電力不足:原発集中立地ツケ 東西の電気融通も限定的

2011年3月28日 23時13分 更新:3月29日 4時7分

 東日本大震災で被災した東京電力福島第1、第2原発の稼働停止に伴う大規模な電力不足は、原発の集中立地や、電力会社間で電力をやりとりする能力が不十分という、日本の電力制度の問題点を浮き彫りにした。政府や電力業界が問題解決を先送りしてきたツケが一気に回ってきた形だ。電力不足が深刻化する夏に向け、政府と大手電力は対応を求められるが、いずれも短期的な解決は難しい。【山本明彦】

 ◇増設繰り返し

 今回の事故で福島第1、第2原発で計10基もの原発が、廃炉や長期停止を迫られるのは必至となった。一度に大量の原発を失う今回の事態について、西日本の電力会社幹部は「一部地域に原発を集中的に立地してきた副作用」と指摘する。

 原発の立地は「固い岩盤に建設するなど条件が厳しい上、住民の同意を得るのが難しい」(東電幹部)ため、立地を受け入れた地域で増設を繰り返す傾向が強い。国内では、実験炉を含めて55基の原発が立地するが、東電は福島、新潟の2県に計17基、関西電力も福井県に全11基を集中させている。この他建設・計画中の14基のうち、8基は同じ敷地内での増設だ。

 また、今回の事故では、使用済み核燃料貯蔵プールからも放射性物質が放出されたと見られ、多くの使用済み核燃料を原子炉と同じ場所で管理する是非も問われそうだ。

 国内電力各社は、使用済み核燃料は欧州や青森県六ケ所村の再処理工場などに搬出しているが、処理量に限りがあり、原発敷地内に保管したままのものも多い。電気事業連合会によると、国内の原発にたまっている使用済み核燃料は昨年9月末に1万3530トン(ウラン換算)で、前年から690トン増加、保管能力の約7割に及ぶ。

 福島第1原発では1~4号機のプールに約470トン貯蔵。核燃料は使用後も発熱を続けており、冷却できないと損傷しかねない。立地地域から使用済み核燃料対策を求める声が強まりそうだ。

 ◇異なる周波数

 電力会社間で電力をやりとりする能力が限られることも、東電の電力不足を深刻化させている。日本の電力の周波数は、東日本が50ヘルツ、西日本が60ヘルツと異なるため、東西で電力を供給し合うには、周波数を変換する必要がある。東電と中部電力の境目に3カ所の変換所があるが、容量は100万キロワットで、夏場に見込まれる1000万キロワットの電力不足は到底穴埋めできない。

 東西の周波数の違いは、明治時代に東日本の電力会社がドイツ製(50ヘルツ)、西日本が米国製(60ヘルツ)の発電機を採用したのが発端。戦後、周波数統一の議論もあったが「各電力会社が自前の発電設備増強に忙殺される間に立ち消えとなった」(電力関係者)。変換所の増強には送電線の敷設などに10年程度の時間と1000億円単位の費用が必要で、「管内で発電所を増やした方が早い」(東電の藤本孝副社長)という判断も、対応を見送る要因となった。

 中部電力は今回の事態を受け、東電との境目にある3カ所の変換所の増強を加速する。5月末までに3万キロワット分増やし、さらに17万キロワット分を上乗せする計画だが、夏の電力不足には間に合わない。電力不足は長期化する可能性があり、一段の増強も検討対象となる。

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