精製の最終段階でタンパク質を濃縮中に、じっと待っているだけで暇なので、この待ち時間に、この2日間に使ったカラムの洗浄もやることにした。実際、明日からもずっとこのFPLCを使って、今週末にやる測定実験の一連のサンプルの準備を続けるので、今日中にカラム洗浄までやっておかねばと判断したのだった。
ところが、カラム洗浄に使う、20mMのTrisに2Mの塩を入れた溶液のストックがなかった。そこで、ちょうど良い具合に別の実験に使った500mMのリン酸バッファーが500mLほどあったので、これに塩を入れて、それでカラムを洗浄することにした。
今思えば、せめてリン酸を20mMまで希釈したものを使うべきだったのだけれど、試しにそこに2M分(116g!)もの塩をぶち込んで、1Lまで水で薄めて(リン酸の終濃度は250mM)撹拌したところ、普通に溶けたので、これを使ってカラムの洗浄を始めた。
ところが、全4つのカラムのうち、3つめを洗浄し始めた頃に、急にFPLCの挙動がおかしくなった。やたらとプレッシャーがあがり、まったく溶液が流れない。どこかで何かが詰まっているらしい。色々と経路をつなぎ替えて、どこが原因部位かと特定作業をしていたら、どうやらミキサー(AラインとBラインからそれぞれ溶液を取り込み、それを指定した割合で混ぜてカラムに流す部品)を抜くとプレッシャーが上がらない(=ミキサーが詰まったか故障したかで動かない)ということが判明した。
それで、まあとりあえず明日からの実験はゲル濾過カラムだし、今日の洗浄に関しても、2つの溶液を一定の割合で混ぜる必要がないので、応急処置としてミキサーを抜いて作業を続けた。
ところがしばらくして、またもやプレッシャーがあがり、バッファーが流れなくなった。いったいどういうことかと色々と試していると、最初はカラムを経由しないでバッファーは流れていたのが、それを確認しているうちに、カラムを経由しないでもまったくバッファーが流れなくなってしまった。
明らかに、時間経過とともに症状が悪化している。なんだこれ?洗浄液に何かゴミでも浮いてて、それが詰まったのかな?と焦って洗浄液の入った瓶を手にとって、目の前に近づけてみると、底の方に結晶状の沈殿物がわずかに見えた。それが、手にとって揺らした衝撃で、とつぜん、透明だった溶液が一面に結晶ができはじめ、光を乱反射して真っ白に見えるほどにドサーっと沈殿を始めた。
確か、有機化学の分野で物質を結晶化する際には、溶液を撹拌するというのを聞いたことがある。まさにそれが目の前で起こったわけで、あれよあれよという間に、瓶の中は真っ白な結晶が雪のように舞い、大量の析出が発生した。おそらく、静置した状態で温度が冷やされたために、溶液中に溶け込んでいる物質が析出する限界ギリギリの状態になっていて、それが揺らされたことで、一気に結晶となって沈殿したのだろう。
まあ化学的な状況説明はともかく、現状はかつてないほどに悪い。つまり、洗浄液が、カラムはもちろん、FPLC内のあちこちで析出し、詰まってしまっているようだ。それを水で洗い流そうにも、もはや溶液が全く流れないので、どうにもならない。
しょうがないので、現在、このシステムが入っている低温室のスイッチを切り、室温に戻している。この洗浄液は、室温では析出しなかったので、いったん温度を上げ、経路に詰まった結晶を溶かし、それを水で洗い流してしまおうという作戦。しかも、すでに洗い終わった2つのカラムも、この分だと一緒に水で洗い直さねばなるまい。
明日は、また別の実験があるので、これを今夜中に復帰させなければならない。今は低温室の温度があがるのを待つ間に、いったん食事に戻ってきたのだけれど、これからまたラボに戻らねばならない。さらに悪いことに、午前中に少し雨に濡れたのと、一日中、低温室で作業をしていたせいで、今、かなり鼻の具合が悪い。どうやら風邪をひいたらしい。今週は、日曜までびっしりと実験の予定があるのに、まずい展開になってきた。
とにもかくにも、250mMのリン酸バッファーに2Mの塩を入れると、常温では溶けるけど、4℃だと析出するということは、今後の人生で絶対に忘れてはならない情報であろう。
0:10追記
なんとかリカバリー完了。楽をしようとして、とんだ目に遭ったわい。
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