近代日本洋画を代表する高橋由一(ゆいち)(1828~94)が描いた未知の油彩画1点が、長野県中野市の山田家資料館の収蔵品の中から発見された。鑑定した古田亮・東京芸術大美術館准教授によると、由一の作品は約80点が確認されているが、新発見は約10年ぶりという。
市教委が18日発表した。作品は当時、豪農だった山田家当主、11代山田荘左衛門の肖像画(縦53センチ、横41センチ)で、1883(明治16)年に制作された。荘左衛門の日記に由一に肖像画を依頼し、買い取った経緯が詳細に記されていたという。
山田家の旧宅だった資料館内で10年10月に発見された。署名はなかったが、由一の作品に詳しい古田准教授と守屋正彦・筑波大大学院教授が4月上旬に「筆致などから間違いない」と鑑定した。
古田准教授は「写実的な表情や細やかな筆致で、由一の人物画の中でも質が高い作品。日本近代美術史研究においても重要な発見だ」と評価している。
由一は現在の栃木県にあたる佐野藩の藩士の子として江戸で生まれ、明治の洋画草創期に活躍した。代表作は「花魁(おいらん)」「鮭」。
肖像画は修復作業をした上で、山田家資料館に展示する方針。【大平明日香】
毎日新聞 2011年5月18日 20時36分(最終更新 5月18日 21時43分)