菅直人首相は21日、日中韓首脳会談のため来日した中国の温家宝首相、韓国の李明博大統領とともに福島市内にある福島第1原発事故の避難所を訪れ、避難住民を励ました。3首脳がそろって福島を訪問することで、日本の安全性を国際社会に訴え、世界に広がる風評被害を払拭(ふっしょく)したい考え。温首相はこれに先立って訪れた宮城県名取市で記者団に、安全確保を条件に日本の農産物の輸入規制を緩和する方針を示した。
外国首脳が福島県を訪問するのは、原発事故後初めて。3首脳は午後3時ごろ、福島市の体育館に到着。菅首相の勧めで福島県産のサクランボ、キュウリ、ミニトマトなどを試食した。菅首相は両首脳に「本当にありがとうございました」と述べた。その後、約20分間、体育館内の避難住民を励まし、「いつまでもお元気で」などと声をかけた。
これに先立ち温首相は、震災による津波で大きな被害を受けた名取市閖上(ゆりあげ)地区などを訪問。終了後、記者団に「安全を確保できる前提で、日本の農産物や他の製品の中国の輸入(規制)を緩和させていきたい」と述べた。このほか震災で落ち込んだ観光交流の回復・拡大、復興・再建の視察団や貿易投資促進の代表団の派遣などの支援策を表明した。
李大統領は同地区で献花した後、宮城県多賀城市の避難所を訪れ、日本語で「これからみんなで頑張ってください」と声をかけた。
両首脳は同日夜、東京・元赤坂の迎賓館で菅首相主催の夕食会に出席。福島産の日本酒や被災地産の食材を使った料理がふるまわれた。菅首相は席上、福島訪問や農産物試食に触れて「風評被害をはねのける上で、本当に大きな力になると確信している」と述べた。
日中韓首脳会談は22日午前に行われ、原子力安全をめぐる連携や防災、復興などでの協力強化を確認する首脳宣言を発表する見通し。日本の農産物や加工食品の輸入規制について「科学的根拠に基づいて対応する」との合意も盛り込む。さらに菅首相は日中、日韓の2カ国会談で輸入規制の見直しを求める考えだ。【西田進一郎、須藤唯哉】
毎日新聞 2011年5月21日 20時54分(最終更新 5月21日 23時59分)