「左腕、パージ」
コマンド入力後、左肩部の爆裂ボルトが作動。破壊された左腕を切り離した。
直後に敵のファイアーボールが飛来。
2時方向へ機動、ファイアーボールをかわす。エアブレーキ。急減速、12時方向俯角30度へ加速。再減速、翅を畳む、真下へ向かって降下。傷口が開かぬよう血液が急速に酸化。肩の断面を素早く焼灼。
敵竜騎兵、自機の後を追い降下。サンダーボルトを詠唱。
100ミリ秒ほどの瞬間、思考が頭を過ぎる。自機の左腕を破壊したのはこんな引っかかり易い間抜けだっただろうか? 端整な眉が僅かに顰められる。
加速、地表がせまる。タイミングを計る。サンダーボルトの詠唱が完了する。翅を展開する。急上昇、メイン・スラスターを吹かして全力加速。背後をサンダーボルトが通り過ぎる。
上昇、加速、上昇、上昇。敵竜騎兵も釣られて上昇。
「馬鹿め」
背面翅を畳む。両脚翅を展開。エアブレーキによるモーメントをしなやかに受け流す。瞬間的に前後が反転。脚部・肩部の制御スラスターを噴射。前後反転状態を維持。左眼が敵機を索敵。画像認識で竜騎兵をロックオン。M-FCSにデータ入力。生体ミサイル選択。データ転送。両脚部にマウントされたケミカルAAMをヘッドオンで発射。
敵機、意表を突かれて思考が停止する。その隙にミサイルが突っ込む。スマート信管が最適距離で作動。強腐食性粘液が殺傷散布界の網を広げる。飛び散った腐食液の水滴に突っ込んだ竜騎兵、マジックシールドを張る間もなく散々に強酸の雨に打ち据えられる。
「ぴぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!! 」
竜騎兵、直ちに治癒魔法を詠唱。しかし、その隙を突いて右腕にマウントされたガス圧式ニードルガンを照準、発射。竜騎兵、頭部・胸部がハリネズミになる。ニードルに仕込まれた化学物質が竜騎兵の生体成分に反応。劇烈な反応と共に風船のように膨らんだ肉体が爆砕、血の雨を降らせた。
「敵竜騎兵の撃墜を確認」
成果確認の後再び周辺索敵に移行しようとしたその瞬間、11時方向仰角70度から飛来したエアカッターがその首を切り落とした。
それが自機の左腕を破壊した敵機だと理解した瞬間。
(リプログラム開始)
切り落とされた頭部がスリープモードに移行する直前、顔面が胴体に向いた瞬間に右眼から胴体の光学センサーへレーザー通信。
脊椎及び腰部の肥大化した副脳に最後の命令を上書き。
≪見敵自爆≫
胴体に残された光学センサー・音響センサー・電磁センサーが瞬間的にバーストし全天周索敵。光学センサーが上方10時方向に不自然な光の歪みを確認。大気の乱流と判断。観測された乱流を逆演繹。光学的に隠蔽された竜騎兵の姿を逆算して捕捉。
突撃。
捕捉されるはずがないと高を括っていた竜騎兵、反応が遅れる。
翅を折り畳む。制御翼だけ突き出す。全身のスラスターを展開。酸化剤を使って化学ブースト。一気にMAXスピードへ。
竜騎兵、回避運動に移ろうとするがそれより早く接近。右腕・両脚・背面補助腕・腰部補助腕を全て展開、竜騎兵に組み付く。
「げぇえ゛え゛え゛え゛!! 放ぜっ! 放ぜえ゛え゛え゛え゛えぇぇぇぇぇ!! 」
≪自爆シークエンス開始≫
≪音声メッセージ解凍≫
「断る。死ね」
自爆シークエンス進行。
骨格に内蔵された超音波発振兵装、全力発振。
ホメオスタシス維持機能、暴走開始。
主肺・副肺及び各関節の気門から外気を導入。体内の化学燃料を始めとした反応性化学物質を酸化剤・酸素と混合、超音波をスターターとして反応開始。
そのエネルギーを使って電磁兵装を最大出力で暴走。
化学反応のエネルギーも併用して自機を最大温度一万度に達するプラズマ爆弾へ。
「ぎぃやぁぁああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!! 」
起爆。
プラズマ化に巻き込まれた竜騎兵、断末魔の叫びを上げながら爆散。血と内臓の蒸気を撒き散らしながら蒸発。消滅した。
機体の蜻蛉や蜂に似た透明に黒のコントラストが入った飛翔翅が花弁の様にはらはらと舞い落ちる。僅かに焼け残った漆黒の鎧や装甲コートが紅葉の様に夕陽の中を落下して行く。
なお、自爆した機体[識別子L-68432846:種族ホモ・サピエンス-兵士階級]は頭部だけとなったが、ただちに自閉状態へ移行。後に救出チームによって回収されて蘇生した。
その様子を冷徹に観察する存在があった。
「敵竜騎兵、撃墜2。友軍、大破1」
「IFF確認。回収班編成開始」
「データ回収完了。解析開始」
空中空母の管制室では電子化されたやりとりがせわしなく飛び交っている。
肥大化した人間の脳が管制パーツ、解析パーツなどとして生体兵器の一種である空中空母の脳幹に連結されている。情報処理機能を向上させるためだが、冷却に費やすエネルギーは決して無視できるほど小さくは無い。しかし、得られるメリットは大きい。
現に今も……
「偵察隊より空母へ。方角173゜高度7000よりD接近。タイプはD-85。速力4700に増速。警戒されたし」
「了解。飛行中の全航空部隊に通達。現空域から撤退する。直ちに撤退行動を開始されたし」
次々と了解のサインが飛び込んでくる。それらを処理しながら最適な撤退プランを立案し検討し実行する。それに修正を加えながら自身も撤退する。撤退中も今回の戦闘のデータを整理、解析・分析を続ける。
「…敵の基本性能は今回も変化無し」
「戦術も進展無し」
「では何故L-68432846は撃破された? 」
「隠形の術を使った奇襲はただでさえ感知しにくい」
「その上L-68432846は戦闘経験も薄い」
「左腕を失ったことで残心が少々疎かになったものと思われる」
「自動警戒システムに改良の余地ありか? 」
「検討して見よう」
「敵魔法使いとのキルレシオは年々向上しつつある。だが、単機当たりのコストも高騰しつつある。戦術で代替出来ないか? 」
「…検討して見よう」
あとがき
ここまで書いて燃え尽きました。
続くかどうかは未定です。
3/23
(オリジナル SF? )
(続きました)
(また続きました)
(読者の皆様方へ謝罪)
(バイク特集)
(ネタバレ編)
(ドラゴンハント・前日譚)
(if編)
を
分かりやすさを考慮して
(オリジナル SF? )
(if編)
(ネタバレ編)
(続きました)
(また続きました)
(ドラゴンハント・前日譚)
(読者の皆様方へ謝罪)
(バイク特集)
に再編しました。
読者の皆様には度々ご迷惑をお掛けして申し訳ありません。
4/7
サイバーパンクの二次クロスオーバーが不評だったので、その他の短編ごと板を分割しました。
読者の皆様には不快感を与えてしまい誠に申し訳ありませんでした。