東日本大震災:避難所以外の被災者に救援物資届かず

2011年3月27日 19時31分 更新:3月27日 22時54分

半壊した自宅で避難生活を続ける母親の高橋芳子さん(右)。物資が足りないため、娘の古川澄枝さん(左)が1歳の寧々ちゃんを背負い手に入れた救援物資を毎日届けている。「先行きが見えない」と古川さんはつぶやいた=宮城県石巻市で2011年3月27日午前10時46分、梅村直承撮影
半壊した自宅で避難生活を続ける母親の高橋芳子さん(右)。物資が足りないため、娘の古川澄枝さん(左)が1歳の寧々ちゃんを背負い手に入れた救援物資を毎日届けている。「先行きが見えない」と古川さんはつぶやいた=宮城県石巻市で2011年3月27日午前10時46分、梅村直承撮影

 東日本大震災の被災地では、避難所には救援物資が届くようになってきたが、自宅など避難所以外で生活を続ける人に物資が行き渡らないケースが相次いでいる。避難所で食料をもらおうとして断られた例もあり、住民からは「支援の輪の中に入れてほしい」と悲鳴が上がっている。【金子淳、福島祥、樋岡徹也、福永方人】

 ガソリンスタンドや店舗が営業できなくなった岩手県大槌町。川沿いの集落に住む建築業、上野松二さん(49)は、自宅にあった米と梅干しで食いつなぎ、20日に隣の釜石市に買い出しに行ってようやく保存食を仕入れた。

 妻と2人で暮らす家に、津波で家を失った兄の家族3人も身を寄せ、食料は3日分ほどしかない。ガソリンも残りわずか。仕事がないため収入も途絶え、「避難所だけでなく、自宅に避難している被災者にも物資を届けてほしい」と訴える。

 住民が避難した高台の施設などがそのまま避難所になるケースもあり、被災者は広範囲に点在。自治体も被災して十分に機能しておらず、避難者の動向を把握し切れていない。

 このため自衛隊は、市町村が把握しにくい被災者の自宅や避難者の集まる施設などを訪問し、何が不足しているかなどの情報を集めて県に伝える取り組みを始めた。既に数百カ所の情報を把握しているという。自衛隊が物資を届ける所も多いが、防衛省幹部は「大型車両が入れない地域もあり、ヘリで対応するが、輸送能力は限られている」と話す。

 自宅で暮らし、避難所で食料の配給を受ける被災者も苦しい状況に置かれている。

 釜石市平田地区の県営アパートに住む主婦(43)は、近くの避難所でおにぎりなどをもらってきたが、電気が復旧すると、「明日から無しですよ」と通告された。「炊飯器が使えるだろう」という理由だった。主婦は「家があるだけましだけど、そんなことを言われても。食べる物がなくてアパートを出た高齢者もいる。この状態がいつまで続くのか」と不安を漏らす。

 全国から届いた物資は県から市町村を通じて避難所に届く。岩手県は「モノが足りないわけではない。市町村のニーズに合わせて配っている」。釜石市は「避難所に常駐する職員やリーダーには、周辺住民にも支援物資を配るよう指示している」と話すが、指示が徹底されているかは把握できていない。

 トラブルも起きている。釜石市内の小学校で避難生活を送る男性(62)によると、避難所に支援物資をもらいに来た地元の人が「家が残っているからダメ」と断られ、もめ事になった。男性は「困った時だからこそ、助け合わなくてはいけないのに」と憤った。

 NGO「難民を助ける会」の堀越芳乃シニアプログラムコーディネーターは「自宅にいる高齢者らは物資の配給が滞ると、危険な状況になりかねない。物資輸送はNGOやNPOに委託し、自治体職員は情報収集に専念するなど、海外の災害で実施されているような役割分担の工夫が必要だ」と指摘している。

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