東日本大震災:上下水道や道路…復旧いつ? 千葉・浦安

2011年3月28日 11時11分 更新:3月28日 11時39分

地震による液状化で電柱が傾き、道路が波打った浦安市内=2011年3月26日、小林努撮影
地震による液状化で電柱が傾き、道路が波打った浦安市内=2011年3月26日、小林努撮影

 東日本大震災で、千葉県浦安市は約4分の3もの地域が液状化被害を受けた。戦後埋め立てられた土地はあちこちで波打ち、ネズミ色の砂泥が噴き出した。震災から2週間で整地や砂泥の撤去は進んだが、地下を走る上下水道は大きく破壊されたまま。多くの市民が風呂もトイレもない生活を強いられる中、計画停電も計3回実施された。東北地方の陰に隠れた「首都圏の被災地」の現場から報告する。【黒川晋史、斎藤有香】

 きれいな一戸建てが並ぶ浦安市今川地区の住宅地。その一角の公園で、ベンチが噴き出した砂泥に埋まっていた。

 「ある程度覚悟していたが、こんなに大変とは」。近くの後藤聖治さん(57)は震災から4日間、道路にあふれた砂泥を路肩へ寄せる「砂かき」に明け暮れた。風が強い日は砂泥が乾き、風に舞い上がる。黄色くかすむ市街地で通行人は目を開けていられず、立ち止まる姿も見られる。

 後藤さんの住む地区では現在も断水が続いており、ぬれタオルで体を拭く毎日だ。ともに暮らす妻と長女は、1時間500円で部屋を開放する同市舞浜のホテルで入浴している。だが「100組限定」など制約があり、毎日は利用できない。

 「市民はみんな不満を持っている。でも、東北の被災者のことを考えると、無理は言えない」

  ◆

 浦安市の地盤は多くが砂状で、地下水位が高い。地震の震動で地盤が液体状になったとみられ、ピーク時は約7万2000世帯の46%に当たる3万3000世帯が断水。給水車から500メートル近い行列ができた。浄水を運ぶ海上自衛隊の専用艦が災害史上初めて市の給水に協力した。

 現在、断水は4000世帯まで減ったが、下水道の不通は7500世帯に上る。水道が回復しても下水道が復旧しなければ、汚水が排水口から噴き出す。市は仮設トイレを市内92カ所に約800個置き、袋と凝固剤を配布した。市民は何とか用を足している。

 市によると、下水管は上水管より地中深く埋められ、調査や工事に時間がかかる。市内全域の管の点検はいまだに終わらない。下水管の大部分を地上でつなげていく応急復旧を急ぐが、完全な復旧は「何年かかるか分からない」(担当者)という。ガス不通も1400世帯に上り、街中をガス会社の車が「カセットコンロとボンベ貸します」とアナウンスしながら走っている。

 波打った地面の修復も難題だ。ビルの周囲の地面が沈み込んで亀裂や段差ができ、営業再開のめどが立たない量販店や飲食店が多い。東京ディズニーリゾートも駐車場の一部が変形した。東京湾を望む県立浦安南高校の校舎は周囲の地面が1メートル近く沈下。段差が危険なため、教員と生徒がそっくり船橋市の空き校舎に引っ越すことを決めた。

  ◆

 そんな中、復旧に力を合わせなければならないはずの県と市の溝が生じている。

 県内の統一地方選では、第1ラウンドの県議選が4月1日に告示される。浦安市は「震災の被害が大きく、実施は困難」と延期を主張しており、市選挙管理委員会の長野敏樹委員長が今月23日、実施方針を変えない県選挙管理委員会の土田吉彦委員長に「貴職は本市の現状をまったく視察されていない」などと抗議文を送った。

 これに対し土田委員長は文書で「視察はした。事実確認もせず一方的に視察していないと決めつけるのは極めて遺憾」と反論。「より早く県議を送り出すことが、災害から立ち上がる最善の一策」と選挙の必要性を強調している。

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