相続手続・遺言書作成・離婚問題に関する基礎知識集
相続手続・相続問題に関する基礎知識
扶養義務とは?
●扶養義務
親族間には、相互に扶養する義務があります。自分の力だけでは生活を維持できない者(扶養権利者)に、一定の義務者に対する扶養請求権を認め、これを行使させることによって扶養を実現させようとする制度です。扶養義務については遺産分割協議や離婚協議などの場面で度々問題となる場合があります。
●扶養当事者の範囲
法律上当然に扶養義務を負うのは、配偶者(妻または夫)、直系血族(子や孫または父母や祖父母)及び兄弟姉妹になります。そのほか、特別の事情がある場合には家庭裁判所の審判によって※3親等内の親族(姻族を含む)にも扶養義務を負わせることができます。直系血族には法定血族も含まれるため、養親と養子との間にも扶養義務が発生します。
※おじおば、甥姪など(自分の血族の場合はその配偶者も含みます)
●扶養義務の種類
(1)生活保持義務
本来家族として共同生活すべき者の義務のことです。例えば、親の未成熟子に対する扶養義務の場合、扶養権利者(未成熟子)が扶養義務者(親)に比べて生活水準が低く、義務者が文化的最低限度の生活水準を維持してなお余力があるような状態であれば当然に発生するとされています。
①親がその※未成熟の子を養う義務
②夫婦が互いに扶養し合う義務
※未成熟子とは経済的に自立していない子を意味します。したがって成年前でも成熟子であることもありますし、成年に達していても未成熟子と認められる場合もあります。また、婚姻関係にない男女から生まれた子とその父親の扶養義務について、父親の認知がある場合は扶養義務が発生します。母親の扶養義務については分娩の事実があれば足ります。
(2)生活扶助義務
通常は生活の単位を異にしている親族が、一方の生活困窮に際して助け合う偶発的・一時的義務のことです。この場合、扶養は例外的な現象ですから、扶養権利者が文化的最低限度の生活水準以下であり、義務者が自分の配偶者、子を含めて最低限度の生活水準を維持できるだけでなく、社会的地位相応の生活を維持できてなお余力のあるような状態のときに発生するとされています。
①子の親に対する義務
②成人した子に対する親の義務
③兄弟姉妹相互間、祖父母と孫の間の義務など
●扶養義務と学費
4年制大学などの高等教育に関する教育費については、相続における※特別受益の問題や離婚の際の養育費の問題など、関連してくるケースは少なくありません。高等教育を扶養義務とするか否かは様々な事情を考慮して決定されるものですので、問題の解決には個々の事情を具体的に把握することがとても重要になります。
※特別受益のページをご参照下さい。
【扶養義務を認めた裁判例】
①子の成育してきた家庭の経済的、教育的水準を考慮して親の子に対する扶養 義務を4年制大学卒業までとしたもの
②成熟子の大学進学の教育費全額を負担するとの取り決めがある場合に親の成熟子に対する扶養義務を認めたもの
【扶養義務を否定した原審判を取り消し差し戻した裁判例】
①4年制大学に在学する成熟子に対する親の扶養義務について、奨学金、アルバイト収入、その他の学費貸与を受ける可能性、進学に関する親の意向などの学業継続に関連する事情を考慮して決定すべきとして、子が成人であること、健康であることから要扶養状態にないとした原審判を取り消し差し戻ししたもの