福島第1原発1号機で始めた海水注入が一時中断した問題で、注入によって再臨界の危険性があることを指摘したとされた原子力安全委員会の班目春樹委員長は22日、共同通信の取材に対し「専門家としてそんな指摘をするわけがない。怒り心頭だ」と全面否定した。
一方、細野豪志首相補佐官は同日のフジテレビ番組で、班目氏が再臨界の危険性を指摘したと重ねて説明した。
班目氏によると、東日本大震災翌日の3月12日午後6時から官邸であった海水注入の検討の場で、原子炉への影響について意見を求められた。中長期的には原子炉圧力容器に悪影響を与える可能性があると指摘したが「再臨界のことを聞かれた記憶はない」とした。
政府・東京電力統合対策室は今月21日の記者会見で、海水注入による冷却に関し「原子力安全委員長から『再臨界の危険性がある』との意見が出された」との経緯を記した文書を発表した。
班目氏は、文書は発表直前に初めて示されたとし、「事実関係が違うと抗議したが、そのまま発表されてしまった」と対策室の対応を批判。「専門家ならば誰もが、あの状況では冷却を最優先するべきだと判断するのは当然。(可能性がほとんどない再臨界の意見を出したとされたのは)原子力の“げ”の字も知らない素人だと侮辱されたようなもので、怒り心頭だ」と述べた。
また、枝野幸男官房長官は22日、青森県三沢市で記者団に「東電がやっていることを(政府が)止めたことは一度も承知していない」と政府の指示を否定。「時期は正確ではないが、水をうかつに入れると再臨界の可能性があると検討されたのは記憶している」と述べた。〔共同〕
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