「大相撲技量審査場所千秋楽」(22日、両国国技館)
異例ずくめとなった技量審査場所を、横綱白鵬が偉業達成で締めくくった。結びの一番で大関魁皇に寄り切りで敗れたものの、13勝2敗で通算19度目、そして元横綱朝青龍に並ぶ史上最多7場所連続の優勝を飾った。魁皇は9勝目を挙げ、元横綱千代の富士の歴代最多1045勝へあと1勝と迫った。関脇琴奨菊が、大関把瑠都を破って10勝目。2場所連続で2けた勝利を挙げ、来場所で大関とりが懸かる。
◇ ◇
強い者が強いんだ‐。千秋楽は魁皇に不覚を取ったものの、白鵬が史上最多タイとなる7場所連続優勝を達成。八百長の存在が明らかになり、不信の目が向けられる土俵で、横綱が変わらぬ強さを示した。
偉業達成にも笑顔はなし。神妙な表情で「長かったような気がします」と息をついた。「7連覇はすごいことかもしれませんけど、結果を出せたことが何よりです」。無事に15日間、横綱の責務を果たし終えたことに安どした。
2月2日に八百長問題が発覚し、3月の春場所が中止に。関与した25人の力士が角界を去った。さらに26歳の誕生日だった3月11日に東日本大震災が起こり、「今、相撲をやっていいものか」と悩み苦しんだ。夏場所が通常開催とならず、技量審査場所として開催されることが決まると、ボイコットすら考えた。
場所前は「優勝しない方がいいのかな」と発言するなど、投げやりな気持ちが心を支配した。「同じ釜の飯を食った仲間が突然いなくなり、寂しい気持ちがあった」。ふさぐ心を、残る仲間がほぐしてくれた。「稽古でいろんな関取と胸を合わせて、一生懸命にやっていこうというのを感じた」。仲間とともに角界を守り抜く決意を固めた。
異例ずくめの場所を、横綱の優勝という“いつも通り”の結果で締めた。「強い者が強いんだ。勝負は甘くない。土俵で失った信頼は土俵で取り戻す。少しは(信頼を)取り戻せたかな」。今場所の重責を物語る、吹き出物が目立つ顔にやっと笑みが浮かんだ。「負けて相撲を覚える。自分が強くなる道だと思うよ」。しみじみと自分に言い聞かせた。
ソーシャルブックマーク・RSS・twitter・Facebook