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東日本大震災:福島原発活動報告 「疲弊社員では復旧不可能」 /愛媛

 ◇愛媛大・谷川教授、環境改善を訴え

 東京電力福島第1、2原発で復旧作業にあたっている同社社員の心身サポートを担当する愛媛大大学院の谷川武教授(49)=公衆衛生学=が24日、県庁で活動報告した。家族を失うなどした被災者でもある社員が、過酷な労働に耐え、睡眠不足や水素爆発でPTSD(心的外傷後ストレス障害)的症状を示している実態を指摘。「長期にわたる復旧は、疲弊しきった社員のみでは不可能」と、環境改善や支援を訴えた。

 谷川教授は91年から第1原発の産業医。4、5月に計8日間、現地に泊まり込んで社員約150人を診療した。

 4月に約30人を対象にした診察では、震災発生当初から1週間は不眠不休に近い状態だったことが判明。事態の悪化に伴い、ほとんどの人が死を覚悟することがあったという。

 5月の診察も含め数人には、水素爆発や津波で、記憶がよみがえったり夢に見るなどPTSD的症状がみられたが、働き続けていた。また休日に家族のいる避難所に行った際、東電社員として非難されたケースもあった。

 谷川教授は、社員の▽危険作業▽被災者▽原発事故の加害者▽肉親や友人の死--の4重のストレスを指摘。「うつ病や過労死予防のため医学・心理学的サポートが必要」と話した。また、「敬意とねぎらいがストレスを緩和する」と、住民らの応援メッセージ張り出しの効果も述べた。

 生活環境も厳しい。社員らは4日勤務、2日休暇のサイクルで働き、原発内の建物の床にシートを敷き、毛布や寝袋で寝ていた。

 第1原発で働く社員が寝起きする体育館では、多いときは約350人が雑魚寝。重症の睡眠時無呼吸症候群(SAS)患者のいびきで、周囲の睡眠が妨げられていた。疲労回復を促す風呂、シャワーもなかったという。

 教授らは、SAS患者23人に治療器を装着し状況を改善。5月中旬以降、シャワーや二段ベッドも導入されるようになってきてはいるが、谷川教授は「最終的には仮設住居に一人一人はいるべき。今後は熱中症など暑さ対策も必要」と、更なる対策の必要性を力説した。【中村敦茂】

毎日新聞 2011年5月25日 地方版

 
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