映画「太陽の季節」「にあんちゃん」などで銀幕を飾った俳優の長門裕之(本名・加藤晃夫)さんが21日午後5時40分、都内の病院で、肺炎による合併症のため死去した。77歳だった。長門さんは昨年8月、解離性大動脈瘤(りゅう)のため心臓の手術を受け、今年1月に舞台に復帰したが、最近は体調を崩していた。09年10月には妻で女優の南田洋子さん(享年76歳)を亡くし、「すごい喪失感と失恋を味わった」と語っていた。
弟で俳優の津川雅彦(71)とは終生のライバルとしてしのぎを削った。本紙OBの評論家・安達英一氏の著書「『津川雅彦物語』カツドウ屋血族」(報知新聞社刊)では、津川が映画「狂った果実」でアイドル人気を博した時のことを振り返り「まったく一夜にして世の中変わった感じ」。嫉妬にさいなまれ、津川に取材依頼の電話が掛かってくると、コップを割ったこともあったという。
しかし、津川が女性スキャンダルで追い掛けられた際には、自ら窓口となってマスコミをもてなすなど兄らしい一面も。88年にドラマで初共演した際には「雅彦と一緒だと録音部が困っちゃうんだよ。声紋を取っても声が同じなんだから」と2人で笑い合っていた。
06年の津川の初監督作「寝ずの番」に死んでいく落語家役で出演した際は、津川から「近来にない、往年の長門裕之の演技をしてもらった。神さまが降りてきたかと思うくらい、素晴らしい死体だった」と賛辞を受けていた。
[2011/5/22-06:01 スポーツ報知]