福島第一原発事故の賠償枠組み案に関連して、枝野幸男官房長官が銀行の債権放棄がなければ「国民の理解はとうてい得られない」と会見で発言した。
すると、玄葉光一郎国家戦略相はテレビで枝野発言について「言い過ぎ」と批判し、閣内で認識の違いが露呈している。
それだけではない。役所からも“枝野批判”が飛び出した。細野哲弘資源エネルギー庁長官が十三日の論説委員懇談会で「これはオフレコですが」と前置きして、こう語ったのだ。
「はっきり言って『いまさら、そんなことを言うなら、これまでの私たちの苦労はいったい、なんだったのか。なんのためにこれ(賠償案)を作ったのか』という気分ですね」
賠償案は株主や銀行の責任を問わず事実上、国民負担による東電救済を目指している。長官発言は「苦労して株主と銀行を救済する案を作ったのに、枝野発言はいったいなんだ」と怒りを伝えようとしたのだ。
経済産業省・資源エネルギー庁は歴代幹部の天下りが象徴するように、かねて東電と癒着し、原発を推進してきた。それが安全監視の甘さを招き、ひいては事故の遠因になった。
自分たちがどちらの側に立っているか、率直に述べている。まあ正直な官僚である。同意したわけでもないのに勝手なオフレコ条件に応じる道理もない。「真実」を語る発言こそ報じるに値する。 (長谷川幸洋)
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