菅直人首相を退陣に追い込もうとする与野党の各勢力の足並みがそろっていない。自民、公明両党が今国会中に提出を予定している内閣不信任決議案を巡って、民主党内では同調の機運が広がらず、野党も及び腰。東日本大震災の対応が優先されるなか、「菅降ろし」の動きは足踏み状態を余儀なくされている。【朝日弘行、念佛明奈】
「(不信任決議案に)賛成の方向だが、提出のタイミングや被災者の感情などを総合的に判断する」
民主党の横粂勝仁衆院議員(比例南関東選出)は24日、国会内での記者会見で離党の意向を正式表明し、内閣不信任決議案についても、同調する可能性を示した。同党の小沢一郎元代表の側近議員も同日、不信任案賛成を明言した。
しかし、民主党内で不信任同調の動きは広がっていない。民主党会派離脱を表明した16人のグループは、西岡武夫参院議長が首相退陣を要求したことを受け「不信任賛成」の決議文を作成しようとしたが、まとまらなかった。自民党と超党派議連を設立した樽床伸二元国対委員長も23日、「まず不信任というのはメーンの話ではない」と距離を置いた。
内閣不信任決議案を巡る閉塞(へいそく)ムードは、野党側も同じだ。自民党は派閥会長らベテラン議員に早期提出論があるものの、民主党内の造反を読み切れず、執行部は慎重姿勢。24日の党役員会では「総裁、幹事長以外は発言を慎むべきだ」(茂木敏充広報本部長)として、提出時期を含め谷垣禎一総裁に判断を一任することを確認した。
公明党も当面、様子見の構え。6月1日の党首討論や5日の青森県知事選をにらみ、6月初旬にも不信任案提出との見方もあったが、山口那津男代表は24日の記者会見で「そこに限られるわけではない」と述べた。
小沢元代表は周囲に「次の首相は谷垣氏でいいのに、自民党はけんかの仕方を知らない」といらだちを隠さない。ただし、不信任案同調を巡り、小沢系グループ内でも賛否が分かれている。
毎日新聞 2011年5月25日 東京朝刊