2011年3月23日 9時28分 更新:3月23日 12時33分
第83回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催、朝日新聞社後援、阪神甲子園球場特別協力)が23日、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で開幕した。東日本大震災の被災地では行方不明者の捜索が続き、多くの被災者が避難生活を送る。大会では被災者や救援、復旧に携わる人々を応援するため「がんばろう!日本」をスローガンに掲げ、12日間の試合が行われる。入場料収入の一部は義援金として被災地に送られ、球場内では募金活動も行われる。
開会式は入場行進を行わず、簡素化された。出場32校の選手たちが外野グラウンドに整列した後、場内にサイレンが鳴り、震災の犠牲者に黙とうがささげられた。編曲された、いきものがかりの「ありがとう」が流れる中、選手たちは1校ずつマウンドに向かって前進。被災地から出場する東北(宮城)などが紹介されると大きな拍手がわいた。
前年優勝校の興南(沖縄)の外間(ほかま)正伍主将(3年)による優勝旗の返還後、大会会長の朝比奈豊・毎日新聞社社長があいさつ。奥島孝康・日本高野連会長が励ましの言葉を送った後、創志学園(岡山)の野山慎介主将(2年)が選手宣誓した。
今大会は21世紀枠で選ばれた大館鳳鳴(秋田)、佐渡(新潟)、城南(徳島)を含む11校が初出場。開会式後には、香川西(香川)と日本文理(新潟)が開幕試合に臨んだ。【遠藤孝康】
私たちは16年前、阪神淡路大震災の年に生まれました。今、東日本大震災で多くの尊い命が奪われ、私たちの心は悲しみでいっぱいです。被災地ではすべての方々が一丸となり、仲間とともに頑張っておられます。人は仲間に支えられることで大きな困難を乗り越えることができると信じています。私たちに今できること。それはこの大会を精いっぱい元気を出して戦うことです。がんばろう、日本。生かされている命に感謝し、全身全霊で正々堂々とプレーすることを誓います。
主催者として、ぎりぎりまで論議を重ねた結果、私たちは、甲子園を目指してきた高校球児の夢を奪うことなく、被災地の皆様に思いを寄せた特別に意義のある大会として開こうと決意いたしました。選手の皆さんが、被災地の皆さんを応援する気持ちを胸に、甲子園で全力のプレーをする。その姿が、一筋の連帯の光になって被災地に、そして日本中に、届くことを強く願っております。
「がんばろう!日本」。これが今回のセンバツ大会のスローガンです。大震災で打ちひしがれた被災地の皆さんのみならず、未曽有の大震災で自信をなくした日本中に「がんばろう」というエールを送りたいとの願いを込めました。私たちは今大会を被災者や救援に携わる皆さんを応援する大会とします。初出場校は11校。どうか君たちの初々しくも、はつらつたるプレーが被災地の皆様を元気づけますことを祈ります。
○…「東日本大震災で多くの尊い命が奪われ、私たちの心は悲しみでいっぱいです」。開会式で、創志学園(岡山)の野山慎介主将は、選手宣誓で震災に触れた。同校は創部1年目。野山主将を含めて選手全員が新2年生だ。18日に大役が決まった後、長沢宏行監督(57)や他の部員と一緒に文章を練った。宣誓では緊張した表情を見せず、被災地へ力強いメッセージを発信すると、スタンドから大きな拍手が湧き起こった。
○…東日本大震災で所在地が大きな被害を受けた東北(宮城)、光星学院(青森)、水城(茨城)の校名がアナウンスされると、スタンドからは大きな拍手が送られた。
地震発生後「今は野球のことは考えられない」と話していた東北の五十嵐征彦監督(35)はバックネット裏から緊張気味の選手たちを見守った。上村健人主将(3年)は「今も行方不明者を捜している人がいる。自分たちの全力プレーを見て、頑張ってほしい」と話した。
青森県八戸市の光星学院は、甲子園での応援をキャンセルし、スタンドでは関西出身選手の保護者らがエールを送った。
水城は、25日の光星学院戦に先立ち父母会の一部が甲子園に到着、選手たちを見守った。阿久津俊貴選手(3年)の父貴守(たかしゅ)さん(51)は「この場に立っているだけで感動」と感慨深げに語った。