2011年05月13日
ロバート・アラン・フェルドマン | モルガン・スタンレーMUFG証券 マネジング・ディレクター経済調査部長 | 経歴はこちら>> |
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社会活動の歳入は「社会負担」(2009年、55.5兆円)である。社会歳出は、「現実社会負担」、「現物社会移転以外の社会給付」、政府内を除く「その他の経常移転」である(2009年度は112.0兆円)。不況のせいもあるが、社会収支は56.6兆円の赤字であった。
利払い勘定の計算はもっと簡単だが、支払いは12.0兆、受け取りは6.8兆円なので、収支は5.2兆円の赤字だった。
この三つの収支を足すと、経常収支は63.9兆円の赤字になる。国の一般会計の新規国債発行額であった44.3兆円よりかなり大きな数字である。この差は、「政府」の定義と会計概念の違いから生まれる。当然、広い意味の政府の定義と、民間会計に近い「連結ベース」から生まれた63.0兆円の数字が現実をあらわしている。
赤字の原因は社会活動
2009年度を見る限り、赤字の元凶は社会活動だが、過去もそうだっただろうか。図1には、同概念を計算した結果を載せた。1980年度から97年度までは、社会活動の赤字はGDPの5%以内であった。その後は拡大一方である。その結果、全体の赤字(経常収支)は営業収支と似たような動きをするが、90年代半ばから経常収支は営業収支を、時計回りに動かした形になった。結局のところ、経常赤字の趨勢的な悪化は、社会活動赤字の趨勢的な赤字悪化がもたらしたものと考えるしかない。
図1. 「ビジネス・ライン」で見た政府の各収支(対GDP比、%)