「娘の死 いじめと認めて」

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愛知・高2女子高生自殺の賠償訴訟、名地裁で20日判決

陳述書を手に判決への期待を語る高橋典子さん=17日、愛知県刈谷市で
陳述書を手に判決への期待を語る高橋典子さん=17日、愛知県刈谷市で

 愛知県岩倉市の高校2年の女子生徒=当時(16)=が自殺したのは中学時代のいじめが原因として、母親の高橋典子さん(53)=同県刈谷市=が、中学校を運営する学校法人市邨(いちむら)学園(名古屋市瑞穂区)と当時の担任ら3人に総額約4200万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が20日、名古屋地裁で言い渡される。「ママが悲しむから言っていないことも、いっぱいあるよ」。典子さんは娘が生前に語った言葉を今も忘れられない。

 訴状などによると、典子さんの長女美桜子(みおこ)さんは2002年4月、名古屋経済大学市邨中学校(同市千種区)に入学。同級生の女子生徒8人からノートや机に「ウザイ」「死ね」と書かれたり、靴に画びょうを入れられたりした。翌年4月に別の公立中学に転校したが不登校状態に。04年2月に解離性同一性障害(多重人格)と診断され、06年8月、自宅マンション8階から飛び降り自殺した。

 中学在学中、娘の異変に気付いた典子さんは、担任らに何度も救いを求めたが、取り合ってもらえなかったという。

 「美桜子が死ななければならないようないじめって何なの?」。娘の死後、典子さんは、いじめにかかわったとされる元同級生3人と会い、話を聞いた。3人は少しずつだが、いじめの事実を認めた。提訴後、その際のやりとりを証拠として提出した。

 ところが、訴訟の終盤の昨年12月から今年1月にあった証人尋問で、元同級生はいじめの事実を否定。「提訴前に(いじめを)認めたのは典子さんが異常な状態で、付きまとわれるのが嫌だったから」と証言した。

 学園側は「美桜子さんへのいじめは存在しない。仮に生徒同士のささいな衝突を『いじめ』と呼び、自殺との因果関係が認められるとしても、転校後の出来事が美桜子さんの死に影響している」と主張している。

 判決では、いじめがあったのか、あったとしても、自殺まで数年が経過した場合、因果関係が認められるかどうかが焦点となる。

 典子さんは「いじめの後遺症は人の心を壊し時には命を奪う。娘の3年半の闘病生活を見てきた母親として、同じ苦しみを持つ人のためにも、踏み込んだ判決を出してほしい」と話している。

(2011年5月19日)

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