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今やプロが使うフレームは、既製品を使うことが一般化している。だからツール・デ・フランドルでトム・ボーネンが急遽アルミバイクを投入してもらったことなどは、珍しい例ともいえるだろう。

プロが既製品ではどうしても合わない点としては、シートアングルやハンドルの操作性が挙げられる。オフセットタイプのシートポストなど、パーツでなんとかなる場合もあるけど、乗ったフィーリングがどうしても合わない場合はどうしようもない。
特に今のフレームは、軽いだけに車体の重心の位置が重要となっている。スローピングが極端にキツいと、重心がかなり下のほうになる。トレックとかコルナゴなどのように、トップチューブがホリゾンタルに近く、スローピング度合いが少ないと、昔からの選手はやっぱり乗りやすいようだ。

ダンシングするときは、そんなに極端には振らないけれど、振るモーションをかけながら推進力に変えていく。その、振るモーションがかけやすいかどうか、それが自分の感性と合うかどうかによっては、どうしても供給された既製品では合わないケースが出てくる。

また、フレームの剛性面でも、ハンドルからダウンチューブ、チェンステイへとしっかりとパワーが伝わっていくか、あるいはそれを、トップチューブなどの上側である程度負担させるか。それが自分の感性と一致していない場合も、気持ち悪く感じられるのだ。
他にも、フレームメーカーが軽いけど柔らかいフレームを持ってきて、今シーズンはこれを打ち出したいというときなどにも、特別なものを供給してもらえる。そういう場合は、ほとんど全選手にスペシャルなフレームが用意されることもある。

そういった場合のスペシャルフレームは、選手の要望に添うようにカーボンの積層を変えたりする。また、チュービングでいけるなら、そこだけ別の素材を持ってくることもある。コロンバスの供給なのにデダッチャイを持ってくる、イーストンを持ってくるなんてことをやる。もちろんステッカーはスポンサーのものを貼る、そういうことはやっている。
従来、イタリアのメーカーは、こういったわりと細かいところを対応してくれていたものだが、アメリカのメーカーのようにフレームが工業製品となると、そんなに手を加えることがない。ランス・アームストロングが使っていたトレックは、一般の人が入手できるものと同じだったという話は、これをよく象徴しているだろう。

そんな中で、ジャイアントのパリ・ルーベ仕様車(カンティブレーキを採用したスペシャルなもの)は、資金力の違いを表して印象的だった。

こういった対応を手工業的にやれるのがイタリア、それに比べ、台湾やアメリカでは量産ラインとは別に専門の部隊がいるかどうかで、対応が異なるはずだ。
94年、イタリアのポルティに加入して、最初はコッピの鉄のフレーム、コロンバス・ジェニウスに乗っていた。春のクラシックまで、石畳を走る間までは、フレームがヤレるからこれでこなしてくれ、と言われたのだ。3ヶ月か4ヶ月しかもたないから、鉄でやれ、というわけ。

ボクはシマノレーシング時代からすでにカーボンバイクにも乗っており、だいたいそれを1シーズン使っていた。日本のレベルでは、フレームの寿命は数ヶ月で終わりということはなかったが、向こうに行ったら数ヶ月で本当に終わってしまう。使い込むにつれてタワミが大きくなっていくんだ。一番分かりやすいのは、明らかに加速性が悪くなる点。それは今のフレームでも同じで、アマチュアの方でも、一年間通しでレースに出る人なら一年で交換になるだろう。保っても二、三年というところかな。
プロ機材の磨耗は、本当に想定外のものだ。プロが使うと、たとえシマノ・デュラエースであっても磨耗が激しいし、たわみも大きい。しかも、ボクが走っていた90年代、日本国内ではあり得ないような磨耗の仕方を目の当たりにした。当時使っていたのはPD-7410(SPD)。ペダルの踏み面がアルミとスチールでできているのだけれど、アルミの部分にゴムのクリート側のブッシュが当たる。そこの部分に、とがったヤスリで突っついてできたようなキズができたのだ。

「どうしてこうなるの?」と開発の人間は首をかしげるばかり。どんな悪条件で走っても、国内ではありえないキズだ。しかしベルギーの石畳で雨が降ったりすると、砂の質かもしれないけれど、それが入り込んでキズができる。それが砂だったら、もっと細かい、スクラッチ状のキズだろうと思うのだが、結構な大きさで、均一に叩いたようなキズがついてきたのだ。あり得ないと思うことがプロでは起きるものだと納得し、すぐプレートが直された。
タワミに関しては、当時はクランクとBBが特にスゴかった。特に以前はベアリングがフレームのBBの内側に入っている構造で、ロープロファイルと呼んだコンパクトなBBを作っていた。クランク自体も柔らかかったから、デュラの7410モデルが出たあとでも、7400のクランクを使う選手が多かった。

しかも、クランク部分が柔らかい上にフレームが柔らかいのも影響して、なんと自動で変速してしまう。フロントディレーラーを巻き込んでしまい、パンタグラフを壊してしまってクラッシュ! 走行不可能になるか、あるいはインナーでTTを終えなくてはいけないとか、そういうことが起きていた。

ボクが現役当時の選手の出力と、今の選手の出力は大体変わらないと思うけど、スプリンターで1800ワットくらい。有酸素運動の限界、ATでの出力は、400〜450ワットくらいを、30分から2時間くらい持続できてしまう。そこからさらにガッと踏み込んだら、1000ワットくらいになってしまうので、そんなパワーでぐいぐいやられたら、やっぱりタワミというものは出る。

同じワット数でもトルクをかけるので、余計に出る。そういうプロの使い方を想定して、今の7800はタワミがないよね。僕らは大歓迎だけど、キツく感じる人もいるだろう。それは、ペダリングがうまいかどうかに関係してくる。ロスがあるペダリングをしているということになるんだ。

プロが使う機材、デュラエースは特に、今は究極のモノになっていると思うよ。デュラエースを頂点としたモノを考えるときは、やっぱり競技指向で行くべきだし、それでイイと思う。
次回へつづく...
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