2011年5月18日3時2分
1967年に茨城県利根町布川(ふかわ)で起きた強盗殺人事件「布川事件」の裁判をやり直す再審で、水戸地裁土浦支部が24日に元被告2人に無罪判決を言い渡す見通しが高まるなか、検察当局は無罪判決への控訴を見送る方針を固めた。再審でも無期懲役を求刑したが、裁判を続けても有罪判決を得られる見込みが少ないと判断した。これにより、元被告2人の無罪が確定する公算が大きくなった。
元被告は、桜井昌司さん(64)と杉山卓男さん(64)。再審判決は3月16日に言い渡される予定だったが、東日本大震災の影響で今月24日午後1時半に延期された。
2人は大工の男性を殺害し、現金10万円余を奪ったなどとして起訴され、78年に最高裁で無期懲役が確定した。強盗殺人罪で有罪とされた主な根拠は、捜査段階の「自白」と、「犯行現場の近くで2人を見た」という目撃証言だった。
96年に仮釈放された後、弁護側は「殺害方法が自白と異なる」という鑑定書などを新証拠として請求。水戸地裁土浦支部が2005年に「自白の信用性が揺らいだ」として再審開始を決め、東京高裁と最高裁も支持したため、10年7月から再審が同支部で始まった。
再審で検察側は、事件現場で採取された遺留品のDNA型鑑定を求めたが、同支部に却下されたため、立証の柱を失った。ただ、無罪の可能性が高まる中でも検察側は「2人が犯人であることは明らか」と再び無期懲役を求刑していた。
栃木県足利市で90年に女児が殺害された足利事件の再審では、検察側は無罪を求刑し、10年3月の無罪判決後に控訴できる権利(上訴権)を放棄した。しかし、布川事件では無罪判決が出ても上訴権は放棄せず、2週間の控訴期限が過ぎるのを待って自然に確定させる方向で検討している。