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核燃料サイクル:「白紙」首相表明 「自然エネルギー推進」

 菅直人首相は17日、共産党の志位和夫委員長と首相官邸で会談し、東京電力福島第1原発事故に関連し、使用済み核燃料を再利用する「核燃料サイクル」について「青森県六ケ所村の再処理施設に持っていくサイクルが機能しない状況になっている。それも含めてエネルギー基本計画を白紙から見直したい」と表明した。

 志位氏が会談後の記者会見で明らかにした。首相は福島原発の使用済み核燃料について「あれほど大量にプールに詰まっている状態になっていたのは知らなかった」とも述べたという。志位氏が求めた原発からの撤退については「エネルギー需給全体を考えながら安全性を高めていきたい」と改めて否定した。

 首相はまた「自然エネルギーの普及を特に福島県で進める手立てを考えている。開発のための予算を福島につけることも考えたい」と述べ、福島県を自然エネルギー開発の拠点にする構想も明らかにした。枝野幸男官房長官は17日の記者会見で「原発事故という大変な迷惑をかけている中で、地元の状況とのニーズが合致すれば、福島県がそうしたことを推進する拠点の候補であることは間違いない」と認めた。ただ、「まずは原発の収束と被害の救済に全力を挙げている状況なので、その先のことを相談する段階ではない」と指摘した。【中田卓二】

 ◇トラブル続出、危うい実現性

 核燃料サイクルは、原発から出た使用済み核燃料を再処理して再び燃料として利用する仕組みで、国のエネルギー政策の中核を担っている。具体的には、六ケ所再処理施設(青森県六ケ所村)と高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)が重要な施設だが、いずれもトラブルが続き、核燃料サイクルの実現性が危ぶまれている。

 六ケ所再処理施設は最初の計画では97年の完成を目指したが、トラブルが相次ぎ、20回近く完成時期を延期している。08年末には高レベル廃棄物を処理する製造試験を中断。完成時期を昨年10月から12年10月に延期し、総事業費は2兆1900億円に上る。一方、もんじゅは95年のナトリウム漏れ事故で停止。昨年、14年半ぶりに運転再開したが再び機器の故障が起きるなどした。【関東晋慈】

毎日新聞 2011年5月18日 東京朝刊

 

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