「首相が再臨界について心配していたのは事実だ」
細野氏は22日の番組でこう認めた。細野氏らは首相が直接指示して、海水注水を中断させたとの見方は否定するが、首相の言動が東電側に「首相の意向」として伝わった可能性がある。
「首相が誰かから『海水にホウ酸を入れてもしようがない。むしろ有害だ』と聞いた。原子力安全・保安院も東電も『ホウ酸が必要』と訴えたが…」と官邸筋は語る。
結果的に3月12日午後7時4分の海水注入時や、同8時20分の注入再開の際には、中性子を吸収し再臨界防止に有効な「ホウ酸」は投入されなかった。首相が外部の声に頼り判断を遅らせたとの疑惑は絶えない。
そもそも東電の清水正孝社長は5月2日の参院予算委員会で、3月12日の海水注入指示の時間を「真水停止(午後2時53分)の前」と証言。この日は官邸に東電幹部もいた。首相が本当に海水注入を知らなかったとしたら、初動時に、首相がほとんど状況把握できていなかったことになる。
首相は、3月15日に自衛隊による空中放水の検討を指示する際の打ち合わせでも外部意見にこだわった。
首相「ところでホウ酸は粉末で入れるのか液化して投入するのか」
事務方「…」
首相「答えられないのか。俺の知っている東工大(首相の母校)の教授と議論してから来い」
班目氏の問題は「文言訂正」で一件落着を装ったものの、抗議を受ければその場で訂正できるほど、政府の報告書が裏付けのないものであることを世に示してしまった。首相の判断根拠は、さらに説明されなければならないだろう。