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カーボンフレームは、ちょっと前までは「プロ用は特別仕様でしっかりガッチリ」といったイメージもあったが、今ではストックの状態でそのまま供給されていることがほとんどだ。

いいフレームとは、ある程度軽くて、剛性があって、振動吸収もよくなければならない。トータルで性能を語る時代だからね。今のフレームは、硬いから振動吸収が悪い、ということもなくなった。BBあたりのダウンチューブの張り出しがこのくらいだったら踏み応えはこのくらい、積層が何層で、ハイモジュラスのこれを使ったらどのくらいになる、というのも経験的に分かってきた。そういう形状設計と、モールデッドの盛り方は計算ずくでやらなきゃいけないし、作るには職人の腕も必要。いよいよ性能の差が出る時代になってきた。

大きなメーカーに比べると、イタリアで生産されているオートクレーブ製法のフレーム、例えばインターマックスのコルサイタリアなどのように、職人が手間をかけてやるものは少なくなってきている。余裕を持った生産体制をとっているんだ。

コルサイタリアは、製法としてはカーボンをそのまま包んでしまった方が楽な部分でも、もうちょっと剛性を上げないといけない箇所は、開発段階で手直しを命じている。具体的には、一層ほど軽量化のためにリブ状に入れているところがあるんだ。そう、一層だけ別の貼り方をしている。さらに、見えないところでも一生懸命肉抜きをしていて、手間はかかっているけど丁寧にやらなきゃイイものにはならないんだ。
僕がツールを走っていた頃(〜96年)、プロ選手が乗るレベルのフレームは、同じカーボンでも剛性が高く、重かった。一般的には、振動吸収性が良くて快適な乗り物というのがカーボンフレームの触れ込みだったけど、プロ用のスペックで作ったものはガッチガチ。それでパヴェ(石畳)を走るんだったら、まだクロモリやアルミのほうがいいよね、という感じだった。

そう、パヴェを走るためには、今のフレームもストック状態ではもたないと思うよ。フォークなどは太くして、タイヤのエアは6気圧くらいで走るはずだ。カーボンの場合、選手が乗って、割れるというのが怖い。ステムが折れるとか、ハンドルが折れるとか、フレームの一番弱いところが折れるのが怖い。金属だったら亀裂が入ったりして判るはずだけど、軽量化が進んだせいで、今は以前に比べたらハイリスクなものが多いね。一般のユーザーにとっては、そこまでのパワーをかけることはないから心配は要らないと思うけれど。

でも、レースに慣れていない、落車が頻繁に起きるようなレースに出る人は、あまり軽量化を望んだものではなく、1000g前後のフレームを選んだほうがいいよね、という話をよくする。さらに、1100gくらいあるフレームなら、直接フレームが地面に触れないようなコケ方なら大丈夫だ。逆に、800gのフレームに乗って時速60kmで転ぶとなると心配になるね。これはカーボンフレームだからということじゃなくて、モノの選び方の問題でもある。
僕がプロで走っていた時代、アシストが使うホイールは、重いものが渡されていた。パヴェを走るような仕様で全レースを走っていたんだ。それはガッチリと、14番プレーンのスポークを使ったものだった。理由は、レース中にフレが出たら困るから。ホイール交換のためにアシストの面倒をいちいち見ていられないってこと。だから、僕らには丈夫なホイールが用意されていたんだ。今はしっかりした完組のホイールをみんなが使っているから、そんなトラブルは少ないはず。今はみんな幸せだよ。
アシストだって、パンクすればチームカーからホイールをもらえる。でも、それはエースを支援する仕事をするため。だから、アシストがその仕事ができる位置にいないのなら、たとえばラスト20kmをパンクしたまま、「そのまま走れ」と言われることさえある。チューブラーだったからできたことだけどね。クリンチャーだったら、タイヤが外れてしまって走れない。

運悪くラスト10kmでパンクして、チームカーもニュートラルカーもいなかったりすると、そのままゴールまで走らなきゃならない。「これで日本のニュースに出るとき、またドンケツって伝えられるんだろう」と嘆きながら、必死で前を追ったのを思い出す。

レースが残り100kmもあって、3級や4級の山がボコボコあるとき、エース級がパンクしてもまわりが対処してリカバリーするけど、準エース級だとそうはいかない。「ここで遅れたらタイムオーバーかもしれない」という場面だけど、こちらが車輪を交換してやって、早く押し出すしかない。こういうケースでは、アシストは犠牲になるしかないんだ。
タイヤも、練習用にはプロだって一般に流通しているような重たいものを渡されるんだ。でも、この練習用タイヤでテクニックをつけようとしてもムリ。テクニックを磨くにはいいタイヤを履かなきゃいけない。

安いタイヤは「スポンジー」で、誰でも操作できるように作られている。コンパウンドのネバリによって、そのタイヤの限界以内だったら走れてしまう。急激な操作でも「じわ〜ん」と吸い付いていくので大丈夫なんだ。ただ、スポンジーだからクイックな操作が自ずとできなくなる。

それに比べて、高級なタイヤはレスポンスがあるので、それなりに操作しなきゃならない。ただ、限界での能力は高いし、限界を知ることができる。プロはテクニックがあるから安いタイヤで練習できるけど、一般の人は、テクニックをつける意味でも、いいタイヤで練習をしたほうがいい。特にクリンチャーユーザーはね。

近年のレースシーンでは、軽量なカーボンホイールが使われるようになってきた。そして、もちろん日本のユーザーもカーボンホイールを使う人が増えてきている。ところが、日本のヒルクライムレースで、レース後の下りでブレーキを当て効きして下っていくと、リムを構成している樹脂が沸点に達して、剥離を起こし、リムが割れてしまう例が報告されている。プロのレースでも、ブレーキのタッチの変化もあって、前輪はアルミリムのホイールを使っていたりする。だから、ヒルクライムには、アルミのリムを使った軽いホイールのほうがオススメと言える。
シマノのSTIレバーや、カンパニョーロのエルゴパワーの形状に合わせて作られたハンドルバーがあるでしょ。アレは、実は僕らにはいらない。前に荷重をかける人が、ああいったタイプのハンドルを求めるみたいだけど、僕らは、8〜9割方の体重がサドルにかかっている。荷重を分散してこそ楽に走れると思っているでしょう? それをやると手が痛くなる、だからフラットな部分が必要となる。僕らはそれが必要じゃない。そこには荷重がかかっていないから。

また、07年くらいから始まった一部のロードバイクの傾向として、リラックスしたポジションで乗ることのできるものが出始めている。これはハヤりではあるけれども、コラムの位置を高くして、ハンドルの位置を上げて、ハンドルバーのリーチを短くして…と、ほとんどクロカンMTBのポジションになってしまった。このポジションだと、ダンシングするときに2時の位置から踏み始めて6時まで踏むのだが、6時から8時まで、力がかけられなくなるはずだ。

つまり、あまりにも「楽ポジ」だと、テクニックが磨けなくなってしまう。初心者から脱出できない、速く走れないということ。これは、空力以前の問題なんだ。外国の人達と骨格が違うからといっても、ある程度は求められるものがあるはず。ステアリングコラムを切ってまでやらなくてもいいから、スペーサーの位置を移動してハンドルの高さを下げたり、ステムを長くしたりして、もう少し低くて遠いポジションを試してみてほしいところだ。
ステムを選ぶときは、やはり柔らかいものは加速感などの走行性能をスポイルしてしまうから、よく選んだほうがいい。僕は、ハンドルをつけた状態で思いっきりひねってみることにしている。ステムを単体で見てもわからないけど、完成車についているものにヤワなものはないと思う。

ステムの素材は、ねじれに対して強くなってきたのでカーボンでいい。でも、ハンドルは僕はいつまでたってもアルミが好き。ハンドルは、握るという機能や、ブレーキレバーのバンドのせいでパイプ径が限られているなかで剛性を出そうとする。そうすると重くするしかないでしょ? それに比べ、ステムはボリュームを出すことで、大径で薄く、剛性を出すことができる。
僕も、プロになって2年目にステムをやたら伸ばされた。ある日、コンピュータで解析してポジションを出したら、「おまえのステムは短い」ということになって、一気に15mm伸ばされた。僕らは5mm刻みでステムを決めるから、15mmなんて異例のこと。このとき、ジロで優勝するような選手も20mm伸ばされた。

こうするとやっぱり背中が低くなるし、空力的にも整流効果を感じた。ハンドル幅も43から42に替えさせられた。これだけ変えると筋肉の使い方が違うから、身体をこのポジションに馴染ませる必要がある。でも、僕らは筋肉をゼロから作るのが当たり前だ。というのは、プロ選手は11月頃に完全なオフがあるでしょ。オフの直後は毎年、シロウトよりも遅いような状況になる。そして、そこから筋肉を鍛えるということを毎年やっているから、筋肉を入れ替えるというのは苦じゃないんだ。

実際には筋肉を入れ替えるわけではないけど、質を変えていくというのは大いにある話だ。だから、ジャラベールのようなスプリンターが、総合力を身につけて山岳王になったりすることも可能なんだ。逆に、クライマーがスプリンターになることはやりにくいけど、それでもできる。ペタッキなんかはもともとスプリンター的な身体ではなかったしね。
初心者でも、知らないだけで、筋肉をゼロから作ることが可能だ。たとえばダンシングが苦手という人も、一ヶ月、あるいは一年ずうっとダンシングをやったら、ダンシングがめちゃくちゃ好きになるし、強くなるはず。苦手意識は誰でもあるもので、それをあえて克服すれば、その次の世界が見えてくるんだ。

坂だって、大好きになっていくはずだ。坂は、最初はキツいけど、乗れるようになってくると、自分のイーブンペースで行けば上れる、というのが分かってくる。そうすると、頑張れば上に到達できるという喜びを覚える。そこで坂が大好きになる。そして多くの人が軽量化を考えるんだけど、自分がダイエットしたほうが早いかもしれない(笑)。
僕はいつもの練習コースで、時速80km以上で下ってきて、フルブレーキングで止まるのが日課だ。そんな性能を考えると、ブレーキはシマノだったら105以上が必要だ。ところが先日、とあるロードバイクに乗ってフルブレーキングしたら、バチッと5cmくらい火花が飛んだ。ブレーキのゴムに、リムの攻撃性を高める素材、火打ち石のような、ケイ素のようなものが入っているからだと思うけど、ビックリした。効かないからこそ思いっきりかけたんだけど、まさか火花が飛ぶなんて。まあ、モノの価格には理由があるということだ。

僕らはテクニックとして、とっさのブレーキングのとき、時速40kmだったら5〜6mで止まれなきゃいけない。だから今、シングルスピードで、前後ブレーキなしというむちゃくちゃな仕様で走っている人がいるでしょう。僕から言わせると、安全性に大きな信頼性があるからこそスピードが出せるわけで、やっぱりブレーキは大事、ないと危ない。ペダルを止めて、後輪をロックさせてスキッドさせれば止まりますよ、という人もいるけど、フロントブレーキに比べれば、危機回避能力にどれだけ差があるか知っているのだろうか? 

スポーツバイクを本当に乗り続けたい人達にとっては、ブレーキなしの自転車はあってはならない。
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