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福島第1原発:容器損傷、分析以上か トリプル溶融

福島第1原発2号機(左)と3号機=2011年3月16日午後撮影(東京電力提供のビデオから)
福島第1原発2号機(左)と3号機=2011年3月16日午後撮影(東京電力提供のビデオから)

 福島第1原発1号機に続き、2、3号機でも燃料の大半が溶融していることを東京電力が24日認めた。ただし、東電は注水停止後に全燃料が露出した、という最も過酷なケースを想定しても、「大部分の燃料は圧力容器内にとどまっており、圧力容器の損傷は限定的」と説明し、1号機に比べ損傷は軽いとの見方を強調。その原因について松本純一・原子力・立地本部長代理は「2、3号機では津波後に非常用の冷却装置(RCIC)が早期に起動し、原子炉に給水できていたことが大きい」と述べた。

 ◇炉圧低下、密閉失い 東電は「限定的」強調

 だが、2、3号機では圧力容器や格納容器の圧力がほぼ1気圧になっており、格納容器がある程度健全な1号機より、両容器の密閉性が失われていることが推定される。また、1号機よりも高濃度の放射性物質を含む汚染水がタービン建屋地下に大量に漏れ出すなど、状況は1号機よりも深刻だ。こうした点から、東電の分析とは裏腹に、圧力容器と格納容器は大きく損傷している可能性がある。

 今回東電が示した分析は、原子炉の冷却作業や汚染水の処理など事故の収束作業にどのような影響を与えるのだろうか。

 沢田隆・日本原子力学会副会長は「程度の差はあるとしても、1号機と同様に燃料のかなりの部分が溶融していることは予想がついていた。初期に燃料は溶けてはいても、現在は圧力容器底部で燃料が冷やされていると考えられる。炉心を冷却安定させて、放射性物質の放出を抑えるという工程には、特に問題はないだろう」と話す。

 一方、小出裕章・京都大原子炉実験所助教(原子核工学)は「圧力容器の底に穴が開いていれば、注入した水と一緒に燃料も流れ落ちており、格納容器の損傷もありうる。そうなると水をためられず冠水(水棺)だけでなく循環式冷却も難しくなり、工程表どおりには行かないのではないか。水位の維持と低下で2種類のデータを出してきたということは、東電自身も何が起きているのか不明だという状況だ。政府側からも『収束に向かっている』などの見通しが聞こえてくるが、実際はそうではないことを表している」と話す。【酒造唯、藤野基文、久野華代】

毎日新聞 2011年5月24日 12時01分(最終更新 5月24日 13時22分)

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