本ネタにはまどか☆マギカ本編の重大なネタバレが含まれています、ご注意下さい。
A.D.2307、AEU軌道エレベーター、AEU軍事演習場にてモビルスーツイナクト、AEU初の太陽エネルギー対応型の発表。
人革連軌道エレベーター天柱、その静止衛星軌道ステーションで電力送信10周年を記念する式典が行われている所へのテロリストの襲撃。
その両者に対しての機動兵器ガンダムによる介入が行われた。
後者においてはガンダムによってテロリストの襲撃を迎撃され、テロは防止された。
そして翌朝、UNION、経済特区東京でニュースが放送され、あちこちのモニターにアナウンサーの姿が映しだされる。
[おはようございます。JNNニュースの時間です。まず最初は人類革新連盟の軌道エレベーター、天柱の高軌道ステーションで起きた襲撃事件の続報です。日本時間の今日未明テロリストと思われるモビルスーツにより人革連の高軌道ステーションが襲撃にあい、ミサイルが発射されました。しかも、正体不明のモビルスーツがこれを迎撃。この映像は偶然居合わせたJNNクルーがカメラに収めたものです]
テロリストの搭乗するヘリオンをガンダムヴァーチェが撃破した映像が映しだされる。
大学のあるモニターの前、ルイス・ハレヴィがサジ・クロスロードを伴って近くのテーブルに座っている知り合いの男子学生に声をかける。
「なになに、どうしたの?」
学生が顔をルイスに向ける。
「こいつがテロをやっつけたんだと」
「モビルスーツ?」
サジが彼に尋ねる。
「どこの軍隊?」
「それがわかんないんだって」
両手を広げ、肩を竦めて答えた。
「どういうこと……?」
ザジは目をモニターに向けて呟いた。
[……事件の最新情報です。たった今JNNにテロを未然に防止したと主張する団体からビデオメッセージが届けられました。彼らが何者なのか、その内容の真偽の程も明らかではありませんが事件との関連性は深いものと思われます。ノーカットで放送しますので、どうぞご覧ください]
画面が切り替わり、そこに映しだされたのは、真っ白の画面。
そこに、無機質な赤い双眸が現れた。
[地球で生まれ育った全ての人類に伝えるよ。僕らはQB。地球人類の君たちからすると、異星生命体とでも言うのかな]
ズームが解かれ、その生命体の全貌が顕になる。
ネコのような、耳はウサギのようにも長い、先端にはリングのついた四足生物。
二つの前足を行儀よく構え、犬で言えばおすわりの状態で椅子に鎮座していた。
「何これ、可愛い!」
ルイスが声を上げる。
「い……異星生命体?」
訳がわからないよ、という顔でサジが混乱する。
[僕らQBの活動目的は、この地球から戦争行為を根絶することにあるんだ。僕らは、僕らの利益の為に行動する。戦争根絶という目的のために、僕らはこの星にやってきた。ただ今をもって、全ての人類に向けて宣言するよ。領土、宗教、エネルギー、どのような理由があろうとも、僕らは、全ての戦争行為に対して、僕らのやり方で介入を開始する。戦争を幇助する国、組織、企業なども、僕らの介入の対象となる。僕らはQB。この星から戦争を根絶させるためにやってきた異星生命体だ。繰り返すね。地球で生まれ……]
同じフレーズが可愛らしい少年のような声で繰り返され始めた。
―人革連・士官待機室―
「異星生命体だと?」
セルゲイ・スミルノフが言った。
―AEU軍附属病院・病室―
「コイツか!? 俺をこんな目に遭わせやがったのは! ってか何だよコレ!?」
パトリック・コーラサワーの叫びに答える者はいなかった。
―経済特区日本・路上―
「この生物……可愛い」
絹江・クロスロードが呟いた。
―天柱・リニアトレイン内―
「紅龍……アレは何?」
王留美が愕然とした表情でモニターを見て言った。
「至急各エージェントに調査を指示します」
―アザディスタン王国王宮―
「戦争を動物が解決する……?」
マリナ・イスマイールは全く要領を得ない様子で呟いた。
―アフリカ圏・ジープ内―
「っははははは! これは傑作だ! 異星生命体? 戦争根絶? 訳がわからないな、QB!」
グラハム・エーカーがジープを運転しながらラジオ音声でQBの演説を聞き、笑い声を上げた。
「いやはや、本当に予測不能な事態だよ。全く、訳がわからない」
首を振って助手席のビリー・カタギリが返答した。
―UNION領・都心の一室―
アレハンドロ・コーナーの元に仕えていたリボンズ・アルマークは発表の映像が流れた瞬間、アレハンドロなんて構ってられるかと焦るように外へと飛び出していった。
「リボンズ! 何処へ行った!」
と、アレハンドロの叫び声だけが、響いていた。
―CBS-70プトレマイオス・ブリッジ―
艦内は騒然としていた。
「この生き物は! 一体! 何だっ! 計画を最初から歪めるなど万死に値する!」
身体をわなわなと震わせ、モニターに映るQBを指さして、最初に激怒したのはティエリア・アーデ。
スメラギ・李・ノリエガが腕を組み、顎に手を当て、考えるようにして言った。
「落ち着いて、ティエリア。クリス、フェルト、ヴェーダから情報を」
「言われなくてもやってます!」
クリスティナ・シエラが簡潔に答え、フェルトも素早く両指を動かす。
「スメラギ・李・ノリエガ、これが落ち着いていられるものか! イオリア・シュヘンベルグの映像はどうした! あァアァああぁ!」
ティエリアは叫び声を上げ、ヴェーダに直接アクセスするべく、ブリッジから飛び出して行った。
「ハレルヤ、これはどういう事なんだい……」
か細く呟かれたアレルヤ・ハプティズムの言葉は虚空へと消えた。
―アフリカ圏・岩山地帯―
「何だぁ!? この生物は!? ハロ!」
髪を掻きむしり、ロックオン・ストラトスが端末を見て声を上げる。
「ワカラナイ! ワカラナイ! ワカラナイ!」
無機質な音声で、HAROが跳ねながら答える。
「何だってんだ!」
ロックオンはやけになって言い、ニュース映像を遮断した。
「俺達はQBの……ガンダムマイスター……なのか?」
幾許かの錯乱が見受けられる刹那・F・セイエイは、誰かに問いかけたかった。
この後、ヴェーダにアクセスしたイノベイドは、驚愕することとなる。
それは、ヴェーダがQBにハッキングされていた事であった。
CBが介入をするどころか、QBによる介入を受けるという事態に陥るものの、その後CBがイオリア・シュヘンベルグの映像を改めて流せたのは幸いか否か。
出鼻を完全に挫かれたCBは、世間からは自己紹介にしては余りにもふざけた組織と思われ、CBのマスコットキャラクターがQBだという憶測など……世界は混迷の時を迎える。
早過ぎる、異星生命体との来るべき対話。
それは、人類の目覚めか……それとも。
この七年後、更に別種の異星金属生命体が来訪する事をこの時の人類は知る由も無い。
戦争行為の根絶を体現する機体がガンダムであれば、QBの介入行為を体現するのは何なのか。
ガンダムのパイロットは感情を律せねばならないが、QBにはそもそも感情が無い。
その行為、崇高なる者の苦行なのか。