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放射性物質「ヨウ素-131」を、100億ベクレル以上。
これは今から26年前、甲状腺がんの手術と、肺への転移の治療のために、私がある女子高校生に3回にわたって投与した放射線量です。
このヨウ素-131だけでなく、同様に今回の原発事故で大気中に放出されているセシウム-137、ストロンチウム-90などの放射性物質やその関連物質は、病院では患者の治療に使われているのです。当然、人体への影響もかなり研究されています。
特にヨウ素-131は、50年以上前からバセドウ病、甲状腺がんを代表とした甲状腺などの病気の治療に、カプセル剤として投与されています。ヨウ素-131の出す放射線の作用で、狙った細胞に強く障害を与えようと、病気の部分にできるだけ多く集まるように工夫しながら大量に投与します。
(とは言え、放射線による障害はできるだけ少なく抑えた方がよいのは、当然のことです。そこで、病気の《診断》と《治療》では、異なる考え方に立ちます。昔は、甲状腺の《診断》にも少量のヨウ素-131が使われていたのですが、今では、それよりも放射線障害の少ないヨウ素-123などが使われるようになりました。)
バセドウ病は、ヨウ素-131を服用して2ヶ月くらいで治ります。冒頭でご紹介した女子高校生のように、甲状腺がんの肺転移の治療の場合は、それよりもさらに大量の投与で、治癒を目指します。
−−−今回の事故以来、テレビで解説をする機会が増えた結果、先日思わぬお手紙をいただきました。まさにその、26年前の高校生の御両親からの近況報告でした。
「テレビで、昔とお変わりないお姿を拝見しました。当時16才で高校生だった娘は、甲状腺がんの肺転移で、親にとって希望のない毎日でした。しかし、治療していただき、その後結婚、出産。このほど、その子供が高校生となりました。娘は、今も会社員として仕事しながら、幸せに暮らしています。」
がんを克服した自分達の娘が伴侶を得て、高校生になった孫と幸せに生活している祖父母の喜びが、目に浮かびます。このようなお手紙をいただくと、医者冥利につきます。
遠藤 啓吾 京都医療科学大学 学長
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