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被災地支援と京の教団 「備えや協力」もっとできる 文化報道部・箕浦成克
東日本大震災の被災地に対し、京都に本山を置く仏教教団はどう対応したのか。特に、宗祖をしのぶ50年に一度の大法要「遠忌」の年を迎えた浄土宗と総本山の知恩院、浄土真宗の東西両本願寺の動きを注視してきた。これらの大教団は被災地への支援活動を独自に進めたものの、支援の現場に身を置く僧侶から厳しい視線を受けていた。この「ねじれ」は何なのか。ずっと考えてきた。 3月11日の震災直後、東京都の浄土真宗本願寺派・築地本願寺や浄土宗大本山・増上寺は、「帰宅難民」を一時的に受け入れるために境内を開放した。三つの教団は、被災状況を把握するために仙台市に職員を派遣、救援物資も大量に送った。また、宗派内の僧侶らの受け皿となるボランティアセンターを仙台市に独自に設置し、寺院や一般家屋のがれき撤去にも動いた。 「被災地に対して宗教者は何もしていない」との批判を聞いたことがあるが、間違っている。しかし、人の生老病死にかかわり、遠忌のために信徒から100億円単位の金を集めた教団という組織なら、大災害に苦しむ人のために、もっと貢献ができるのではないかとも思う。 教団の被災地支援は、何が足りないのか。現場で動く僧侶たちに聞いてみた。 千葉県松戸市の自坊で福島第1原発事故の避難者を受け入れた浄土宗僧侶の鈴木悦朗さん(53)は「教団という組織は、世間や内部の評価が気になるから行動が遅くなるもの。だから、大災害後の初期段階では個々の寺が地域でできる支援をすべきだ」と指摘した。また「大切なのは、寺は社会資源なんだという視点を持っているかどうかだ」とも話した。 「普段から社会とどう接しているか、何をしているかが肝要だ」との答えも多かった。連載「遠忌のすがた」などの取材を通じて、教団の指示を受けずに被災地で活動する日蓮宗僧侶の杉若恵亮さん(51)や真宗大谷派僧侶の川浪剛さん(50)、鈴木さんらが口をそろえた。彼らは、今回の大震災でも、普段からつながりのある社会活動団体との連絡を通じて現地の状況を確認していた。 歴史や規模は異なるが、立正佼成会は、普段から会員(信者)が月に数回食事を抜き、その分のお金を積み立てている。今回の震災では、行政やNGO(非政府組織)に5億円を拠出することを早々に決定した。真如苑は、震災発生2日後に被災した県市や社会福祉協議会などに1億円の拠出を決定。天理教は、今回の被災地に重機を投入してがれきを撤去した。伝統仏教教団に比べ、いずれも動きが早い。 今年、遠忌を迎えた大教団は、制度的に意思決定に時間がかかるという声も聞かれる。しかし、社会の動きに即応するための「備え」は、今の制度でも十分にできる。こんなときこそ、教団同士の協力もできるはずだ。 震災発生から2カ月が過ぎた。今後、必要とされる支援内容は変わっていくだろう。即応しにくい体制であるならば、教団としての長期的な支援のあり方を提示すべきだ。 [京都新聞 2011年5月11日掲載]
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