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九大:数学科の「女性枠」断念 「憲法違反」と批判相次ぎ

 九州大は19日の入試審議会で、理学部数学科の12年度後期入試で初めて導入する予定だった「女性枠」を撤回し、実施しないことを決めた。学外から「男子差別だ」などと批判が相次いだため学内で協議し「憲法で定める『法の下の平等』に反する」と判断した。6月の入試概要の公表直前での変更で、九大は入試審議会後の記者会見で「受験生に多大な迷惑をかけたことを深くおわびしたい」と陳謝した。【三木陽介】

 九大によると、女性枠は数学科の後期入試の定員9人のうち5人を女性に割り当てる制度。数学系の教員が所属する数理学研究院は教員46人のうち女性がわずか1人で、学内で最も女性が少ない。そこで女子学生を増やして将来的に女性教員の増加につなげたいというのが導入の狙いだった。

 しかし、10年3月の公表以降、九大にはメールや電話で「法の下の平等に反する」との批判が相次いだため、女性枠の見直し検討に着手。昨年末ごろから法律の専門家とも協議した。顧問弁護士は「憲法違反の恐れがある」と指摘したという。更に学内の協議の中で「女性枠で入学した学生が特別視されて肩身が狭い思いをするかもしれない」との意見も出たため、入試審議会で中止を決めた。

 受験科目は、残り4人の「一般枠」が数学1科目だけだったのに対し、女性枠は数学と英語の2科目を課していた。このため女性枠での受験を念頭に英語も勉強している学生を考慮し、女性枠については「一般枠B」と名称を変更したうえで、受験科目を2科目にする。

 会見した丸野俊一副学長は「学外からは女性枠に賛同する声も寄せられたが、法を犯してまで実施する必要はないと判断した」と話した。

 憲法に詳しい向原栄大朗弁護士(福岡市)の話 憲法は能力に応じて等しく教育を受ける権利も定めており、そういう点からも今回の女性枠は基本的に憲法違反の可能性があった。

毎日新聞 2011年5月20日 0時51分

 
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