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■「“国保ジレンマ”(前編) 保険料の滞納と徴収」 2011/03/03 放送

 今回の特集は「国民健康保険」についてです。

 こちらをご覧ください。

 例えば大阪市内に住む自営業の40代夫婦で、子ども2人の4人家族。

 経費などを除いた年間の所得が300万円の場合、1年間に支払う国民保険料は、50万5,000円になります。

 実にこれ、所得の6分の1を占めています。

 こう見ますと、かなりの負担です。

 いまこの保険料を滞納する人が増えていて自治体が徴収を強化しているんですが、現場ではさまざまな問題が起きています。




 <調査員>
 「おはようございます」

 去年12月、京都市伏見区で市民グループが行った、「国民健康保険」の加入世帯の実態調査。

 多くの人が口にしたのが、その保険料の高さでした。

 <男性>
 「世帯の保険料は月2万5,000円です」
 (Q.高いと思いますか?)
 「高いと思います。ぼくは今、失業したところなんですよ。3万円以上払ってます」
 <夫婦>
 「毎年保険料がなんぼか上がっていくし、役所に抗議はしますけど、上から指示がきたからどうしようもないとか。それで終わり」

 6割を超える世帯が「保険料が高すぎる」と答えました。

 先月の衆議院予算委員会でも、「国民健康保険」の保険料の問題が取り上げられました。

 <志位和夫議員>
 「菅首相もこの実態は『相当高い』という認識だと思いますが、いかがでしょう」
 <菅直人首相>
 「負担感としてかなり重いという感じはいたします」


 国保=「国民健康保険」は各市町村が運営し、自営業者や無職の人などおよそ3,600万人が加入する最大の健康保険です。

 大阪市に住む40代の夫婦と子供の4人家族で所得が200万円の場合、保険料はおよそ38万円で、所得の2割近くを占め、中小企業の会社員が入る「協会けんぽ」より20万円以上高くなります。

 大阪市では、加入世帯の8割が所得200万円未満。

 全体の3割が保険料を滞納しています。

 大阪市内で、ねじ加工の鉄工所を営む山本さん(仮名・44歳)

 長男と2人の世帯で、年間所得は190万円。

 国保料は年10回払いの合計35万円で、払えないときは区役所に相談して、納付できるだけの額を納めてきました。

 しかし・・・

 <山本さん>
 「去年12月7日に『差し押さえ予告』という封書が届いた。『15日までにいっぺんに(滞納分を)払ってください』という通知がきたんです」

 これが、「差し押さえ予告」です。

 滞納金額は延滞金を含めておよそ48万円。

 8日後の「12月15日までに全額納付しなければ、財産の差し押さえに着手する」と書かれています。

 <山本さん>
 「48万円いきなりは、なんぼなんでもないと思う。サラ金よりえげつないと思ってます」


 国民健康保険料が払えず、滞納している鉄工所経営の山本さん。

 ついに「差し押さえ予告」が届き・・・

 <山本さん>
 「もう本当にびっくりして、とにかく1回(区役所の)窓口に行かないとダメやと思って行ったんです。『48万円いきなりはなんぼなんでもないと思う。何回かに分けられないんですか?』と聞いたんです。そしたら『無理だ』と、けんもほろろですね」

 実は大阪市は、山本さんの口座に現金があることをつかんでいました。

 山本さんは、会社の運転資金として100万円を、市の信用保証協会を通して借りたばかりでした。

 <山本さん>
 「会社の支払いに使うために借りたお金を『資産やろ』と言われたらたまらない。結局、払いました。とりあえず会社で借りたお金を(国保料に)まわして、(会社の資金は)借り歩くようにしたんです」

 山本さんは、差し押さえられる前に借りたお金を引き出して、保険料を納付、会社の運転資金は親戚や友人から借金しました。

 大阪市の担当者は「預金があるなら行政として支払いを求めるのは当然」と話します。

 <大阪市国保収納対策担当 中村彰男課長>
 「『これしか払えない』ということで、今まで区役所に相談されていたケースだと思うが、財産が見つかった以上は、その財産で支払っていただくのが、はっきり言って当然の話かと思うんです」

 大阪市の国保料の収納率は、全国平均を4.2ポイント下回ります。

 毎年400億円以上を一般会計から繰り入れて運営していますが、それでも全国の政令市でトップの累積赤字366億円を抱えています。

 そこで、市は去年9月から国保料の徴収の強化に乗り出しました。


 2009年度の保険料の7割以上を滞納している世帯について、金融機関や保険会社に財産調査を依頼、預貯金が判明した場合は、差し押さえなど厳しく対応する方針を打ち出したのです。

 <大阪市国保収納対策担当 中村彰男課長> 
 「この人が払って、この人は払わないということがないようなかたちで、みなさんの負担を公平にするために、我々がやっていると考えている」

 <デモのシュプレヒコール>
 「いきなり差し押さえ、なんでやね〜ん」

 先月、市役所の前では徴収強化に抗議するデモが行われました。

 大阪市では、今年度1月末までで、およそ450件の差し押さえを執行しています。

 市民グループが市に情報公開請求をして、差し押さえ財産の内訳を見てみると・・・

 <大阪社会保障推進協議会 寺内順子事務局長>
 「全体の半分ぐらいが生命保険。生命保険の半分が『学資保険』なんです。子どもの未来のためにコツコツとためているお金を大阪市が国保料の滞納で差し押さえている、子どもの未来を奪おうとしている、と思って非常に憤りを感じる」

 市議会では、「国保」の徴収に関して全く異なる2つの立場から質問がされます。

 <木下吉信市議・議会>
 「未収金の徴収業務は役所の仕事ですよ。しっかり徴収していただかないとなりません」
 <木下吉信市議>
 「国民健康保険の会計自体は破綻に近い状態。未収金の額が他都市に比べて突出して多いわけですよ」

 一方で・・・

 <北山良三市議・議会>
 「差し押さえについては、機械的に行うことなく、個々の実情をしっかりお聞きする」
 <北山良三市議>
 「3割が滞納しているという事実をどう見るか。国保料が高すぎる、今の生活の実態からすれば」
 
 平松市長は先週、保険料徴収の強化は必要としながらも、子どものために積み立てている「学資保険」の差し押さえについては、慎重に行う方針を明らかにしました。

 <大阪市 平松邦夫市長>
 「今後は『学資保険』を把握した場合、ほかに差し押さえ可能な財産がないかどうか十分に調査し、その他の財産が判明した場合は『学資保険』に優先させる。丁寧に対応してほしい、と指示した」

 滞納者の増加に差し押さえなど徴収を強化する自治体。

 市民の命を守る「国民健康保険制度」は今、大きな危機に直面しています。




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