東京電力は、福島第一原子力発電所から流出した放射性物質を含んだ汚染水が、海でどのように広がったかシミュレーションの結果を公表し、汚染水は先月中旬をピークに濃度を減少させながら南下したあと、茨城県沖で黒潮に乗って東に拡散し、今後さらに下がると予想しています。専門家は、魚介類など環境への影響を具体的に把握するために「生態系全体を網羅する十分な調査が必要だ」と話しています。
福島第一原発では、2号機と3号機の取水口付近から高濃度の汚染水が海に流れ出しているのが見つかったほか、原発の施設にたまった比較的低濃度の汚染水が緊急の措置として放出されました。海に放出された放射能の量は合わせて4700兆ベクレル余りと推定されていて、それが海でどのように広がったか東京電力はシミュレーションの結果を公表しました。それによりますと、先月1日から6日にかけて、流出が続いた2号機からの汚染水の影響が大きく、先月11日には汚染水は福島第一原発で許容されている値を上回る濃度のまま、海岸沿いを南に細長く広がったとしています。汚染水はその後、濃度を下げながら、今月1日には福島第一原発からおよそ150キロ離れた茨城県沖まで南下し、今月11日になると、今度は黒潮に乗って東の沖に拡散したと推定しています。東京電力では、汚染水の濃度は、今後、さらに下がると予想していて、調査を続けることにしています。これについて、海流や海洋生物に詳しい東京海洋大学の石丸隆教授は「今回は汚染水がどう広がるかを示しているにとどまり、放射性物質の影響を示したものではない。確かに濃度は拡散して下がってきているが、海底の堆積物やプランクトンなどから魚介類にどのように放射性物質が移っていくのか生態系全体を網羅する十分な調査が必要だ」と話しています。