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■「“国保ジレンマ”(後編) 通院をガマンする人たち」 2011/03/04 放送

 特集は「国民健康保険」の問題の後編です。

 「前編」は保険料が支払えず、滞納する世帯が多い現状をお伝えしました。

 「後編」はその結果「無保険状態」になったり、保険があっても窓口で自己負担分が支払えないために病院に行くのを我慢する人たちの現状です。




 大阪府内にひとり暮らしをするAさん、62歳。

 「国民健康保険」の保険料は、年間4万円あまりです。

 しかし、おととし心臓疾患の疑いで仕事を辞めてから、保険料が支払えなくなってしまいました。

 <Aさん>
 「今まではね、生命保険崩したりそういうので暮らしてきた。家賃と水道代、電気、ガス、もうギリギリやね」

 生活保護の相談にも行きましたが、「65歳までは働いて下さい」と言われたといいます。

 そんなAさん去年5月、階段から落ちて腰を痛め、病院に行きました。

 診察と薬代あわせて4,000円。
 
 Aさんにとって大金です。

 「そこで4,000円払ったんで、そのまま湿布で我慢してずっと今日に至ってる」

 診療費を心配してその後は病院に行かずにいたのですが、1年近く経っても治らないため先月、思い切って病院に行って初めて保険証が使えなくなっていることを知りました。

 <Aさん>
 「すごく痛かったから心配で、もう一度病院で調べてみたいと思った。病院に行ったけど『保険証が使えませんよ』って言われた」

 保険料の滞納が1年以上続いたため、保険証ではなく「資格証明書」に切り替えられていたのです。

 「資格証明書」は、診療費を3割ではなく窓口で一旦、全額支払わなければなりません。

 既に貯金が底をついていたAさん、この日は受診を諦めて帰ることにしました。

 <Aさん>
 「不安だけど仕方がないのかなと思った…」

 経済的な理由から病院へ行かず我慢する「受診抑制」。

 こうした人たちが、最近急増しているのです。

 「全日本民主医療機関連合会(民医連)」が加盟する病院などを対象に行った調査では、経済的な理由から受診が遅れ死亡した事例が去年1年間(2010年)で71件に上ることがわかりました。

 おととし(2009年・47件)の1.5倍近くに上り、調査を始めて以降最多です。

 <全日本民医連 長瀬文雄事務局長>
 「この71事例も氷山の一角ではないかなと思っている。大変深刻な状況」

 診療費を支払えない人たち。

 彼らは、どうしたらいいのでしょう。


 経済的な理由から、病院へ行かず我慢する「受診抑制」。

 近年、死亡に至るケースも増えています。

 そんな中、この「受診抑制」を無くそうと活動している医療機関がありました。

 「兵庫県尼崎医療生活協同組合」。

 ここでは患者カルテの一部を分ける作業をしていました。

 <尼崎医療生協 粕川實則事務局長>
 「慢性疾患の患者で治療が中断している。薬が切れているのに来ていない。こういう人たちをチェックしてカルテを区分している」

 受診が中断している患者には、電話に加え実際に訪問して連絡を取っていますが、やはり診療費の高さから受診をためらう声が多いといいます。

 <尼崎医療生協 粕川實則事務局長>
 「薬を半分に割って半分しか飲まない。それで期間を長くして、受診回数を減らしている。こんな深刻な事例が数多くある」

 そこで尼崎医療生協はおととし3月、新たにある制度を導入しました。

 「無料低額診療制度」、世帯の所得により医療費が減免される制度です。

 生活保護世帯の場合、もともと医療費は無料です。

 そしてこの制度を利用すれば、所得が生活保護基準の1.3倍以下なら自己負担が全額免除に、1.3倍〜1.5倍以内なら半額になります。


 <担当医師>
 「(レントゲン写真を見て)この白いのが治療する所です」

 こちらのガンの手術を受けた男性の場合、診療費の総額76万4,800円のうち、3割のおよそ23万円が自己負担のはずです。

 しかし、所得が低かったため減額率100パーセントで、支払ったのは入院中の食事代、5、880円だけでした。

 尼崎市内で飲食店を営む男性(52)も、去年9月から制度を利用しています。

 完治が難しいと言われている皮膚の病を患い、週1度の通院を欠かすことが出来ません。

 <男性(52)>
 「ひどい時は手が倍に腫れあがる。いかんかったら大変なことになる」

 しかし、診察費と薬代を合わせると 1回5,000円程度掛かります。

 一方で不況で店の客は減り、売り上げは激減します。

 3人の子どもを持つ男性は、病院の回数を減らすしかなかったといいます。

 <男性>
 「薬がなくなってもないときは1週間なり我慢して。どうしても財布の中身を心配しながら行くか、行くまいかと。少々のことではなかなか病院へは行けない」

 それが去年9月に「無料低額診療制度」を利用するようになってから、窓口負担が全額免除されました。

 <男性>
 「気分的に楽になった。病院が行きやすくなった」

 低所得者には助かるこの制度、利用した患者はこの2年で142世帯245人に上りますが、減免された金額1,300万円はすべて病院側の持ち出しです。

 病院によっては、「固定資産税」の減免などの優遇を受けられるとはいえ、病院にとっては大きな負担です。

 このため全国およそ17万7,000の病院と診療所のうち、この制度を実施しているのはわずかに290か所です。

 ところが、最近になってこの制度が再び注目を集める背景には、国民保険料の滞納世帯が急増し無保険状態の人が増えている実態がありました。

 <おととし、制度導入に踏み切った尼崎医療生協 船越正信理事長>
 「本来病院にかかるべき人がかかれない。この状態を、本来は行政がする部分も多いのにそれを待っていては助かる命も助からない。最終的には、行政が医療が本当に必要な人のために医療が届く制度構築が必要」

 腰のケガを放置したまま病院に行っていないAさん。

 Aさんの住む市には「無料低額診療制度」が利用出来る病院がありません。

 (Q.もし病院に行けるとしたら、今すぐにでも行きたい?)
 <Aさん>
 「はい、行きたいです」
 (Q.どこを診てもらいたいですか?)
 「腰を見てもらって、不整脈の健康診断を受けたい」

 病気になっても治療が受けられない。

 経済格差が産んだ「健康格差」は、国民皆保険という日本の医療制度自体を崩壊させつつあります。




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