オフレコ破りかどうか、という話も「ルールを破ったかどうか」が本質ではない。それでは、まったく表面的にすぎる。「そのルールがだれのために運用されているのか」という根本から考えるべきなのだ。先のコラムで書いたように「官僚のオフレコ」は官僚が姿を隠して、世論誘導する手口である。役所の利害優先であって、国民の利害優先ではない。
私は「オフレコ話の内容が国民の側に立っている」ならルールを守る。役所の利益を守るためなら、初めから無視する。「これを出所不明にして書けば、官僚が喜ぶだろうな」という話を喜々として書くような記者は「ルールを守った記者」ではあるだろう。だが、それではジャーナリストの原点はどこに行ってしまうのか。
それにしても、あらためて思うのはネットの威力だ。
新聞やテレビというマスコミは言うまでもなく組織のメディアである。ところがネットは、ごく少人数で情報発信できてしまう。こういうメディアで発信するジャーナリストには社内の縦も横もない。したがって役所が陰湿な圧力をかけようにもかけられないのだ。
フリーランス・ジャーナリストたちの努力には頭が下がる。組織メディアの一員として、せめて戦うチャンスが来たときくらいは精一杯、戦っていきたい。
(文中敬称略)
長谷川幸洋はじめ、佐々木俊尚、津田大介、夏野剛、堀江貴文、上杉隆、三木谷浩が、メディアのタブーとジャーナリズムの未来を語った必読の書。
田原 総一朗
『Twitterの神々 新聞・テレビの時代は終わった』
(講談社刊、税込み1,575円)
amazonはこちらをご覧ください。
楽天ブックスはこちらをご覧ください。
- 「枝野批判」オフレコ発言をすっぱ抜かれ、 今度は東京新聞記者を「出入り禁止」 にした経産省の「醜態」 (2011.05.20)
- 本人に直接言わず、上司に電話 「オフレコ破り」と抗議してきた経産省の 姑息な「脅しの手口」 (2011.05.17)
- 「銀行は東電の債権放棄を」枝野発言に 資源エネ庁長官が「オフレコ」で漏らした 国民より銀行、株主という本音 (2011.05.14)
- 菅政権はあてにならない。 被災地の知事、国会議員が団結し 復興のための「被災地会議」を開け (2011.05.13)
- 「菅首相は役立たずだから外国にいってもらって結構」という米倉弘昌日本経団連会長のホンネ (2011.04.29)
- 本人に直接言わず、上司に電話 「オフレコ破り」と抗議してきた経産省の 姑息な「脅しの手口」 (2011.05.17)
- 「脱記者クラブ」を宣言し、巨大広告主を激怒させて「一流紙の名声」を得たWSJ (2011.01.20)
- ウォーターゲート事件のディープスロートさえ「オフレコ」取材ではなかった米国新聞の「ルール」 (2011.01.06)
- 佐々木俊尚(ITジャーナリスト)×長谷川幸洋(東京新聞論説委員)vol.1 「新聞記者はなぜ権力のポチになるのか」 (2010.06.14)
- ウォーターゲート事件秘話、ワシントン・ポストのスター記者が断念した「記者クラブ的談合」取材 (2011.03.10)
-
-
毎日フォーラム~毎日新聞社1兆4000億円超の被害、農水省試算 (2011.05.24)
-
-
経済の死角実はこんなに高い あなたの町の「本当」の放射線量 (2011.05.24)
-
ソーシャルウェブが未来を創る!日本からしか生まれ得ないウェブサービスもある 「日本発」の可能性 (2011.05.24)