王さん始め名球会１０人が被災地で野球教室「夢と希望持って」

野球教室に参加した小中学生と、王貞治氏ら「名球会」のメンバー

　「日本プロ野球名球会」の王貞治理事長（７１＝福岡ソフトバンクホークス会長）ら会員１０人が２１日、宮城県大和町を慰問し、東日本大震災で被災した地域の小中学生を対象に野球教室を開催した。王氏は「乗り越えて前に進んでいくしかない。一歩一歩、力強く足を踏みしめていって下さい」と球児を激励。また、津波で愛息を亡くした被災者に優しく語りかけるなど、心温まる交流を行った。

　家を流され、友を失った野球少年たちが待つグラウンドに「世界の王」が現れた。２０日に７１歳の誕生日を迎えたばかりの王氏は、往年の名選手たちの先頭を歩き、歓迎のハイタッチを受けた。

　今月１５日の岩手県住田町に続き、名球会による被災地慰問の第２弾。今回は津波によって多数の犠牲者を出した気仙沼市、石巻市など宮城県７市町の１６の少年野球チームを招待した。仙台空港からの道中、ガレキに埋もれた沿岸部を目の当たりにした王氏。約４００人の球児たちに「夢と希望を持ってほしい。（そのためにも）野球はいろんなことを教えてくれると思います」と語りかけた。

身ぶり手ぶりを交えて野球少年を熱心に指導する王氏

　野球教室では、自らバットを握り「遠くに飛ばそうとするんじゃなくて、ボールを壊す気持ちで振ってごらん」と、“世界のホームラン王”の打撃を伝授。指導を受けた仙台東部シニアの渡辺樹（たつき）君（１４）は「ＷＢＣで見た王さんが…。今後に生かしたいです」と瞳を輝かせた。

津波で亡くなった畠山君の遺影

　途中、遺影を手に持つ家族をスタンドの中に見つけた王氏は、歩み寄った。プロを夢見て、野球推薦での高校入学を目前に控えながら津波によって亡くなった気仙沼シニアの畠山郁也君（享年１５歳）。額を握りしめた両親と兄に「すごく立派な太ももをしていますね。足腰がしっかりしてる。高校でも頑張ってほしかったなあ」と、あえて明るく話しながら「夢を継いで下さい」と言葉を掛けた。母親のあき子さんは「天国で喜んでいると思います…。次に生まれたらプロ野球選手になってほしいと思います」と感謝の涙をこぼした。

　終了後はサインと握手を求める球児たちが殺到。王氏は「無心にボールを追い掛ける元気な姿を見られて良かった」と笑顔で振り返った。

　◆野球用具贈る　○…この日は、王氏のほかにも超豪華メンバーが顔をそろえた。張本勲氏は、終了時間が過ぎた後もバッティングを指導。閉会式では瞳に涙を浮かべ「しっかり生きるんだよ！　頑張るんだよ！」とメッセージを送った。実演コーナーでは北別府学氏が往年のスライダーを披露し、立浪和義氏が現役時代と変わらないスイングを見せて球児たちを盛り上げた。名球会は今回の慰問で、グラブ１１０個、バット７０本、ボール５０ダース、シューズ５００足など、約５０００点もの野球用具を子どもたちに寄贈した。

（2011年5月22日06時05分スポーツ報知）