経済の死角

“丸裸”ホリエモン
「それでも続ける宇宙ロケット開発」への情熱

旧ライブドアとの訴訟和解で
208億円の支払いが決定

2010年01月16日(土) FRIDAY
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ロケット狂のホリエモン。 エンジンの材料に繊維強化プラスチック(FRP)が 使えないか模索している
〔PHOTO〕船元康子

 「宇宙に行こうとしたら一人30億円くらいかかる。高すぎますよね。せめて一人1000万円を切る値段で行けるようにしないと。そのためには、自分たちの手でロケットを作るしかないんですよ」

 そう語るのは、ホリエモンこと、元ライブドア社長の堀江貴文氏(37)だ。ホリエモンは'09年12月25日、LDH(旧ライブドア)との訴訟に和解し、株や配当金など所有するほぼすべての資産208億円を支払うことが決まったばかり。いわば“丸裸”の状態なのに、宇宙への情熱はますますヒートアップしているのだ。

 実は、ホリエモン、3年前から仲間数人と一緒に独自ロケットの開発を進めてきた。そして、将来的には、そのロケットを量産し、打ち上げの値段そのものを安くしようと計画しているのである。

 「今作っているのは、3段式ロケットの2段目のエンジン。実験機なので、大きさは50cm四方もないですよ。材料はステンレスやアルミなどで、燃料は、液体酸素とエタノール。いわゆる液体燃料ロケットと呼ばれるものです。基本的な仕組みは、第二次大戦中にドイツのフォン・ブラウンが世界で初めて開発した液体燃料ロケット『V2』と同じ。つまり、燃料タンクに入った液体酸素とエタノールに圧力をかけて、燃焼室で噴射し、それがぶつかりあって霧状になったところで燃焼させ、推進力を得るのです」

 このホリエモンのロケット、すべて手作りで進められているものだ。いったいなぜ、ホリエモンはこうもロケット開発にのめり込んでいるのか―。

 「子供の頃から宇宙が好きだったということ。ロケットでの有人飛行を描いたアニメ『王立宇宙軍 オネアミスの翼』が大好きで、もう何十回も見ています」

 ロケット開発の直接のきっかけは、'05年に、ロシアから宇宙カプセルを購入したことだという。カプセルは買ったものの、それを打ち上げるためのロケットの値段が高すぎて、手が出なかったのだ。

 「ロケットの値段が高いのは、商用で使えるロケットが実質的にロシア独占だからですよ。例えば、30年以上前に作られたソユーズロケットは、もう償却も終わっているはずなのに、1本50億円という高値でアメリカに売られている。アメリカは、'10年にスペースシャトルが引退して、新型ロケットを開発するまでは有人打ち上げにソユーズを使う方針だから、ロシアはさらに値段をつり上げようとする。そもそもロケット開発は国主導なので、コストのことなんて誰も気にしない。それで、いつまでたってもロケットの値段が下がらないんです」

 そんななか、ホリエモンは「だったらロケットを自前で作ろう」と考えていた仲間(SF作家の笹本祐一氏、漫画家のあさりよしとお氏、科学ジャーナリストの松浦晋也氏ら)と知り合い、意気投合。だが、'06年1月、ライブドアの粉飾決算を巡る証券取引法違反容疑で逮捕され、東京拘置所に勾留されてしまう。意気消沈したホリエモンを元気づけたのは、またもやロケットだった。

 「エンジンの主任設計者がロケットエンジンの図面を差し入れてくれたんです。拘置所の中でずっとそれを眺めていました。本もかなり読んで、旧ソ連のロケットに詳しくなりました」

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