高２「鉄っちゃん」暴走！　貨物列車にブレーキ！！

　ＪＲ貨物の列車に侵入し、無断でブレーキをかけて業務を妨げたとして、滋賀県警捜査１課と大津北署は２４日、業務妨害容疑で京都市に住む私立高校２年の男子生徒（１６）を逮捕した。ブレーキをかけられたまま、列車は約２５キロ走り、車輪が損傷、列車の運行は約５時間半遅れた。生徒は鉄道マニアで「一度、ブレーキをかけてみたかった」と供述している。

　貨物列車のブレーキをボクの手で回してみたい―。「鉄っちゃん」の夢が、愛する列車にダメージを与えてしまった。

　県警捜査１課とＪＲ貨物関西支社によると、いわゆる「撮り鉄」（列車撮影専門の鉄道ファン）という生徒は２月２日、撮影のために学校を休み、京都市からＪＲ湖西線近江舞子駅（大津市南小松）を訪れた。

　撮影中だった午前、同駅に止まるはずのない貨物列車が何らかの理由で緊急停車。不測の事態に血が騒いだのか、生徒は２０両編成の貨物列車の先頭から２両目の車両デッキに勝手に乗り込んだ。そして、外部に露出した円状の手動ブレーキに手を掛けると、ノブをグルグルと回して車輪を固定した。

　しかし午前９時頃に列車が同駅を出発すると、自分の行為に恐怖を覚え始めた生徒は、同２６分にＪＲの「お客様窓口」に通報。「貨物列車から焦げたような臭いがする」と携帯電話で連絡した。通報は「列車の撮影をしていた際に、たまたま焦げ臭い貨物列車に気付いた」との趣旨だったが、どの車両にブレーキがかかっているかを伝えるなどバレバレな内容だったため、後の逮捕につながった。

　列車を走らせていた運転手は、連絡を受けて、約２５キロ離れた大津京駅（大津市皇子が丘）に午前９時４０分頃に停車。車輪が摩擦によって損傷しているのを確認した。ブレーキは２両目のみに掛けられていたので、残りの車両は無傷だった。

　県警は、車輪を損傷させたことに加え、列車の運行を犯行前の緊急停車の影響も含めて約５時間半遅らせたとして、業務妨害容疑で生徒を逮捕。生徒は容疑を認めているが「一度ブレーキをかけてみたかった。怖くなって自分で通報した」と供述している。

　列車は、メンテナンス担当者が点検した上、ブレーキを解除して運行を継続。終点の福岡貨物ターミナル駅まで無事に到着した。

　鉄道アナリストの川島令三氏によると「１両だけだし、車のサイドブレーキのようなものなので脱線まではしない」とのことだが、「鉄道ファンもマナーが悪い人が増えた。貨物列車に無断で乗り込むだけでとがめられるべき」と指摘している。

　◆鉄道ファンの逮捕例
  ▼トイレットペーパー　２０１０年１０月、ＪＲ東海の採用試験に落ちた私大４年生がＪＲ東海道線の車内で、トイレットペーパーを和式便器に突っ込む器物損壊容疑で逮捕。「恨みでやった」
  ▼「東京」「新宿」盗む　０４年３月、列車の行き先を示す「側面方向幕」を盗んだ容疑で会社員ら３人グループを逮捕。
  ▼ＪＲのために　０３年６月、近鉄内部線の線路にコンクリート製ブロックを置いた無職男が往来危険容疑で逮捕。「ＪＲが好きで近鉄を困らせたかった」
  ▼制服　１９９１年１１月、駅の事務室から制服や制帽を盗んでいた少年グループ２３人が逮捕。盗んだ制服を着て駅員になりすまし、さらに窃盗を繰り返していた。

（2011年5月25日06時05分スポーツ報知）