2011年5月24日 23時5分
福島第1原発事故の原因究明のため、政府が24日の閣議で設置を決めた「事故調査・検証委員会」(委員長内定者・畑村洋太郎東大名誉教授)には、首相、閣僚、行政機関など政府関係者に説明を求める強い権限が付与された。独立性の高い検証を掲げた菅直人首相の意向を踏まえ、閣議決定で調査の実効性を裏付けた。事故直後の混乱で政府の決定過程の記録は十分残っておらず、徹底した事実確認が求められている。
枝野幸男官房長官は24日の記者会見で、検証委の権限について「政府関係者は閣議決定に従う義務があり、法的裏付けのある強制力がある」との認識を表明。その上で、民間企業の東電についても「しっかりと検証を行うことは、事態の悪化を防ぐために必要だ。閣議決定に基づき、(調査に)全面協力してもらう」と述べた。
首相は10日の記者会見で検証委の運営に関し、原子力関係者からの独立性のほか▽国民、国際社会への公開性▽行政、電力業界などの制度や組織のあり方が事故に及ぼした影響を調べる包括性--の3点が必要と強調。原子力業界と関係が薄く、失敗の本質を分析する「失敗学」を研究する畑村氏を委員長に選んだ。
検証委の事務局長には、小川新二最高検検事を充てる方向で調整している。残る委員は学識者や法曹界などから10人程度起用し、近く初会合を開く。年内に中間報告、来年夏をめどに最終報告をまとめる予定だ。技術顧問も置き、原子力関係の国際機関職員にも助言を求める。
一方、野党側からは検証委の事務局を政府内に設置したことで、独立性に疑問も出ている。自民党の石原伸晃幹事長は24日の会見で「お手盛りだ」と批判。枝野氏は「政府としての検証はいずれにしろ必要だ。国会の立場で検証することは否定しない」と反論した。【小山由宇】