日本航空:会社更生手続きを終了 再上場へ多難

2011年3月28日 20時41分 更新:3月29日 1時21分

 経営再建中の日本航空は28日、東京地裁から、会社更生手続きの終結決定を受けたと発表した。金融機関11行から約2550億円の融資を受け、破綻(はたん)後も残る借金約3950億円を一括返済。昨年1月に会社更生法の適用申請をして以来、1年2カ月ぶりに裁判所の管理下を離れ、経営の自由度が高い「株式会社」に復帰した。だが、東日本大震災による航空需要の落ち込みなど前途は多難で、計画通り12年中に再上場できるか、予断を許さない状況が続きそうだ。【寺田剛、高橋昌紀、大久保渉】

 「われわれは空で復興に貢献する」。震災翌日の12日、東京都内の日航本社。出張先から急きょ戻った大西賢社長は社員にこう訴えた。日航はこの日以降、道路や鉄道が寸断された被災地支援のため、他路線を欠航してやりくりした機材や空港スタッフを、花巻や青森、山形空港に集め、27日まで計469本の臨時便で被災者や家族らを運んだ。

 日航は再生支援機構の下で、人員削減や路線縮小、機材の小型化などリストラを進めてきた。28日に発表した10年4月~11年2月の連結営業利益は1749億円と、通年予想(641億円)の3倍近くを確保。15日には、稲盛和夫会長の出身母体の京セラや大和証券グループ本社、取引先の損保大手や旅行会社など計8社から総額127億円の出資を受けた。

 だが、財務基盤が盤石との見方は少ない。さらに、大震災による需要低迷の経営への打撃も避けられそうにない。28日に発表した震災後の旅客数は、国内線で当初見込みより28%、国際線で25%それぞれ減少。「日々減少幅が拡大し、4月はさらに下振れしそうだ」(大西社長)。このため日航は、4月6日から3週間程度、国際線11路線での減便を決めた。さらに関係筋によると、3月末の退役が決まっていた大型機の一部は、震災対応のため延命を決定。パイロットらには計画停電による混乱回避のため、タクシー送迎も認め始め、コスト抑制のタガも外れかかっている。

 リビアなど中東情勢の緊迫を受け、急騰する原油価格も業績圧迫要因。融資再開にあたり、大手3行も、「経営内容を常に確認して判断する必要がある」(大手行幹部)と慎重な姿勢を崩していない。

 また、部門別採算制の浸透を掲げる稲盛会長の下、日航は路線別の収支状況を社員が見えるシステムを構築しつつある。だが、現場からは「稲盛会長ら経営陣はまず数字ありき。これが続けば、安全性や顧客サービスの低下につながりかねない」(40歳代パイロット)と数字偏重を不安視する声が出ている。

 日航は4月から、再建計画の見直しに本格着手する。稲盛会長は28日、「(業績は今期より)相当下振れするが、(現在の計画には)十分耐えられる」と強調したが、全日空や海外航空会社に後れを取る格安航空会社(LCC)への対応策など、12年内の再上場に向けた課題は多い。

 会見に同席した瀬戸英雄管財人は「(稲盛会長が)確立した効率的な経営体制は、果たして本物なのか、これから問われる」と語気を強めた。専門家の間でも、「路線別の収支見直しばかりでは縮小均衡になる。上場を目指すには株主に魅力を示す必要があるが、拡大戦略が見えない」(日航出身で早稲田大学の戸崎肇教授)との厳しい見方が出ている。

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