裁判員制度が始まって丸2年がすぎた。
これまでに2千件近い裁判で、1万2千人が裁判員を経験した。最高裁判所が全国の有権者を対象に行った意識調査では、裁判所や司法が身近になったと答えた人が約7割を占めている。
ただ、死刑求刑もある事件を裁判員裁判の対象とすること、厳しい守秘義務を課すことなど、制度が始まったときから指摘されてきた課題は、再検討が進まないまま推移してきている。
制度は来年、見直すことになっている。政府や法曹関係者は、広く国民の意見をくみ取り、より理解される仕組みにあらためていく必要がある。
この1年間の裁判員裁判で、5件の死刑判決が下った。仙台地裁では、2人を殺害し、1人に重傷を負わせた19歳の少年に言い渡している。
「一生悩み続ける」「判決を出すのが怖かった」。死刑判決の評議に加わった裁判員は、重い判断を迫られた苦しい胸の内を明かしている。
死刑のような究極の選択を、市民に課すことは妥当なのか。専門家からは裁判官だけで審理すべきだ、との指摘も多い。
裁判員裁判の対象は、殺人や強盗殺人、放火、強姦致死傷といった、死刑や無期の懲役・禁錮に当たる重大犯罪が多い。汚職や行政訴訟など、より市民感覚が生かせそうな事件は対象外だ。
どんな事件に市民感覚を取り入れるのが適当か。国民の負担が重くならないよう配慮し、対象事件を見直してほしい。
裁判員の守秘義務についても検証が要る。
現行法は、評議で出た意見の内容、判決のよしあし、結論に至った経過などを述べることを禁じている。罰則もある。感想は話せるけれど、基準があいまいで「萎縮して沈黙せざるを得ない」と漏らす裁判員もいた。
評議の概要が明らかにならなければ、市民感覚がどう生かされているのか、検証のしようがない。守秘義務の規定を見直し、運用を緩和して裁判員に分かりやすい基準を示すよう求める。
最高裁の調査では、裁判に参加したくないと答えた人が8割を超えた。責任と守秘義務の重さを感じ取っているのだろう。裁判員経験者からは審理内容が分かりにくかった、との声も出ている。
制度の狙いである開かれた司法を目指すには、国民目線に立った検証作業が欠かせない。