第215回「もんじゅの炉心用装置落下、死んだも同然に」
(2010/08/28)
福井県敦賀市にある高速増殖炉「もんじゅ」で26日、重さ3.3トンの炉心用装置が原子炉容器内に落下する事故がありました。福井新聞が28日、「もんじゅ、復旧作業長期化も 炉内中継装置落下」と伝えるなど、深刻になる兆しが現れています。現時点では異常は現れていませんが、運転を再開して原子炉容器が大丈夫か調べることが至難なのです。
この炉内中継装置はもんじゅ特有のもので、ネット上で調べると高度情報科学技術研究機構にある「図3 原子炉内での燃料交換と移送」
が分かりやすそうです。
炉内中継装置と示されている筒の下に落ちた本体があり、移送ポットや中継ラックを支えているのでしょう。核燃料を交換する装置から受け取って炉外へ搬出する中継ぎ役の装置です。作業が終わって撤去する際に、途中でグリップが外れて落下していますから、おそらく図の位置付近まで戻っているはずです。
「状態確認は、原子炉容器内にファイバースコープやCCDカメラを挿入し、グリッパーの外観をまず調べる。異常がなければ、グリッパーを操作し、開閉などの作動に問題がないかを確かめる」「その上で、落下したとみられる炉内中継装置上部の状態をファイバースコープなどで確認し、さらにグリッパーを下げて同装置の位置を調査する。これらの後に、グリッパーが付いた同装置の収納設備を取り外し、目視でグリッパーを詳しく点検する」「原子力機構は『すべての状態確認を終えるめどは分からない』としている」
原子炉容器内は軽水炉のように水で満たされているのではなくて、高温の液体金属ナトリウムですから不透明で目視するなど困難です。それでも装置の上部は対象範囲が狭いので何とかなるでしょうが、落下で衝撃音がした炉心周辺部の損傷状況をどうやって確認するのでしょうか。そんな深い場所までファイバースコープやCCDカメラを下ろしての細かい位置制御は難しく、不透明な液体中で目視確認をして意味があるのか、大きな疑問があります。
気になってTwitterを見たら、批判の嵐です。その中に「高速増殖実験炉『常陽』の事故とその重大性」の参照を求める発言がありました。もんじゅと同じナトリウム冷却の常陽でも機器の破損事故があったのに、不透明であるために発見も対処も遅れたといいます。「そもそも『もんじゅ』では、究極の事故=炉心崩壊事故対策として、ナトリウム液位を炉心上面が見えるところまで下げられない構造になっている。破損を見つけること自体できない」。今回の損傷場所はさらに深いのです。
この落下事故で、もんじゅは事実上、死んだも同然になりました。
【参照】第187回「信頼性無し、もんじゅ運転再開は愚の骨頂」
【続報】2010/10/17第224回「高速炉もんじゅに出た『生殺し』死亡宣告」
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