事だ! 普通に接しようとしただけで重役が退職を迫ってくるあの気持ちが解るか!?』
「解りたくも無いな。だがどうしてそこまでその立場に固執する? いっそ辞めてしまえばどうだ」
『俺が辞めたらあの子の生活費は誰が面倒を見る! 会社側からは一切の金は出さないとまで言われたんだぞ!?』

 ……冗談だろ? 給料とか出てたんじゃねーの?

「まさかここまで重い話だとはな……ああ、一つ言うことがあった」
『……何だ』
「男装、バレたぞ?」
『……そうか』

 やっぱバレる事は織り込み済みだったか。って事はあっちの方も予想通りか?

「でもさ、すぐにバレると解っている男装までさせて……どうしてこっちに寄越した?」
『……機体と生体データを入手するためだ』
「ダウト。幾ら第三世代関連で時間が無いと言っても、織斑一夏の情報はいずれ公開される物だ。条約があるからな。
 量産機シェアで得た地力があれば乗り切るのは決して難しくないし、国からの援助打ち切りだって年単位の話の筈だ」

 ここで一度話を打ち切り、既に諦めモードに入りかけているヴァンに王手をかける。

「そんでもってさっきの話を統合すると、社の上層部はアイツを疎ましく思っていたと推測される。スキャンダルの種だしな。
 ……お前、アイツをこっちに逃がしたかったんじゃないのか?」
『……ハァ。探偵ごっこは気が済んだか?』
「疑問は大体消えたし満足かな。まあ、その選択は割と正しいと思うぞ。ここは名目上不可侵だからな」
『……貴様、何を企んでいる? どうして俺にここまで喋らせた』

 何って、まあ。

「こういう事かな」

 パチン、と指を一つ鳴らしてこっちの映像を送り始める。おぉ、顔から一気に血の気が引いたぞ。
 はっはっは。今までの会話全部筒抜けですよ? 今更そんな表情したって無駄だっつーの。

『源蔵、貴様……!』
「時間考えずに連絡してくるお前が悪い。お気楽学生共に社会の暗い部分を教えるのも教師の仕事なんでな」
『糞がっ……!』

 糞で結構コケコッコー。とシャルロットの前にディスプレイを持ってくる。さぁて、どんな反応をするかね?

「………。」
『………。』

 だんまりかよ。何だつまらん。
 っつーか俺を睨むなお前ら。

「……今の話は、本当……ですか?」
『……嘘を言う理由がどこにある』
「どうして……言ってくれなかったんですか?」
『言い聞かせて納得できる話でもないだろう……不必要に接触しないように、と言われていたしな』

 わー、ヴァン君のヘタレー。

「それでも……それでもっ!」
『……源蔵、外には聞こえていないな?』
「リアルタイムでこんな会話盗聴する馬鹿なんざいねーだろ」
『……そうか』

 と、モニターの中のヴァンがいきなり立ち上がる。バストアップで映してたから画面から外れてしまった。
 俺は慌ててコンソールを操作し、巨大な机の前に回り込んで来たヴァンの姿を再び映した。

『……今更許しを乞おうとは思わんし、一生恨んでくれたままで構わない。父親面するつもりも無い。だが、一言だけ言わせてくれ』

 ぱん、と手で膝を払って床に付ける。こ、この体勢はまさか!?


『済まなかった……!』


 DO☆GE☆ZA! ……そーいや前に飲んだ時に教えてたな。

「………。」
『………。』
「……顔を、上げてください」

 謝罪大国日本人に負けず劣らずの見事な土下座をかましてくれたヴァンがゆっくりと顔を上げる。
 すげぇ、今のでまた十歳は老けたぞ。もうジジイじゃねーか。

「……今はまだ、『私』は貴方を許せる気がしません」
『………。』
「けど、こっちに来れた事で感謝している部分もあります……今の話を聞いて、ようやくそう思えるようになりました」
『………。』

 一人称を戻したのはわざとなのか自然となのか、俺には判別がつかない。そこに相応の理由があるのは解るが。

「……誰にでも『仕方がない』理由はあるんですよね」
『……だからと言って、私がした事は許される事でも無い』
「……それなら、一つ聞かせて下さい」
『……何だ?』

 改めて考えるとヴァンがヘタレだったから起こったんだよな、この事態は。
 原作だと完全に『社長』のせいになってるが、実際の所はどーなんだか。

「貴方は……私のお母さんを愛していましたか?」
『……ああ』

 今の嫁を選んだ理由が自分の意志なのか会社側からの圧力なのかは知らんが、ヴァンもそれは誰にも教えるつもりはないだろう。

「……今はそれで充分です。『お父さん』」
『……ありがとう』

 あ、泣いた。

 教室には暫くの間、ヴァンの嗚咽がひっそりと響く。
 鈴辺りは思う所もあるだろうが、全員何も言わずにそれに耳を澄ませる。
 ……そろそろ泣き止まんかな。オッサンの鳴き声聞く趣味は無いぞ、俺は。

『……源蔵』
「んー?」
『ありがとう。それと地獄に堕ちろ、この野郎』
「束と一緒なら地獄巡りも悪くないさね」
『ハッ』

 憑きものが落ちた表情でヴァンが笑う。お、二十歳若返った。何だ割とイケメンじゃないかお前。死ね。

『……ああ、そうか。お前が言っていたのが彼か』
「何だ、今更気づいたのか?」
『となると……シャルロット』
「は、はいっ!?」

 恐らく今まで一度も言われた事の無い柔らかな口調で、ヴァンがシャルロットに声をかける。
 何だ、すっかり父親できてんじゃねーか。

『話を聞く限りではかなりの難敵だ。周りの勢力もさるものながら、本丸は更なる強敵だろう。
 ……だから、勝ちたいのならば攻めの一手だ。押して押して押しまくれ!』

 ポカン、と口が開けっ放しになるシャルロット。まあこのギャップはなぁ、オッサンのギャップ萌えとか気持ち悪いんですが。
 クラスの連中はヴァンの言いたい事に気がついたのか、それぞれの反応をしている。千冬含めて。
 で、一夏は当然ながら何を言ってるのか解らないという表情。予定調和ですねわかります。

 俺? 腹抱えて笑ってましたけど何か?



 ……何だコレ?

「なあ、これって……」
「……聞くな。私には関係ない」
「嘘は駄目だよ、箒」
「ウサミミ……?」

 現在俺達は臨海学校に来ている。俺と箒、千春と簪は着替えるために旅館を移動している所だった。
 で、旅館の庭にはブスッと刺さったウサギの耳らしき物体。まあ間違いなく束さんだよな。

 ……そう言えば、シャルロットと親父さんが和解したのは良いけど、話する時間とか取らなくて良いのか?
 シャルロットはずっと俺の所に入り浸ってるし、それに合わせてラウラも放課後は夜まで俺の部屋に居る。

「……源蔵さんを呼べば良いだろう。私は行くぞ」
「源ちゃんはまだ着てない筈だよ、海から来るらしいから……ってホントに行っちゃった」
「相変わらずだな箒も……で、何で海からなんだ?」
「装備持ってくる係なんだって……昨日、授業の時に愚痴ってた……」

 そう言えば揚陸艇でドーンと運ぶんだっけか。ああ、そりゃ源兄ぃの仕事だな。

「それじゃソレ、一夏に任せるわね。行こ、簪」
「な、何でだよ。千春がやれば良いだろ?」
「生憎と女の子の着替えには時間がかかるの。そこを考えると余計な時間が使えるのはアンタしかいないのよ」
「……解ったよ」

 千春は簪とさっさと着替えに行ってしまう。間違いなく面倒に巻き込まれたく無いからだろう。

「まあ、やるしかないか……ふんっ! と、わぁっ!?」

 てっきりウサミミをつけた束さんが埋まっていると思って全力で引っこ抜くが、あまりの重量の無さに後ろに転んでしまう。

「い、一夏さん……? 何ですのそれは……?」
「(もぞっ)」
「あ、ああ、セシリアか。いや、束さんが……もぞ?」

 何か掴んでるウサミミが動いてる。いや、正確には俺が掴んでるウサミミの下にくっついてる物が、だ。
 何だろう、これ……黄色くて丸くて……網目?

「っ!(バッ)」
「うわぁっ!? な、何だコレ!?」
「あ、アルマジロ……?」

 と、一向にアクションを起こさない俺に業を煮やしたのか、黄色い物体が元の姿になって俺に顔を向けた。
 細長くてどこか愛嬌を憶える顔、うん、間違いない。本物は初めて見たけど、間違いなくアルマジロだ。

「(じー)」
「何でこんな所にアルマジロが……?」
「さぁ、まああの人のやる事だし……ん?」

 と、ここまで喋って何やら地面が揺れている事に気がつく。地震……じゃないな、何だ?

「(ぴくっ)」
「一夏さん、何か揺れてませんか?」
「ああ、セシリアも感じるのか? 十中八九あの人なんだろうわぁっ!?」

 ドゴーン! と地面を切り裂いて現れる巨大な何か。あ、危ねー! あとちょっとずれてたら直撃してたぞ!?
 まるでドリル兵器のような登場だが、その正体は巨大な人参でした。うん、何これ。

「に、人参……?」
「ああ、間違いなくあの人だ……」
『おお、さすがいっくん! よくぞ見破ったね!』

 ぶしゅー! と煙を出して巨大人参がパカッと割れる。文面だけ見ると訳が解らない状況だ。
 因みに今の束さんの格好は……一人不思議の国のアリス、と言った感じだ。ウサギとアリスしか入ってないけど。

「じゃっじゃーん! ビックリした? いっくん。ぶいぶい!」
「お、お久しぶりです。束さん……」
「うんうん、おひさだねー。本っ当に久しいねー! でも質問にはちゃんと答えようねー」

 ぴょん、と大地を突き破った人参から束さんが出てくる。俺は思わず束さんにアルマジロごとウサミミを渡していた。

「ところでいっくん、箒ちゃんはどこかな?」
「え、えっと……」
「まあ、私が開発したこの箒ちゃん探知機ですぐに見つかるよ」

 そう言うと束さんはアルマジロからウサミミを外し、自分の手に持った。
 で、このアルマジロ結局何なんですか? ナチュラルに小脇に抱えてますけど。

「ああ、これ? ちょっとベネズエラの方に行った時にね。ラ・グラン・サバナとか言う所の近くで拾ったんだ」
「は、はぁ……」
「まあ邪魔だし、そろそろ自然に帰そうかな。そーれっ」

 ぽーん、と『蹴られる』アルマジロ。って、えぇっ!? そ、そんな事していいのか!?
 蹴られたアルマジロはそのまま綺麗な放物線を描いて森の中へと消えていった。結構飛距離あったぞ今の……。

「それじゃあ私は箒ちゃん探しに行くから。じゃーねーいっくん、また後でね」
「は、はい……」

 たたたーっと物凄いスピードで束さんが走り去っていく。
 一体何がしたかったんだろうか、あの人は……セシリアとか呆気に取られて声も出ないみたいだし。



 俺達がビーチバレーを楽しんでいると、遠くからなにか唸るような音が聞こえてきた。またこのパターンか……。

「ねぇ……アレ、何だろ?」
「ん? あれは……船?」

 皆一旦手を止めて沖の方を見ると、確かに小さな船の影が見える。でも何かこっちに一直線に向かってきてるぞ?

「あ、源ちゃんじゃない? 船で来るって言ってたし」
「そっか、源兄ぃか。結構時間かかったな」
「……あれ? 何か……大きくない?」

 そう言いながら審判をやっていた千春と簪がこっちに来る。確かに源兄ぃは遅れてくるとか言ってたな。
 因みに千春の水着は上が実用性重視のタンクトップ型スイムスーツ、下がスパッツ型の海パンみたいなやつだ。
 六花がまんまサングラスみたいな形状である事もあり、サーファーとかスポーティーな印象を受ける。

 一方、簪は眼鏡を外している。元々視力は良いんだし、塗らして壊す訳にはいかないからな。
 水着は薄桃色のワンピースだ。その上から水色のパーカーを羽織っている。

「幾らなんでも海パンは無いでしょ、海パンは」
「じ、ジロジロ見る男子……きらい……」
「あ、わ、悪い……その水着、似合ってて可愛いなって思って……」
「っ!?」

 ぼん、とどこかから変な音が聞こえた気がする。あと千春は何でそんな目で俺を見るんだ。

「別に……って、アレ? 確かに何かあの船……デカいわよ?」
「それにあれ、少し浮いてないか? 見間違いかな……?」
「……大きくて、揚陸艇で……っ!? 簪! 逃げるわよ!」
「ほぇっ!?」

 千春に手を取られて簪が海から離れ始める。おいおい、幾ら源兄ぃでもそんな……。

「ハーレムキングに制裁をぉぉぉぉっ!」
「ってホントに来たぁぁぁぁっ!?」

 顔を再び海に向けた瞬間、俺は自分が見た物が見間違いでなかったと悟る。いや、普通見間違いだと思うって。
 そこにあったのは超巨大なホバークラフト――俗にLCAC-1級エア・クッション型揚陸艇と呼ばれる物――であった。
 船体を浮かすための強風が暴れ狂い、さっきまでラウラをシュバルツバルトみたいにしていたバスタオルが宙を舞う。

「俺、参上っ! 待たせたなガキ共!」
「げ、源兄ぃ……それ、何?」
「揚陸艇。おめーらが明日使う装備が満載されております、って事で『シャカシャカ歩く君』全機起動!」

 パチン、と源兄ぃが指を鳴らすと船体正面のハッチが開き、学校で見慣れたコンテナが目に入る。
 が、問題はそれがひとりでに船から外に出てくる事だ。しかも沢山。

「な、き、キモッ!」
「まあ歩行パターンは虫を参考にしたからな。生理的嫌悪が来るのは仕方が無いか」

 七月のサマーデビルさんが思わず声を上げていたが、確かにこれは気持ち悪い。
 特に一列になって岩場へ歩いてく光景とか。それに虫って言うか、この速度はむしろゴキ……。

「よぉーし、本日の俺のお仕事終わりぃー! ヒャッハー!」

 海に来てテンションが上がってるのか、コンテナが全部移動し終えると源兄ぃは奇声をあげて早々に引き上げていく。
 所要時間実に五分ちょい。見事なまでの電撃作戦だった。



「ふぃー……極楽極楽」

 船を規定の場所に停めて陸路で生徒達が居る浜まで戻り、ハンモックを木の間に掛け終わったのがついさっき。
 現在俺は潮風に揺られて穏やかな昼を過ごしている。だから誰もこっちくんなよ? いいな、絶対に来るなよ!?

「ああ、ここに居たのか。手間を掛けさせるな、馬鹿者が」
「……何の御用ですか、織斑先生」
「束だ。一夏が遭遇したらしい、見かけたらすぐに連絡するように」

 黒のビキニを着こなした千冬がプライベートのように話しかけてくる。まあ大して変わんないけどさコイツは。
 しかし、まるで野犬か熊のような対処法だな。お前それでも幼馴染か?

「で、今回の格好は? 顔だけで探すの疲れるんだけど」
「ウサギの耳をつけた一人不思議の国のアリス、だそうだ。相変わらず訳が解らんな、アイツは」
「そうか……ならば俺はジャバウォックにでもならんといかんか。いや、バンダースナッチの方が良いか?」
「ならんで良い」

 さいですか。

「とは言え俺はこれから不足気味の睡眠時間を補充せねばならん。見つけられるとは限らんぞ?」
「私に見つかれば怒られるのは解っているだろうからな。来るとしたらお前の方だ」
「あいつが怒られるのを怖がるようなタマか? 向こうから来るってんなら俺としては大歓迎だが」
「それもそうか……まあ、どの道明日になれば現れるだろう」

 確かに、明日は各種装備の試験日だ。千冬も紅椿の件は感付いているだろうし、その予想も当たっている。

「そんじゃー俺は寝る。下手な事で起こすなよ?」
「ああ、寝ろ寝ろ。装備の件はお疲れ様と言っておこうか」
「んー」

 こちとらこの一週間で十四時間寝てるかどうか怪しいんだ、明日に備えて寝させろ。



 日が暮れ目が覚め旅館に戻り、服を脱いだら露天風呂。今は男子の時間帯だ。
 夕飯が始まるのと同時と言う何とも微妙な時間だが、調整の関係でそうなったのだから仕方無い。

「お、一夏。早いな」
「いやー、やっぱ温泉だって思うとワクワクしちゃってさ」

 俺は男の教員って事で一番に入っているが、一夏も俺が入っている間にやってきた。
 しかしどうして一夏はこうも嗜好が爺臭いのか……アレか、その辺がフラグ絡みの能力と関係があるのか。

「そうそう、そっちの方だと海が見れて良い感じだぞ」
「そうなのか? ありがとう、行ってみるよ」
「どういたしまして。俺はもう上がるが、のぼせないようにな」

 ―――そして勿論、俺がこんな面白いイベントの仕込みをしない訳が無い。
 脱衣所から一夏が予想通りの場所に居る事を確認し、服のポケットに入れておいたスイッチをポチっと押す。

「「「………。」」」
「……へ?」

 ぱたん、と倒れる風呂場の柵。その先に居る女性陣。当然ながら一夏は裸。その後の展開は火を見るよりも以下云々。
 うむ、六花から千春経由で覗きポイントの情報を流しておいて良かったな。アイツなら上手く使ってくれると信じていた。

「やぁ」
「……どうしてナチュラルに俺の部屋に居るんだよお前は」

 一仕事終えて部屋に戻った俺の目の前には巨乳兎、もとい束。廊下が騒がしいのはきっと気のせい。
 ちなみに立場とか性別的な事情から俺は一人部屋である。勿論一夏は千冬と相部屋だ。

「おやおやー? わざわざ訪ねに来たのにその反応はどーかな、ゲンゾー」
「いや滅茶苦茶嬉しいけどさ。何ならこのまんま布団に押し倒すけど、良いか?」
「駄目ー」

 そう言いながら束は何故か敷かれている二組の布団の片方に自分から寝転がる。やっぱ誘ってんのかテメー。
 っつーか昼寝してる時に俺に悪戯しただろお前。起きていきなり『巻きボイン』って何だよ。っつーかよく起きなかったな俺。

「んー、箒ちゃん専用機ができたから急いで来たんだけど、よく考えたら今日寝る場所無いんだよね。だから泊めて」
「全く……ホント頭良いくせにどっか抜けてるよな、お前。夕飯は食ったのか?」
「食べたよー」

 ふむ。まだだったら一緒に座敷で食おうかと思ったが、終わってるなら無理に誘う事も無いか。
 それと束さん、浴衣の合わせ目からコンニチワしてるその谷間に入って良いかな。駄目かな。

「解った。んじゃ俺は飯食ってくるから」
「お土産よろしくー」
「ふざけんな馬鹿」

 いっそ肉棒でもプレゼントしてやろうか、と思うがその前に飯だ。確かメインはカワハギだったか。



 妙に顔が赤い一夏グループを横目に夕飯を平らげて部屋に戻る。いやー、青春だねぇ。

「ただいま……ん?」
「くー……」

 寝てるよコイツ。まだ九時にもなってねーぞ?

「やれやれ……ホントに襲われるって考えは無いのか、お前は」
「すー……」

 もう俺も寝てしまおう、と荷物から歯ブラシその他を持って部屋の洗面所へ向かう。
 歯ブラシを口に突っ込んだ俺は、ボーっと鏡を見ながら今連想できる事柄を考え始めた。

 篠ノ之束は眠らない……もとい、束は眠っている間でも脳を酷使する人間だ。正直、あと五年で寿命だとか言われても納得できてしまう自分が居る。
 何をしているのか、と言えば起きている間に考えられた事の試行をしているんだとか。ぶっちゃけありえねーと思ったが、試してみたら俺もできた。
 ただ、束の場合はフルオートでそれが発生してしまうらしい。それは最早苦行か精神病の類だと思うぞ、俺。

 しかし、小学校上がってすぐ位の時に二人で泊り込みで色々と作ったんだが、その次の朝に『夢を見なかった』と驚いていた。
 その後何度か一緒に寝た事があったが、どうも俺が近くに居る状態で眠ると夢を見ないらしい。更に何故か頭がスッキリしているとも言っていた。
 ……恐らく、俺がスイッチングが可能である事と何らかの関係があるんだろう。もしくは俺から何か電波でも出てるんだろうか?

「そんな訳で、一緒に寝る事自体は何回かやってるが……この年でその解釈ってのはどーよ。と小一時間問い詰めたい」
「ん、んぅ……」

 考え事をしている間に三分経っていたのでうがいをして部屋に戻る。
 そこには巨大な饅頭二つ……もとい、束の巨大な乳が天を向いていた。
 よく見ると、体が横向きから仰向けになっている。恐らく寝返りで上を向いたんだろう。

「……お前は本当に俺に犯されたいのか? あと風邪引くから布団入れ」

 ただ、束が眠っているのは掛け布団の上。ここからちゃんと寝かせるってなると、テーブルクロス引きの名人に頼むしかない。

「やれやれ、っと」
「……っ」

 脇と膝の下に手を入れ、ひょいと俺の膝の上に乗せる。
 眠っているので頭を揺らさないように俺の肩に預けさせた。
 俺はその間に素早く掛け布団を跳ね除け、キッチリ枕に合わせて寝かせてやる。

「これでオッケー。あとはもう大丈夫だな」
「………。」

 何かどこかから不機嫌なオーラを感じるが、まあ気にしない方が良いだろう。

「やれやれ……明日は明日で色々引っ掻き回してくれんだろうな、オメーは」
「すぅ……」
「けど、俺はそんなお前が大好きだ。愛してる」
「……っ」

 そっと束の前髪に触れながら、いつも言っているのより幾分落ち着いたトーンで愛を囁く。
 ……まあ、何分か経つとあまりの似合わなさ&恥ずかしさに静かにのた打ち回るんですがね。

「何こっ恥ずかしい事言ってんだ俺は……あーもー寝よ寝よ、はいおやすみーっと」



 さあ束さんのターンだ! ここから束さんの出番がガンガン増えるぞやったねタエちゃん!

 ヴァンは「やりきれない悪役」を目指してみました。重役達もまた「悪人」ではなく「悪役」です。
 っつーかそんなやりとり衆目の前でやんなっつー。
 揚陸艇のシーンはエガちゃんのテーマでお楽しみ下さい。テンション任せとも言う。

 とりあえずちょこちょこ修正しときました。

 因みに前の話で意図的にネタを仕込んで指摘されなかったのはこんな感じです。
 鏡音の双子の乗り物、オールドキング、ゲンハ様、ビッグオー、無敵看板娘、ジェノザウラー、ブロント語、光子力研究所、ガイル、買う権利をやろう。
 仕込んだネタを解ってもらえると非常にうれしいです。あ、今回は少なめですよ。



 ……草木も眠る丑三つ時、源蔵の手によってウサミミを枕元に置かれた影――つまり篠ノ之束――は少しだけ瞼を開く。
 今までのは全て狸寝入りであり、源蔵の発言は全て束に聞こえていた。僅かに頬が朱に染まっているのは気のせいだろうか?

「………。」

 結局源蔵は束を犯す事など無く、布団に寝かせるためとは言えお姫様抱っこまでしてみせた。今は安らかな顔で眠っている。
 ある意味で期待外れではあるし、また別の意味では予想通りの行動である。そんな彼に向かって束は一言だけ口にした。

「……馬鹿」





[27457] 第十話「これはISですか?」
Name: 巣作りBETA◆bbda2e80 ID:2feb198d
Date: 2011/05/21 11:03



 第十話「これはISですか?」


 臨海学校の(公的な)最大の目的、装備試験の時間がやって参りました。ここは臨海学校名物大自然アリーナである。あと多分束はその辺で出待ちしてる。
 っつーかついさっきまで一緒に飯食ってたしね。ああもう束可愛い束マジ可愛いあとヘタレっつったやつ誰だ表出ろってここ外だよ。

「よーし、そんじゃそろそろ説明すんぞー。黙れメスガキ共ー」

 一応ここに来ている人間の中では一番偉いので俺が進行をする事になる。それだけなら誰かに任せたい所だが、こちとら技術部の長である。俺以上の適任は存在しない。

「これから装備試験を始める。訓練機は学園から打鉄とラファール・リヴァイブを五体ずつ持ってきたから、一班につき十一から十二人だな。
 良いか? お前らひよっこの為だけに2年3年の精鋭達が機体を使った訓練ができなくなってるんだ、ぶっ壊しなんざしたら承知しねーぞ」
「「「はいっ!」」」

 うむ、良い返事だ。整備科の人間としては今回の作業を通じてそっちに進む人間が出てきてくれるとありがたいんだが……。
 まあ、俺謹製のネタ装備を嬉々として眺めていた連中も居たので来年も問題は無いだろう。整備科の三割は大体そんな連中だし。

「さて、そんじゃ次は専用機持ち連中か。あ、訓練機組はもう始めてて良いぞー」
「「「はーい!」」」
「はい良いお返事で、って事でおはよう諸君。下らん種馬を取り合う雌(笑)君は遅刻したようだが、良く眠れたか?」
「……全面的に言い返せない自分が憎い」

 かっこわらい、まで発音しておくのがポイントである。はっはっは、相変わらず弄りやすい眼帯娘だ。
 専用機組は俺、千冬、一夏、千春、箒、鈴、セシリア、シャルロット、ラウラ、簪だ。やまやは訓練機組の面倒を見ている。

「で、早速だが何故ここに篠ノ之君が居るのかを説明しよう。おーい、良いぞー」
「呼ばれて飛び出ておーぷんささみ! とぉっ!」

 工工工エエエェェェェ(´Д`)ェェェェエエエ工工工、とどこぞのメタトロンのように回転して束が崖から飛び降りてくる。その着地点には世界最強の羅刹が一人。
 所で束よ、ササミを開く……つまり胸を開く、と言う事か? これは言い換えれば乳を出すと言う事であり要するにメガスマッシャーですね期待します。

「ちーちゃー……」
「ふんっ」

 インパクトの瞬間にガシッと頭を掴んでアイアンクロー。ホント人間業じゃないよね、アレ。

「やぁやぁ会いたかったよちーちゃん。さあハグハグしよう! 愛を確かめ合おう!」
「五月蝿いぞ束。第一、お前はもう少し周りへの影響と言う物をだな……」
「はいはい民のため民のため。相変わらず容赦の無いアイアンクローだねって痛い痛い痛いよちーちゃん!?」

 普段の一割り増しぐらいでギリギリとアレな音が聞こえる。やめてお前が力入れると脳から色々出ちゃうからやめて。
 と、相手をするのが面倒になったのかアイアンクローからぽいっと束が投げ飛ばされる。ホント腕力半端ねぇなお前。

「源蔵、やれ」
「あい解った……勝手気ままなお前の所業、俺が許さん! 我が掌に、嫁を貫く雷を! 行くぞ!」

 左腕のスタンガン機能を解放し、空中放電を起こす。某パンツを脱がないあの人の技だ。
 流れているのは千キロボルトほどの高圧電流だが、この程度なら問題なく防げるだろう。

「紫雷掌!」
「ぐほぁっ!?」

 っつーかカウンター喰らいました。だからお前どうしてそんな身体能力高いの? 親譲り?
 とか考えてる間に今度は左の掌打が入る。レバーやめて破裂しちゃう中身出ちゃう。

「ごふっ……それ、どっちかっつーと焔螺子じゃね……? っつーかマジ痛いんですが」
「六塵散魂無縫剣の方が良かった?」
「……スンマセン」

 死ぬから、それ。とか何とかやってる間に訓練機組含めて全員がこっちを見ていた。手を休めるな馬鹿者共。
 束は束でさっきから頭を抱えてしゃがみこんでいた箒の方へと駆けて行く。

「やぁ! にぱー」
「……どうも」
「いっひひー、久しぶりだねー。こうして会うのは何年ぶりかなー」

 うむうむ、久方ぶりの姉妹の再会、実に良い絵だ。特に胸部装甲とか。やっぱ姉妹だよねこいつら。

「………。」
「簪、まだ大丈夫よ。本来乳房は二十歳を越えた辺りで成長してくるものなのよ」
「……うん。ありがとう、千春」

 あ、そーいやこいつらは……うん、まあ。
 あと鈴、お前はもう無理だ。諦めろ。

「大きくなったね、箒ちゃん! 凄く嫌いじゃないよ、特におっぱいがぐべっ!」
「天剣絶刀ぉっ!」
「ノームを侍にするのは無理があると思うが。大人しく後衛にしようぜ」

 あと2以降はリストr……げふんげふん。

「いつまで漫才をやっている。束、自己紹介ぐらいしろ」
「えー、めんどくさいなー。高町教導官一等空尉だよー、はろー。終わりー」
「……そうかそんなに血を見たいか。源蔵の」

 千冬も久々の対応のせいか沸点が下がってきてるね。やれやれ、怒りっぽいと皺が増えるぞ?
 そしてどうして血を流すのが俺なのかな。これは暗にお前が何とかしろって言ってるのかな?

「はい傾注。コイツが篠ノ之束、もとい俺の嫁だ。いいかラウラ、正しくはこう使うんだ。覚えとけ」
「実演感謝します、ドクトル」
「……それで、頼んだ物は」

 あ、無視しやがった箒の奴。ええい一夏、奴の乳を揉んでやるのだ! お前のラッキースケベ力なら行ける!

「んっふっふー、勿論できてるよ。さぁ、大空をご覧あれ!」
「親方! 空から女の子……いや、ラミエルが!」

 どごーん、と猛スピードで落下してきたにも関わらず、一切先端が埋まっていない八面体が姿を現す。
 その外枠が量子化によって姿を消すと、そこには初期待機状態で固定された真紅の機体が収まっていた。
 これぞ最高に極悪燃費な最強機体、国際IS委員会の実務担当の胃に幾つ穴を開けるか楽しみなお嬢さんである。

 ……実は六花も同レベルにアレな機体ではあるのだが。むしろコア二つ積んでるのバレたらもっと酷いかもしれん。

「じゃじゃーん! これぞ箒ちゃん専用機こと【紅椿】! 全スペックが現行ISを上回る束さんお手製だよ!」
「ほほう。ならばカタログスペックを見せるか俺に乳を揉まれるか二つに一つだ、選ぶが良い」
「ん、しょっと。はいこれ」

 そしてナチュラルに胸の谷間から記憶媒体を取り出す束。ええいそこを代われメモリースティック!

「どっこいしょっと。どれどれ……おお、やっぱ第四世代型か。そろそろ来る頃だとは思ってたが」
「第四、世代……!? 各国で第三世代機の実動が始まった段階なのに……!?」
「ゲンゾー、膝貸してー。それでそこはホラ、天才束さんだから」

 俺が適当な場所に腰を下ろすと、またナチュラルに膝の上に束が乗ってくる。この体勢も懐かしいな。
 あと束さん、胸が腕にちょこちょこ当たってくるんですが。当ててるんですか? 当ててるんですか。

「さぁ箒ちゃん、今から最適化と専用機化を始めようか! スペック見る代わりにゲンゾーも手伝ってね」
「任された。おーい箒ー、さっさと乗れー」
「……はいっ!」

 おーおー力んでる力んでる。しかしこの二人は何だかんだで似た者姉妹だよな。
 箒は意外と天才肌だし、二人とも後先考えないし。あとコミュニケーション能力も箒は若干足りてないし。

「箒ちゃんのデータはある程度入れてあるから、あとは最新データに更新するだけだね」
「あー、やっぱ春先の身体測定のデータ盗んでたのお前か。言えば送ってやったのによ」
「駄目だよゲンゾー。女の子の体重その他のデータはトップシークレットなんだから」

 鼻歌交じりに必要なデータを紅椿にぶちこんでいく。ここで俺が堂々と見てるのは良いのか姉よ。
 と、訓練機組の方から何やら剣呑な空気が漂ってくる。だからお前らは見てないで動けっつーの。

「何よ、身内だからって最新鋭機を……!」
「おやおや、不平等だって言いたいのかな? 世界が平等であった事なんて一度も無かったって言うのに」
「そーそー、それにその論理だと千春も同罪だぁね。それに前から言ってるだろ、えこ贔屓されたかったら気に入られてみせろってな」

 それに最新鋭機も良い事ばかりじゃないぞ。白式とか後付装備一切できないんだし。多分紅椿も。

「はい、入力終了ー。超早いね流石私、っと。箒ちゃん、変化が終わるまでちょっとだけ待っててね」
「解りました」
「……俺の時と大分反応が違うな。六花」
『常日頃の言動の影響かと思われます』

 どうして癒しを求めてトドメを刺されなければならんのか。最近六花が冷たい。雪だけに。

「下らない事考えてないで白式と……六花、だっけ? データ見せて。あといっくんとはるちゃんはIS出してー」
「あ、はい。来い、白式!」
「解りました。虚数展開カタパルト作動! 機神招喚!」
『汝、気高き刃。六花・ハミングバード!』

 一夏に比べてネタ濃度300%くらいの千春と六花が新たな姿を現す。今回の為に俺が用意した新装備、ファストパックだ。
 六つのジョイントに一基ずつ1メートルを超えるサイズのブースターが搭載されたその姿は見るからに高速型である。
 でも千春さんや、流石に二回連続でデモベネタはちょっとアレだと思うぞ。

「ハミングバード……? ねぇ、ゲンゾー」
「ああ、気付いたか? その通り。このパックは超高速機動型で、大気圏離脱用ブースター『ハミングバード』の進化系である【ハミングバードMk-Ⅱ】を六基搭載している」
「そっか……ふふっ、なんだか懐かしいねー」

 元々一基だけでも第一宇宙速度を超えられるブースターを二基搭載していた第零世代IS『ハミングバード』。そいつを今の技術で再設計したのがコイツだ。
 一基当たりの出力その他は下げてあるが、全リミッターを解除した時の総合的な性能は倍以上だ。今の状態でも燃費を無視すれば最高時速は四千キロオーバーである。

 因みに第零世代ISは他に【白騎士】を含め数機が存在する。【暮桜】も第零世代機を改造した物だ。

「ふむふむ……二機とも面白いフラグメントマップになってるね。白式はともかくとして、六花はAIの影響かな?」
『私の事も六花、とお呼び下さい。ビッグ・マム』
「ゲンゾー、この機体って第五世代の概念実証機なんだっけ?」
「ああ。とは言え無人機も遠隔操作もまだだから分類自体は第三世代機だがな」

 ヒロインズの方から「五!?」とか聞こえてくる。そーいや言ってなかったっけ?

「まあ白式も第四世代の概念実証機と言えなくも無いし、ある意味お揃いだな」
「白式が!?」
「うん。雪片弐型は紅椿に使われている第四世代技術【展開装甲】の試作品なんだよー。
 零落白夜を使う時に変形するでしょ? それが展開装甲。紅椿は全身をそれにしてみました、ぶいぶい!」

 さっき貰ったデータを再度表示する。展開状況はマニュアルで変更する必要があるから簪の方が向いてるだろうな。

「流石に触れただけで零落白夜相当、なんて事にはならんが十二分に高い威力が期待できるな。だが束さんや、燃費はどーなんよ?」
「えっとー……か、解決策は用意してあるよ?」
「あれもこれもと手を出すからそうなるんだ。即時対応万能機と言えば聞こえは良いが、今の箒の腕で使いこなせるのか?」
「「うっ……」」

 やっぱ姉妹だよなこいつら、リアクションそっくり。お、装甲形状の変化終わった。

「そんじゃ箒、試運転も兼ねて飛んでみな。最高にハイになれるぜ」
「ええ。それでは試してみます」
「ゲンゾー、それ私の台詞ー!」

 騒ぐ束を尻目に、紅椿は箒の思い描く通りにPICを起動させて空へとカッ飛んで行く。
 カタログスペックよりかなり遅いが、初回はまあこんなもんだろう。それでも充分早いが。

「何これ、早い!」
「これが第四世代の加速、ということ……?」
『技術的に寄り道をしている第三世代機は信頼性、スペックにおいて不安定な点が多々あります。単純比較は不適切かと』

 いつの間にか待機状態に戻っていた六花が冷静にツッコミを入れる。
 因みに第四世代は第二世代と、第五世代は第三世代と同系列の発展の仕方と言える。

「どうどう? 箒ちゃんが思った以上に動くでしょ?」
『ええ、まあ』
「じゃ、刀使ってみてよ。右のが雨月で、左のが空裂ね。武器特性のデータ送るよーん!」

 束が自作した特殊な形のキーボードを弄った数秒後、雲の一つが吹き飛ばされる。

「良いね良いねぇ! 次はこれ撃ち落としてみてね。ナイトメア・ハードレイン……名付けて、シェルブールの雨!」

 急に声のトーンを変えた束は展開式ミサイルポッドを量子展開する。レーザー砲もあるのか?
 そこから打ち出されるミサイルミサイルミサイルまたミサイル。16発どころじゃないぞコレ。
 が、それも紅椿の性能からすれば大した事は無かったらしい。ホント燃費以外は最高級だな。

「うんうん、良いね良いねぇ。あ、それじゃゲンゾー、また後でね」
「はいはい。んじゃ俺もそろそろ仕事……って早いなオイ」

 千冬にバレながらもこっそり束がログアウトしていく。それと同時に現れる『緊急事態発生』のウィンドウ。
 あーめんどくさい。



「これよりブリーフィングを始める。佐倉先生、説明を」
「あいよ。ハワイ沖で試験起動してた第三世代型【銀の福音】、コイツが暴走した。そんでここの近くをカッ飛ぶから横から殴って止めろって話」
「……おおまかにはそんな所だ。ただし銀の福音――以後福音と呼称する――は時速2450キロを超える速度で移動中だ。
 これを止めるには学園の訓練機ではいささか力不足であり、お前達専用機持ちが直接相手をする事になる……何か質問は?」

 和室に機材を持ち込んで無理矢理作った作戦室に俺達教員と専用機持ちの八人が集う。説明楽しようったってそうはいかんぞ。
 日本人組は大なり小なり緊張しているが、他の代表候補生達は何かしらの覚悟を決めた顔をしていた。

「布陣はどのようになるのでしょうか?」
「五十分後にここより二キロ離れた海上を通過する事が予想されている。よって教員が海域の封鎖を行い、その間にお前達が戦闘をする事になるだろう」
「対象の性能把握は可能ですか?」
「軍事機密である為、この情報が漏洩した場合は最低二年の……おい」

 その『説明している途中でいきなり表示するんじゃない死にたいのかお前は』って目はやめて。まだ死にたくないの俺。

「俺が自分で作った物の性能を見て何が悪い。小さいウィンドウだと見辛いからメインモニターに回した、それだけだ」
「全く……ついでだ、説明しろ」
「アメリカとイスラエルが共同開発した特殊射撃型。高機動性を活かした強襲からの広域殲滅が目的だな」

 これは俺が『一人で大画面で性能の確認をしているだけ』であり、聞こえるのは全て独り言だ。だから機密漏洩の罪には問われない……筈である。
 何とも苦しい言い訳だが、これも作戦の成功率を上げる為だ。下っ端は難しい事考えないで突っ込んだ方が強いんだよ。

「福音は超音速で移動しているので現実的なアプローチは一回。それで決めなければいけないな」
「「「(じー)」」」
「……って、俺!?」
「零落白夜でバッサリやれば済む話だからな。そりゃそーだろ」

 無論、話はそこまで簡単ではない。一夏の技量じゃ暴走状態の福音に勝てるとは到底思えないし、エネルギー残量の関係もある。

「随伴機が欲しいな……この速度に着いて来れるってなると二人だけか。千春、オルコット、お前らもだ」
「私は強襲用高機動パッケージ【ストライク・ガンナー】を使用する、と言う事でよろしいでしょうか?」
「ああ。それに超音速訓練経験がある奴は必須だし、千春は万が一に備えてのバックアップをしてもらう」
「ちょぉっと待ったぁっ! とぉっ!」

 一夏が二人に牽引されて行くのか、と他の連中が思いついたであろう時に天井の板が外れてウサミミが現れる。
 ただ床置きモニターの上からではなく、何故か俺の真上だ。そのままぽすんと胡坐をかいていた上に束が落ちてくる。

「それなら断っ然っ! 紅椿の出番なんだよー! パッケージなんか使わなくても展開装甲をちょちょっと弄れば高速戦闘に対応できるんだから!」
「……源蔵、つまみ出せ」
「俺の部屋にお持ち帰りしても良いんなら。束、データ見せて」

 はいはー、とメインモニターに紅椿の展開装甲を変形させたデータが表示される。
 比較用にストライク・ガンナーのデータが表示されてるのは嫌がらせなんだろうか。

「データ蓄積がちょっと足りないからこっちで展開状況を変えてあげる必要があるけど、七分くらいで準備完了だよー」
「……佐倉先生、パッケージのインストールにかかる時間は?」
「十分もかからん。それと束、『全性能が現行ISを上回る』って看板は下げた方が良いぜ?」

 ほぇ? ともう襲いたいくらい可愛らしく小首を傾げる束の表情が固まる。その視線の先にはメインモニターに表示された三機目の情報だった。

「ハミングバードに高機動射撃装備【ガンナーズ・ブルーム】を持たせた状態だ。最高速、加速力、旋回能力はこっちの勝ちだな」
「えぇ~!? そ、そんなぁ~!」
「燃費は当然だし『各種能力の特化』に特化したISである六花なら、万能型でしかない紅椿には負けやしないぜ」

 ふはははは、と笑う俺と悔しいのかぽかぽかと殴ってくる束。傍から見れば微笑ましいがやっている事は最先端の技術競争である。
 あと少しずつ打撃が正確になってきてるんだがって痛ぇ! 今メコッて、メコッて!

「……ならば紅椿も作戦に加える。織斑弟・篠ノ之の攻撃分隊と織斑姉・オルコットの随伴分隊で一個小隊を形成する。異議のある者は?」
「「「………。」」」
「ならば各員、迅速に行動を開始しろ。作戦開始は三十分後だ!」

 千冬がビシッと決めるが、その表情はひどく疲れているように見えた。おかしいな、昨日一夏のマッサージを受けた筈だが……。

「んー……まあいっか。じゃあ箒ちゃん、外で展開装甲の形状を変えよっか」
「オルコット、お前もインストール始めるから表出ろ。あと誰か三番のパッケージコンテナと五番の武装コンテナ持って来い」

 まあ俺達がやる事はどんな時でも機械弄りだ。俺が居る事で戦力も増えたし、もしかしたら勝てるかもしれないからな。
 人目につかないように移動し、ISとコンテナを展開させる。そして束の周りにはメカニカルなパーツが現れた。

「これはISですか?」
「いいえ、作業用アームです……もといこれが束さんの移動用ラボ『吾輩は猫である』だよ」
「精密作業用のアームが四本、ねぇ……まあ俺には要らん物だな」

 駄弁りながらガチャガチャとISを弄る俺達。アームは作業速度を上げるための装備のようだが、生憎と俺の左腕一本の方が早い。
 と、少し離れた所でガンナーズ・ブルームの量子化を行っていた千春達がやって来る。流石に早いな。

『装備のインストール終わったよ、ダディ』
「今度はセラエノか。で、お前らから見てどうだ? ガンナーズ・ブルームは」
「射撃ユニットとブースターをくっつけただけの簡単仕様。でもその分信頼性は高いかな」

 俺作の数々のネタ装備をテストしていたせいか千春と簪は結構武装関連の造詣が深い。刀一本の一夏とは当然ながら比べ物にならないほどに。
 ただ、その影響なのか六花は俺が作った装備以外は一切受け入れないし、打鉄弐式もロマン度が低い装備は相性が悪い。お陰で倉持ん所に怒られました。

「よっし、終わり! ゲンゾー、そっち終わった?」
「ああ、後は馴染むのを待つだけだ。もうやれる事はねーな」

 そう、前線に出れない俺にできるのはここまでだ。競技用機能制限の解放も学校の敷地外だから使えないしな。
 ……できる事なら、無事に終わってくれると良いんだが。



 無理でした。クソァ!
 俺は現在、一夏が寝かせられている部屋の窓際の椅子に腰かけ、ある作業をしている。すると襖が開き、千春が顔を出した。

「……源ちゃん、一夏の様子は?」
「バイタルは安定してるから心配すんな……密漁船を発見できなかった俺達の落ち度だ、そう気に病むな」

 原作通りに密漁船が発見され、千春とセシリアが退去勧告をしている最中に福音が二機に反応。
 注意を逸らす為に一夏達が無茶してエネルギー切れからの流れは殆ど一緒だ。強いて言えば帰還が若干早かった程度か。

 作戦行動中である事を理由に排除していれば各国からの学園に対するバッシングは避けられないし、何より緊急作戦だから超法規行為規則が適用されん。
 箒、千春、セシリアの三人はそれぞれ思い詰めているが、ここは原作よりも軽減されている事を祈るばかりだ。

「……作戦はどうなるの?」
「一応継続中。日付が変わるまではこっちの受け持ちだからな」
「……そっか」

 ただ俺を除く学園側は福音の現在位置を把握しきれていないだろう。俺だって各国の軍事衛星ハッキングしてようやく見つけたんだし。
 外はすっかり夕暮れに染まっており、そろそろ事態が動くであろう事を予感させる。と、スパンと襖が開いて鈴が姿を見せた。

「千春、箒連れて来て」
「……オッケー。先行ってて」

 そう言えばすっかり忘れてたが、ずっとこの部屋に箒居たんだったな。流石空気さん。
 ……じゃあ、俺もそろそろ行きますか。



「福音はここから30キロ離れた地点、上空200メートルで停止している。一番良い装備を頼むぞ」
「大丈夫、問題無いよ」

 ラウラがドイツ軍から福音の位置を入手し、私達に教えてくれる。それにしてもすっかり変わったわね。
 私としてはラウラに思う所もまだあるんだけど……まあ、一夏にも仲良くしろって言われたしね。

「私が砲戦パッケージ【パンツァー・カノニーア】を使い初撃を担当する」
「私はストライク・ガンナーで撹乱と機動防御を担当しますわ」
「僕はセシリアに牽引してもらって奇襲。その後は防御パッケージ【ガーデン・カーテン】で防御だね」
「機能増幅パッケージ【崩山】を装備したアタシと機能を調節した紅椿の箒は水中から、と」
「展開装甲は極力使わずにエネルギー切れを防ぐ。シャルロット、防御は任せたぞ」
「私は……一撃の重さを重視して、背面装備を近接装備で固める……!」
「後は私がスパイダーガールと射撃ユニット替えたガンナーズ・ブルームで全体のサポートと火力支援かな」
『現状ではこれが最適でしょう。機能制限があるのが気掛かりですが、勝率は八割を超えるかと』

 六花が全員の意見をまとめる。七対一という圧倒的に有利な状況でありながら勝率が低めなのは、福音の能力もあるけど単純に六花が辛口なだけだ。

「待ちな」

 さあ行くぞ、と全員がISを展開しようとした所で後ろから声がかかる。
 あっちゃぁ……見逃してくれると思ったんだけどなぁ……。

「腐っても教師なんでな。生徒が勝手に危険な事しようってのを見逃す訳にはいかん」
「……言って聞かせるだけで、止まると?」
「思わん。むしろ逆だよ、なあ? お前らもそう思うだろ?」

 源ちゃんの声に合わせて森の中や岩の陰からISが姿を現す。
 それらは全て打鉄とラファールであり、それを纏っているのは―――、

「あ、相川さん!? 四十院さんに布仏さんまで!」
「田嶋、夜竹……岸原とリアーデも居るのか」
「ナギに静寐も? バレたらタダじゃ済まないわよ?」
「私も居るよぉー!? 何で真っ先に出てきたのにスルーされるの!?」

 一年一組の面々である。因みに名前を呼ばれていないのは谷本さんだ。

「生憎と俺はお前らみたいに前線には立てないんでな。戦力の増強ぐらいしかしてやれん」
『それで共犯者を増やそう、と言う事ですか。軍機に関わる情報もありましたが?』
「確認は取ったから良いんだよ。それに使えそうな武装も幾つか用意してあるしな」

 五機ずつの打鉄とラファールは全てがバラバラの武装を持っている。恐らくそれらは今日試験される予定だった装備だ。
 ……その殆どがネタ装備であるのは言うまでも無い。中には二人羽織のようになっている機体すらある。

「見た目は不揃いだが性能は俺のお墨付きだ。砲撃支援なら充分行けるだろ」
「全く……姉さんに殺されても知らないよ?」
「お前らが生きて帰れば大丈夫さ……取れる責任は俺が取る。勝って来い」

 やれやれ、と私は肩を竦めた。源ちゃんの事だ、何かしら理由をつけて問題ないようにしているんだろう。
 向こうの方では一組の面々が一夏の敵討ちだと盛り上がっている。死んでないっての。

「ここまでお膳立てされて、負けたら悔しすぎるよね……行くわよ六花!」
『イレギュラーが発生しない限り負ける事はまず無いでしょう。IS展開、起動します』
「……さあ、諸君。反撃の時間だ!」



『初弾命中っ! 撃て撃て撃て撃てぇっ!』
『ピサリス0186……待ちに待った時が来たのよ! 多くのモブが、無駄キャラでなかったことの証のためにっ!』
『早めに片付けてあげるわ! ティロ・フィナーレ!』
『対IS狙撃砲コルヴァズ……イア、クトゥグアッ!』

 始まった。何か色々とアレな名前も聞こえてくるけど、それでも源ちゃんのお手製だ。威力だけは折り紙つきだろう。

『貴女に、力を……!』
『粒子加速プレート展開、エネルギー充填完了っ! マイクロウェーブキャノン、発射ぁっ!』
『機動性が高い! 避けられてるぞっ! 敵機なおも接近中、距離残り七千っ!』

 光が闇夜へと走っては消えていく。中にはグレネード等もあり、離れている筈の私達ですら熱気を感じるほどだった。

『くっ……本音ちゃん、計って!』
『えっとね~、距離四千五百~』
『今度は外さない……!』

 今頃はシャルロットが悔しがってるかな、と意味の無い思考が浮かんで消える。私も割と緊張しているらしい。

『距離残り三千っ! 各員接近戦準備!』
『迎撃します! せぇのっ……ギガスマッシャー!』
『皆! 今の内に抜剣しといて! キール、モードロワイヤルッ!』
『これでも喰らいなさい! アイアンカッターッ!』
『私は癒子……癒子”ザ・ウィザード”よ。故あってこの狩りに参加したわ。福音、貴女に恨みはないけど―――あっ』

 ありとあらゆるネタ兵装が使われるが、それでも福音の足は止まらない。軍用ISは伊達じゃない、って事かしら。
 あと谷本さんがやられた。

『グロウスバイルと電磁抜刀で前に出るわ! サポートよろしく!』
『オッケー! ビゴー、ジオインパクト展開っ! 行っけぇぇぇっ!』
『行くわよ、合わせて! 言霊転送!』
『光り射す世界に、汝ら騒乱住まう場所無し! 渇かず飢えず止まりなさい! レムリア・インパクト!』
『昇華!』

 流石にここまでやると通信を聞いているだけで『やったか!?』と失敗フラグを立てそうになる。
 そろそろ作戦も第二段階に移る頃だし、そう気を抜いてもいられないわね。

『ビッグシャチ祭りで吹っ飛ばすよ! リバウンドお願い!』
『無茶しないで! ヴィーマックス、発動!』
『よし、規定ポイントに到達! 総員散開っ!』

 ―――来た。ここからは私達の時間だ。

『参りますわよ、福音っ! 先刻の借り、返させて頂きますっ!』
『取られた台詞の分は活躍させてもらうよっ!』
『よし、訓練機組は前衛と後衛でエレメントを組んで退避! 支援砲撃に徹しろ!』

 セシリアとその背に乗っていたシャルロットが最初に仕掛ける。その間にラウラは距離を取って皆に指示を出していた。
 幾らオールレンジで戦える広域殲滅型と言っても所詮は一機。二機以上で組めば戦い方は幾らでもある。

『ガーデン・カーテンを破るには間合いが甘いよ!』
『踏み込みが足りませんわっ! そこっ!』
『反撃が減った……逃げる気だ! 出番だぞ!』

 予想通り福音は退避行動を取ろうとする。でも甘い。こっちの戦力は出てる分だけでISが13機。そう簡単に逃げれる相手じゃない。

『はぁぁぁぁっ!』
『さあ、思いっ切りとかちつくしてあげるわっ!』

 逃走を始めた福音の進行方向に紅椿とその背に掴まった甲龍が姿を現す。
 さて、それじゃあ私達の出番ね。

『予定段階へと事態が移行しました。行動を開始します』
「行くわよ、簪」
「うん……!」

 隠れていた岩礁から外へ飛び出す。福音との距離はおよそ千三百、機動型からすればあるようで無いような微妙な距離だ。
 けど今は四方八方から砲弾が飛び、敵味方が縦横無尽に飛び回る戦場という名の地獄絵図だ。もう初めても良いだろう。

「六花、インコムとダンディライオン全弾発射!」
『了解。インコム一番二番射出、ダンディライオン一番から十二番発射』
「コロッサル、抜刀……!」

 爆音が渦巻く戦場へインコムが駆けていき、ダンディライオンが空中でネットの花を開いていく。
 私と簪はその間に距離を詰め、逃げ場をなくした福音へと攻撃を開始する。簪の武装は以前姉さんが生身で使った超巨大物理刀だ。

『Laaaaaaaaaahhhhhhhhhhhhhhh!』
『福音よりロックオン反応。迎撃、来ます』
「バラ撒くだけの弾幕なんかっ! 簪っ!」
「山嵐、発射……!」

 福音に搭載されている唯一の兵装がこっちにも撒かれ始める。ダンディライオンの殆どがこれで撃ち落とされた。
 けど弐式に搭載されている高性能爆薬より一発ごとの威力は低く、少し密集している所へ一発撃ち込めば活路は開ける。

『弾道支配領域予測を開始します。予測ルートに従って行動して下さい』
「六花、ワイヤーガンの制御権こっちに回して! 簪、私のお尻の匂いが嗅げる位置に着いて来なさいっ!」
「……下品だよ、千春」

 顔の半分を隠すバイザーに映るのは菱形の歪んだ柱。それがこっちを狙ってガンガン伸びてくる。
 私はそれを時に掠め、時に大きく避けながら進み、度重なる攻撃でロクに動けていない福音の真下へと飛び出した。
 皆の度重なる攻撃に福音は対応しきれず、私達がこの距離まで迫っている事に気が付かない。これで終わりよ!

「ブースター点火、最大出力……!」
「こっちも行くわよ! ガンナーズ・ブルーム『要塞殺し』!」
『―――!?』

 ワイヤーガンで左右の逃げ道を塞ぎ、私達は装備に搭載されているブースターを一斉に点火する。狙うは左右の巨大な翼、ウイングスラスター。

「ぶち抜けぇぇぇぇぇっ!」
『黒の棘尾、インパクト!』

 接触する瞬間に引き金を引き、左の羽を根元から打ち壊す。六花の正確なサポートがあるからできる技だ。

「私に断てぬ物、無し……!」

 私に一拍遅れて巨大な刀が振り上げられ、簪の決め台詞がウイングスラスターを切り落とした事を教えてくれる。
 残心をとっている間に福音が海中へ落ちる音が聞こえ、撃墜した事をハイパーセンサーを通じて確認した。

「やった……のか……?」
「油断は禁物よ。皆の支援砲撃が無かったらどれだけ苦戦してたか……」
『海中より高エネルギー反応―――異常事態発生! 異常事態発生! 退避勧告! 退避勧告!』
「六花!? どうしたの!?」

 数ヶ月前に初めて会った時から今の今まで、六花のこんなに慌てた声は聞いた事が無い。
 私は六花に語りかけて異常を探るが、それよりも早く巨大な水柱を上げる水面が異常の原因を教えてくれた。

 空中放電を繰り返すフィールドに包まれ、胎児のように空中に静止する福音。その膨大な熱量が海水を蒸発させていく。
 福音は私達の攻撃で罅割れた装甲をそのままに、今までとは比べ物にならない程のエネルギーを迸らせた。
 そのままゆっくりと空中に直立すると、私達が切り落としたウイングスラスターの代わりとも言うべき『エネルギーの翼』が現れる。

『銀の福音のコア・ネットワークからの断絶を確認! 強制的に第二形態移行を実行した模様!
 危険危険危険! 退避を提案! 撤退を提案! 逃走を提案! 離脱を提案! 避難を提案!』
「提案を却下! どうしたのよ六花! 幾ら何でもこの戦力差で―――」
「うわぁっ!?」
「ラウラッ!?」

 ドン、と巨大な熱量が空を切り裂いていく。その音に反応してそっちを向くと、そこには海上へ落下していくシュヴァルツィア・レーゲンの姿。
 ……まさか、一撃で……!?

『警告! 警告! 敵性戦力の増大を確認! 戦闘空域からの離脱を提案する!』
「こんのぉっ!」
「鈴、落ち着いてっ!」
『■■■■――――ッ!』

 鈴とシャルロットが福音へ向かうが、今までとは比べ物にならない密度のエネルギー弾が弾幕を形成する。
 データには砲門は三十六って書いてあったけど、今の攻撃はどう見ても百を超えている。
 高速切替と衝撃砲でそれに対応していた二人はやがて弾幕へ飲み込まれ、先のレーゲンと同じように夜の水面へと消えていく。

『支援部隊へ通達! 緊急事態発生、早急な撤退を指示! 繰り返す、早急な撤退を指示する!』
『は、はるる~ん! どうしたのいきなり~!? それに福音は~!?』
「ごめん皆! 六花の指示に従って! 訓練機じゃ勝てそうに無いわ!」

 六花の通信を皮切りに訓練機部隊へ指示を出す間に、直撃を受けて箒とセシリアが落とされる。
 私はその光景に慌てて六花からインコムの制御権を奪い、PICによって空中に静止している中継ユニットを全て回収した。

 回収が終わり、私が福音の現在位置を再確認しようと顔を上げると、そこには私を飲み込みかねない大きさの青白い光が―――、

「くぅ……っ!」
『直撃判定! 敵機攻撃力尚も増大! 退避を勧告する!』
「簪!? どうして!」
「友達は守らないと……それに、弐式が言ってる……今勝てるのは、千春達だけだって……!」

 エネルギー砲、とでも言うべき福音の攻撃を零式斬艦刀で簪が防ぐ。その刀身が焼き切れるのと奔流が収まるのはほぼ同時だった。
 簪が斬艦刀を投げ捨て、1メートル程度の出刃包丁『鬼丸』を右腰から取り出す。純粋な物理兵装で耐久力は斬艦刀より上らしいけど……。

「弐式が……?」
『否定。ネットワークより断絶され自己判断で第二形態移行まで行った福音に対抗し得る戦力も覚悟も存在しません!』
「……六花。初めて会った時より、ずっと……人間らしくなったよね」
「簪……?」

 様子見をするように留まる福音を警戒しつつ、簪は空いた右手に夢現を展開する。近接戦闘をするつもりなんだろうか。
 ……他の機体の穴を埋めるように装備を選択したせいで、今の簪はこの上ない火力不足に陥っている。山嵐も全弾発射はあと一回が限度だろう。

 それでも、簪は口の端に笑みを浮かべている。

「私……『二人』に出会えて、良かった……」
「だ、駄目よ簪……そんな台詞、死亡フラグど真ん中じゃない……!」
「大丈夫……弐式が守ってくれる」
『危険! 危険! 敵性ISより高エネルギー反応! 攻撃、来ます!』

 そう言うと簪は『私達』に背を向ける。口元が僅かに震えているのは恐怖からか、ボイスインターフェイスを使っているからか。

「それじゃあ、行ってきます」

 不意に、簪は、笑って―――、

『■■■■―――ッ!』

 ドボン、と水面を揺らした。

「……六花」
『危険危険危険! 予想危険度最大! 撤退要請! 撤退要請!』
「……アンタ、悔しくないの?」
『入力情報が不適切と判断します! 不適切でない場合は具体的な入力をお願い致します!』

 ……ああ、確かに六花は人間らしくなっている。小憎たらしい位。目の前に居たらぶん殴ってるわね。
 さっきから福音が『私』に攻撃を仕掛けてこないのも、攻撃する価値も無いと思われているからだろうか。

 ―――第一コア稼働率54%
 ―――第二コア稼働率11%

「あそこまで大法螺吹いといて、途中までノリノリだった癖にさ……たかが第二形態移行しただけじゃない」
『第一形態移行と第二形態移行では戦力の変化率が違いすぎる! 敗北の危険性、極大!』
「それでも……ここまで仲間をやられて、アンタは黙って見過ごせるの?」
『……入力情報が不適切と判断します。不適切でない場合は具体的な入力をお願い致します』

 うっわムカつく。小憎たらしいなんて評価は不適切ね。ただただ憎たらしいわ。

 ―――第一コア稼働率63%
 ―――第二コア稼働率14%

「答えなさい、糞AI! アンタは誰でどんな奴!? そして今は何をする時間!?」
『……私は、六花。佐倉博士により生み出され、貴女に仕え貴女に従い貴女の力となるAI。そして今は―――』



『あの敵を、倒す時間ですっ!』



 ―――第一コア稼働率76%
 ―――第二コア稼働率29%

 ―――合計100%オーバーを確認
 ―――【インフィニット・ドライブ】スタート


 ドン、と『私達』から力が溢れ出る。それは可視化するほどのエネルギーの奔流であるとハイパーセンサーは示していた。

「これは……!?」
『インフィニット・ドライブ……私に搭載された二つのコアを励起・共鳴させ、擬似的に稼働率上限を引き上げる技術です。
 現在私は擬似的に第二形態移行した状態にあり、全能力の上昇、被物理ダメージの回復等の発動が確認されています』
「ははっ……とっておき、って事ね?」
『それだけではありません』

 一つ目のコアの頂点から走るラインが二つ目のコアの反対側の頂点へと走る。
 それはコアの外周を経由し反対側から離れて一つ目のコアへとラインが交差する。
 その光は一つ目のコアの外周を経由し、最初にラインが現れた場所へと戻った。

 その形は、『∞』。故に常識を超えた力を手にする事を可能にする。

「何よ、もったいぶらずに言いなさい。まさか……」
『単一仕様能力【虚像実影】の使用が可能になりました。説明を行いますか?』
「やっぱりね。使いながらで良いわ、一番気をつけないといけない事は?」
『制限時間が一分しかありません、ご注意下さい』

 上等。ここまで引っ張っといて使えなかったらスクラップにするわよ?

『単一使用能力『虚像実影』、起動します。レインダンサー、メテオストライク、レーザービーム、スタンダード、グラップラー、展開』

 六花の声と共に私の周りに変化が訪れる。右下に二機、左下に二機、真下に一機、『ISが現れた』。
 私を一番上の頂点として六角形―――雪の結晶のように布陣したISは非常に見慣れた機体、と言うか六花そのものだ。
 違うのは全身装甲で覆われた操縦者と装備しているパック。右下がレインダンサーとメテオストライク、左下がレーザービームとスタンダード、真下がグラップラーだ。

 ここまでお膳立てされれば私だって解る。

「無人機と遠隔操作……第五世代技術、か」
『はい。五機の操作は私が行いますのでスパイダーガールの全操作をお願い致します』
「言ってくれるじゃない。やってやるわよ……行けっ!」

 私の号令に合わせて六花が舞う。全機が手にGAU-ISを持ち、上から下から右から左から正面から福音へと突っ込んでいく。
 レインダンサーが高密度の弾幕を形成し、レーザービームの攻撃を本命として撃ち込む。
 メテオストライクが54発全てを一斉に発射し、先の二機も合わせてスタンダードがその援護をする。
 正面からグラップラーが突っ込み、その後ろに私が続いた。

『しまった、グラップラーよりもフォートレスの方が適任でした。申し訳ありません、マスター』
「特攻にはアレが一番だからね……ダンディライオン、全弾持ってけぇっ!」

 既にスタンダードの分を合わせて72発のミサイルが飛び交う戦場へ更に12発、最後のネットミサイルを射出する。
 私はグラップラーより若干下から福音へ進み、ワイヤーガンを福音めがけて発射した。

「できればインコムを使いたいけど、やっぱ私じゃ操作しきれない……!」
『残り三十秒。間も無くグラップラーのダメージが危険域へ到達します』
「突っ込ませなさい! どうせ修理は源ちゃんが勝手にやるわよ!」
『了解。他の機体も残弾が無くなり次第、全機吶喊します』

 その報告を皮切りにグラップラー、メテオストライク、レインダンサーの順に福音へと突っ込んでいく。
 残った武器はGAU-ISとそれに付いている銃剣だけ。銃剣ぶっ刺して撃ち続けるつもりなんだろう。

『全機残弾零。吶喊します』
「オッケー、合わせるわ!」

 福音は罅割れから小さな羽根を生やし、全身にひっついた六花達へと攻撃する。私もそれに混ざると更に迎撃は強くなった。
 ―――熱い。痛い。苦しい。けど、仲間は皆やられてしまった。訓練機組は無事だろうけど、あの子達が敵う相手じゃない。

「……なら、ここで決めないとね」
『残り十秒、全GAU-IS残弾零! 全機ナイフ展開―――アタァック!』
「だらぁぁぁぁぁぁっ!」

 遂にGAU-ISの弾も無くなり、本当に最後の武器である内蔵ナイフ12振りでの攻撃を開始する。
 斬り、突き、断ち、裂く。この5機が消えるまでに倒せるか、福音が耐えきるかの勝負だ。

「うぉあああああああああああああああっ!」
『残り五秒、展開機の量子化の開始を確認!』
「止まれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」

 ……零。散らす火花が消え、全方向からの力が消えて福音ごと前につんのめる。

『報告。エネルギーエンプティ、搭乗者保護機能の発動許可を』
「却下よ……どの道これで倒せなきゃ……」
『―――報告。敵機健在。敵ISはエネルギーを全身より放出し、防御に成功した模様』
「なっ―――」

 最悪なんて言葉じゃきかない。絶望、としか言いようのない展開。与えたダメージはゼロじゃないけど、倒すには至らない。
 ……PICも最低出力まで低下した六花はゆっくりと落下を始め、私は福音に頭を掴まれた。

「ガッ―――!」
『敵ISより高エネルギー反応……シールドバリアーを頭部へ収束! 搭乗者保護を最優先っ!』
『■■■―――、』

 ギリ、と頭蓋が軋む。痛い。バイザーが歪んで割れる。痛い。指の隙間から光が漏れる。痛い。
 ……熱い、痛い。怖い、痛い。嫌だ、痛い。助けて、痛い。誰か、助けて、嫌だ怖いよ、痛いよやめて、誰か誰か誰か誰か―――、

「い、ち……」


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


 ズン、と頭から響く衝撃。この場に居る筈のないアイツの声。けど、この匂いは間違いない。


「馬鹿……遅いわよ……」

 ……ああ、せめてこんな時くらいは素直に褒めてあげるべきだったかな。

「源兄ぃに増設ブースター借りて駆け付けたんだぜ? これ以上は無理だよ。
 ……大丈夫か? 千春」

 どうしてコイツはこういう歯の浮くような言葉とシチュエーションが似合うんだろうか。確かに皆が惚れるのも解らなくもないわ。

「まあ、助かったから良しとしますか……ありがとう、一夏」
「何がだよ……大丈夫そうだな、良かった」

 バイザーが砕けたせいで通常のハイパーセンサーのみになった私の視界一杯に映る愚弟の顔。
 ……まあ、顔だけは悪くないわよね。あとそろそろ下してくれない?

「一夏っ!」「一夏さん!」「一夏っ!」「一夏ぁっ!」「一夏っ!」「織斑君……!」

 ダメージがある程度回復したらしい皆が寄って来る。
 はて、何かおかしい点があるような……? まあいいや。

「皆、心配掛けてごめん。もう大丈夫だ」
「本当……? 凄い怪我だったのに……」
「ああ。源兄ぃが言うには搭乗者の生体再生機能らしいけど……まあ細かい事は俺にもよく解らないんだよ」

 ……相変わらず適当に生きてるわね、アンタ。まあ源ちゃんもそれを解ってて詳しく説明しなかったんだろうけど。
 一夏に支えられながら六花のPICで体を起こす。と、その姿が変わっている事に気がついた。

 フロートユニットは大型化し、全体的に鋭角な印象を受ける。あ、顔のパーツも変わってるわね。
 それに左腕が肥大化し、何かしらの武器が搭載されている事が解る。微かに放熱しているって事は私を助けたのはこれなのかな?
 それと背中からX字型のブースターが生えてるけど、これは確か源ちゃんが作った装備だったわね。『クロスボーン』だっけ?

「それじゃあ皆……一気に決めるぞ!」
「あ、ゴメン。私もうエネルギー切れで動けそうにないや」
「っと……まあ、それならしょうがないか。降りれるか?」

 さあ行くぞ、って時にいきなり腰を折ったせいで一夏が軽くこける。ところで皆、何か視線が冷たいのはなんで?

「うん、それなら大丈夫……頑張ってね」
「ああ―――行くぞ!」

 一夏が私を離し、吹っ飛んでった福音の方へスラスターを吹かす。皆も私に一言ずつかけてからその後を追って行った。

「……ありがとう、六花」
『はて、何のことでしょう? 私は機体の姿勢維持をしつつ、貴女に微小な痛覚情報を与えていただけですが?』

 皆が福音へ向かった後、地上スレスレになってから私は六花に礼を言う。足元には丁度いい島が見えた。
 ……恐らく六花が居なければ皆との会話の途中に気絶していただろう。余計な心配はかけたくない。

「……はいはい、っと。ここ、満潮になって沈んだりしないわよね?」
『大丈夫でしょう……ゆっくりお休み下さい、マスター』

 おやすみ、と言う直前、空が金色の光に包まれた気がした。ああ、これは……勝ったわね。



「ふっ、ふふっ、ふふふふっ……凄いね、素敵だよ。まさか二つのコアをあんな風につかうなんて……流石の私でも思いつかなかったなぁ」
「ホントは副産物なんだがな。しかしマジで発動させちまうとは……」

 束は断崖絶壁の柵に腰かけ、俺はその後ろの木の枝に座っている。やめろよお前、こっちが怖いからさぁ。

 ―――緊急作戦『誰がために鐘は鳴る』は佐倉源蔵立案の作戦主導の下、訓練機を含めた18機のISによる攻撃で成功。と言う事になった。
 まあ、俺は生徒の暴走の責任を引き受けた形になるので即時処罰は無し。でも多分帰ってから何か言われそう。せめて期末テスト終わってからにしてくれない?

「ま、俺としちゃ装備の試験データが取れたから良いよ。紅椿の方はどうだ?」
「絢爛舞踏含めても42%……初めてにしては上出来かな。それよりゲンゾー、あれって結局どういう能力なの?」
「ん? ああ、虚像実影か? あれは予め登録しておいた予備機を量子展開して、それを六花が操作してるだけだ。
 駆動とシールドのエネルギーは本体から取ってるから、六機展開したら一分しか持たないがな。それにレギュレーション違反だ」

「ほう? 中々興味深い話をしているな、貴様ら」

 ギャーチフユサーン。

「やぁ、ちーちゃん。良い夜だね」
「そうだな。そうだ源蔵、お前は戻り次第学内査問委員会にかけられる事になったからな。覚悟しておけ」
「げぇ……りょーかい。当面の目標は一機だけの展開が可能かどうか、だな。流石に変換容量は騙せねーしなー……」

 微妙に噛み合っているようで噛み合っていないこの会話。ああ懐かしい。

「あ、そーだ。千春、大丈夫だったか? 一応バイタルはリアルタイムで監視してるが、何かあるとまずいからさ」
「それは問題ないだろう。極度の疲労だそうだ」
「頑張ってたもんねー、はるちゃん」

 そしてまた話題が一つに戻る。遠くに鳴る潮騒のような会話のリズムが心地良い。

「それにしても、零落白夜どころか生体再生まで可能とは……束、お前は一体何をしたんだ?」
「何って言われてもなぁ……私は単に作りかけの機体に新しい技術を入れて完成させただけだよ。細工って言うならゲンゾーの方が怪しいよ」
「生憎と六花にかかりっきりなんでな、そんな暇は無かったぞ。可能性があるなら自己進化がミソだな」

 やっぱりそうか、と三人の間で微妙な空気が流れる。二人とも見当はついてたんだな。

「コアナンバー001……白式に使われているのは白騎士のコアらしいが、本当か? 束」
「そーだよ。でも不思議だよね、零落白夜はともかく生体再生は完全に初期化した機能の筈なんだけどなぁ」
「大方コア・ネットワークに情報が残ってたんだろ。零落白夜を暮桜から入手したのと同じ方法だと見るね、俺は」

 ―――コアナンバー001。インフィニット・ストラトスという名前がついた後で最初に作られたこのコアは、実は元々俺用に作られたコアだったりする。
 体力的な面から見てハミングバードの操縦者には千冬が相応しかったが、その後各種技術を搭載した白騎士は『誰でも使える兵器』であるはずだった。
 だが、生体認証絡みのデータをハミングバードから丸写ししたのがまずかったのか、最初は千冬しか操縦者として認めなかった。
 白騎士事件後の調整で束は認識できたものの、結局俺は無理だった。そいつを元に作ったせいでご覧の有様だよ! まあこんな女尊男卑が顕著なのも日本ぐらいなんだが。

 で、話を戻すとこのコアは元々俺用……つまり白騎士は俺が使う事を想定して作られていた。だから生体再生なんてモンが搭載されているのである。
 その頃には俺の左腕も今と変わらない状況になっていたが、束はそれでも納得できなかったんだろう。ありがたいとは思うが、やはり重荷になっていたのかとも思う。
 っつーか、千冬が使う機体にそんなもん要らんしな。だって当たらんし、当たってもシールドバリアーあるし。保険としては使えるけどさ。

「あ、そっか。そう言う方法もあるんだね。それなら初期化しても残ってる理由にはなるね」
「もしかしたら俺用だった名残なのかもな、一夏が白式を使えてるのは」
「……一応、筋は通っているな」

 千冬はどこか納得し難いと言った感じだ。まあ、結局推論でしかないんだけどさ。

「ただ、多分きっかけはどっかの天才さんが一夏を認識できるプログラムぶち込んだからだろうな。それがネットワークで全部のコアに流れて、アイツが反応したと」
「……片棒を担いだ奴がよく言うな。あれはお前がちゃんとしていれば防げた事だろうに」
「それにその推論、結構穴だらけだよ?」

 やかましいわ。んな事は解ってるし、一夏が入学してこないと詰まらんだろうが。あとそろそろケツ痛いから降りるか。

「それで、どこかの天才は今回の件にどれくらい関わっているんだろうな? なあ、束」
「そうだねー、解決の立役者を作ったくらいかなー」
「よっこいせっと……何と言うマッチポンプ臭。何がとは言わんが」

 白々しいにも程があるが、流石に今回の事を公にすると束が国際指名手配されてしまう。それに証拠は見つからないだろうしね。

「……ねぇ、ちーちゃん、ゲンゾー」
「何だ?」
「どーした?」

 白式の情報を確認していた束はディスプレイをかき消す。その声色はどこか震えているような、そんな気がした。


「―――今の世界は、楽しい?」


「そこそこにな」
「後はお前が横に居てくれれば完璧かねー。それと束」

 ん? と肩越しに束がこっちを向く。そこに俺は一言、

「そろそろケツ上げないと痛くなるぞ、その柵ゴツゴツしてっから」
「……ちーちゃん」
「心得た」

 あれ? なんでそんな冷ややかな目へぶぅっ!?



 アニメ分まで全部終わった……だと……!? 最初はここまで来るとは思ってませんでした(オイ

 っつー事で六花が単一仕様能力を使えるようになりました。ただし容量制限を軽く越えてしまうので、今のまま使うと反則負け。
 この能力は機体名から来ています。雪片→雪関連の単語→六花→六角形→六体同時展開とかかっこよくね? みたいな感じで。
 
 4巻分はずっと束さんのターンです。つっても一話で終わる可能性もありますが。あと番外で夏コミ編もやります。
 そんで5巻分は文化祭の分しかやんないと思います。もっかしたら会長登場で千春視点の話一本やるかも。

 そう言えばスパロボの第二次OGが発表されましたね。OGは主人公も新規キャラだったらやってたんだけどなぁ……。



「全く……ゲンゾーはもう少しムードってものを理解するべきだと思うよ。ねぇちーちゃん?」
「お前にまでそう言わせるとは……本当に相変わらずだな、コイツは」

 千冬の裏拳で源蔵は膝から崩れ落ち、気絶してうつ伏せに倒れている。空気の読まない者の末路である。

「だって、昨日だって結局何にもしてこなかったし……」
「……お前もお前で相変わらずだな。で、正直な所はどうなんだ?」
「ど、どうって?」

 ため息をついた千冬の目に悪戯っぽい光が宿る。これは千冬が束に口で確実に勝てる数少ない話題である。

「コイツだコイツ。お前と箒の仲も何とかしようとしているようだし、好意を示されるのは嫌なものでもないだろう?」
「……そりゃ、好きって言われるのは嬉しいけど、その……は、恥ずかしいもん」
「全く、本当に相変わらずだなお前は……中学生か」

 この二人は世界的権威である筈なのに、こういう事になると途端に初心になる。それが可笑しくない筈が無い。

「ちーちゃんこそ相変わらずブラコンのくせに」

 そして世界を操るトリックスターは、こういう時に限って最悪のカードを引いてしまうのだった。

「……ほう? そうかそうか。貰い手が居なさそうな親友に遠慮していたが、それも余計なお世話だったか……。
 それなら、コイツは貰ってしまっても構わんな? 一夏にも彼氏を作れと言われているし丁度良い」
「だ、駄目ーっ! いくらちーちゃんでもそれは駄目ーっ!」

 ババッ、と無駄に良い運動神経を使って柵から地面の側へ飛び降り、束は千冬と相対する。
 その目は何時にない真剣味を帯びており、対する千冬はと言えば―――、


「(ニヤニヤ)」


 悪戯が成功した子供のように口元を歪めている。

「あ……う……え、えと……ば、バーカ! ちーちゃんのバーカ! おぼえてろー!」

 それを見て束は恥ずかしいやら悔しいやら、一昔以上前の悪役のような台詞を残して崖の向こうへと飛び降りていった。

「やれやれ……おい、いい加減起きたらどうだ」

 悪戯っぽい笑みは苦笑へと変わり、軌跡を残すニンジンロケットを少しの間だけ目で追っていく。本当は颯爽と去るつもりだったんだろうか、と考えもする。
 それもやがて終わり、隣でずっと伸びている幼馴染の腹を蹴り上げた。どうせ起きているが恥ずかしくて動けないんだろう、と考えて。

「ゲボァッ」
「……何だ、本当に気絶していたのか」

 奇怪な声をあげて更なる気絶の極地へと進む親友に千冬はため息を一つつき、その巨体を肩に担いで旅館へと戻っていった……。





[27457] 第十一話「篠ノ之束の憂鬱」
Name: 巣作りBETA◆bbda2e80 ID:2feb198d
Date: 2011/05/23 21:45



 第十一話「篠ノ之束の憂鬱」


 篠ノ之束は悩んでいた。例の赤い光が光源の部屋の中で。何度見ても目に悪そうだが大丈夫なのだろうか?
 ……実は彼女が『悩む』というのは珍しい事だったりする。彼女の頭脳は思考そのものの非凡さもあるが、普段は選択そのものに殆ど時間をかけない。

 で、何をそんなに彼女が悩んでいるかと言うと、


「むぅ……ちーちゃんは安牌だと思ってたのに……」


 先の臨海学校についてのやりとりであった。

「私を焚きつけるためのブラフって事はあるかもしれないけど、万が一本気になっちゃったりしたら……」

 そして無駄に高性能な彼女の頭はシミュレーションを開始する。本当に何をしているのかこの娘(今年で25歳)は。

 ―――織斑千冬。
 付き合いの長さ:自分とほぼ同程度。かれこれ二十年以上の付き合い。
 実際に接している時間:失踪やら何やらのせいで自分よりも上の可能性あり。
 相性の良さ:良い。ボケとツッコミはかなりのレベル。ただし肉体言語多め。
 周囲の環境:弟が何かしら言う可能性はあるが、同時に認めても居る。
 互いの感情:お互い嫌いではない。源蔵はともかく千冬はもしかすると……。

 結論:難敵。千冬が本気を出した場合、勝率は五分五分。

「……まずいよ。まさかここまでだなんて」

 源蔵の意識がずっとこっちを向いているからと言って、それが何時まで続くかは解らない。もしかすると明日、いや、今この瞬間にだって変わってしまうかもしれない。
 ……そんな当たり前の事でさえ、彼女は今の今まで気が付かなかった。だが幸運な事に、彼女は持ち前の聡明さで何かを失う前にそれを知る事が出来た。

 だが、どうすれば良いのかは解らなかったが。

「う、うぅ~……どうしよう……」

 如何に天才と言えど、それは基本的に一人で積み上げてきた物だ。
 故に『誰かと何かをする』事を最優先で考えた経験は殆ど無い。

 源蔵も条件自体は同じである筈だが、彼は一応転生オリ主である。その辺の知識ぐらいはある。

「うぅ……」

 へちゃぁ、と彼女は椅子に崩れ落ちる。思考の場こそが彼女の領域であったが、公式も何も無い物を導き出すには今一つ経験が足りなかった。

 が、それは着信を知らせる電話によって遮られた。この着信音は、彼だ。

「へっ、へぅ!? げ、ゲンゾー!? どーしたの!?」



「いや、どーしたもこーしたも……遊びに行かないか、と思ってな。折角なんで誘ってみた」

 何でコイツは声が裏返ってるんだろうか。また変な遊びでも思いついたか?

『あ、遊びにって……仕事とか良いの?』
「世の中には夏休みってもんがあってな、こっちも例に漏れないんだよ。福音の仕込みも査問委員会も終わったしな」

 期末テストと査問委員会がブッキングしまくってたのは引いたが。仕事させろよ。
 お陰で学会だの何だの終わらせてたらいつの間にか八月だよ。夏コミの用意はしてあるから良いけど。

『そっか……で、どこに行くの?』
「ああ、ウォーターワールドっつープールだよ。オーナーと知り合いでな、無料チケット貰ったんだ」
『ふ、ふぅーん……』
「ああ、嫌なら別に良いぞ? 一夏達にやって騒動起こすの見てるから」

 その場合、明日から全世界の衛星放送を見れるようにアンテナをつける作業が始まります。ああ、千春達にアレのテストもして貰わんとな。

『い、嫌じゃないよ! うん、せっかくだし束さんが付き合ってあげましょう! うん!』
「そっか。じゃあ何時にする? 出来れば早い方が良いんだが……」
『あ、明日! 色々と用意しないといけないから!』
「お、おお……それじゃあ明日十時に駅前で良いか?」
『うん! それじゃあね!』

 切れたし。しかし用意が必要なら普通はもう少し間を空けるんじゃないのか?
 などと考えていると玄関のインターホンが鳴る。ああ、もうこんな時間か。

「おーっす。そんじゃ源兄ぃ、風呂借りるな」
「ああ。俺は今日はもう入ったから、上がったら温水器下げといてくれ」
「りょーかい」

 今日も今日とて一夏が風呂に入りにやってくる。こんな微妙な所でも原作との乖離が起きているのはどうかと思うな、一夏との入浴目当てにヒロインズが突撃してきたりするし。
 原作ならたまに大欲情……もとい大浴場が使える程度だが、俺がここに居を構えているせいで「そんじゃお前の所に入れば良いじゃん」って学園の偉い人達に言われてしまったのだ。
 俺は入学した当初に気が付いていたが、学園側はそんな事はすっかり頭から抜け落ちていたらしく、結局タッグトーナメントの後に俺の所に話が来た。いいなー大浴場使えて。

「ん? セシリアか。帰って来てたんだな」

 また作業に戻ると、監視カメラに人影ありとウィンドウが拡大される。そこには金色のドリルが映っていた。
 専用機持ちのスケジュールは把握してるので今日まで本国に戻っていたのは知っている。格好から察するに散歩か?

「……ふむ。本来なら全員揃った所で見せようかと思ったが、まあコイツなら良いリアクションが見れそうだしな」

 それに場所も良い。この位置ならギリギリのラインで楽しめる事だろう。

「ぽちっとな、っと」
『うぉ!? な、何だぁ!?』
『あら? あれは……』

 スイッチに反応し、二階にあるオーシャンビューが自慢の浴室が外へせり出していく。正確には壁が倒れ、それを足場に浴槽が外へ移動している。
 ゴンゴンゴンゴン、と重低音を響かせながら浴槽は完全に露出し、気持ちよく入浴していただろう一夏は状況把握のために立ち上がって周囲を確認する。

 まあ、当然ながら裸な訳で。

『あ』
『へ?』

 俺は即座に監視カメラのボリュームを絞ると、小さくイチカサンノエッチーとか聞こえてくる。うむ、大成功だな。

「……ん? 今日アイツ帰ってきたって事はもしかして……」



 翌日、手早く荷物をまとめてモノレールへと乗り込む。と、そこにはシャルロットとラウラが乗っていた。
 因みにこのモノレール、島内だけで4駅あったりする。それがぐるっと島を回って対岸へと渡っていくのだ。

「そう言えばレーゲンってトロンベカラーだよな。はよーっす」
「おはようございます……竜巻?」
「おはようございます。もしかして一夏がやってたアレかな……?」

 きっとソレです。でも赤がちょっと違うし、あと変形機構はやっぱり欲しいか。
 そして刀一本って事で一夏がレーゲンにまたがるんですね。なんて卑猥。

「おめーらは買い物か?」
「ええ。ラウラの服を買いに」
「その後は色々と見て回ろう、と」

 成程。って事は@クルーズには近寄らない方が良いな。あっちは元々行かないが。

「ドクトアはどちらまで?」
「溜まってた仕事が片付いたんでお出かけだ。学会だのなんだので夏休みは忙しくて敵わん」
「お疲れ様です。ああ、そう言えばクラリッサが夏の祭典について連絡が欲しいと言っていました」
「ああ、そーいやそーだな。りょーかい。後で連絡しとくわ」

 などと駄弁っているとあっという間に対岸の駅に着く。因みにここが俺達の地元だったりもするのは……多分俺と千冬が絡んでるんだろうなぁ。
 だがその分だけ里帰りは楽だし、近郊の都市開発でこの辺も栄えてるから良しとしよう。などと湘南のと同型のモノレールから降りてしみじみ思う。

「しかしドクトル、夏の祭典とは……?」
「アイツの日本知識の源の祭典だ。細かい事はクラリスに聞け」
「ねえラウラ、クラリッサさんって?」
「ああ、名前はクラリッサ・ハルフォーフ。私の部隊の副官だが私よりも年上でな、色々と相談に乗って貰っている」

 部隊についてそんなベラベラ喋って良いのかと思うが、よく考えたら【シュバルツィア・ツヴァイク】の操縦者として全世界に公開されてるんだったな。
 俺も二人も駅前に移動するのでバスに乗る。よく考えたらここって電車駅とモノレール駅があるから『駅前』って二つあるんだよな。どうでも良いけど。

「そっか、仲が良いんだね。ドクトアはドイツに居た頃に?」
「ああ、自慢の部下だ。ドクトルとは日本の文化を通じて親交を深めたとか」
「まーな。最初は休憩時間中も整備やら何やら聞いてきてな……正直言うとウザかった」

 シャルロットはたまに町内のガイドブックに目を通しつつ、ラウラは周囲の地形や建物を確認しながら、俺はぼへーっと会話をする。
 あの頃はアイツも軍学校出たばっかりだったからなー。千冬が教官やってたせいか、俺も少し熱が入っていたかもしれん。

「そん時に読んでた漫画に興味持って、今でもたまに連絡取ったりするな。通販やってない商品とか送ってやらんといかんし」
「クラリッサも感謝しているようでした。そう言えば、ドクトルが記事を書いている雑誌の切り抜きもしていましたね」
「……んー?」

 どうしたシャルロット。ああ、近所の女子高生の目が気になるのか。地方都市だと外人って珍しいしな。
 この辺の連中も学園のせいで国際色豊かになってきたんだし、そろそろ慣れろと言いたいんだがね。

 因みに俺は学会誌以外だと『インフィニット・ストライプス』って雑誌でゆるーいコラムを書いている。こないだは何故かグラビア撮りました。何故だ。

「あー、そーいや来月のコラムそろそろ書かないとなー。白式は情報規制解除されてねーし、どれにすっかなー」
「それならばクラリッサとツヴァイクにしては? もう少しコミュニケーションを取りたい、と言っていましたし」
「そーだな。そろそろ第三世代機についても色々と書くか」
「もしかして、クラリッサさんって……」

 ワールドワイドOTAKUですが何か? どっちかっつーとタダの漫画好きのような気もするが。それも若干歪んだタイプの。
 俺が読んでたのがそもそも王道から少し外れた月刊誌とかの漫画だしなー。少女漫画よりそっちの方が好きな気がするぞアイツ。

「しかしアイツもそろそろいい歳だし、男の一人でも見つけたら良いだろうに」
「確かこう言っていた時は……猫の糞を踏め、とクラリッサが伝えて欲しいと言っていましたよ」
「ああ、やっぱり……言葉の意味は良く解らないけど」

 俺も良く解らん。いや、元ネタは知ってるが。などと漫才をやっている間にバスは駅前に着き、二人はてこてこと歩いていった。

 そして現在時刻は十時二十分。着いてからもうすぐ一時間が経とうとしております。遅れた秒数の分だけ乳を揉み倒してやろうか。

「なあ、そこんとこどう思うよ。束」
「うぇっ!? そんな、完全に死角から近付いたのに!?」
「ふっ、ハイパーセンサーのちょっとした応よ―――」

 誰だコイツ。

 いや、束だ。

 何この格好。

 赤を基調に大胆にも肩と胸元を露出させ、フロントは以前と同じエセエプロンドレス風。スカートはウェーブがかかっており、どことなく涼しさを感じさせる。
 日差し避けに被った鍔広の帽子は赤地で、白い大きなリボンが眩しい。手に持ったバッグは取っ手が籐で出来ており、デフォルメされた狼と猟銃が描かれている。

 ……察するに、一人赤ずきんと言った所だろうか。婆さんどこ行った。

「え、えと、遅れてごめんね? 寝坊しちゃって……」
「……あ、いや、お前が遅刻すんのはいつもの事だしな。別に良いさ」
「そ、そっか……似合う、かな?」
「あ、ああ。てっきり前のと同じ格好で来ると思ってたから、ちょっとビックリしたけど……似合ってる。可愛いと思うぞ」

 あーもー何やってんだ俺は。こーゆー時は真っ先に褒めてやる所だろうが。
 ……正直な所、どこかズレてる束がこういうガチな格好してくると、参る。もう何か色々とすっとばして襲いたくなる。

「えへへ……ちょっとは頑張った甲斐もあった、かな」
「そ、そうか。そりゃ良かった」
「うん……」
「………。」
「………。」

 ってうぉーい! 何故ここで黙る俺! そして束! 二人で出かける経験無いって訳じゃないだろ俺ら!
 いやまあその理由が電気部品買いに行くとかハミングバード開発用の資材盗みに行くとかそんなんばっかだったけどさ!

 ……ゴメン。やっぱ無理。滅茶苦茶緊張してるわ、俺。

「あー、えと、それじゃあそろそろ行くか!」
「そ、そうだね! 行こっか!」

 俺は先導するために踵を返す。が、その途中で体が止まってしまった。
 どうも左手が誰かに掴まれている。確認しなくても解る、これは束だ。引っこ抜けるからやめれ。

「……あ、えと、手……繋いで、良い?」
「……喜んで。何なら腕組んだって良いぞ? まあ暑いだろうが―――」
「じゃ、じゃあ遠慮なくっ!」
「―――手首にクーラーのスイッチがある。暑かったら使うと良い」

 ぽ、ぽよんって! ぽよんってーーーーーーっ! う、腕に! 腕にむにゅぁってーーーーーーーーっ!

 ……拝啓、今は確か雫石温泉の親父殿、お袋様。僕、生きてて良かったです。



 さて、やって来ましたウォーターワールド! オーナーの名前は向島光一郎! 皆覚えて帰ってね!

「……ねぇ、セシリア」
「……何ですの、鈴さん」
「……あれ、当て付けかしら」
「……お似合いではありませんか、狂人同士」

 一学期の成績赤点にすんぞテメーら。あと目に光無いの怖いからやめて。

「ん? ゲンゾー、あれ何?」
「何、と来たか。教え子だよ、箒のライバルでもある。一夏的な意味で」
「むむ、そうなるとここで排除しておいた方が良いかな? 篠ノ之家の辞書に敗北という文字は不要だからね!」
「無い、と言わない辺りがお前らしいな。けどやめとけ、今度こそ犯罪者として指名手配されるから」

 はーい、と束が肩に頭を預けてくる。やっぱこのままホテル行かない? もしくは市役所。

「あ、そうだ源さん。楊候補生管理官がよろしくって言ってたわよ……可哀想に」
「何がだ? そんで、お前らは一夏に予定すっぽかされでもしたか?」
「……そういうドクターの気遣いの足りない所、本当に一夏さんの兄貴分らしいですわね」

 褒めるな恥ずかしい。

「……ゲンゾー、楊って?」
「中国の代表候補生管理してる人間。見事なツンデレだな」

 誰にデレるのかは知らんが。ツンオンリーのツンデレってそれツンデレじゃないよね。

「……はやく行こ、ゲンゾー」
「はいはい解ったって腕バラすなテメェ!」
「「……はぁ」」

 どーせあの二人も今日のイベント目当てに来るんだろうが。巻き込まれないようにコース確認しとかないとな。
 束と更衣室の前で別れ、さっさと着替えを済ませる。どーせ男の着替えなんざ脱いで着直すだけだ。
 因みに今日つけている左腕は見た目は生身と変わらない夏用防水タイプだ。臨海学校の時も海ではこれでした。

「しかし束の水着か……どんなんだろうな」

 妄想するだけで愚息がおっきしそうになるが、一秒間に10回呼吸して心と体を落ち着かせる。何か別の物が出そうだ。

 さて問題です、束の水着は次の内どれでしょうか?
 1、ハンサムの俺は突如プロポーズの度胸が―――ってこれ違う三択だよ。っつーか度胸無しで悪かったなボケ。

 1、ネタ
 2、ガチ
 3、意表をついて男物

 答え―――3、答え3、答え3。現実は非情である。

「そんな訳無いってば……折角頑張って選んだのに」
「へ?」

 何か後ろからゴニョゴニョと聞こえてきたと思ったらそこには巨大なスイカが二つ。じゃなかった。束だった。

 ……いや、あながち間違っちゃいねぇ。そのやまや連峰に迫らんとする束山脈を包んでいるのは、緑地に黒のラインが入ったスイカ柄のビキニ。
 一方、下は下で赤地に黒のドット入り。縁は緑色(漢字だと紛らわしいな)で切り分けたスイカのようだ。それが肉感的な尻を隠し……むしろ強調している。
 デザインは決して露出が多い方ではない。正直、こないだの千冬の方が多いくらいだ。だが、それでも隠し切れない色香があるのはもう素晴らしいとしか言えん。

 まあ何が言いたいかっつーと今この場で子作りしたい。ゴメン下品だった。いつもの事だが。

「ある意味ネタでありガチであり、か……良く似合ってる。ウチに来て俺をファックして良いぞ」
「考えとくー。で、どーしよっか?」
「まあ端から回ってくか。見取り図は……と、コレか」

 また何とも傍迷惑な事にスペシャルレースだか何だかのコースが園内全体に通っている。
 安全な回避策が無い事が解ったので仕方なくレンタルの浮き輪を借りて流れるプールに乗る事にした。

「ふへぇ~……」
「いや、あの……束さん? その……」
「ふにゃぁ~?」

 現在、俺達は浮き輪に乗って流れるプールを流れている。それは別に良い。が、その体勢が若干まずい。
 輪の中にケツを入れ、仰向けに浮き輪に体を預ける俺。その『上』に同じように重なる束。某仏像好きの漫画家はこう言うだろう、「これ絶対入ってるよね」と。

「……本当に入れてやろうか?」
「やれるもんならやってみれば~?」
「……ほぅ?」

 よーし許可出た。許可出たよコレ。まず手始めに浮き輪に預けていた手を束の腹に回す。

「え……げ、ゲンゾー?」
「どーした? やれって言ったのはお前だろ?」
「や、あの、えと……」

 首筋に鼻先を埋め、ふにふにと腹を指で押す。成程、運動してないから筋肉はあんまついてないのか。それで見た目良いって反則だなコイツ。

「や、ぅ……」
「すーっ……はぁー……」
「ん、くすぐったいよ……」

 少し弄ってると束も受け入れ始め、吐息が徐々に熱を帯びてくる。ならばと俺は両手を上へとずらし始める。

「ひぅっ!?」
「………。(ゴクリ)」
「や……見られちゃう……」

 人目? んなもん気にすんな馬鹿。俺は気にしない、と言う代わりにずっしりとした重量感のある双丘を手の甲で軽く押し上げる。
 ほよん、ふるん。ふにん、はよん。むにん、もよん。ういん、によん。もうずっとこれを繰り返したくなる柔らかさが手の甲を通じて伝わってくる。

「あ、あうぅ……」
「はっはっは、どうした? 顔が真っ赤だぞ?」
「う、うぅ~!」

 束は反撃しようとするが、生憎と腕ごと俺に抱きすくめられてる形だ。せいぜい出来る事と言えば蹴りと頭突き程度である。

「よ、っと」
「ひゃ!?」

 ズボッと水着と胸の間に右手を突っ込む。男は怒張、じゃなくて度胸! こうなったらこのまんま最後までいったらぁ!
 因みに左手は束の腕を拘束したままだ。反撃が怖いのもあるが、左手は水温のせいで若干冷たいのである。この手では刺激が少し強すぎるだろう。

「この圧倒的な質量感……むぅ、ガキの頃一緒に風呂入った時から何センチ増えた?」
「い、言わないよ!? 第一、子供の頃なんて計ってな―――ひゃぅぅっ!? も、揉っ!?」

 み、が言えてないぞお前。いや、む、か? それはさておき右手に収まりきらない物体に関してだが……最高です。究極です。至高です。この乳を作ったのは誰だ!
 掌の中心でガッチガチに硬くなった突起を捉えつつ、右に回すように左に掬い上げるように揉む。時に押し込んだりもしてみる。あーやべ、勃ってきた。

「あ、あた、当たってる! 何かお尻に硬いのっ!」
「愚息がお世話になってます。何、いずれ受け入れるモンだ、今から慣れておいて損は無いだろう?」
「で、でもこれ、ちょっと大きすぎ……」

 ふしゅぅぅぅ、と束が顔から湯気を出し始める。因みに俺はさっきからガンガン出てる。もう誰か止めて。


 と、俺がそう考えたのがまずかったのか、それとも板的にこれ以上はアウトだったのか。


「ひゃぁぁぁ~! り、鈴さぁぁぁ~ん! わ、私を踏み台にしましたわねぇ~!」
「悲しいけどこれ、真剣勝負なのよねっ!」
「この……あ、ドクター! 丁度良い所に! 失礼しますわっ!」

 え、ちょっと待て、そのコースで足出したら顔踏まれんへぶぅっ!?

「お待ちなさぁ~い!」
「あぁ~ばよぉ~、とっつぁ~ん。ってね!」

 ……束弄りに夢中になりすぎて、いつの間にかゴールの近くまで流されていたようだ。
 その結果、俺は踏み台としてセシリアに有効活用され、あのアホ二人は原作同様IS使ってドンパチやり始めやがった。

「た……助かったぁ……」

 ……悪かったな。



 っつー訳で以上夏休み編その1でした。んでもって10話超えたんでタイトルの台詞縛りやめます。

 短いですね解ります。でもここで一回切らないと次の話の長さが中途半端になりそうなんでここまでです。
 信じられるか? これだけで4巻半分なんだぜ? つまり次は夏祭りと千春視点の夏休みなんだぜ。

 因みにこの後、二人は普通にデートして帰ってます。シャボン玉飛ばしたりスープレックスかましたり。
 それと本命束、対抗千冬の他数名エントリーしてます。ただしゲンゾーが気付かないので始まらない。死ね。

 あと次は番外の夏コミ編です。全編ネタまみれの実験作になる予定です。大失敗の予感!





[27457] 番外編「【夏コミ】ISジャンルサークル実況スレ【実況】」
Name: 巣作りBETA◆bbda2e80 ID:2feb198d
Date: 2011/05/25 22:36
1:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 07:03:12 ID:2feb198d
  立てといたぞ
  
2:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 07:05:06 ID:1234VUIh
  >>1乙
  いずやマダー?
  
3:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 07:06:59 ID:fL8f6V21
  >>1おつ
  でも欲しいか?
  
4:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 07:17:32 ID:b1o5D90W
  >>1乙
  欲しいだろ、今回は特に
  
5:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 07:20:11 ID:Gyh879Gu
  >>1乙鉄
  今回っていずや何もって来るんだっけ?
  とりあえずサークル入場してくる
  
6:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 07:26:14 ID:Pj43k9vc
  >>1乙
  
  >>5
  サークルの商品案内読んで来い、そしてサークル受かったお前にギギギ 

7:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 07:38:45 ID:Gyh879Gu
  いずやのすぐ近くでした
  誰もいねーぞ

8:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 07:39:55 ID:karit3O0
  >>1オツァール
  あいかわらずISジャンルはいずやの一強だな
  
9:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 07:42:56 ID:9dR520Ga
  国家代表>>1乙生
  そもそも中の人はナマモノだから妄想し辛いんだよな
  
  腐女子どもの男体化のバイタリティは恐ろしい……
  
10:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 07:51:43 ID:fL8f6V21
  確か一日目が第三世代で二日目がそれ以外だっけ?
  
11:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 07:59:33 ID:IsIn0usA
  >>10
  あといつもの解説本な
  いずやは今年も現役学園生が売り子してくれんのかなハァハァ
  
12:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:03:40 ID:g6fgYgy8
  >>11
  IDすげぇなお前www
  あといずやのISカー駐車場に入ってくの見たぞ

13:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:04:03 ID:1234VUIh
  >>11
  アメリカ所属wwww
  
  >>10
  今年はこんな感じ

  >おしながき いちにちめ
  >
  >ブルー・ティアーズ「ν」
  >サイレント・ゼフィルス「ナイチンゲール」
  >甲龍「ポルンガ」
  >シュヴァルツィア・レーゲン「無駄ァッ!」
  >打鉄弐式「超闘士」
  >六花「トト」
  >ミステリアス・レイディ「ターミネーター」
  >シルバリオ・ゴスペル「八極」
  >ファング・クエイク「X2」
  
14:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:05:32 ID:1234VUIh
  >おしながき ふつかめ
  >
  >ラファール・リヴァイブ・カスタムⅡ「古鉄」
  >白式「シュナイダー」
  >白式・雪羅「DEATH SAURER」
  >紅椿「百式」
  >アラクネ「ダーマッ」
  >打鉄「零式」
  >ラファール・リヴァイブ「ブルーデスティニー」
  >テンペスタ「そして何よりも」
  >メイルシュトローム「トリコロール」
  
  個人的には紅蓮八極カラーのゴスペルが欲しい
  
15:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:09:21 ID:hu7F562a
  いずやって何を作ってる所ですか?
  あと壁サークルの「D・B・G!」のサークルカットがいずやそっくりなんですがどうしてですか?
  
16:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:11:30 ID:g6fgYgy8
  >>15
  半年ROMれ
  
  白式と紅椿ってこないだ情報公開されたアレだろ?
  相変わらずありえない早さだよないずや
  
17:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:11:54 ID:fL8f6V21
  >>15
  半日ROMって数時間前に手遅れになった事を嘆きながら寝ろ

  俺は打鉄弐式か六花ってのが欲しいな、まだノーマルカラー一般流通してなかったよな?
  
18:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:13:01 ID:b1o5D90W
  >>15
  IS作ったサクラ博士の半公式フィギュア&解説本サークル
  ブキヤとかリボとかくらべもんにならないクオリティと価格を誇る
  現役のIS学園生が売り子する事でも有名、DBGはスペース確保用サークル
  無理矢理三行で説明してみた

  テンペスタのそしてなによりもって何カラーだwww

19:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:15:03 ID:1234VUIh
  >>15
  たまにヤフオクとかで変なカラーのフル稼働ISフィギュア出回ってるだろ?
  アレ作ってる所。一個当たり一万とかふざけた値段調整してる。完全一限だし
  あと冬はTシャツも作ってるな、「打鉄」とかはそれ一般に流したやつな
  
  中国機の弄られっぷりは相変わらずだな
  
20:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:16:32 ID:Gyh879Gu
  いずやキター
  相変わらず博士は一人でおかしな量のダンボール持ってるwww
  
21:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:16:43 ID:IsIn0usA
  >>18
  クーガーの兄貴に決まってんだろ、速さが足りないんだよ
  
  相変わらずIS学園生はレベル高いな、その辺のレイヤーとか目じゃねえ
  ただあの子達全員腐ってるんだよなぁ……誰だBLなんざあの学園に持ち込んだの
  
22:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:17:02 ID:fL8f6V21
  一個一万とか相変わらずボッタクリだよな。買うけどさ
  搬入の関係で十体しか入れないらしいし……でも1/8だし仕方ないのか
  中の人のフィギュアとしても良い出来だし案外適正価格なのかも試練

  あとチェリー博士って学園に住んでんだよなモゲロ
  
23:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:17:32 ID:2feb198d
  チェリー言うなwww アイツIS関連のスレ監視してんぞwww
  
24:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:18:22 ID:Gyh879Gu
  あっという間に設営進んでるぞいずや
  あ、今回のポスターワンサマー君だ……ってモゲロって書いてあるしwwww
  
25:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:18:42 ID:b1o5D90W
  マジで投射ディスプレイ展開してるしwww
  あと出遅れたせいで開場前行列に遅れた……
  
26:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:19:32 ID:g6fgYgy8
  >>25
  自分のとこ戻れ馬鹿野郎

  何故一号機がνで二号機がナイチンゲールなのか
  どっちか胚乳かサザビーにしろよ
  
27:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:20:52 ID:1234VUIh
  でも今回の特殊カラーはマジで理由が解らんな
  
  やはりまだゴキホイにすら入れてない状態じゃ手に入れるは絶望的か……
  
28:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:21:04 ID:Gyh879Gu
  >>27
  徹夜組氏ね
  
  甲龍はあれシェンロンって読むからだろ?
       
29:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:21:22 ID:IsIn0usA
  >>27
  徹夜死ね。氏ねじゃなく死ね
  
  ダーマッってスパイダーマかwww
  
30:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:22:05 ID:karit3O0
  >>27
  ホントお前みたいなのが男の品格を下げるんだよ
  俺は解説本買えればそれでいいや
  
31:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:22:45 ID:hjui9s4T
  >>27
  徹夜組掃討用ISとか作んねーかなさくらさん
  あの人確か徹夜組毛嫌いしてたよね
  
  六花って機体のトトってのがよくわからん
  
32:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:22:59 ID:fL8f6V21
  ワンサマーポスターとか誰得www
  ダーツの的とかにするなら欲しいが
  
  確かISでも同人ゲーって東だよな? 西回った後に行けるかな……?

33:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:23:32 ID:Gyh879Gu
  学園生北! ちゃんと更衣室で制服着てくるのなwww
  
  ワンサマーポスター見て黄色い声……だと……!?
  
34:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:24:01 ID:2feb198d
  >>33
  知らないのか? ワンサマーはIS学園のネンネ達には大人気なんだぜ?
  
35:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:24:30 ID:g6fgYgy8
  >>34
  ネンネってwww
  
  準備終わったんで行列ならんでくる
  
36:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:24:41 ID:IsIn0usA
  コスプレのISスーツって何か安っぽいよな
  キラキラテカテカしてたり薄っぺらかったり
  
37:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:25:11 ID:1234VUIh
  >>36
  お前アレ最高級品だと百万超える代物だぞ? そう簡単に買えねーって

38:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:25:32 ID:Gyh879Gu
  すげぇ、いずやに滅茶苦茶挨拶来てる
  
  そして挨拶返しにも絶対にフィギュアは渡さない博士
  
39:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:26:22 ID:IsIn0usA
  ところでいずやの学園生は制服のままエロやおい買いに行くのか?
  流石にそりゃまずいだろアイツら
    
40:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:27:19 ID:g6fgYgy8
  っつーかIS学園って夏服無いのか? 全員長袖だし……
  見てるだけで暑苦しい
  
41:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:29:22 ID:Gyh879Gu
  見本誌出しに行ったな
  
  フィギュアって提出しなくて良いんだね
  
42:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:30:09 ID:2feb198d
  >>40
  あそこは改造自由だから半袖どころか腋丸出しの奴とかいる
  夏服になると素材が変わって涼しくなるらしい
  
43:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:30:43 ID:g6fgYgy8
  >>42
  腋wwww蒸れるのかwwww
  
44:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:30:51 ID:IsIn0usA
  >>42
  腋クンカクンカハァハァペロペロ
  
45:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:30:52 ID:Gyh879Gu
  >>42
  次は乳丸出しですねわかります
  
46:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:32:05 ID:2feb198d
  >>45
  残念ながら出せるほど乳が無い
  
47:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:32:54 ID:Gyh879Gu
  >>46
  無情すぎる現実吹いた
  
48:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:32:55 ID:1234VUIh
  >>42
  誰か学園にエイトフォー大量に送りつけたれ
  
49:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:34:10 ID:g6fgYgy8
  >>48
  新手のテロですねわかります
  
50:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:35:09 ID:IsIn0usA
  他に変わった制服の奴とかいねーの?
  背中丸出しとかローライズとかボンタンとか
  
51:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:36:42 ID:Gyh879Gu
  >>50
  んな奴いるかよwwww
  あそこ仮にも国際的な学校だぞwwww
  
52:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:37:18 ID:1234VUIh
  >>50
  まあ体操服ブルマだったり水着旧スクだったりするし居るかもな
    
53:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:37:53 ID:2feb198d
  >>50
  最後のは居るぞ
  銀髪赤眼眼帯(下は金眼)のフルコースだが
  
54:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:38:00 ID:g6fgYgy8
  >>52
  mjdk
  
55:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:38:06 ID:IsIn0usA
  >>52
  マジ誰考えたんだろうなアレ、日本の恥だろwww
  
56:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:46:43 ID:Gyh879Gu
  >>53
  うそつけwwwwwwwwww
  んな中二病フルコースなんざ居る訳ねーだろwwww
  笑いすぎてレスできねぇwwwwwww
  
57:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 08:57:04 ID:IsIn0usA
  >>53
  朝飯のおにぎり返せwwwwww
  それでボンタンって何の冗談だよwwwwwwww

58:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 09:00:47 ID:b1o5D90W
  >>53
  画像うp
  
  あとお前ら入場終わったんだからじっとしてろ
  
59:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 09:01:22 ID:Gyh879Gu
  >>57
  やめろ想像させんなwwww
  
  あと更衣室から慌てて博士が戻って来た
   男 子 制 服 で
  
60:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 09:04:20 ID:1234VUIh
  >>55
  いいえ、素晴らしい日本文化を世界に広めるのです
  
  >>59
  ワンサマー君の情報公開直後に同型の制服を着てくるとはな……
  やっぱ学園関係者ってずるいな
  
61:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 09:10:12 ID:g6fgYgy8
  でもワンサマー君の情報公開どうしてこのタイミングなんだ?
  正直昨日からの公開祭りで眠いんだけど
  
62:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 09:12:55 ID:Er04Kfpq
  お盆とか政府関係者殺す気としか思えないよな
  俺とか俺とか俺とか
  
63:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 09:14:09 ID:Gyh879Gu
  >>61
  寝ろ、死ぬぞ
  
  >>62
  おつかれさん
  
64:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 09:17:44 ID:IsIn0usA
  >>62
  乙
  
  昨日の情報公開祭りは凄かったからな……
  あの祭りのせいで徹夜組が出遅れたって話すら聞いたし
  
65:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 09:21:32 ID:Er04Kfpq
  >>63
  どーせ今日は家でゴロゴロしてるから大丈夫
  
  ワンサマー君と第四世代機とかどんだけ世界動かしたいんだあのウサビッチは
  
66:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 09:23:37 ID:g6fgYgy8
  >>65
  やめろ、女の方を悪く言うと博士がキレる
  キレたらフィギュアが買えなくなるからやめろ
  
  出入り口封鎖まであと七分ー
  
67:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 09:29:04 ID:1234VUIh
  情報一杯過ぎて忘れられがちだけどさ
  
  六花とか言う機体って第五世代機じゃないっけ?
  
68:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 09:32:54 ID:IsIn0usA
  >>67
  いや、概念実証機だから一応第三世代らしいぞ
  
  正直その辺の違いがよくわからんが
  
69:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 09:34:37 ID:Gyh879Gu
  >>68
  大丈夫だ、解説本出してる俺もわからん
  
70:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 09:37:12 ID:g6fgYgy8
  実況スレなのに流れが遅いでゴザル
  あと会場前行列が臭い
  
71:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 09:45:15 ID:Gyh879Gu
  >>70
  夏だしあきらめな
  
  さがしものはなんですかー
  
72:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 09:46:59 ID:b1o5D90W
  つい歌っちゃうよなアレ
  
  >>69
  やっぱチェリー博士も何だかんだで天才なんだなーって思う
  
73:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 09:49:04 ID:g6fgYgy8
  お、動いた動いた
  
  所でチェリー博士ってチェリーなん?
  
74:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 09:52:03 ID:2feb198d
  >>73
  どどどど童貞ちゃうわ!
  
  ふと端末見たらピクトチャットとかの電波ガンガン飛んでたんだけど
  
75:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 09:56:49 ID:Gyh879Gu
  >>73
  巨乳の幼馴染二人も居てまだって事は無いだろ
  
  さ、今日も一日頑張るぞー
  
76:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 10:06:05 ID:Pj43k9vc
  クソッ! 出遅れた!
  頼むー、DIO様カラーは残っててくれー
  
77:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 10:06:05 ID:hjui9s4T
  買えたー!
  トトって何かと思ったらジェフティカラーかよwww
  
78:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 10:08:51 ID:AfiUij31
  西到着! 待ってろいずや!
  
79:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 10:16:12 ID:karit3O0
  クロスボーンカラーのファング・クエイクが半端なくカッコいい……
  よし、解説本も買ったし企業ブース行って帰るか!
  
80:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 10:17:45 ID:fL8f6V21
  弐式ってグルンガストかwwww
  弐式繋がりwwwww
  
81:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 10:20:03 ID:Gyh879Gu
  ホントいずやの塗装は本格的だよな
  これ絶対モノホンと同じ塗料使ってるだろ
  
82:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 10:24:57 ID:gy3retd0
  出遅れたー! ちくしょー!
  
83:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 10:29:33 ID:9dR520Ga
  そ し て 売 れ 残 る 中 国 機
  
  いや俺は買ったよ?
  
84:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 10:36:41 ID:oeg0G3t1
  今起きた俺に一言
  
85:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 10:38:38 ID:IsIn0usA
  >>84
  寝ろ
  
86:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 10:43:51 ID:g6fgYgy8
  >>84
  あれほど祭りの途中に寝ろって言ったのに……
  
87:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 10:51:09 ID:b1o5D90W
  メタリックカラーのミステリアス・レイディまじかっけー
  
  あと中の人の乳でっけー
  
88:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 10:55:44 ID:9dR520Ga
  甲龍の中の人がありえないくらい平坦な件について
  
  これ絶対嫌がらせだろwwwww
  
89:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 11:02:46 ID:Gyh879Gu
  ティアーズと迷ったけどバイザーがかっこいいからゼフィルスにした
  
  赤くて仮面ってどう見てもシャアだけどさ
  
90:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 11:15:49 ID:fL8f6V21
  あ、打鉄弐式の中の人眼鏡かけてる!
  
  しかし箱が今すぐにでも市販できるデザインな件について
  
91:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 11:19:35 ID:Pj43k9vc
  シュヴァルツィア・レーゲンの箱に達筆で「黒雨」って書いてあるな
  つまり冬のTシャツはこれか……今から楽しみだ
  
  そして中の人がどう見てもちみっこくてハァハァ
  
92:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 11:23:59 ID:Gyh879Gu
  ゼフィルスの漢字が悲惨すぎるwwww
  
  静蜆ってwwww
  
93:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 11:25:31 ID:IsIn0usA
  シジミwwwwwwトゥルルwwwwwwww
  
  ゼフィルスってシジミチョウだもんなwwwwwww
  
94:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 11:38:16 ID:hu7F562a
  甲龍以外全部売り切れてた……
  
  11時前には甲龍も全部売れちゃってたけど
  
95:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 11:39:56 ID:g6fgYgy8
  テメーらやたら報告遅いかと思ったら他の買い物済ませてきたな!
  
  とりあえず俺のサークルに紅蓮カラーの福音置いといた。かっけー
  
96:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 11:49:10 ID:Gyh879Gu
  学園生がお昼食べてる
  
  博士一人で売り続けてるしwwwww
  
97:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 11:50:01 ID:IsIn0usA
  現役女子高生の手作り弁当と聞いて
  
98:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 11:52:52 ID:Gyh879Gu
  >>97
  いや、コンビニおにぎりとパンばっかりだな
  
99:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 11:53:20 ID:IsIn0usA
  >>98
  絶望した! リアルJKの食糧事情に絶望した!
  
100:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 11:55:36 ID:g6fgYgy8
  >>98
  まあゼリー飯とかじゃないだけマシだな
  
  >>96
  っつーか誰かさくらさん手伝ってやれwwwww
  
101:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 12:18:45 ID:b1o5D90W
  どっか良い本出してる所あった?
  
102:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 12:22:12 ID:1234VUIh
  いずやの解説本が一強状態でちょっと詰まらんかな
  冷静に考えれば第一人者に勝てる筈無いんだけどさ
  
103:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 12:26:41 ID:Gyh879Gu
  もっと熱くなれよ
  
  買出しに出てた学園生が戻ってきたな
  
104:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 12:31:51 ID:g6fgYgy8
  ウチの18禁やおいサークルから堂々と新刊全種一冊ずつ買ってったよあの子ら
  
  制服姿で
  
105:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 12:32:43 ID:IsIn0usA
  >>104
  売るなwwww
  
106:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 12:33:16 ID:fL8f6V21
  >>104
  うんなよwwwwwwww
  
107:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 12:34:48 ID:Gyh879Gu
  >>104
  そらお前がアウトだ
  
108:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 12:37:57 ID:g6fgYgy8
  しょーがないじゃんウチみたいな弱小は断れないんだから
    
109:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 12:58:19 ID:b1o5D90W
  ワンサマーの突発本が凄い売れ行きな件について
  
  どうも学園生の間ではワンサマー君は天然系の総受けらしいぞ
  
110:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 13:08:08 ID:IsIn0usA
  んな情報いらんわwwwww
  
111:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 13:28:48 ID:1234VUIh
  あれ? 博士居なくね?
  確か身長2メートルぐらいだよね博士
  
112:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 13:33:16 ID:gy3retd0
  買い物だろ
  
  って思ったらウチのエロゲ見て爆笑してやがった
  そりゃ幼馴染がモデルのエロゲ出てたら笑うわな
  
113:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 13:35:39 ID:IsIn0usA
  >>112
  愚息がお世話になってます
      
114:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 13:38:15 ID:Gyh879Gu
  >>112
  ムスコがいつもお世話に……
  
115:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 13:40:29 ID:2feb198d
  >>112
  んほぉぉぉぉぉぉぉっ!
    
116:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 13:43:17 ID:gy3retd0
  そして堂々と無料配布の体験版をかっさらっていく博士
  
  買えwwwww
  
117:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 13:55:31 ID:fL8f6V21
  さっきから企業の人間らしい人達がいずやに来てるんだが
  
118:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 13:57:48 ID:IsIn0usA
  チェリー色々とやってっからそれでだろ?
  
119:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 14:10:16 ID:Gyh879Gu
  DQNがいずやスペースで戦利品の確認やってる学園生にボッコボコにされてるんだが
  何かもう訓練された動きなんだけど学園生。DQNも最後の方半泣きで逃げてたし
  
120:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 14:13:23 ID:g6fgYgy8
  >>119
  ざまぁwwwwww
  
  半分軍学校みたいなもんだしそーゆーのもやってんじゃね?
  
121:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 14:15:02 ID:Gyh879Gu
  ただ攻撃がどうもバキとかジョジョっぽいのは同類なんだなーと思った
  
122:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 14:20:24 ID:IsIn0usA
  >>121
  何それ惚れる
  
123:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 14:30:00 ID:g6fgYgy8
  何かもういずや実況スレみたいになってんな
  
124:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 14:35:14 ID:Gyh879Gu
  >>123
  毎度の事だろ
  
125:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 14:37:58 ID:9dR520Ga
  チェリー博士コスプレ広場来てるぞー
  
  ISスーツと制服の集団には一切目もくれずwww
  
126:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 14:39:31 ID:1234VUIh
  >>125
  そりゃ本物と毎日のように触れ合ってる訳で
  
  モゲロ
  
127:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 14:40:28 ID:Gyh879Gu
  モゲロ
  
128:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 14:40:44 ID:IsIn0usA
  ハゲロ
     
129:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 14:46:15 ID:hjui9s4T
  こちら移動中、さくらさん発見!
  
  何か眼帯つけた軍服が異様に似合う美人さんと話してんだけど
  
130:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 14:48:44 ID:1234VUIh
  モゲロ

  マジで

  モゲロ
  
131:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 14:51:34 ID:Gyh879Gu
  何? やっぱり男はタッパと頭脳なの?
  
  もう氏ねよアイツ
  
132:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 14:53:42 ID:IsIn0usA
  ギギギ
  
133:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 14:58:43 ID:hjui9s4T
  何か隊長がどうとか聞こえる
  
  マジモンの軍人さんなのかな? あと外人っぽいけどやたら日本語上手い
  
134:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 15:05:28 ID:Gyh879Gu
  >>133
  CQCでやられんなよ?
  
135:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 15:08:19 ID:fL8f6V21
  っつーかさくらちゃんはマジで色々やってんだな
  
  糞っ! せめて俺にも幼馴染が居れば!
  
136:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 15:13:52 ID:2feb198d
  大丈夫だ、世の中には小1から小4をファースト幼馴染
  小5から中2までの付き合いのやつをセカンド幼馴染って呼ぶ奴も居る
  
137:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 15:15:15 ID:IsIn0usA
  >>136
  それただの同級生じゃね?
  
138:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 15:17:41 ID:g6fgYgy8
  >>136
  ファーストとかセカンドとかwwwwwwww
  そいつ頭お花畑だろwwwwwwwwww
  
139:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 15:24:49 ID:hjui9s4T
  あ、軍人さんがorzってなった
  
  博士は至って冷静に通行の邪魔だから立てって言ってる
  
140:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 15:31:58 ID:IsIn0usA
  >>139
  ヒドスwwww
  
  でも正しい。皆は会場で四つんばいになったりすんなよ?
  
141:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 15:38:45 ID:Gyh879Gu
  こちらいずや前
  
  何か勝手にワンサマーポスター剥がしてる女が居るんだが
  
142:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 15:39:10 ID:Gyh879Gu
  なんかぽやーっとした感じの人
  学園生もどうしたら良いか困ってる感じ
  
  あと乳が半端なくデカイ
  
143:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 15:42:32 ID:g6fgYgy8
  >>142
  ほほう?
  
144:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 15:43:11 ID:IsIn0usA
  >>142
  それは見に行かざるを得ない
  
145:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 15:46:18 ID:hjui9s4T
  こちら博士追跡班
  
  いずやへ到着。いきなり巨乳さんにチョップかましてる
  軍人さんポカーン、学園生もポカーン
  
146:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 15:47:38 ID:hjui9s4T
  「何やってんだテメーは」
  「いやぁ、いっくんの顔があったからつい」
  「これ後で学園でオークションかけんだから返せ」
  「はーい」
  
  どうも巨乳さんは篠ノ之束さんらしい。学園生にそう言ってる
  
147:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 15:49:17 ID:IsIn0usA
  >>146
  割と最低だなさくらんぼう
  
148:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 15:53:22 ID:Gyh879Gu
  チェリーさんと一緒に来た軍人さんと巨乳さんが一触即発な件について
  
  どう見ても男の取り合いです本当にありがとうございましたギギギ
  
149:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 15:55:41 ID:IsIn0usA
  >>148
  なんだただの痴話喧嘩かギギギモゲロモゲロモゲロ
    
150:インフィニット・ナナシデス:20XX/08/12(金) 16:00:00 ID:2feb198d
  閉会ー。
  
  以上こんな感じです。
  一回やってみたかったんですよ、2ちゃんネタ。
  IDと時間の調整が疲れた……。
  
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