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きょうのコラム「時鐘」 2011年5月23日
七尾や氷見沖でホンマグロが捕れ出した。料理人の間では「こんにゃくマグロ」と呼ばれる高級魚、と教わった
身がぷりぷりしていて柔らかい。マグロ特有の脂のしつこさではなく、みずみずしさが自慢だそうである。こんにゃくという異名は、包丁さばきの難しさにもよる。生半可な腕では、とてもうまくさばくことができない 劇画「あしたのジョー」の1場面を思い出す。少年院のボクシング大会で、力任せに繰り出す主人公のパンチを、仲間が自在に身をくねらせて避け続けた。名付けて「こんにゃく戦法」。剛を制する柔がある。本物の柔はしたたかに強い 被災地からの報道に接しても、そう思う。東北人は粘り強い。長い苦難の日々と、為政者による支援の頼りなさに耐えている。しなやかに強い。被災地だけではない。私たちにも、程なく節電の暑い夏が来る。天災とそれに続く人災は、これからもいろんな難題を持ち込んでくるだろう。粘って耐えねばならない 能登の海から、初夏のマグロ豊漁の報を聞きたい。そうなれば、少しはお裾分けに預かれる。「こんにゃくパワー」にあやかれる。 |