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福島第1原発:海水注入と中断は東電の判断 官邸は知らず

水素爆発で建屋上部が骨組みだけになった東京電力福島第1原子力発電所の1号機(左端)=福島県で2011年3月12日午後3時55分、本社機から貝塚太一撮影
水素爆発で建屋上部が骨組みだけになった東京電力福島第1原子力発電所の1号機(左端)=福島県で2011年3月12日午後3時55分、本社機から貝塚太一撮影

 炉心溶融を起こした東京電力福島第1原発1号機で3月12日夜、炉心を冷やすために始めた海水注入が55分間中断した問題で、政府・東京電力統合対策室は21日の会見で経緯を説明した。12日午後7時過ぎに注入を始めたのも中断したのも東電独自の判断によるもので、その事実を官邸は知らなかったとした。中断が冷却作業に与えた影響について経済産業省原子力安全・保安院は「現時点では分からない」としている。

 海水注入は12日午後7時4分、発電所長らの判断で始まり、同25分に停止。その後、菅直人首相の指示を受け、停止から55分後の午後8時20分、正式に始まった。

 官邸では午後6時ごろから海水注入の検討を開始。燃料の再臨界を防ぐホウ酸を投入するなど防止策を協議し、同7時55分、首相が海水注入を指示した。その間に東電が海水注入を始めたことは官邸には伝わっていなかったという。ホウ酸投入は同8時45分に始まった。

 細野豪志首相補佐官は会見で「当時は現地と連絡を取るのにも時間がかかった。午後7時半ごろまでは政府内では『注水は困難』という前提で議論しており、7時4分に海水注入が行われていたことも後日知った」と強調した。

 午後6時に首相が海水注入を指示したとされる政府資料についても「正確な記述ではない」と否定。「午後6時の時点では『(海江田万里)経済産業相が東電に海水注入の準備を進めるよう指示した』というのが事実だ」と釈明した。

 1号機では11日の地震後、原子炉冷却のための電源が失われ、淡水を原子炉に注入し始めた12日早朝には核燃料の大半が溶融していたとされる。同日午後3時36分には水素爆発が発生。原子炉を海水で冷やすという決断がどのような経緯でなされ、事態の悪化にどう影響したかは、今後の検証の焦点になるとみられる。【平野光芳、酒造唯、比嘉洋】

毎日新聞 2011年5月21日 21時42分(最終更新 5月21日 23時42分)

 

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