福島第1原発事故を受け、複数の原子力関連施設を抱える本県では県民の間に不安が広がっており、6月5日投開票の知事選でも、原子力政策が争点に浮上している。選挙戦で各陣営は有権者に何を訴え、どのような対策を取ろうとしているのか。原子力政策をめぐる各候補の主張や支持政党の発言に注目した。
本紙は3候補に「原発や核燃料サイクル関連施設が集中する本県は、原子力政策と防災にどう対応すべきか」を質問した。
県内の原発新設を凍結する考えを示す山内崇候補(56)=民主、国民新推薦=は「より高いレベルの安全基準に基づく防災体制の構築が求められる。想定外など生じない体制が不可欠」と主張。「県独自の検証のみならず、原子力安全・保安院、原子力安全委員会の独立性の担保、組織の見直しを求める必要がある」と指摘した。
県独自の原子力安全対策検証委員会設置を表明している現職の三村申吾候補(55)=自民、公明推薦=は「国は今回の事故を早期に収束させ、エネルギー政策の在り方をしっかり検証すべき」とした上で、「今回の事故は指針の基準を超えた措置が講じられており、県地域防災計画を見直す必要がある」との考えを示した。
六ケ所再処理工場の本格稼働中止などを訴える吉俣洋候補(37)=共産公認=は「福島第1原発は技術的に未確立だと立証された。核燃・原発からの撤退が求められる」と国内原子力施設の危険性を指摘。「自然エネルギーへと切り替え、地産地消型の一大産業を形成する」とした。
山内候補は21日に八戸市内で開いた演説会で「私も原子力政策を推進してきた反省を込め、しっかり安全対策をする」と述べる一方、「原発が全部止まれば復興もできない。安全対策をし、地元の了解が得られれば東北電力・東通原発の運転再開はある」と今後を見据える。
一方、三村候補は22日、推薦を受けている公明党県本部の臨時大会に出席し、「事業者や国が大丈夫だと言っても待ったを掛ける。これが県民の安全を守る責任ある立場」と、国や事業者任せにしない姿勢を強調した。
吉俣候補は同日、青森市内の街頭演説で「山内さんは原発新増設を凍結すると言うが、凍結は解凍すれば元に戻るだけ。三村さんも本気なら県独自の検証委員会に権限を持たせるべき」と批判。「私は原発ゼロの世の中を目指す」と他候補との違いを訴えている。
現政権を担う民主党は「現時点で言えることは、原発は改めて安全対策をきちんとやる。新しい原発を造るかは、これから結論を出したい」(直嶋正行副代表)と歯切れが悪い。
三村氏が推薦を受ける自民党は、これまで国の原子力政策を推進してきただけに「原子力安全・保安院を経済産業省の中につくったのは大きな誤りだった。検証を徹底的に行わなかったことも、われわれは反省しなければ」(石破茂政調会長)と苦しい立場。
共産党は「起きないとされた原発事故が実際に起き、原発推進派も今までの主張を変え始めた。断固とした決意の知事を県民が望むのなら、それは吉俣候補しかいない」(堀幸光県委員会委員長)と原子力政策に自信を見せている。